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地震に備えて 1
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残された二人は、まずは屋敷内の危険な場所のチェックと食料品、医薬品の用意をするように執事に伝えた。
火事が起こった時のためにそこら中に水を汲み置きするようにも言っておいた。
案は二人でまとめ、実際はシリルが一人で屋敷中を駆け回り、使用人と交渉をした。
使用人たちは目的もはっきりせず、内心首をひねりながらも、前日、客人に粗相をしたメイド二人が問答無用で仕事を辞めさせられ、紹介状ももらえず放り出されたのを見ているだけに執事をはじめ使用人たちはきびきびと要望通りの働きをした。
後は避難所をどうするのか、仮設の住処、家畜たちの避難、火事への備え、治療、経済的支援など思いつくことをメモ書きにした。何より、領民にどう伝えればいいのかが悩みの種だ。これらは領主子息のニコラに相談するしかない。
三日後、ニコラが戻ってきた。大勢の騎士や兵士らを引き連れて。
ニコラとともに先頭で馬上の人となっているのは何と第二王子のエリックだった。
「第二王子殿下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます。」
「久しぶりだな、モーリア侯爵令嬢。この間は世話になった。」
ニヤッと笑うエリックにシャルロットは内心びくっとした。
ジェラルドも何も言っていなかったし、あの事は知られているとは思っていない。ニコラは確かに第二王子に恩を売っているといっていた。
しかしどう伝えたのだろう?まさか私のことをあっさり打ち明けたのか?いや、このニコラがそんな軽々しく言うはずがない。
「いいえ、大変お見苦しいところをお見せしまして申し訳ありませんでした。」
「私の為に倒れたのだろう?身を挺してくれたこと感謝している」
「な!!」
今度こそ驚きで声が出てしまった。エリック殿下は私の能力を知っているのだ。思わず、ニコラを見た。
「申し訳ありません、シャルロット様。」
「いや、ニコラを責めないでやってくれ。私が推論でたどり着き、あとは脅して君の父上に話を聞いたのだ。」
「お父様に?!お父様は何も・・・」
「ま、思うことはいろいろあると思うがまずは緊急事態だ。今回のことを思えば、私が知っていてよかっただろう?君たちだけでは限界がある。」
確かにエリックのいうとおりだ。これだけの人手と物資を大量に積んできてくれたのだ。
エリックはシャルロットとシリルのメモも参考にしながら、側近に準備と兵たちの振り分けを指示した。
「領民には私が説明しよう。」
「ありがとうございます。ですが・・・殿下は一度会っただけの私のことを信用してくださるのですか?今までは確かに予見通りのことが起こっておりました。でもこんな・・・」
「こんな大ごとになって怖くなってしまったか?」
「・・・はい。もし何も起らなかったら・・皆様に申し訳が立ちません」
「ご令嬢は・・・いや、シャルロット嬢と呼ばせてもらってもいいか?」
「はい。もちろんでございます」
「これまでそれで幾人もの命を救ってきたではないか。私も君がいなければここにはいなかった。私はシャルロット嬢を信用しているよ。でもそもそも予見が外れようと当たろうと構わない、いずれ来る大地震への備えになるし、訓練になるだろう。」
「殿下・・・」
なんて温かい言葉なのだろう。シャルロットに何も責を求めず、それでいてシャルロットの言を信用し、王族として対処をしてくれる。
日頃、ニコラが次期国王にふさわしい器だと尊敬し、忠誠を捧げているというだけのことはあるとシャルロットは思った。
火事が起こった時のためにそこら中に水を汲み置きするようにも言っておいた。
案は二人でまとめ、実際はシリルが一人で屋敷中を駆け回り、使用人と交渉をした。
使用人たちは目的もはっきりせず、内心首をひねりながらも、前日、客人に粗相をしたメイド二人が問答無用で仕事を辞めさせられ、紹介状ももらえず放り出されたのを見ているだけに執事をはじめ使用人たちはきびきびと要望通りの働きをした。
後は避難所をどうするのか、仮設の住処、家畜たちの避難、火事への備え、治療、経済的支援など思いつくことをメモ書きにした。何より、領民にどう伝えればいいのかが悩みの種だ。これらは領主子息のニコラに相談するしかない。
三日後、ニコラが戻ってきた。大勢の騎士や兵士らを引き連れて。
ニコラとともに先頭で馬上の人となっているのは何と第二王子のエリックだった。
「第二王子殿下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます。」
「久しぶりだな、モーリア侯爵令嬢。この間は世話になった。」
ニヤッと笑うエリックにシャルロットは内心びくっとした。
ジェラルドも何も言っていなかったし、あの事は知られているとは思っていない。ニコラは確かに第二王子に恩を売っているといっていた。
しかしどう伝えたのだろう?まさか私のことをあっさり打ち明けたのか?いや、このニコラがそんな軽々しく言うはずがない。
「いいえ、大変お見苦しいところをお見せしまして申し訳ありませんでした。」
「私の為に倒れたのだろう?身を挺してくれたこと感謝している」
「な!!」
今度こそ驚きで声が出てしまった。エリック殿下は私の能力を知っているのだ。思わず、ニコラを見た。
「申し訳ありません、シャルロット様。」
「いや、ニコラを責めないでやってくれ。私が推論でたどり着き、あとは脅して君の父上に話を聞いたのだ。」
「お父様に?!お父様は何も・・・」
「ま、思うことはいろいろあると思うがまずは緊急事態だ。今回のことを思えば、私が知っていてよかっただろう?君たちだけでは限界がある。」
確かにエリックのいうとおりだ。これだけの人手と物資を大量に積んできてくれたのだ。
エリックはシャルロットとシリルのメモも参考にしながら、側近に準備と兵たちの振り分けを指示した。
「領民には私が説明しよう。」
「ありがとうございます。ですが・・・殿下は一度会っただけの私のことを信用してくださるのですか?今までは確かに予見通りのことが起こっておりました。でもこんな・・・」
「こんな大ごとになって怖くなってしまったか?」
「・・・はい。もし何も起らなかったら・・皆様に申し訳が立ちません」
「ご令嬢は・・・いや、シャルロット嬢と呼ばせてもらってもいいか?」
「はい。もちろんでございます」
「これまでそれで幾人もの命を救ってきたではないか。私も君がいなければここにはいなかった。私はシャルロット嬢を信用しているよ。でもそもそも予見が外れようと当たろうと構わない、いずれ来る大地震への備えになるし、訓練になるだろう。」
「殿下・・・」
なんて温かい言葉なのだろう。シャルロットに何も責を求めず、それでいてシャルロットの言を信用し、王族として対処をしてくれる。
日頃、ニコラが次期国王にふさわしい器だと尊敬し、忠誠を捧げているというだけのことはあるとシャルロットは思った。
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