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王子の暗殺劇 1
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登城するなり、エリックの執務室に行き、婚約者候補への打診を丁寧に辞退した。
シャルロットの秘密を盾にされても、こちらは命の恩人の上、二度と予知をさせないと反対に脅そうと思っていた。。
「残念だよ、侯爵。本気だったんだけどね。」
「娘には勤まりません。殿下もご存じのようにああしていつ倒れるかわかりませんから。」
「そうだね、他国との顔合わせでしょっちゅう倒れるのはかわいそうだしね」
とニヤッと笑う。国外の貴賓を殺す気かと聞いていたニコラの背中がヒヤリとする。
「侯爵、勘違いしないでね。彼女の能力が欲しくて申し込んだわけではないよ、彼女自身に惹かれたのは本当だから。あわよくば彼女が僕に惚れてくれていたらいいなあと思ったんだよ。まあ、これから僕の周りではいろいろ起りそうだから?彼女には耐えられないかもしれない。」
「ではこの話はなかったことでよろしいですね。」
「彼女を苦しめることになるのは僕も望むところではないからね。・・・自分の気持ちだけで妃を決められない立場であることはよくわかっているよ。」
ほんの一瞬寂しそうな顔をしたエリックはすぐに元の作り笑いを顔に張り付けた。
「それでだ、5日後の舞踏会での手筈の確認だ。」
エリックは書類を出すと、ジェラルドに渡した。
一年に2回開催される王家主催の舞踏会。
国内の貴族のみならず、国外の賓客も招かれる。交易を結ぶ国とのつながりを強固にする意図もあるが、大規模な舞踏会を開催することで王国の繁栄を見せつけるのも目的の一つである。
舞踏会が開かれている大広間の一段高い王族の席に、国王夫妻、二人の側妃、第一王子のヘンリー、第二王子のエリック、第三王子のルーフェ、第一王女のソフィーが並び座っていた。加えて、王女ソフィーの婚約者で隣国の皇太子アランも招待されていた。
舞踏会も終盤に差し掛かり、優美な音楽と皆のさざめきで心地の良い時間が流れていた。
突然、ガラスの割れた音と悲鳴が広間に響き渡った。
第三王子のルーフェが倒れ、母親である側妃フローラと妹のソフィーがその体に縋っていた。
「侍医を呼べ!」
国王が命じ、ルーフェは運ばれていった。毒の疑いがあると広間の出入口が騎士により閉鎖された。
ざわめく中、フローラが第一王子に向かって叫んだ。
「ヘンリー王子!よくも私のルーフェに毒を!」
「何のことだ?まだ毒と決まったわけではないだろう。いや、毒だというのならフローラ様の自作自演では?」
「なんですって?!」
フローラがヘンリーに掴みかかろうとする。それを国王が厳しい声で咎め静かにさせる。
「ですが・・・先日エリックお兄様もお命を狙われております!」
母の代わりにソフィーが声を上げる。
それを聞いた広間にいる人々の間にざわめきが起きる。
エリック王子の暗殺未遂事件、その実行犯は捕まったが、それを指示した黒幕やその背景などまだわかっていない。
もしや第一王子、または第一王子派の仕業ではないかと皆の憶測がささやかれる。焦った第一王子派が否定するが、否定する証拠を示すのは困難である。
「陛下、エリックお兄様。あの事件の犯人はまだわからないのですか?」
「おおよそ黒幕のあたりはついておる。実行犯に口を割らせた。今まで裏付けをとっていたのだ。近々公表するつもりであったが、こうなっては仕方あるまい。この場でエリックの暗殺事件についてはっきりさせる」
ざわめきが大きくなる。
「第一王子ヘンリー、並びにアレクシア妃を拘束しろ。」
国王は護衛騎士に命じた。
シャルロットの秘密を盾にされても、こちらは命の恩人の上、二度と予知をさせないと反対に脅そうと思っていた。。
「残念だよ、侯爵。本気だったんだけどね。」
「娘には勤まりません。殿下もご存じのようにああしていつ倒れるかわかりませんから。」
「そうだね、他国との顔合わせでしょっちゅう倒れるのはかわいそうだしね」
とニヤッと笑う。国外の貴賓を殺す気かと聞いていたニコラの背中がヒヤリとする。
「侯爵、勘違いしないでね。彼女の能力が欲しくて申し込んだわけではないよ、彼女自身に惹かれたのは本当だから。あわよくば彼女が僕に惚れてくれていたらいいなあと思ったんだよ。まあ、これから僕の周りではいろいろ起りそうだから?彼女には耐えられないかもしれない。」
「ではこの話はなかったことでよろしいですね。」
「彼女を苦しめることになるのは僕も望むところではないからね。・・・自分の気持ちだけで妃を決められない立場であることはよくわかっているよ。」
ほんの一瞬寂しそうな顔をしたエリックはすぐに元の作り笑いを顔に張り付けた。
「それでだ、5日後の舞踏会での手筈の確認だ。」
エリックは書類を出すと、ジェラルドに渡した。
一年に2回開催される王家主催の舞踏会。
国内の貴族のみならず、国外の賓客も招かれる。交易を結ぶ国とのつながりを強固にする意図もあるが、大規模な舞踏会を開催することで王国の繁栄を見せつけるのも目的の一つである。
舞踏会が開かれている大広間の一段高い王族の席に、国王夫妻、二人の側妃、第一王子のヘンリー、第二王子のエリック、第三王子のルーフェ、第一王女のソフィーが並び座っていた。加えて、王女ソフィーの婚約者で隣国の皇太子アランも招待されていた。
舞踏会も終盤に差し掛かり、優美な音楽と皆のさざめきで心地の良い時間が流れていた。
突然、ガラスの割れた音と悲鳴が広間に響き渡った。
第三王子のルーフェが倒れ、母親である側妃フローラと妹のソフィーがその体に縋っていた。
「侍医を呼べ!」
国王が命じ、ルーフェは運ばれていった。毒の疑いがあると広間の出入口が騎士により閉鎖された。
ざわめく中、フローラが第一王子に向かって叫んだ。
「ヘンリー王子!よくも私のルーフェに毒を!」
「何のことだ?まだ毒と決まったわけではないだろう。いや、毒だというのならフローラ様の自作自演では?」
「なんですって?!」
フローラがヘンリーに掴みかかろうとする。それを国王が厳しい声で咎め静かにさせる。
「ですが・・・先日エリックお兄様もお命を狙われております!」
母の代わりにソフィーが声を上げる。
それを聞いた広間にいる人々の間にざわめきが起きる。
エリック王子の暗殺未遂事件、その実行犯は捕まったが、それを指示した黒幕やその背景などまだわかっていない。
もしや第一王子、または第一王子派の仕業ではないかと皆の憶測がささやかれる。焦った第一王子派が否定するが、否定する証拠を示すのは困難である。
「陛下、エリックお兄様。あの事件の犯人はまだわからないのですか?」
「おおよそ黒幕のあたりはついておる。実行犯に口を割らせた。今まで裏付けをとっていたのだ。近々公表するつもりであったが、こうなっては仕方あるまい。この場でエリックの暗殺事件についてはっきりさせる」
ざわめきが大きくなる。
「第一王子ヘンリー、並びにアレクシア妃を拘束しろ。」
国王は護衛騎士に命じた。
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