攻略本片手に異世界へ 〜モブは、 神様の義祖母 〜

出汁の素

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少女編

第6話 週末ピクニック

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「はい。ベルベット嬢、解説ありがとうございました。今日の講義はここまでです。下期の講義では、1本はアンケートを受けて、講義の内容を決めようと思ってます。レベルは無視しますので、テーマを難しくするとついて来れない方も出ますが、必修では無いので、気にせずやらせて貰います。テーマは、来週アンケートを取ろうと思いますので、テーマとやって欲しい内容をレポート一枚以内に纏めて、名前と肩書き、生徒さんは生徒番号を書いて提出して下さい。では、お疲れ様。」

 そう言って、講堂出た。

「みんな、馬車に直行するわよ。」
「あれ、ジェシカさんって、馬車持ってたっけ?」
「嫌だわ。馬車は、何十台も持ってるわよ。一番良いのを用意したわ。」

 そう言って駆け足で、主任教授用の馬房に行くと、堅牢だがこじんまりとした馬車にと、凛々しい軍馬が二頭用意してあった。御者は、アレックス様のところのバーレールさんに来てもらった。

「へ?ジェシカさんにしては、地味な。」
「地味って、マジかジェシカこれ。」
「お兄ちゃんは分かったわね。」
「みんな乗ってみて。」
「みんなって、この大きさだと4人が限界、」

 そう言って入ろうとした、リーディング殿下が固まった。

「魔導具技術の全てをぶつけて作った自信作よ。馬車の中は外の100倍のスペースがあるの。3部屋あるから、男女分かれて、着替えて、着替え終わったらブリーフィングよ。中央の部屋に集まってね。着替えは、名前が書いたクローゼに入ってるから。」
「で、ジェシカさん、何処に行くの?」

 クレス様は、まだ聞いてなかったらしい。アイルお兄ちゃん大丈夫か?ここは軽く。

「あっ。迷宮よ。」
「へ?」
「クレス様、ジェシカ様がいれば大丈夫よ。低い階なら私や、アーサー様でも余裕だし。」
「僕は?」
「アレックスさ~ま。私よりレベル低いわよね~。」
「ベルベット。レベルを過信すると、」
「そう、過信すると死ぬわよ。でも、この8年死ぬ気で修行したの、知ってるじゃ無いの。アレックス様だけじゃ無いわよ。」
「それは、よく分かってるよ。レベルのこと、」
「アレックス様安心して下さい。そんなやりとりする余裕なくなるまで、しごきますから。」
「へ?」

 アレックス様が固まった。

「では、皆さんお着替えよ~。」

 みんな、私が用意した武具を身につけた。計測がうまくいき、バッチリサイズだった。

「ジェシカ、これにいくら使った?」
「うーん。多分、市価だと、ハーバードお兄ちゃんの国の国家予算より多め。全部私がゲットしたものだからなただだけどね。」
「恐ろしい妹だ。」

 目をピカピカさせて、クレス様が

「これって、」
「あげません。お姉ちゃんなるまではね。」
「じゃあ直ぐにでも。」
「おい、ジェシカ。」

 と、ふざけていると、みんなが出てきた。

「集まったわね。」
「ジェシカさん。この装備って。」
「そう。ベルベット様とアーサー殿下は、8年前の装備をサイズアップさせたもの。他は同クラスかな。加速する靴は機能を増やして、アイテム回収用のアイテム袋はマジックバックになっているわよ。あと、ベルベット様は、胸が大きくなりすぎ。もう、アレックス様って。」
「は?何。」
「話をはじめろ。」
「はーい。」

 そう言って、説明を始めた。

「今日から潜る迷宮は、帝都四大迷宮の一つ。神都の大迷宮です。一応、私のパスで入れる様になってます。神都の迷宮は、四大迷宮の中で最も宝玉が出る迷宮で有名だが、同時に幽霊系の魔物が大量に発生することでも有名であり、基本的には、高級軍人がトレーニングの為に入るとことと、神殿の修行のみに開放されている。実態は、高級軍人や、神官達の小遣い稼ぎの場となってます。目標は、この迷宮の現役最高到達点24階の突破です。そのために、皆さんの武器と、防具には最高レベルの聖属性加工をしました。」
「これって。」
「多分、20階位までの霊体なら、かすっただけで、消滅します。」
「はぁ。」

 そう言って、24階までのルートと、魔物の特徴を説明した。

「ジェシカさん。つきましたぞ。」

 バーレールさんが、キャビンの扉を開けた。

「ありがとうございます。バーレールさん。宿を取ってあるので、2日後の昼までゆっくりしててください。」
「ありがとうございます。」
「この袋にお小遣いと、宿のチケットが入ってますので。」
「いつもありがとうございます。」

 そう言って、袋を渡すと、みんなで外に出た。そこは、檻で扉を閉ざした迷宮の入り口だった。

「こんな小さい馬車に詰め込んでくるなんて、何処の貧乏人だ。」

 鎧を着た目つきの悪い騎士が出てきた。鎧は神殿騎士団のものだ。

「貧乏人だと、何処の下士官風情だ。」

 私は、面倒なので上からモードで言い放った。

「なんだと、餓鬼が、このオフレッサー大尉に向かって。」
「は?それが准将に対する態度か!」
「准将?」

 オフレッサー大尉が混乱していると、

「師匠、師匠が出ていっても、准将って信じないですよ。」
「そうですわ。私ですら少佐ですもの。」

 アレックス様と、ベルベット様が降りながら歩いていく。オフレッサー大尉は目を見開いて、

「あっあれは、アレックス少佐と、ベルベット少佐の最若手佐官コンビ。最強カップル。」
「カップルって。」

 アーサー殿下が帝室の家紋を着けた軽鎧を着て降りてきた。

「皇子様?」

 後から、リーディング殿下達も出てくると、

「皇子様がお二人。てことは、こちらは本当に。」
「あぁ、准将閣下だよ。」

 私は、自分の馬車が馬鹿にされたことをまだ根に持ち、

「君の言う貧乏人達だよ。お金持ちのオフレッサー大尉殿。我々貧乏人だから、お小遣い稼ぎに迷宮に入って良いかな?」

 オフレッサー大尉は、大きく頭を下げて、

「申し訳ございません。どうぞお通り下さい。」

 と、通してくれた。周りの兵士達はポカンと見ているだけだった。やな気分だな。とりあえず、登録していないクレス様を冒険者として登録手続きをして迷宮に入った。

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「ここは神都の大迷宮。ある種聖属性の武器をどれだけ用意出来るかで難易度が大きく変わる変わった迷宮よ。分かってる限り、この迷宮は、石の床に石の壁のピュアな迷宮スタイルです。楽しんで行きましょう。」

 そう言って、私先頭で進むと、早速スライムが見えた。

「クレス様。腕前を見せて下さいますか?」
「はい?」
「スライム倒してくれますか?」
「はい。」

 そう言って、クレスさんは、スライムをプチッと倒した。

「倒すと魔石とかがドロップするので、お預けしているアイテム袋に入れてください。」
「はい。」

 そう言って、魔石とアイテムをしまった。

「基本、倒す、ゲット、倒す、ゲットを繰り返していきます。では進みましょう。今、6時なので、今日中に10階まで行きます。走るので、ついてきて下さい。魔物は見つけ次第殲滅。アイテム袋にピンクの紐が付いているので、引っ張って下さい。倒した人が倒したものをゲットできる様になっています。基本早い者勝ちです。では、最短コースを行きますので、ついてきて下さい。遅れた場合は、声を上げること、周りも気をつけて下さい。」

 私は、走り始めた。基本先頭が魔物を最も倒せる。一階はスライムだらけだが、わざとモンスタールームを通り、みんなの腕の確認と、迷宮を慣らす様にした。30分ほど走って2階への階段についた。

 2階には、スライムの他に、幽霊が出始める。はじめなので、雑魚だ。普通の魔法や、攻撃で倒せる。クレスさんは、キャッキャッ言いながら、走っている。幽霊が怖いらしい。実に女の子っぽい。私や、ベルベット様は大丈夫なんだろうか?ゲームのベルベット様は、暗く、活発性ゼロで、武器も握ったことが無いような令嬢だったのに。今や、帝国を代表する姫武者だ。多分20階位迄なら単独で余裕で踏破するだろう。でも、顔色は良く、健康的で、旦那もいるし、大丈夫なんだろうな。それに引き換え。ショボンとしながら、ストレス解消と魔法を撃ちまくった。
 そんなこんなで、3階に着いた。3階は、ゴブリンも出てくる様になる。降りて2分後にゴブリンの集団にあった。

「クレス様、今回はお一人でゴブリンの集団を殲滅して下さい。」
「えっ、はい。」

 クレス様は、ゴブリンの1人と対峙して、正面から斬りつけた。剣がサクッとゴブリンの武器を切り裂き、鎧を切り裂き、胴を真っ二つにした、傷口から真っ赤な鮮血が飛び散り、胴体の半分が地面に落ちた。

「えっ、キャー。」

 と、クレス様は、悲鳴を上げた。

「やばい。」

 私は、魔法で、一瞬のうちに、ゴブリンの集団を殲滅し、クレス様のところに寄った。

「クレス、しっかりしろ。」

 と、私より一歩早くアイルお兄ちゃんが、クレス様をお姫様抱っこしていた。はやっ。

「クレス、大丈夫。俺がいるから、しっかりしろ、深呼吸だ。」

 と、お兄ちゃんがクレス様に声をかける。人型魔物を初めて倒した時ショックで気絶したり、色々な症状が出るが、クレス様の症状は強烈だった。これは超えないといけない壁であり、貴族として生きていく上で、人が目の前で死んでいく事態に遭遇することを避けるのは難しい。その中で、まともな指示が出せないと、死に繋がる。よく貴族の子供の先例として、ゴブリン退治をやるが、ダメな子かもしれない。私は、無詠唱で精神安定魔法をかけた。

「はー。はー。はー。アイルせんせい。はー。はー。」
「深呼吸だ、クレス。大丈夫だ。何かあっても俺がいるから。」
「はー。はー。落ち着いてきました。せんせい。」
「そうだ。立てるか?」
「もう少しこのままで良いですか?」
「大丈夫だ。」

 そう言って、私を見て、

「ジェシカ、抱っこしてこのまま行こうと思うが大丈夫か?」
「好きにして下さい。後、安定剤です。口移しでも何でもいいので飲ませて下さい。トラウマ抑制にもなりますから。」
「わかった。」
「わかったって口移し?」
「違うわ。」

 と言い、薬を飲ませ、アイルお兄ちゃんは、お姫様抱っこしたまま、走り4階に着いた。

 4階に降りた頃、

「アイル先生。落ち着いできました。1人でいけます。」
「そうか、」
「お兄ちゃん寂しそうに」
「おい。」
「皆さん、ごめいわくをおかけしました。申し訳ございません。」

 そう言って、クレス様は深く頭を下げた。

「クレスさん。誰でも、いや私や、ジェシカちゃんが特別で、普通令嬢やってて、ゴブリン倒せば卒倒しますわ、意識があっただけでも自慢出来ますわよ。」
「ベルベット様、私は、令嬢じゃわいよ。」
「令嬢じゃない?そうよね。さしずめ魔王様よね。」
「おいおい。」

 と、みんながどっと笑った。

「ジェシカ先生。お願いがあります。」
「クレス様。」
「私は、皆様より戦闘に慣れていないし、ゴブリンを倒して、卒倒しそうになるほど経験がありません。皆様に足手まといです。ですから」

 そう言っている途中で、私は、人差し指でクリア様の口を押さえた。

「クレス様、貴方が戦力にならないなんてみんな分かった上で、来てます。だから気にしないで下さい。クレス様はご理解されてないかもしれませんが、この装備でこのメンバーなら、砦の一つや二つ落とせる戦力です。アイルお兄ちゃんはともかく、リーディング殿下は、3年前に初陣を既に済まされた、後多くの戦果を上げられ、大佐に昇進されてます。アレックス様と、ベルベット様は、リーディング殿下の戦に参戦されると共に、正騎士試験もパスし、既に少佐。最強カップルと呼ばれています。アーサー殿下は、5年前に初陣、海外遠征等も済まされ、既に私と同格の准将です。まあ、皇族ですから、話半分で良いですが。」
「何故僕ばかり」

 と、若干アーサー様が拗ねた。

「と、軍部若手のエリート集団で戦慣れしている者たちが、行く前に戦力分析しないと思いますか?」
「ですが、」

 アイルお兄ちゃんが入ってきた。

「クレス、大丈夫だ。自分を信じろ。」
「でも、」

 アーサー様がカッコつけがてら入ってきた。

「クレスさん。自分を信じられないんですか?」
「はっ、はい。」

 クレス様は暗く答えた。

「では、アイルさんを信じられますか?」
「はい。当然です。」

 クレス様は明るい表情で答えた。

「では、クレスさん、貴方は自分を信じなくて結構です。ただ、アイルさんを信じて下さい。貴方を信じている、アイルさんを信じて下さい。」

 シーン。

「ちょっとダメです。ここは、まあ、所謂、「お前を信じろ。俺が信じるお前を信じろ。」、です。お兄ちゃん、復唱。」
「お前を信じろ、俺が信じるお前を信じろ。」

 と、私の指示に、棒読みでお兄ちゃんが答えると、クレス様が、

「はい。信じます。」

 と、目を輝かせた。恋って盲目ですね。

「今回は無理しなくて良いですからね。」

 と、優しく声をかけると、

「大丈夫です。何度でも戦って克服します。」

 そう言って、ゴブリンの群れに突っ込んでは、悲鳴をあげ、突っ込んでは吐きを繰り返すこと20回、何とか顔を引きつる程度まできたところで、5階の階段までたどり着いた。

「次は第5階層、降りたら直ぐに門があり、その門の中に階層主がいます。通常、ゴブリンナイトと、ゴブリンアーチャーや、ゴブリンソルジャー等の分隊規模とゴブリンがいるばずですわ。」

 そう言って階段を降りると、門があった。

「中を確認するわよ。」
「はい。」

 アーサー殿下と、アレックス閣下が扉を開けると、大量のゴブリンの霊が飛び回っていた。

「えっ。」

 私は、固まり、

「ホーリーレイン」

 と、呟いた。

 その瞬間、部屋中が光に包まれ、浄化された。大量の魔石やアイテムを取得したが、

「さっさと次にいきましょう。」

  そう言って、次の階層に向かった。6階は、ゾンビが出てくる。ゾンビは、言うなれば死体だ。人間風の。ゴブリンを殺すよりも10倍グロい。迷宮なので本物の人間の死体ではないが、そんなのは関係なくグロいものはグロい。私は、単にやなので、攻略本のマップでこの階層には今誰もいないことを確認し、階層全体に向けてホーリーレインの広域版魔法であるワイドレンジホーリーレインを唱えた。元々大地を浄化する為のもので威力は相当弱いが、聖属性に弱い魔物であればそれなりにダメージとなる。今回強力なジェシカ×下級魔物である、一瞬で消滅させた。

「あの、訓練しなくていいのですか・・・。」
「地上でゾンビに会う事なんてほぼ無いから良いでしょう。ホーリーレインを今度教えてあげるから。」
「はっ、はい・・・。」

 クレス様は、しょうがなく頷いた。ワープ石に魔力を通し登録した上で、最短コースで会談に向かった。

 7階に降りた後も、即座にワイドホーリーレインを唱えた。この階層には、ゾンビ系、幽霊系以外の魔物もいるが、狼系下級魔物ワイルドウルフの群れ、ゴブリンのパーティー、人型のスライム系魔物に出会ったが、クレス様中心に撃破して、サッサと8階に進んだ。

 8階は、少し冷えていた。

「とりあえず、ワイドホーリーレイン。」

 そう唱えると、いつもの様にずしっと、アイテム袋に一瞬重さを感じた。

「みんな、はじめに説明したと思うけど、ここにはアイスゴブリンが出てくるから、アイスゴブリン自体は雑魚だけど、歩く場所を凍らせるので、滑って転ばない様に気を付けてね。」

「そんなの、余裕ですよー。」

 と、アーサー殿下が、凍った場所をツル―っとスケートの様に滑っていく。順調に滑っていくと思うと、態勢を崩し、

「おーっと。セーフ」

 アーサー殿下はこけずなんとか堪えた。

「ちなみに、滑るから危ないのでなく、滑るところと滑らないところがまばらなので、態勢を崩しやすく危ないから気を付けて下さいね。」
「はい。」

 アーサー殿下は素直に頷き、みんながどっと笑った。この階層の攻略は簡単だった。ゾンビ系、幽霊系はいないので、とりあえず、アイスゴブリンが現れ次第ファイヤーで殲滅していくそれだけだった。アイスゴブリンの群れが4つ、ワイルドウルフの群れを2つ倒したところで、9階への階段にたどり着いた。

 9階は、逆に少し熱い。


「とりあえず、ワイドホーリーレイン。」

 そう唱えると、いつもの様にずしっと、アイテム袋に一瞬重さを感じた。

「みんな、はじめに説明したと思うけど、ここにはファイヤーゴブリンが出てくるから、ファイヤーゴブリン自体は雑魚だけど、歩く場所を燃やすので、やけどしない様に気を付けてね。」

「そんなの、余裕ですよー。って、そんなわけあるか~。」

 と、アーサー殿下の一人ボケ突っ込みで白けたところで、

「と、アーサー殿下が寒くしてくれたところで行きますか・・・。」

 そう言った先の道は、ファイヤーゴブリンの影響で道が燃え盛っていた・・。この火自体は魔法の一種なので、酸素を燃やしている物ではなく酸欠にはならないが、歩くにはちょっとという感じである。

「単なるワイルドレイン」

「えっ・・・。」
「何これ・・・。」

 私の唱えた魔法は、ワイルドホーリーレインのホーリーを取った魔法で、単に物理的に雨を降らす魔法であるが、みんなが驚いたのは、狭い地域ではウォーターの魔法で水は出せるが、消費魔力に比して負担が大きいし、それなりの魔法の知識(魔恵)と、訓練による魔錬が必要となる上、物理的に物を発生させる為、加えて極めて複雑な魔法として知られている。それを広範囲にそれなりの量の雨を降らすのである・・、みんな目が点になるのも無理はない・・・。

「あっ、これ?ローデシアにいたとこに、水不足だから、魔導具で対応してたけど、緊急時用に発明したの・・。てへ。」
「これを発表は・・・。」

 リーディング殿下の質問がごもっともだが・・・。

「しないよ・・・。だって、これって、普通の宮廷魔導師が唱えても速攻で廃人になるほどの負荷がかかる魔法だよ。」
「一瞬で、廃人・・・。」

 そうだ、レベルがゆうに400を超え、神の使途で更に5倍つまり、魔法力が常人の200倍以上のあり、雨の原理、水の構造、この魔法の原理を理解し魔恵が極めて高い私だからノーストレスに近い形で出来るが、普通の人だとダメになっちゃうタイプの魔法である。

「そう、唱えられるのは、私の他には、ハーバードお兄ちゃんがせいぜい1日2発位。アイルお兄ちゃんだとレベル上げが足りないので無理。ジェーンお姉ちゃんだと、限界無さそう。お母さんは多分無理ってやらなかったし、お父さんには理解できなかったから無理だった・・。」
「はぁ・・・。理論だけでも教えてくれない?」

 アーサー殿下が言ってくると

「リーディング殿下も、アーサー殿下にもお教えはできますが、レベルを200超えるまでは絶対に唱えさせません。」
「200って、後100弱か、頑張るか・・・。」
「アーサーってそんなレベル高いの・・。僕80しかないから・・・。」
「リーディング殿下、その歳で80って、凄いんじゃないんですか?」

 クレス様はそういっても。

「でも、アレックスや、ベルベットは、150位だぞ・・・。」
「はい?それって歴戦の騎士レベルじゃ・・・。」
「クレス様だから、このパーティーなら、現状の最高到達点は簡単に超えないといけないんですよ・・・。」
「はぁ、それで、本当はこれの火の道ってどうクリアするんですか・・。」
「まぁ、フリーズで冷ませば消えるよ・・・。魔法を連発できるレベルの能力は必要ですけど、普通にこの階層まで来れるパーティーなら可能でしょう。」
「はぁ」

 そのやり取りの後、最短コースで階段に向かい、9階に降りた。

 9階は暗かった・・・。

「ワイドホーリーレイン」

 そうやっていつもの様に浄化した。

「みなさん。ライトの魔法は使えますか?」
「はーい。ジェシカしぇんしぇい。」
「いいへんじね。あーさーくん」
「はい。」

 って、アーサー殿下とふざけながら、ライトの魔法をみんな唱えた。

「あの、じぇしかしぇんしぇい。」
「はい、あーさーくん」
「いまになっておもったんですが、なんでラビリンスってあかるいんですか?」
「それはね・・・・。」
「それは・・・。」
「そっ、それはね・・・・。」
「そっ、それは・・・。」
「なぞなの・・・。」
「えっ・・・。」
「このような、ピュアなタイプの迷宮は、壁や床自体が光を出していて、基本的に影が見えなくなっているんだけど、何故光るか、そのエネルギー源は何か不明なの・・・。」
「えー。しぇんしぇい。これってしけんんいでましゅか?」
「うーん。あーさーくんが受ける、中央学院への入試には出さないわよ。私も問題を作るけど、簡単なものにする予定だから・・・。」

 というやり取りを見ていたアイルお兄ちゃんが

「ジェシカ、試験の内容って言っていいのか?」
「問題まだ作ってないし、テスト範囲内から、ここを出しますって言わなきゃ良いって聞いているよ。試験委員以外はすべての問題を見ることなしい。私のところは、5問作れって言われたし。」

 アーサー殿下が慌てた感じで、

「ジェシカさんって、来年中央学院に入学されないのですか?」
「えっ、だって、私先生よ、先生が正規の生徒になれないわよ。卒業資格を入学試験受けたときに貰っちゃったし。」
「えっ、そうなんですか。」
「大丈夫、聴講生制度(仮名)を作る方向で、来月の主任教授会の議題になってるから、美少女天才魔導師のこの私と一緒に机を並べられるわよ。」
「そうか、ドラまたか?」
「私は、胸があるから、ってアーサー殿下、私の胸、前に楽しんだでしょう。」(ウフッ)
「えっ、あっ、ジェシカさんは、違います。はい。」

 ごつん。

「いったーい。」
「純真な、アーサー殿下を弄んじゃダメ。」
「お兄ちゃんごめんなさい。」

 お兄ちゃんに怒られちゃった。

「でだ、魔物いなさすぎないか?」
「あぁ、ホーリーレインで、殲滅したから。」
「殲滅?」
「はい。いないはずですよ。幽霊系だけの階層ですから。」
「はぁ。」

 と、階段までたどり着いた。

「で、眠くなってきたから、速攻倒して、ワープ石で地上に戻り、ホテルに泊まろう。通常は、多分、ファイヤーゴブリンと、アイスゴブリンの山だけど、誰いく?」
「私と、アイル先生で行きます。」
「はーい。2人で行ってください。」
「クレス、大丈夫か?」
「大丈夫です。行きましょう。」

 と、扉に手をかけた時に

「まって、クレス様これをお貸しします。」

 と言って渡したのは、バルカン。クズ魔石を入れてその魔力を使い切るタイプ。

「お兄ちゃんも。お兄ちゃんのは炎、クレス様のは氷属性の弾が出ます。」
「火と水でなく。」
「そうです。強力な武器なので、返して貰いますが、バンバン打って下さい。」

 と、扉を開けると、ファイヤーゴブリンと、アイスゴブリンでなく、ファイヤーオーガと、アイスオーガの群れだった。

「とりあえず。」

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 と、バルカンで撃ちまくり、オーガを倒しまくった。


 ハーハーハーハー

「殲滅終了。」
「何故オーガ?」

 と、疲れ切ってる2人の隣で

「ちょっと調べる必要がありそうだな。」
「そうですね」
 
 と、私とアーサー殿下は、周りを調べ始めた。部屋の片隅には、多くの死骸が転がっていた。元々利用者か極端に低い迷宮だが、相当な量の骨だ。今回の階層主撃破でクリーンになるから、相当な期間突破されてなかったようだ。

「まさか、」

 私は、部屋の端で、召喚魔法陣を見つけた。これは、例の8年前と同じタイプの魔法陣だった。

「あー。」

 私は皆んなに仔細を話し、とりあえず11階に降りてワープ石に登録し、ワープ石を使って、入口に戻った。外は深夜で、入口には警備兵が立ってるだけだった。私達は、とりあえず、宿に向かい、それぞれ1人部屋に入りゆっくり寝た。私は、神像を出して日課のお祈りを済ませて、片付けると、リーゼンハルト殿下に一本メールを送り、寝ることにした。


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「ジェシカ、起きなさい。」

「うぅ、何お姉ちゃん。」

「何お姉ちゃんじゃないでしょう。」

 と、私が起きるとお姉ちゃんがたっていた。

「何でお姉ちゃんここに?」

 そう、お姉ちゃんは基本実家のはずだ。

「何故って、ここの宿、私の掌管なのは知ってるわよね。」
「うん。うちの宿にお金落とすように、泊まったけど。」
「深夜に、若い男女が皆んな疲れ切って帰ってきて、そこにオーナーの娘がいたらどう思う?即報告だろうが。深夜に連絡がきて、お父さんが出るのを抑えて、私がすっ飛んできたのよ。」
「あっ、ごめんなさい。」

 私は思わず謝った。

「で、どうゆうこと。」
「カクカクシカジカで、神都の大迷宮に潜ってるの。」

 お姉ちゃんは、少し悩んで、

「わかったは、私も一緒に潜るわ。私の武具出して。」
「はっへ?」
「いくわよ。」
「はい。」

 私達は、アイルお兄ちゃんに置き手紙を残して、入口に向かった。まだ日が昇る前だ。

「入るわよ。」
「はっ。」

 私が階級章を見せすごむと。敬礼をし、入れてくれた。

「速攻で、11階をめざすわよ。」

 そう言って、私は、お姉ちゃんの最高速に近いスピードで最短経路を進み、お姉ちゃんも着いてきた。雑魚は全てお姉ちゃんが魔法でやっつけて行った。それで5階までたった40分で着いた。

「じゃ、扉をあけるわよ。」

 扉を開けると普通にゴブリンのパーティーだった。お姉ちゃんには雑魚でしかなく、瞬殺した。

「次、」

 階段を降りて、ワープ石に魔力で登録すると。

「ワイドホーリーレイン」

 お姉ちゃんが、ワイドホーリーレインを使った。お姉ちゃんなら、ワイドホーリーレインを日に10発程度使っても大丈夫だ。

「行くわよ。」

 そう言って、高速で階段まで進んでいく。10階の扉までは、約30分だった。

「開けるわよ。」

 開けると、ファイヤーゴブリンと、アイスゴブリンがそれぞれ12匹づついた。

「やー。」

 お姉ちゃんにとっては秒殺で終わった。

 次の階層に向かい、ワープ石に魔力を登録してワープ石で外にでると、日の出の時間だった。

 「あれっ、早いですね。もしかして6階まで行かれたんですか?驚異的なスピードですね。1時間半たってませんよ。」
「いえ11階よ。」
「へ?」

 警備兵がポカンとしている中、私達は、宿に戻った。


-----------------------------------------------------------------------------------------------------

「アイル、起きなさい。」

「うぅ、何お姉ちゃん。」

「何お姉ちゃんじゃないでしょう。」

 私と同じ反応だ。。

「何故って、ここの宿、私の掌管なのは知ってるわよね。」
「うん。ジェシカがとってくれて。」
「深夜に、若い男女が皆んな疲れ切って帰ってきて、そこにオーナーの息子がいたらどう思う?即報告だろうが。深夜に連絡がきて、お父さんが出るのを抑えて、私がすっ飛んできたのよ。」
「あっ、ごめんなさい。」

 アイルお兄ちゃんも思わず謝った。

「で、ジェシカに吐かせたわよ。彼女を紹介しなさい。」
「えっ、ジェシカ、裏切り者何故、クレスのこと。」
「クレスって言うのね。ゆっくり聞かせてもらうわ。迷宮探検は長いんだから。」

 アイルお兄ちゃんも迂闊に、クレスお姉ちゃんはしつこいからね。

「でもでも、迷宮は、昨日11階まで潜ってそこからだから、お姉ちゃんが一緒には、」
「あっ、それなら、今11階まで潜って来たわ。1時間半かかっちゃった。もう少し鍛えないとね。」
「へ?」
「じゃ、クレスさんを紹介してね。」
「あー。」

 アイルお兄ちゃんは、襟首掴まれて、私は、お姉ちゃんをクレス様の部屋に連れてった。

 トントン

「はーい。」

 と、扉を開けると起きたばかりでアンニュイ感じのクレス様がいた。

「はへ?何故アイル先生が掴まれているの?もしや、悪の組織、私が倒して、」

 と、蹴りかかったのを

「やめんか、」

 と、アイルお兄ちゃんの盾で防いだ。無防備なまま、レベルアップで調整しきれない強力な蹴りを受けて、死にそうになっている。頑張れお兄ちゃん。

「アイル先生、何で。可哀想に、」
「お前が蹴ったからだろうが、」
「で、どちら様でしょう。」

 ビリビリ光が見える。

「アイルの姉のジェーンよ。」
「お、お姉様。」
「アイルがお世話になっているそうだね。」
「いえいえ、私がお世話に、将来も?」
「将来はさておき、貴族のお嬢様と、うちの弟が釣り合いか知らんが、よろしく頼むわ。」

 お姉ちゃん、いつもは優しいけど、悪ガキとか締める時超怖かったからな~。

「ところで、ジェーンお姉様って、炎帝ジェーン様?」
「その名で呼ぶな。」

 炎帝?

「クレス様、炎帝って。」
「帝都中央学院、歴代6帝と呼ばれる伝説の卒業生がいるの。」
「6帝?」
「250年前の雷帝と呼ばれたラバード会戦、ローボス電撃戦の英雄ヘブラーシェ将軍から連なる、伝説的な卒業生がいるの。」
「それで、」
「190年前の氷帝バジェット・ハイムサーディシュ公爵、150年前の嵐帝リショード皇帝、130年前の暴帝ブシロード将軍、あと、あなたのお兄様魔帝ハーバード公、炎帝ジェーンお姉様。」
「ハーバードお兄ちゃん以前と100年以上空いてるし、お姉ちゃんだけ何故お姉様?」
「それは……」

 お姉ちゃんが、肩を震わせながら

「それはな、私にファンクラブがあって、そいつらが全員女だったからだ。6帝も、そいつらが作ったものだ、奴らは締め上げても締め上げても何故か喜んで、何度もよってくる。最低な奴らだ。」
「お姉ちゃん、だから卒業後、学院から離れたの?」
「商売をしたかったのは事実だが、それが最大の原因だ。クレス、お姉様って呼んだら、あの世に送るからな。」
「はい、本当の妹になったら?」
「うーん。そうなったら許す。」
「アイル先生、即結婚です。」
「何を言ってるんだ。クレス。」
「何で、ジェーン様の弟だと教えてくれなかったんですか?」
「えっ、ジェシカ以外、誰の兄弟か言ったことないよ。」
「そう言われると、そうですね。」
「えっ、ハーバードお兄ちゃんは、ほぼ同じ顔で、何故か皆んな知ってたから、言う必要無かったし。」
「私は、ハーバードと、兄妹って、言ったことないし、聞かれなかったから学院で誰も兄妹って知らないんじゃない。私の彼氏も含めて。今更だし。」
「えっ、彼氏さん知らないの。」
「多分。兄がいるとは知ってるけど、その頃、旅に出てるとしか言ってないから、冒険者だと思ってると思うよ。」
「そうなの。それより、そろそろご飯を食べて、迷宮に行きましょう。」
「そうだね。そこでゆっくり聴きましょう。」

 食堂に降りていくと、殿下達が食事を取っていた。

「あっ、ジェーンさん。」

 そう言って、挨拶するアーサー殿下に続いて、アレックス閣下が、

「お久しぶりです。ジェーンさん。」

 と挨拶したが、ベルベット様は、

「あ、あぁ、ジェーンお姉様~。」

 と、壊れ掛けている。どんな魅力だ。

「ベルベット様?お姉様とは?」
「いやー。あの時に、命を守って頂いたので、姉妹みたいなものですので、お姉様と、」
「い、意味がわからないんですが。」
「良いんです。貴族なんて平民にとっては意味がわからないものです。ですから、貴族的にお姉様で正解なんです。お姉様。」

 やっぱり壊れている。

「私も貴族だから良いんです。お姉様。」

 あっ、クレス様が参戦した。あの世に送られても知らんぞ。

「どうでも良いけど、ちなみに本当の妹の私はお姉ちゃんなんだけど、」

 何故か空気が凍った。何故?

「お姉ちゃん、何てこと言うんですか?妹さんとはいえ、あまりにも馴れ馴れしい。」
「そうです。お姉ちゃん何で、何で羨まし、馴れ馴れしい。」

 何故か責められる私。面倒くさくなったので、

「お姉ちゃん、とりあえず、締めますか?」
「だな。」
「どうぞ。」
「これは?」
「伝説のハリセンと言う折檻グッズです。」

 と、ハリセンをお姉ちゃんに渡した。

 バン バン

「「ありがとうございます。」」

 と、2人が何故か頭を下げた。

「で、お姉様、今日は?」
「あっ、アレックス様。昨日深夜に、オーナーの息子が可愛い娘さんを、疲れ切って形で連れ込んだって、連絡がきて、お父さんが出るのを抑えて、私がすっ飛んできたのよ。」
「お姉様、ご迷惑をお掛けしてすみません。」

 と、言うやり取りを普通にやってることに、あたりが鎮まり帰った。

「何故、アレックス様がお姉様と、」
「何何?何かあったの?」
「アレックスだけずる~い。」

 と、三者三様の反応をして見せると、

「あっ、だって、彼の弟だし、」
「兄が、お姉様を紹介した時はびっくりしました。」
「私の彼は、ロビンソン・フランドル公子。フランドル公爵の長男よ。」

 マジか?フランドル公許したのか?

「あの、フランドル公爵閣下が結婚を許されたの?」
「いや、アレックス様が、思いの外成長されたので、スペア機能をアレックス様にして、ロビンは、非公式に勘当されたよ。あくまで体面があるから非公式にだけどね。」
「婚約者はいなかったの?」
「その、婚約者が他に彼氏を3人も作って人情沙汰になったの。その時点で、フランドル公爵から、婚約者もまともにコントロール出来ないのかって、勘当されて、落ち込んでたから相談に乗ったら懐いちゃって。」
「そうだよな、弟に家督を奪われ、スペア宣告された上で、婚約者にって、兄も辛いだろうな。」
「まぁ、彼を養う事くらい簡単だから良いんだけど、子供が出来た時までには、勘当を解いてあげたいわね。」
「うーん。多分出来るよ。」
「えっ?ジェシカ?」
「ちょっと待ってね。」

 と、私は電話を取り出し、電話をかけた。

「あっ、ジェシカですけど、」
「そうそう、朝からすみません。ご相談があって、」
「ロビンソン様の事で、」
「はいはい、実は、私の姉が、ロビンソン様の婚約者らしいんです。」
「そうそう、私も今知ったんですが、」
「私の兄がハーバード公で、商会とも間接的に」
「そりゃ親戚となれば。今は、姉にも詳しく話してませんが、今後私が色々有れば、姉に一部管理を、」
「アレックス様を助けたのもありますし、」
「じゃその借りを返すと言う名目で、そうそう、」
「話としては綺麗かと、」
「では、その方向で、」
「で、あの方面で可能性は、」
「そうですか、無いなら大丈夫ですね。では、そんな感じで、」
「ありがとうございます。アレックス様に代わりますね。」

 と、私は、アレックス様に電話を渡した。

「アレックス様、フランドル公爵です。」
「「「「「「は?」」」」」」

 皆んなが固まった。

「さあ、」
「はぁ。」

 と、アレックス様が電話に出ると、

「お父様。アレックスです。」
「はっはい。カクカクシカジカで、」
「えっ、わかりました。それで兄との仲を戻して頂けるので有れば。」
「兄がもうすぐ戻るので、その時にお連れします。」
「分かりました。」
「はい。では。」

 そう言って、アレックス様は電話を切った。

「お姉様、お父様が兄の勘当をを解くと。建前上は、僕を助けてくれた恩人と結婚するのであれば、勘当したままでは、まだ返せていない恩に報いることが出来なくなる為、僕の願いを聞いて勘当を解く事にした。本音は、借りを返せて、ハーバード公との血縁ができるのであれば、勘当を解くのは安いものだと。」
「ありがとう。ジェシカ。」
「これで、甥や姪が悲しい思いをしなくて済むね。」
「この。」

 と、お姉ちゃんは、私を抱きしめてくれた。凄くほっこりした気持ちになった。

「てことで、私はお姉様の妹になるので、アレックス、即効結婚よ良いわね。」
「卒業してからね。」
「一気に妹が増えそうね。」
「って、ふと気づくと、うちの平民なのに、親戚凄すぎない?王家に、公爵家×2。私ハードル高すぎない?」
「ダイアンお兄ちゃんは、無いよね。」
「多分大丈夫じゃない。お姫様を射止める柄じゃないし。」

 と、ふざけていて、ふと今日の迷宮アタックを忘れていた事に気付いた。

「って、あー、結構時間、経っちゃったね。そろそろ、行きますか?今日は、21階まで進みます。よろしくて。」
「「「「「「「はーい。」」」」」」」

 何故か素直なみんなだった。

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 11階に降りると、微妙な空気が流れていた。

「ワイドホーリーレイン。」

 お姉ちゃんが、サクッとワイドホーリーレインを唱えると、微妙な寒さがなくなった。

「「えー。お姉様ワイドホーリーレイン出来るの?」」
「えっ、皆さん出来ないの?」

 と首を傾げるお姉ちゃん。ワイドホーリーレインが出来るのって、それなりの神職者だけだけど、お母さんも、ハーバードお兄ちゃんも出来るから、うちだと出来て普通になっている。アイルお兄ちゃんも頑張れば出来る。

「アイル。次の階貴方がやりなさい。」
「えっ、でも、」
「ジェシカがやっても勿体無いだけだから、貴方がやりなさいね。」
「はい。」

 お兄ちゃん弱し。でも、レベルそれなりに上がってる筈だから、普通に出来るようになっている筈だ。お姉ちゃんも、分かったらしい。これで結構経験値が溜まって、簡単にレベルアップする事を。

「この階には、オーガが出るので、出てきたらタコ殴って下さい。クレス様と、アイルお兄ちゃんがメインで。」
「はい。」
「了解。」

 2人が了解すると、ジェーンお姉ちゃんが

「ジェシカ、モンスターハウスある?」
「えーと、そこ右に曲がって、三つ先を左に曲がって、真っ直ぐの扉。多分、オークとオーガがたんまり。」
「了解。ちょっと行ってくるね。」

 と、サクッとお姉ちゃんが駆け出した。

「良いのか?」

 リーディング殿下が言うと。

「大丈夫です。ベースは私の何倍も強い、我が家一の天才ですから。」
「えーと、ジェシカさんより強いの?」
「そうだよ。武器とレベルが同じなら確実に、今でも本気でやりあえば勝てる気がしない位に。」
「そんな戦力がフランドル公爵家に、」
「そうなるわね。お姉ちゃん軍人になる気は無いけど、本気で怒らせると、少なくても公爵領は滅ぼすわよ。」

 そう、お姉ちゃんは、天才なのだ。表面上、フランドル神様の加護があるだけでなく、裏では、大神英雄神アルカディア様の使徒なんだ、他にも数柱の神の加護、寵愛と、ほぼ全ての神の注目を受けている。何故なったかは、私のせいだ。少なくとも、戦闘力で言えば私より強い。レベルが同じで、武器が同じならどうあがいても、確実に負ける最強お姉ちゃん。それがジェーンお姉ちゃんなのだ。

「さっ、すぐ帰ってくるから、いくわよ。」
「置いていっても。」
「どうせ、殺気を負って来るから、私が殺気を出しとくから大丈夫よ。」
「ジェシカさんの姉妹って、」
「俺が帰りたく無いのわかるだろ。」

 と言いつつ、オーガの群れを3つ殲滅している間に、お姉ちゃんが帰ってきた。

「ジェシカ。ここに来る途中にも、モンスターハウスあったから倒してきたけど、」
「はい、このまま真っ直ぐの進んで、右に曲がって、三つ目を左。」
「ありがとう。」

 そう言って、お姉ちゃんは正しく飛んで行った。

「気にせず行こうか?」

 更にオーガの群れを2つ倒して、階段に行くと、

「遅~い。」

 と何故か、お姉ちゃんに怒られた。(グズン)

 次の12階は、すごーく明るかった。

「眩しい。とりあえず、アイルお兄ちゃん。」

「はいはい。ワイドホーリーレイン。」(棒読み)

 と、ワイドホーリーレインを唱えると、お兄ちゃんの顔色が悪くなった。結構負担がかかってるみたい。でも、この位鍛えとかないとダメだし、

「お兄ちゃん、これ」

 と、ドリンクを渡した。

「一応ポーション。」
「ありがとう。」

 因みにこのポーションは、10倍のスピードで回復する。その分10倍痛いが・・・。

「うっ、死ぬ・・・。」
「大丈夫、死なないから・・・・。行くよ。」

 お兄ちゃんを引っ張りながら進んでいく。お姉ちゃんは、モンスターハウス巡りをしている。この階は、ナイトオーガ、ファイターオーガ等のオーガ系の中位種がいる。クレス様だと、ちょっと辛いが、他のメンバーだと楽勝だ……。

「アーサー殿下と、リーディング殿下が中心になって、殲滅して下さい。」
「了解。」
「わかりました。」

 そう言って、二人が前線で、瞬殺してく中で、クレス様が可能な限り戦闘に参加していった。流石に修行をしていると言っても初めての戦闘で、10回を超えてくると結構きつくなってくる。まぁ、何かあってもこの防具を通せる敵はない。

「ぜぇ、ぜぇ、つらい・・・。」
「クレス様、大丈夫ですよ・・。無理しないで、可能な限り、毎週迷宮に来ますから・・・。」
「えっ、えー。」

 私は、毎週末四大迷宮を回っていく予定だ、出来れば全ての迷宮で現役最深踏破記録更新をしたいと思っている。

「凄ーく稼げますと・・・・、クレス様。」
「頑張ります。」

 オーガパーティーを7つ殲滅して階段にたどり着いたところ、お姉ちゃんがまた待っていた。

 次は、13階、死にそうなアイルお兄ちゃんにワイドホーリーレインをかけさせて、ポーションを飲ませた。

「この階はどんな感じ?ジェシカ」
「モンスターハウスは、この地図で回ってください。書いておきました。魔物は、上と同じ感じのオーガと、ワイルドウルフを使う魔物使いのゴブリンです。魔物は最大30頭位平気でいるので気を付けて下さいね。」
「地図ありがとう。じゃあな・・・。」

 お姉ちゃんがまた飛んでいった。

「今度こそ、階段まで先に行くぞ、みんな殲滅 TO GOで行こうね。」
「「「「「おー。」」」」」

 みんな、全力で走り、階段に向かった。魔物パーティー6つ殲滅した上で階段につくと、階段でお姉ちゃんがおやつを食べていた、ムカつく。ちなみにこの階には、若干だがリバヤント草が育っているエリアがあるが、もう関係ないので、無視していった。

 14階、また死にそうなアイルお兄ちゃんにワイドホーリーレインをかけさせて、ポーションを飲ませた。

「はいお姉ちゃん地図よ、行ってらっしゃい。」
「ありがとう。」

 お姉ちゃんはいつもの様にすっ飛んでいった。

「はいはい、皆さん、お兄ちゃんは、死にそうなので、ベルベット様、クレス様ペアと、アレックス様、リーディング殿下ペア、アーサー殿下の3組で、順番に戦闘をお願いします。」
「「「「「はーい。」」」」」

 そう言って、先頭を入れ替えながら階段に進んでいく。少し外れて魔物がいれが倒したりして、この階にいるファイヤーオーガとか、アイスオーガの群れを計12撃破して階段に向かった。案の定、階段に行くとお姉ちゃんが待っていて、読書をしていた・・・。読んでいたのは、私が偽名で書いた恋愛小説だ。私は、前世の世界の記憶から小説の内容を思い出し、現世風にアレンジして小説にして出版していた、結構な量。7人位の偽名を使い分けているが、それぞれが大作家先生になっていた・・。そのうちの恋愛小説だ、内容はロミジュリをアレンジしたもの。お姉ちゃんは15秒位のペースで頁をめくっていっている・・。流石読むのが早い。

「お姉ちゃん。」
「あっ、来たか・・・。もう小説7冊読んだよ・・・。迷宮は暗いから目に悪いな・・・。」
「ほぇ、7冊ですか・・。」

 15階は、階層主のフロアだ。階段を降りて今回の方針を説明した。

「今回はお姉ちゃんがいるので、チームを2つに分けます。お姉ちゃんのチームは男の子チームとなります。私のチームは、お兄ちゃん、ベルベット様、クレス様。お姉ちゃんチームは、アレックス様、リーディング殿下、アーサー殿下です。私と、お姉ちゃんは基本フォローだけなので、頑張ってください。まぁ、オーガジェネラルをボスとして、オーガナイト、オーガマジシャン等40-50匹です。霊体は戦いづらいので、入った瞬間に私と、お姉ちゃんが消し飛ばすので、思いっきりやってください。」

「じゃ、先に行くわね・・・。」

 そう言って、4人は入っていき、5分後扉の鍵が開いた・・。

「じゃあ、ベルベット様、クレス様行きましょうか・・・。お兄ちゃん、大丈夫?」
「あぁ・・。魔法さえ使わないければ、体は動く・・・。」
「大丈夫には見えないけど・・・。」
「レベルが相当上がっているから、多分大丈夫だ・・・。」
「わかったわ・・。」

 お兄ちゃんは、剣をしっかり持ち歩き出した。

「ベルベット様は?」
「誰に聞いているの?これだけの武器を貰っているのよ、このくらい独力で余裕よ。」
「クレス様は?」
「何とか・・・。体は動いているので、大丈夫です。」

 そう言って、3人は先に進んで扉を開け、私は後を続きた・・。

「ホーリーレイン。」

 私の魔法で、霊体は消滅した・・・。

「でやー。」

 お兄ちゃんが一直線に、オーガジェネラルに向かって駆け出した。その前にいたオーガナイト2匹は、防御姿勢をとったが、お兄ちゃんは、態勢を下げ、剣をもう一本持ち、二刀流で鎧ごとオーガナイトを切り裂いた。アイルお兄ちゃんは、基本学者にしか見えない感じだが、剣神と言われるムサシ神の加護を受けており、ベースの戦闘スタイルは、スピードソーディアン。スピードを重視し、テクニックで敵を倒していく、力勝負でなく、一撃離脱を繰り返し、間合いを大事にしてく。但し、小さいころからの修行の結果、贅力はそれなりにあり、ゴーレムとパワーファイターとしてやり合える力は持っている。その為、この剣をもってすれば、片手で鎧ごと切り裂いていくのは造作もないことだ。見た目、どんくさい学者で、うちでは雑魚扱いだが、それで侮ると、瞬殺される程の腕で、学生時代は、騎士学院と合同での大会で、無理やり参加させられた魔法攻撃を用いない部門で3連覇した実力を持っている。

「えっ?」

 お兄ちゃんの剣の腕を見て、クレス様がびっくりしていた。

「あぁ、知らなかったですよね・・・。お兄ちゃんは、強いですよ。あれでも、不調の中、やる気を出してって感じです。普段は自分から行くことは殆どないですけどね。特にあの3人がいる時は、行かないでしょうね。無駄に優しいから。過去に実力差を見せて、自信を無くさせて、剣を置かせた人が沢山いたらしいですし・・・。」
「ジェーンお姉様の弟なので、普通よりは強いと思いましたが・・・。いつもの修行でもここまでは・・・。」
「私と二人の時以外、まともにやらないですよ・・・。お兄ちゃんは。」

 ベルベット様も次々とオーガを倒していくが、スピードが明らかに違う。

「私は、帝国軍でも最強新人の一人よ・・・。何なのよ・・・。貴方の姉兄達は・・・。」

 とベルベット様が愚痴っている。私はしょうがなく

「色々あって化け物です・・・。すみませんベルベット様。クレス様、さぁ何匹か倒してみましょう。」

 とだべっている間にも、お兄ちゃんは、10匹以上のオーガナイトと、オーガマジシャンを一閃で切り裂いていき、オーガジェネラルの前に来た。そのでも、スピードを緩めずに、片手の剣を高速で投げつけ、心臓を串刺しにた。次の瞬間目の前に駆け寄り、もう一方の手で首を刎ね、心臓の剣も引き抜いた。

「次・・・。」

 そう言って、足を止めずに次々と切り裂いていき、開始から3分で殲滅終了した。お兄ちゃんは、オーガジェネラルを含め31匹、ベルベット様は、13匹、クレス様は3匹だった。

「終わった。皆さんお疲れ様です。では、下に降りましょうか・・・。」

 私は先導する中、クレス様は、未だに顔色が悪いアイルお兄ちゃんに寄り添っていった。

「あの・・・、アイル先生。」
「なんだい。クレス。」
「先生って本当は強いんですね・・・。惚れ直しました。」
「クレス・・・。俺は生まれて今まで強いと思ったことはないんだよ・・・。うちには化け物しかいなかったから、母もそうだし、ジェシカやジェーンお姉ちゃん、ハーバードお兄ちゃんみんな、俺が戦って相手にならない人達だ、だから、ただずっと死なない様に頑張ってきただけだよ。」

 私は振り返り。

「お兄ちゃん・・・。」
「ご、ごめん・・・。」

 と、お兄ちゃんが謝ると、クレス様がクスリと笑い、ベルベット様を含め、みんなが笑いだした・・・。笑いながら階段を降りると、お姉ちゃん達が、待っていた・・・。

「この時間で、・・。アイルがまともにやったか・・・。」

 と、ポツリとつぶやくと

「アイル次、ワイドホーリーレイン。」

 その一言で、若干死にかけてきたアイルお兄ちゃんにワイドホーリーレインをかけさせて、ポーションを飲ませた。

「あれ?そんなに倒せていない・・・。」
「そうです。雑魚はワイドホーリーレイン。で倒せますけど。この階だとワイトナイト以上には、致命傷にできません。もうすぐ、ワイトナイトや、ワイトソーディアンが押し寄せてきますので、準備ください。武器で触れば倒せますし、鎧等に触らせれば倒せます。所謂雑魚です。」

 ベルベット様は、クレス様に小声で

「世の中的には、ワイトナイトって、恐怖の対象で、上級騎士でも苦戦する相手だからね・・・。」
「わかってます・・・。皆さんが可笑しいことくらい・・・。」
「皆さんって、私はまともよ・・。多分。」

 と言って、二人は笑いながら、計300を超えるワイトナイト、ワイトソーディアンを迎え撃った。

 次々と来るワイドナイト達を撫でる様に倒していき、浄化させていく。それこそただ剣を降るだけの簡単な作業となっている。

「じゃ、行こうか・・。」

 ワイトナイト達の襲撃が収まってきたところで、階段に向けて進みだした。この階は、霊体でない魔物は少なく、霊体以外では、オーガナイトのパーティー2つ倒して階段にたどり着いた。

 17階は少し明るかった。顔色が真っ青なアイルお兄ちゃんにワイドホーリーレインをかけさせて、ポーションを飲ませた。16階同様ワイトナイト達の襲撃を受けながら、進んでいくと、ゴーレムが襲ってきた。この階のゴーレムは、土製のゴーレムなので、雑魚っちかったが、クレス様は、力が足りず、倒すのが辛そうだった。

「クレス様やっとゴーレムです。」
「ジェシカ先生、やっとゴーレムって?」
「ゴーレムのドロップアイテムは、そのゴーレムの素材です・・・。鉄なら鉄、銀なら銀、金なら・・・。」
「クレス頑張りまーす。」

 そう言って、クレス様が率先してゴーレムを撃破していき、階段に辿りついた。

 18階までくると、アイルお兄ちゃんには、死相がバリバリに出まくっていたが、ジェーンお姉ちゃんは、ワイドホーリーレインをかけさせて、ポーションを飲ませた。ワイトナイトだけでなく、ワイトマジシャン、ワイトソーサラー等に襲ってきたが、全くダメージにならなかった。クレス様が慣れてきたので、出来るだけ対応させ、パワーレベリングさせている。お兄ちゃんもぼーっと倒している。この階は、後出てくるのは、レッドオーガというオーガの上位種と、ストーンゴーレムなので、遭遇戦だけこなして、階段に向かった。

 19階、意識がほぼ無いアイルお兄ちゃんにワイドホーリーレインをかけさせて、ポーションを飲ませた。この階はワイト系がわんさと出てくるが、ワイト系しかいなかった。レベル上げと決め込んで、クレス様中心に対応させながら、お姉ちゃんはクレス様を3回ほどモンスターハウスにぶち込んだ。

「ジェーンお姉様ありがとうございました。何かが見えてきました。」(ぽっ)

 と殺しかけた人に感謝しているのをみて・・・。世の中分からない世界が沢山あることを実感した。

 ついに20階まで着いた。

「今回もお姉ちゃんがいるので、前回同様のチームを2つに分けます。この階は、アイアンゴーレムをボスとして、ストーンゴーレムや、アイスゴーレム等40-50匹です。数体宝石ゴーレムがいるので積極的に戦って下さい。」

「じゃ、また先に行くわね・・・。」

 そう言って、4人は入っていき、5分後扉の鍵が開いた・・。

「じゃあ、ベルベット様、クレス様行きますよ。お兄ちゃん、大丈夫?」
「あぁ・・。なんとか、体は動く・・・。」
「無理っぽくない・・・。」
「ゴーレム相手なら、多分大丈夫だ・・・。」
「わかったわ・・。」

 お兄ちゃんは、両手に剣を持ち歩き出した。

「ベルベット様は?」
「もちろん、大丈夫ですわよ。」
「クレス様は?」
「頑張りますわ。」

 そう言って、3人は先に進んで扉を開け、私は後を続きた・・。

 入ると、お兄ちゃんがまた駆け出し、紙を切り裂くようにゴーレムを潰していった。宝石ゴーレムは、トパーズゴーレムだけだったが、お兄ちゃんが開始10秒でやっつけた。ベルベット様とクレス様は、やる気薄手何とか数体倒したが、お兄ちゃんがほぼ単独で殲滅した。

「アイル先生・・。」

 とクレスの声も、まともに反応しない位。アイルお兄ちゃんは意識を失い、機械的に倒してくロボットになっていた。

 21階、今日の終了階である。お姉ちゃんは、つい癖で、ほぼ死んでるアイルお兄ちゃんにワイドホーリーレインをかけさせて、ポーションを飲ませた。

「お兄ちゃん、ごめん今日はここで戻るんだった。」

 そう言って、意識を完全に失ったお兄ちゃんを抱え、登録したワープ石を使って地上に戻った。意識を失ったのが登録後でよかった。地上では、もう夕日が沈みかけていた・・・。私達は宿に戻り、夕食を頂いて、各自の部屋に入った。アイルお兄ちゃんは、宿に着くころには何とか意識を取り戻していたが、ご飯を食べながら寝ていた・・・・。子供か!他のメンバーもお姉ちゃん以外は相当疲れていた。お姉ちゃんと私は、食後3回ほど11階から21階まで周回をして、片っ端から魔物を倒し、レアアイテムをGETしまくった。

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 今日も私とお姉ちゃん以外は朝の修行はやらずに、朝食を食べて宿の玄関に集合した。
「今日は、現役最高到達点24階を突破し、25階の階層主を倒し、26階のワープ石で戻ります。午後の頭には戻ってくる予定です。行きましょう。」

 21階に降りると、とりあえずお兄ちゃんがワイドホーリーレインを2連発で放ったって、ポーションを飲んだ。

「レベルが0から75まで上がったし、昨日の無茶で最近鈍ってたいろんなもが戻ったから、結構楽になったよ。」

 お兄ちゃんは結構余裕がある顔だ。基本全力出さないから、魔錬等も鈍っていたんだろう。朝練もう少し前から2人でやらないとね。

「じゃあ、一気にのして行くよ。」
「「「「「はい。」」」」」

 多分昨日の戦闘で、明確な上下関係が出来たのだろう。お姉ちゃんの号令で効率的に葬って行く。お姉ちゃんの司令官としてのスキルが発動して、皆んなの強さが増している様だ。そう言って、サクッとゴーレム、レッドオーガ達を殲滅すると、階段に急いだ。

 22階は、バンパイアが出始める。唯のバンパイアなので楽勝だが、ドレインタッチを受けると相手が回復するので気をつけないといけない。これが、この迷宮の進行を妨げる大きな要因だ。が、

「バンパイアだ。ホーリーアロー。」

 あっ、お姉ちゃん、コウモリ嫌いで、瞬殺する癖が治ってないか。

「ホーリーアロー、ホーリーアロー、ホーリーアロー」

 と、魔法レンジ無視してホーリーアローを撃ちまくって、バンパイアを殲滅した。

「お姉ちゃん、やり過ぎ。」
「ごめんなさい。嫌いだから。」
「お姉様にも、苦手な物あるのね。」
「苦手というか、大嫌いなの。基本殲滅するけどね」(ニコッ)

 ベルベット様は、恋い焦がれた顔をしている。私には全く分からない世界だ。

 本当は、苦労する筈のこの階を難なくクリアし、23階に着いた。

 いつも通り、お兄ちゃんがワイドホーリーレインを連発し、寄ってきたのはバンパイアウルフだった。バンパイアウルフには、お姉ちゃんは嫌悪感を持っていないので指揮をしてみんなに危なげなく倒させて行く。的確なアドバイスもあり、戦闘の中でこれでもか、というくらいみるみる成長していく。小さい頃からアクティブラーニングの様にお互いに指導しあっているが、やっぱりお姉ちゃんは上手い。そこでも天才なんだろう。お姉ちゃんには勝てない。

 そんな感じで、24階まで2時間掛からずスルスルきた。24階には、今まで多くの冒険者の行く手を阻んできた、リッチがいる。そう高位の霊体系魔物リッチ。お兄ちゃんがワイドホーリーレインでダメージを与え、寄ってきたところで、みんなでタコ殴りだが、リッチは弱ると見えなくなるので、私が軽くホーリーレインを打ち続けて、ダメージで光ったところをとどめをさす作戦をとった。私にとっては、ホーリーレインも、ワイドホーリーレインも打ち続けても大して辛くないが、修行的には、気配でわかる様にならないと、下の方で辛くなっていく。

 少し時間をかけながら徐々に鍛えていこう。

 とうとう25階に来た。25階は攻略本的には、ドラゴン1頭勝負だ。

「この階はドラゴンだけど、昨日と同じで良い?」
「そうだよね・・・。先行くね・・・。」

 お姉ちゃん達は、先に入って行って、5分でまた扉の鍵が開いた。

「お兄ちゃん、ベルベット様、クレス様行きましょう。」

 ベルベット様と、クレス様は緊張した顔で進んでいった。

「ベルベット様、昔倒しているんだから大丈夫ですよ・・。」
「そうね・・・。」

 いつもの様に、お兄ちゃんが突っ込んでいく。速攻で胴の下に入り斬りつけていった。武器の性能のおかげで、簡単に攻撃が通っていく。

「へっ、アイル先生、強いと言っても・・。」

 クレス様は、足を震えながら前に進めない。

「そうだね・・・。普通ドラゴンと言ったら、手でないよね。」
「少し弱ったらみんなも行ってね・・・。」

 お兄ちゃんは、クレス様の足の震えを見て、一人でガシガシドラゴンを削っていった。多分、1人でもっと簡単に倒せたのだが、それはしなかった。それでも、7分程度で倒れ、殆ど動けなくなっていった。

「クレス、最後は止めを。」
「はい。」

 クレス様は、倒れているドラゴンの首を狩り、ドラゴンを倒した・・・。

「クレス、ドラゴンスレイヤーになったな・・。」
「クレス様。」
「クレスちゃん。」

 クレス様は、涙を流して、足を諤々させていた。そりゃドラゴン怖いよね。

「よく頑張った・・・。」
「ありがとうございます。」

 お兄ちゃんは、ゆっくりクレス様の肩を抱いてあげた。そうやって、肩を抱いたまま階段を降りて行くと、そこには、倒れている男3人と、1人巨大な人形の魔物と戦うお姉ちゃんがいた。

「遅いぞジェシカ。」
「大丈夫?お姉ちゃん。」
「やばい。」
「私も入る。」

 私は、上級ポーションをお兄ちゃんに渡し、バトルに参加した。魔物は、見るからに魔王です。って感じだった。

「何があったの?」
「降りたら、大量の魔物の死骸と、こいつがいて、いきなり攻撃してきたの。」

 私は、攻撃を受け流しつつ、

「ここは、長く戦ってじゃ無理そう。多分蟲毒状態になって進化していったんだろうね。迷宮最強じゃない?」
「そうかもね。」
「お姉ちゃん、あれ試す?」
「良いかもね。」

 と高速戦闘しながら話している。私は、マジックバックから、使い捨てレールガンを12個砲投げ上げ、サイコキネシスの魔法で、砲門をコントロールし、一斉に放った。

 ジュドーン

 一点に同時に命中し、魔物は吹き飛んだ。

「やってないか。」

 魔物は壁に激突して、地面に倒れたが、すぐに膝を立て、立ち上がろうとしている。

「お姉ちゃん。」
「ジェシカ。いくわよ。」

そう言うと、お姉ちゃんと私は、魔法を唱えた、

ビックバン
ホーリージャッジメント
インフェルノ
ニブルヘルム

「「4錬成魔法。森羅万象。」」

「「「「「えー。」」」」」

 回復中で倒れている3人と、ベルベット様、クレス様が、一斉に目を見開いて声を上げた。

 森羅万象。失われし伝説の魔法。伝説の6英雄が魔王を倒すのに使った魔法で、4人の英雄それぞれの最強魔法を重ね、威力を増幅させて叩き込む究極魔法と呼ばれているもの。
 私と、お姉ちゃんは、2人で電話ベースで議論を重ねて完成させたもので、ぶっつけ本番でやっている。と言うか、一回試してみたかったもの。2人で放つ為、負担軽減の為の調整をし若干弱くなっているが、理論上は同じ魔法だ。

 魔物に叩きつけられた魔法は、時空をも歪め、魔物を崩壊させていく。それでもなんとか耐えているところに、アイルお兄ちゃんが、落ちていた軽く石を投げつけた。

 バコッ

 その石で、魔物は一瞬集中力を無くし、崩壊していった。

「あぁー。」
「うぁー。」
「きゃー。」

 魔物が崩壊した瞬間、私達兄妹3人は、一斉に悲鳴を上げた。

「どうしたのですか?」

 焦るアーサー殿下に

「大丈夫です。急速なレベルアップの痛みです。多分迷宮主以上の魔物だったんでしょう。通常は、倒した物にしか、経験値等は入らないんですが、今回は、3人に入っています。寄与に応じて。私は元々レベルが高かったから、まだ大丈夫ですが、お姉ちゃん達は相当辛そうです。とりあえず帰りましょう。」

 そう言って、私がお姉ちゃんを抱き上げ、お兄ちゃんをアレックス閣下が抱き上げて、ワープ石から地上に戻った。地上は、まだ昼前で、すぐに宿に戻り、2人を寝かせ、私も仮眠をとった。昼過ぎには、皆んな回復し、食堂に集まった。

「皆さんお疲れ様でした。目標の26階に到達しました。この後、お姉ちゃん以外は、学院に戻ります。忘れ物をされない様に。また、来週から週末に順番に大迷宮を攻略していきます。休む方は早めにアイルお兄ちゃんまで。」
「俺かよ。」

 みんながどっと笑った。

「で、クレス様お約束通り、アクセサリーをつくります。お貸ししたアイテム袋から、ドラゴンの魔石を頂けませんか?」
「魔石?」
「はい。高位の魔石は、宝石よりも貴重で、価値があり、輝き、身を守る道具になります。ドラゴンの魔石は、命がけのレア魔石なので、公爵家の方の宝石として恥ずかしくないものです。特に自分で取った魔石は、人が取ったものより数倍もよく輝きますデザインは任せて下さい。」
「はっ、はい。」

 クレス様は、私の提案に頷いた。クレス様がつけているのをイメージしたデザイン画はもう描いたので、楽しく作るぞー。

「それと、他の獲得アイテムだけで、貴族として出席するパーティの衣装代としては充分な物になりますが、換金されますか?」
「あっ、お願いします。」
「残りの方も、換金されると時は仰って下さい。皆さんの獲得したアイテムは、研究室の金庫にそれぞれ分けて入れておきます。鍵を配りますね。」

 私はそう言って、鍵を配った。

「後、あの魔物のことは他言無用に、伝えるとしたら、陛下、公爵閣下のみで、仔細は調べた上で、陛下、公爵閣下宛の報告書を、作ります。それまでお願いします。」
「了解。皇帝陛下の方は、報告まで待とう。」
「ウチの父は、ジェーンお姉様のことを含めて、報告が必要で、黙ってたりしたら後で面倒だから、簡単に説明して、後は、ジェシカさんに聞いてくれると言っておくよ。」
「私のお父様も、報告の時に言わないと、後で信頼性をなくすから、新種の強い魔物に会って調査中とだけ言っておきます。後、倒したところは見なかったとしておきます。」
「ウチもそうしておこう。」

 リーディング陛下と、アレックス閣下、クレス様と握れたところで、アーサー殿下が

「リーゼンハルトお兄様にも報告なしで大丈夫か?」
「結論次第で、連絡が必要でしょうね。」
「とりあえず、私と、お姉ちゃん、お兄ちゃんの3人で分析して、2週間後に一度報告します。お姉ちゃん達いい?」
「大丈夫よ。」
「了解。」

 そして、皆んなを見つめて

「では、そんな感じで。それではお姉ちゃん。」

「みんなの生還に」
「「「「「「「「かんぱーい。」」」」」」」」」

 皆んなで、宿の食堂で楽しくパーティをして、楽しんだ後、馬車に乗り学院に戻った。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------

 学院に馬車で戻ると、アレックス閣下に声をかけた。

「あっ、そうそうアレックス様、フランドル公爵に結納品として、これを届けて下さい。」

 私は、アレックス閣下に、マジックバックを渡した。

「ジェシカさん、中身はなんなの?」
「いや、フランドル公爵家なので、武器かなと、鋼鉄製の武器10万。」
「10万?」
「少なかった?」

 新品の鋼鉄製武器を10万。フランドル公爵家の軍の装備を一新し、相当に強化できる。

「いや、幾ら位するかと思うと、」
「私の量産型だから、安くて1本50万くらい?」
「総額500億ゴールド以上?でも、ジェシカさんが作ったものだと500万は下らないんじゃ?」
「全て、機械製造だから、50~100万位になるんじゃ。売ってみないとわからないけど。同性能のだと、普通の鍛治師で200~300万かな?」
「機械製って?」
「簡単に言えば、鍛冶師の代わりをする魔導具って言えば分かるかな?スキルとかは無いから微妙なものになるけど。」
「武器って魔導具で作れるんだ。」

 そう、作れる魔導具を作った。

「じゃよろしくね。」
「了解。でも、思うんだけど、これが全部入るマジックバックって、それだけで、1000億ゴールド以上の価値があるけど、」
「それに気づいたアレックス様は、偉い。フランドル公爵に、武器を渡したら、マジックバックは、アレックス様のものにして良いから。結婚祝いよ。ベルベット様には別に送るけどね。」
「ありがとう。軍人として、これだけで出世できるよ。」
「因みに、現状、私か、ベルベット様か、アレックス様しかそのマジックバックは使えないので、でもでも、ベルベット様とアレックス様のお子さんが生まれたら使えるけどね。頑張って下さい。」
「この、マセ魔導師が。」

 そう言って、私は、アレックス閣下とも別れ、寮に戻った。私の初恋の人と恋はできなかったけど、友人として、将来親戚として、長く付き合っていくのか、そんなのもありかな・・。と思った。
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