死を見る令嬢は義弟に困惑しています

れもんぴーる

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王宮でお茶会

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 まだ気持ちを決めかねているある日、エリックから城へのお招きがあった。
 わざわざニコラが迎えに来てくれ、城内でもエスコートをしてくれたおかげでほとんど人にも合わずエリックの待つサロンへと到着することができた。
「呼び立ててすまないな。久しぶりにシャルロット嬢とゆっくり話をしたくてね。」
「光栄でございます。」
 シャルロットの事情を知っているエリックとニコラとのお茶会ならば安心である。人払いもしっかりしてくれている。

「貴女にはどれだけ感謝をしていいかわからないが、表立って褒美を与えるわけにはいかないだろう?だからこうして時々お茶会に招こうと思う。」
 そうすればシャルロットが王太子殿下に信頼されていること、ひいては王家の庇護下にあると示すことができる。それだけの価値がシャルロットにあることを知らしめ、これまでの噂を払拭できる。

「殿下、お心遣い感謝いたしますわ。私の方こそ荒唐無稽な話を聞き入れて下さって・・・・こうしていてくださることが嬉しいのです。ありがとうございます。」
「あなたという人は・・・。本当に残念だよ。」
「え?」
「こちらの話だよ。さあ、今日は隣国から取り寄せた茶葉とお菓子を楽しんでくれ。」
 3人でのお茶会はとても楽しかった。

 人前ではいつもとりつくろわなければいけない立場上、紳士然としているが気を許す仲間内ではくだけている様子で、シャルロットも気を遣わずに過ごすことができた。
「最近、シリル様は頑張っておいでですね。」
「そうなのですか?」
「はい、積極的にお茶会に出席されて関係を作りながら、さりげなくシャルロット様の噂が真実でないと。その噂を信じた自分の馬鹿さ加減を笑い話にして、深刻にならないよう見事な話術で誤解を解いて回ってらっしゃいますよ。」
 以前よりも積極的にお茶会や夜会に参加しているとは思っていたが、そんなことをしているとは全く知らなかった。
「シリルがそんなことを・・・。」
 心が温まる思いだった。

「それにモーリア侯爵と私のもとに来て、勉強をさせて欲しいと頼みに来たよ。」
「勉強?」
「あの地震の時の殿下の手腕にいたく感銘を受けていたようで、殿下の執務を側で学びたいと時々王宮に通ってこられてます。」
「彼はニコラにも一目置いていてね。ニコラの考え方や行動など必死で理解しようとしている。だからニコラの補佐という形で許可した。いずれ側付きになってもらおうと思っていたから、今から育てられるのはこちらにとってもメリットだしね。」
「知りませんでした。でもあの時のお二人の姿を見て思うところがあったようで、いずれお父様の跡を継ぐためにまだまだ足りないものが多すぎると落ち込んでいました。」
「そうか、いい領主になると良いな。心配せずとも私の側につく以上、バシバシ鍛えるつもりだ。」

 楽しそうなエリックの笑顔を見て、ニコラはお気の毒にと心の中で手を合わせた。 

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