死を見る令嬢は義弟に困惑しています

れもんぴーる

文字の大きさ
上 下
31 / 51

お約束の悪役令嬢登場 1

しおりを挟む
 その後も、シャルロットは今まで通りほとんど社交に出ることはなかったが、どうしてもという時にはシリルがエスコートをするようになった。
 以前はこっそりと王族たちを見るため無理をして夜会や舞踏会に参加していたが、エリックが知ってしまった以上、隠さなくてよくなった。その王子の配慮により秘密裏に王族や国の重鎮を見ることができるようになり、シャルロットの負担はだいぶん少なくなった。

 今日は第二王子、第三王子の暗殺未遂事件を経て王位継承権争いが、やっと落ち着いた王室のお披露目のようなものだ。
 第一王子が王太子争いから降りてエリックを支えることを表明、臣下に下った元第三王子ともにエリックをささえていくことで後継者争いを収めた。
 シャルロットは不参加でもよいと許可をもらっていたが、シリルが離れず側にいてくれるというのでこれからの王室をこの目で見たく参加した。
 これまでは限られた人以外を視界に入れないようにうつむき、楽しむことなどできなかったが、シリルがいれば少しづつ世界を広げることができるかもしれない。今でも怖いことに変わりはないし、周りを見渡すこともできないが、エリックがいつでも避難できるようにと部屋も用意をしてくれている。そういう皆のやさしさ、気遣いにシャルロット自身も変わりたいと強く思った。

「シャルロット、大丈夫ですか?」
 婚約者となり、「姉上」から名前で呼んでくるようになったシリルにまだ慣れず顔を赤くしてしまう。それをみて胸を高鳴らせますます甘く溺愛をこじらせるシリルは、シャルロットの可愛い顔がよその男の目に入らないように抱き寄せる。もう一つ、痛みは伴わないと言っても少しでも死を見なくて済むように。
「シリル?」
「可愛い」
 そういって、耳元にキスしてくる。
「ちょ・・ちょっと・・」

 シリルが構い倒しているところに、3人の令嬢が声をかけてきた。
「シリル様、ご無沙汰しておりますわ。もしかしてお姉さまのエスコートを押し付けられましたの?大変ですわね、おいたわしい。あちらでお話いたしませんこと?」
 赤いドレスに、宝石で身を飾り立て自信満々の表情で話しかけてきた令嬢の後ろには取り巻きと思われる二人の令嬢が立っている。
「・・・ああ、アルエ侯爵令嬢。」
「まあ、そんなよそよそしいですわ。ルイーズとお呼びくださいませ。」
 シリルに抱き寄せられたまま身を固くしてしまったシャルロットを安心させるようにその背をポンポンとたたく。それを見てルイーズは眉を寄せる。
「あら、ルコント公爵令息の次は弟君にまで媚びを売ってらっしゃるのかしら?お盛んなのは結構ですけど、貴族のご令嬢としてはいかがなものでしょうか。家名に恥じないよう自重された方がよろしくてよ。ねえ、シリル様?」
 3人がくすりと笑う。

 シリルは、冷たい視線を3人の令嬢に向けると
「ええ、本当に。根も葉もないうわさを流し、一方的に他人を貶め嘲笑するような礼儀も持ち合わせてない令嬢は、家名を相当貶めていますね。」
「な!シリル様?!シャルロット様のことは皆がそう申しておりますわ!シリル様こそどうされたのですか?まさか、この女の甘言に惑わされたのでは・・・弟を誘惑して取り入るなんて、なんてふしだらな!」
「発言を取り消していただこう。噂はすべて間違いですよ。僕も、根も葉もない噂に惑わされた事を恥じております。シャルロットはそんな人間ではない。これからはそんなばかばかしい話をしないでいただきたい。」
「シリル様は騙されているのです。ルコント公爵令息と関係を持ちながら・・・モーリア侯爵とも・・・」
「黙れ!!下手に出ていればどこまで侮辱をするつもりだ。シャルロットは僕の婚約者だ、これ以上貶めることをいうならこちらもそれなりの対応をさせてもらう。」
「婚約者ですって?」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

ちっちゃいは正義

ひろか
恋愛
セラフィナ・ノーズは何でも持っていた。 完璧で、隙のない彼女から婚約者を奪ったというのに、笑っていた。 だから呪った。醜く老いてしまう退化の呪い。 しかしその呪いこそ、彼らの心を奪うものだった!

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

【完結】愛していないと王子が言った

miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。 「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」 ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。 ※合わない場合はそっ閉じお願いします。 ※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。

処理中です...