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シリルの告白
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「まだ思い付きの段階ですもの。ちょっとお話しただけよ」
「決まってしまってからでは遅いじゃないですか。姉上は僕がそばにいなくても大丈夫なんですか?・・・僕のこと嫌いですか?」
「そんなことあるわけないじゃない。シリルのおかげで私は生きる希望が持てた。でもそれはそれ、私の為にシリルが制約されることがあってはならないわ。私はあなたがくれた希望があるから、一人で生きていけるわ。」
シリルは思わずシャルロットを抱きしめた。
「シ、シリル?」
「一人で生きるなんて・・・言わないで。」
「ちょっと、シリル?」
「姉上をずっと・・・お慕いしてました。」
シャルロットは低くささやくようなシリルの声にビクンと体をはねさせた。
「な、なに・・・は、放して・・」
押し戻そうとするが弱弱しい力にシリルはびくともしない。
「どこにも行かないで。ずっと側で守らせて。謝るから・・・姉上にひどい態度取っていたのを後悔してる。本当にごめんなさい。大切にするから・・・だから・・・どこにも行かないで。」
驚いて身動きできないでいると、シリルはずっと昔から好きだったと言った。好きだった分、悪評を聞いた時に気持ちが荒れてしまい、確かめもせずひどい言動をしていたことを謝った。
「・・・その件は前に謝罪を受けいれたわ。もういいのよ?」
それでもシリルはシャルロットから離れなかった。
しかし一番謝罪しなくてはいけないのは、あの夜のこと。
その事を伝えることができなかった。
シリルは好意を伝える前に事実を告白しないのは卑怯ではないのかと悩んでいた。それで恨まれても嫌われても仕方がないことをしたのだと、心底後悔をしていた。
父のジェラルドにあの夜のことを告白して殴られた時、いつかシャルロットに謝罪をすると伝えた。
しかしその時、ジェラルドにシャルロットには絶対に知られるなときつく約束させられた。お前の気持ちなどどうでも良い、シャルロットの気持ちを最優先に考えろと。真実を告げることは許さないといわれ、最後にもう一度殴られた。
シャルロットは緊張と羞恥とで真っ赤になり固まってしまった。
「姉上は・・・僕の事嫌いですか?」
全く応答がないシャルロットにシリルはもう一度言った。
「姉上が好きなのです、僕に守らせてほしい。」
シャルロットは混乱をして、シリルの言っていることがすぐに理解できなかった。
(好き?家族だし・・・守る?不思議な力があるから守ってくれると。え?何?)
シリルが手を伸ばし頬に触れる。
「シ、シリル?!」
「僕は本気です、本気で姉上をお慕いしています。」
「あの、ごめんなさい。よくわからないのだけれど・・・家族として?」
「伴侶としてです。」
「・・・あの夫とか妻とかの伴侶?ええ?!」
「・・・こんな形で告白するつもりはなかったんだけど。出て行くかもと聞いて焦ってしまって。今度きちんと申し込みをするつもりです、そのときに返事を聞かせてください。その・・・嫌なら嫌ではっきりと言ってくれて大丈夫だから。」
そんな告白を受けてから、どうも必要以上に意識をしてしまい、無意識に避けてしまう。シリルの方も学院以外に外出が多いようで、幸いにもあまり顔を合わせずに済んだ。
いつもと変わらず部屋にこもることには変わりはないが、気が付けばあの日、シリルに言われたことを頭の中で反芻している自分がいる。
思い出しては顔が赤くなり、ドキドキしてしまう。
告白されたのが初めてだからなのか、シリルだからなのか。自分でもシリルに対する気持ちがよくわからない。大切な存在で、好意を持っているのは確かだがこれまでそんなこと考えたこともなかったのだから。。
これまで、自分のあの不思議な能力に振り回されて結婚など考えたこともなかった。あの苦しみから救ってくれる相手が伴侶になると言ってくれる。こんな心強く嬉しいことはないはずだ・・・しかし、それはただ自分が楽になるため相手を利用しているだけではないのか。好きという感情も自分の打算と感謝から来ているのではないだろうか。
そう思うと決心がつかなかった。
「決まってしまってからでは遅いじゃないですか。姉上は僕がそばにいなくても大丈夫なんですか?・・・僕のこと嫌いですか?」
「そんなことあるわけないじゃない。シリルのおかげで私は生きる希望が持てた。でもそれはそれ、私の為にシリルが制約されることがあってはならないわ。私はあなたがくれた希望があるから、一人で生きていけるわ。」
シリルは思わずシャルロットを抱きしめた。
「シ、シリル?」
「一人で生きるなんて・・・言わないで。」
「ちょっと、シリル?」
「姉上をずっと・・・お慕いしてました。」
シャルロットは低くささやくようなシリルの声にビクンと体をはねさせた。
「な、なに・・・は、放して・・」
押し戻そうとするが弱弱しい力にシリルはびくともしない。
「どこにも行かないで。ずっと側で守らせて。謝るから・・・姉上にひどい態度取っていたのを後悔してる。本当にごめんなさい。大切にするから・・・だから・・・どこにも行かないで。」
驚いて身動きできないでいると、シリルはずっと昔から好きだったと言った。好きだった分、悪評を聞いた時に気持ちが荒れてしまい、確かめもせずひどい言動をしていたことを謝った。
「・・・その件は前に謝罪を受けいれたわ。もういいのよ?」
それでもシリルはシャルロットから離れなかった。
しかし一番謝罪しなくてはいけないのは、あの夜のこと。
その事を伝えることができなかった。
シリルは好意を伝える前に事実を告白しないのは卑怯ではないのかと悩んでいた。それで恨まれても嫌われても仕方がないことをしたのだと、心底後悔をしていた。
父のジェラルドにあの夜のことを告白して殴られた時、いつかシャルロットに謝罪をすると伝えた。
しかしその時、ジェラルドにシャルロットには絶対に知られるなときつく約束させられた。お前の気持ちなどどうでも良い、シャルロットの気持ちを最優先に考えろと。真実を告げることは許さないといわれ、最後にもう一度殴られた。
シャルロットは緊張と羞恥とで真っ赤になり固まってしまった。
「姉上は・・・僕の事嫌いですか?」
全く応答がないシャルロットにシリルはもう一度言った。
「姉上が好きなのです、僕に守らせてほしい。」
シャルロットは混乱をして、シリルの言っていることがすぐに理解できなかった。
(好き?家族だし・・・守る?不思議な力があるから守ってくれると。え?何?)
シリルが手を伸ばし頬に触れる。
「シ、シリル?!」
「僕は本気です、本気で姉上をお慕いしています。」
「あの、ごめんなさい。よくわからないのだけれど・・・家族として?」
「伴侶としてです。」
「・・・あの夫とか妻とかの伴侶?ええ?!」
「・・・こんな形で告白するつもりはなかったんだけど。出て行くかもと聞いて焦ってしまって。今度きちんと申し込みをするつもりです、そのときに返事を聞かせてください。その・・・嫌なら嫌ではっきりと言ってくれて大丈夫だから。」
そんな告白を受けてから、どうも必要以上に意識をしてしまい、無意識に避けてしまう。シリルの方も学院以外に外出が多いようで、幸いにもあまり顔を合わせずに済んだ。
いつもと変わらず部屋にこもることには変わりはないが、気が付けばあの日、シリルに言われたことを頭の中で反芻している自分がいる。
思い出しては顔が赤くなり、ドキドキしてしまう。
告白されたのが初めてだからなのか、シリルだからなのか。自分でもシリルに対する気持ちがよくわからない。大切な存在で、好意を持っているのは確かだがこれまでそんなこと考えたこともなかったのだから。。
これまで、自分のあの不思議な能力に振り回されて結婚など考えたこともなかった。あの苦しみから救ってくれる相手が伴侶になると言ってくれる。こんな心強く嬉しいことはないはずだ・・・しかし、それはただ自分が楽になるため相手を利用しているだけではないのか。好きという感情も自分の打算と感謝から来ているのではないだろうか。
そう思うと決心がつかなかった。
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