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第四章 いくさ

第8話 皇子の帰還

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「アリア、みんなどうしたの?」

 アリシアがアリア達にびっくりしていると、アリアが、

「叔母さま、戻りながらご説明します。他の方には機密事項もありますので、叔母さまだけに。」

 アリア、アリシアの隣に駆けて行き、説明しながら、セイレーンに向かった。

---------------------------

 私とスノーが学院が休校になり、邸宅で勉強をしていると、バタバタバタと大きな足音がし、ドンドンドンと扉を叩き外から

「アリア様、スノーさん。アレックスさんが急遽いらっしゃいました。応接間に急いでお越しください。」

 と、執事の声が聞こえた。

「どうしたの。」

 と聞いても。急いでと言うので、私達は応接間に急ぐと、車椅子を押したアレックスくんがいた。

「アリア様、スノーさん。ガイアス殿下をお連れしました。」
「やあ。」

 殿下は、微妙な笑顔を浮かべていた。私達は「はぁ?」という、声が、心から漏れそうになったがぐっとこらえた。今回の混乱の中心となった殿下が生きていたと言う事実は、帝都にどんな作用をもたらすのか、分からなかった。何故か・・・。何となく予想できたので、まずスノーと私で

「とりあえず、ルイズ様にご連絡を」
「お兄様は、皇宮に詰めているわ。」
「では、急いで使いを・・・。」

 とのやり取りをすると、アレックスが落ち着いて

「では、アリア様、殿下を皇宮にお連れ下さい。私は護衛致しますので。」
「そうだわね。私なら皇宮に自由に出入り出来るから、殿下をスムーズに皇宮にお連れ出来るわ。行く途中に経緯を教えてね。」
「はい、アリア様」
「すまんな。よろしく頼む。」

 殿下は、微妙な笑顔を浮かべ続けていた。アレックスは御者台に、キャリッジの中に私と殿下、スノーさんを乗せ、20騎の護衛を着け皇宮に向かった。移動中アレックスから、経緯の説明を受けた後、御者台から街中を見ていたアレックスが感想じみて、私にもらした

「アリア様、街に活気が無い様に見えますが・・・。」
「そうですね。スノーどう思います?」
「アレックス。帝都には、厳戒令が出ているの。変な人の動きを監視できるように、平民が理由もなく外を出歩くことが禁止されているから・・・。あとね、実は食料不足が始まっているの。穀倉地帯であるセイレーン公爵領から供給を制限しているの。貴族や官僚達は、セイレーン公爵領から食料が帝都の食料の何割を占めているか、それをどの様に供給しているか、セイレーン公爵領が50年以上安定的に供給して、帝都での食糧不足が無かったせいで、正確に把握している者がいなかったのよ。馬鹿ですわね。」
「そうですか。ところで、セイレーン公爵家への援軍等は来ないんですか?」
「それがね。貴族院評議会で議事となったんですが、イフリート公爵家と、ノーム公爵家が強引に、帝国軍及び、帝国貴族はこの戦いに参戦しない。ことを決めたの。それで、セイレーン公爵家の対抗策としてこんなことしているんですけどね。」
「そうなんですか・・・。」
「そうなの・・・。どんな感じだったかって言いうとね」

 そう言って、私は、殿下とアレックスくんに、兄上から聞いた内容を説明した。

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「イフリート公爵、ノーム公爵弟、戦いに帝国軍だけでなく、貴族も参加を認めないと。」
「そうだ。これは帝国には関係ないことだ、セイレーン公爵家でも対処出来よう。今まで外交をおざなりにしてきたつけだな。」

 イフリート公爵は、終始にやけ顔で、ノーム公爵弟は、苦々しい顔をしている。ルイズは声を張り上げているのが、イフリート公爵は、そうなっているルイズを挑発しつづいている。他の貴族や、ブリモンド殿下のイフリート公爵を押えられないでいる。

「イフリート公爵の御令嬢の婚約者も参戦されるとか、私情を挟んでいるのでは?そもそも、貴公が先導を?」
「ハハハハ。若造。ワシを挑発つもりだろうが、その程度の安い挑発では、何とも思わんよ。」
「そうですか。ノーム公爵弟。」
「すまないが、兄の決定だ。私の一存で覆すことは出来んのだよ。」
「だが、帝国の参戦はともかく、貴族の参戦も認めないとは?」
「セイレーン公爵家も四大公爵家の一角、政治的圧力で無理矢理参加させられる者を防ぐ為じゃよ。」

 激昂するルイズを、バカにするようなイフリート公爵に対し、ノーム公爵弟もシルフ次期公爵も、ルイズにすまなさそうな顔を見せた

「すまない、セイレーン次期公爵。」
「シルフ次期公爵。」

 ルイズは、止む無く、受け入れることを決め、状況悪化を防ぐ為に、決議内容をより明確化し、若干でも有利な状況を作る方向に方針転換した。

「では、3点確認を、1点目、当家はこの戦争に集中させて頂く。この期間政治的、経済的に帝国の為に尽くすことができなくなるがよろしいか?」
「セイレーン公爵家の力がなくとも帝国は何とかする。存分に戦われよ。ハハハハ。」

 イフリート公爵は、セイレーン公爵家が何の影響力も持っていないと勘違いしていることがありありと分かった。ルイズは、口元を一瞬上げたが、すぐに激昂している様に戻した。

「2点目、我々が勝てば、敵国に逆撃をかけ支配するだろう。それでも問題ないか?」
「出来るものならな。セイレーン公爵家の繁栄は帝国の反映に繋がるでな。ハハハハ。」

 イフリート公爵は、セイレーン公爵家が勝てないと思っている。普通に考えれば、勝てる可能性も。負ける可能性も相応にあると考えているはずだ、イフリート公爵が裏でより醜悪な策略を巡らしていると、ルイズは直感した・・・。

「3点目、セイレーン公爵家に与する事を禁止されるのは分かりました。では、我が敵国に与した貴族がいた場合は、如何する。」
「そ、そんな者は居るはずがない。決める必要すらなかろう。」

 イフリート公爵が一瞬焦った顔をしたので、ルイズに変わりノーム公爵弟が畳みかけた。

「イフリート公爵、セイレーン次期公爵も、ベタ折れでは顔が立たないだろう。確固たる証拠が有れば、帝国貴族としての地位を傍系に譲らせよう。」
「ノーム公爵弟、お主、ノーム公爵に裏切らせて、お主が後を継ぎたいからと、」
「まあ、そうとって頂いても構いませんよ。私としては、セイレーン公爵家の不利になる様なことはする気はありませんが、イフリート公爵、何か困ることでも。イフリート公爵領は、フランツ王国と隣り合っているので、交流はあるかと思いますが、公爵家が与するとこなど、」
「あるわけなかろう。」

 焦っているイフリート公爵にブリモンド殿下が助け舟をだしていった。

「では、それでいいな。でもな、仮に、公爵領の冒険者や傭兵が雇われて参戦したり、商人が取引したところで、イフリート公爵が絡んでなければ何の問題もないよな。」
「そうですな。あくまで冒険者や、傭兵がな。ハハハハ。」
「それでいいでしょう。」

 ルイズは、押し切れず悔しかったが、ガイアス殿下亡き今、ブリモンド殿下が出張ってきたので、引くことにした。

「後な、明日から、戒厳令を出す。変な動きをする者を監視する為だ。帝都の傭兵や、冒険者が敵国に雇われても敵わんじゃろ。闇ギルドのこともあったしな。ハハハハ。」
「わかりました。では、それで。」

 イフリート公爵が戒厳令をねじ込んできて、ルイズはやむを得ず、それを呑んで、貴族院評議会は、閉会した。ルイズは急ぎ邸宅に戻った。

「商務書記官は誰かいるか?」
「はい。ロッチノアールここに。」
「商会に指示を出し、直ぐに、帝都への食糧供給、特に、高級品の供給を止めろ。平民や貧民向けの食料の供給はギリギリの量に抑制する様にするんだ。」
「はっ。」

 ルイズは、セイレーン公爵家に反する者達に目にもの見せてやろうと、あらん限りの手を使うことを決めた。

「イフリート、ノームなどこのリストに載っている貴族領に食糧をおろす商会に対しての供給も止めよ。」
「はっ、してこのリストは?」
「先程の貴族院評議会で、イフリートに与した貴族のリストだ。現状、帝国の食糧の半分を担っている当家を敵に回したらどうなるか思い知らせてやる。大商会を排除して、セイレーンから帝都への食糧輸送を当家が担っていることも理解してないような奴らにな。」
「そうすると、各貴族領では餓死者が・・・。」
「多少の蓄えはあるだろう。そう長くはいくさが続くことは無いだろうしな・・・。頭を下げてきたら、供給を再開させよう。」

 ルイズは、悪い顔をしていた。

「わかりました、アレックス殿から言われておりました、食糧、薬等の買い占めは停止しても。」
「食糧はこの後高騰していくから金の無駄だ、食糧以外は続けておけ。当家で使うかもしれんし。」
「はっ」

 指示を終えたルイズは、詰めている皇宮に戻っていった。

---------------------------

「帝都の高級食材の価格は日に日に高騰しているわ。貴族達が御用商会達に怒鳴り散らしているらしいわよ。うちのお父さんは、以前の4倍で卸しているらしいけど、飛ぶ様に売れてくって言ってたわ。明日は6倍にするらしいわよ。元々原価の30%位の利幅があったのが、原価の680%って、暴利そのものよね。下級貴族には厳しいわね。オホホホ」
「スノーさん。殿下の前でキャラ壊れているわよ。」
「すみません殿下。これも全てのアレックスが、」
「僕のせい?」
「いえいえ、大丈夫です。そうですか帝都がそんなことに。」

 そんな話を御者台と、キャリッジの中とで話をしていると、皇宮の入口についた。

 
「お疲れ様です。セイレーン公爵家です。」
「はい。手続きですので、申し訳ございませんが、キャリッジの中を確認させて頂いきます。」
「どうぞ、確認は静かにお願いします。後、責任者の方をお呼び下さい。」
「はい。」

 先導の騎士が、そう言うと、衛士の1人が番所に走り、もう3人が、キャリッジの中を確認した。

「えっ、皇子」

 と、叫びかけた衛士の口をもう1人の衛士が抑えた。

「殿下、ご本人ですか?」
「そうです。」
「どうして、って小官にお聞きする権能はございませんね。どうぞお通り下さい。」

 衛士達が離れていくと、番所から、面倒くさそうな顔をした騎士が一人出てきた。

「セイレーン公爵家か。どうされた。」
「まずは、キャリッジで、お話をお聞き頂きたい。」
「はぁ。」

 騎士は、面倒くさそうな顔をしながら、キャリッジに歩いて行った。

「あのーおー」

 騎士は、ビックリして叫び声をあげた。

「やぁ。」

 皇子が、挨拶すると、

「おお、おば、おばばばば」
「えーっと、お化けじゃないから。」
「えー。」

 騎士は動揺し過ぎていた。

「すこーし。落ち着いてくれるかな。」
「はっはは、はひ。」
「今から、父上にあってご説明しようと思うんだけど、手配をお願い出来るかな?」
「はっはは、はひ。」

 騎士はそう言って、走っていった。殿下もさっきまで、弱りきった感じが感じさせられ無いくらい、キリッとした顔で対応していた。僕達は、皇族専用入口まで進み、キャリッジから降りた。アレックスは、専用の車椅子に殿下を乗せ、迎えに来た殿下の騎士に預けて、私だけ殿下についていった。
 皇宮、第三謁見の間。簡単に言えば、陛下専用の応接間だ。入ると、その席には、陛下、皇妃殿下が座り、宰相閣下、宮内尚書閣下が後ろに控えていた。入口には、兄も立っていた。

「ガイアス無事だったか。」
「死んだと思って毎日泣いていたのよ。」
「父上、」

 三人は声を出して、オイオイ泣き出した。宰相は、時間の無駄だと思い、私に質問をしてきた。

「ところで、ガイアス殿下がどのように助かったのですか、ましてや、何故このタイミングで、セイレーン公爵令嬢と、もっと早くご連絡頂ければ。」
「その点ですか。私が報告を受けている範囲でご説明させて頂きます。」
「よろしくお願いします。」

 まだ泣いている三人をおいて、私は、宰相閣下に説明を始めた。

「我がセイレーンのアクアに、高速馬車道路を作った研究所があります。そこでは、魔導具技師、魔法研究者、鍛治師等を含めて多くの者が、流派、種族等関係なく、開発研究しております。その研究所で、何かあった時に、転送技術により瞬間的に逃げられる魔導具を開発しています。試作品は完成ておりましたが、竹林館テロ事件の時に偶々竹林館居合わせた者が転送用の魔道具を持っており使用しました。それによりシルフ公爵家の方をお助けしたのですが、想定以上の人数を転送した為、転送を受ける装置が不安定になってしまいました。不安定化によりどんな影響があるか想定出来ず、危険から、使用を禁止していました。そんな時に殿下を襲うテロが発生し、多分祖父は、最悪の事態を考え、持っていた魔導具を殿下にお渡したんだと思います。炎帝で馬車が壊れた弾みで魔導具が発動し、転送されたんだと思います。」

 宰相は、私の話に驚いていたが、冷静さをなんとか保とうとしていた。

「では、それで殿下は無事に避難を?」
「いえ、装置の責任者によれば、転送には成功しましたが、脳にダメージがあり意識が全く戻らない状況だったとの事でした。」

 宰相は、一瞬天を見たが、淡々と

「それでも、殿下が無事に避難したことを、何故すぐに報告しなかったのか?」
「閣下、装置はアクアにあり、研究所の者達が殿下の顔を存じ上げている筈は無いでしょう。殿下の意識も戻っていない状況でしたし、特に当時はセイレーンは、祖父前公爵の死で大混乱でしたから、不明な方が飛ばされてきても、報告して確認出来る状況にありませんでした。」
「そうか、で、あればどうやって、ここまで連れてこられたのだ。」

 宰相が、頭の整理が出来ず苛立っているのがよくわかる状況だった。

「昨日、殿下と面識のある者が研究所に訪れた時に、殿下であることが確認できました。その者の権限で、研究所にあったホーリーペインと呼ばれる薬を使って殿下を回復させました。殿下が気がつかれてから、専用の馬車を用意し、セイレーン経由で帝都に先程到着し、直接行っても皇宮には入れないので、当家によってから参りました。殿下をお助けした者は、帝都の状況を存じていなかった状況でしたが、確認できてからほぼほぼ最速でここに至った形です。」

 宰相は、なんとか納得して話を少し変えてきた。

「そうだな。セイレーン公爵家があって、ここにすんなり入れたな。でだ、いくつか確認だ。そんな魔導具聞いた無いんだが。」
「はい、今実験中の物ですので、完成したらご報告します。材料が相当レアだと聞いておりますので、どのくらいコストと、期間がかかるかわかりませんが。」
「それと、そんな技術どこから?」
「研究所は、ハイエルンのエルフと各流派の魔導具師、他に、魔導の研究者等が、出自、種族等を気にせず、協力して開発しているので、色々な技術が急激に発展してます。」

 その話を聞いて、宰相は、欲を出してきた。

「そうか、その研究所を帝国の所有に出来ないか?」
「現状、私がオーナーのクランの所有する商会の所有する工房という扱いです。掛けたコストを市場価格で計算すると、研究費だけで、大半が素材ですが、セイレーン公爵家の年間予算程を優に超える筈ですから、接収した場合、研究費負担出来ますか?」

 宰相は目を丸くした。

「えっ、そんな費用どこから?」
「クランが自分で調達しているので、ほぼゼロコストですが、帝国が運営されるので有れば、帝国で調達が必要です。」
「そうか。」
「あと、帝国から色々なポストを作って、人を送ると思いますが、その人達は大半貴族でしょう。エルフや、ドワーフ、平民等の研究者とフラットにやっていけないでしょう。自由にやらせることが肝なので、口や手を出した時点で、進歩は終わり、辞めていきますよ。」
「そうか、そうだな。帝国政府の人間では、特に宮廷魔導具師等は、プライドの塊だからな。」

 私の話に納得し、研究所を奪い取ろうと言う考えはあきらめた様だった。

「次に、ホーリーペインって、伝説の?」
「はい。多分意識が戻らないのは、脳細胞にダメージを受けたのが原因かと思われたので、ホーリーペインで、治したと聞いています。」
「ホーリーペインは、まだあるのか?」
「多分。」

 次に宰相は、ホーリーペインを欲する様だった。

「政府に売ってくれんか?」
「お売りするとすると、億の値が付きますが。」
「構わない。」

 宰相が、キップ良く、ホーリーペインを買ってくれると言ったのに、泣き止んだガイアス殿下が口を出してきた。

「宰相、その薬の提供者も、私を助けてくれた者も、同じ者だ。しかも、高速馬車道路建設の主導者も同じだ。金銭は幾らでもあるだろうから、金銭を払っても喜ばんだろう。高速馬車道路建築の褒美として、爵位で報いようと思っているんだが、どうだろう、今のいくさでセイレーンが勝ち、その成果、例えば、子爵相当の成果をあげ、褒美や、地位を得れば子爵の地位等、成果と、褒美に合わせて、爵位をあげたらどうだろうか?」
「カッカッカッカッ。ガイアス、よかろう。仮に、敵の主力の三分の一でも破り、国の一つでも貰えば王位でも与えよう。帝国の傘下の、公爵の傘下の王。面白い褒美だな。カッカッカッカッ。」

 殿下も話に乗ってきた。ガイアス殿下が生きてきて本当にうれしかったんだろうという感じだった。

「父上、大丈夫ですか?」
「何がだ。」
「その者は、フランツ王国と、バルザック王国の船団約90隻をトラップを嵌めて独力で殲滅してますよ。」
「なっ。」

 その話しを聞いて、私を含め、部屋の全員が固まっていた。陛下は、声が漏れていたくらいだ。

「90隻の軍艦なので、倒した兵士は約6~8万位ですか、誇張でもなく全滅させています。多分、セイレーンで最大の戦果は、確定的だと思いますが。」
「宰相、その成果だと、」

 陛下の声は震えていた。

「陛下、帝国軍でその成果を挙げれば、伯爵以上に叙されるかと。帝国海軍最高の五連星勲章と、陸軍最高の金獅子双翼勲章を付けて。」
「そんな英雄なら、帝国軍で欲しいのう。爵位なんぞくれてやるし。ガイアス、お前の部下として。」

 淡々とした宰相に比して、陛下は興奮していた。

「父上、あやつは、私の部下にはなりませんよ。セイレーン公爵令嬢の部下ですし。」
「アリアさん、貴女と、その者は恋仲んですか?」

 コイバナ大好きって感じで、皇妃殿下が入ってきた。

「いえ、私の親友に惚れてますが、告白出来ない状況です。」
「そうか、要はヘタレさんで、そんな判断出来ないんですね。」
「「そうです。」」

 私と、殿下のハモリにみんなが笑顔を取り戻していた。

「そうか。わかった。まあ良かろう。ガイアス、それにしてもな、最近のイフリート公爵のやり方は、皇室を蔑ろにし過ぎると思っておる。今回の戦で、3カ国をセイレーン公爵家の傘下にした暁には、そちに帝位を譲るつもりだ。今後の情勢に関わらず、お主を殺そうとしたイフリート公爵だけは、今のままでは置く気は無い。身を守ることを重点に置いて行動しろ。」
「はっ、父上。」

 陛下は、今までイフリート公爵に対してストレスが溜まっていたんだろうというのがありありと分かる感じだったが、ガイアス殿下を次期皇帝にというのは、部屋にいた誰しもが意外だった。

「ルイズ、そちは、帝都に残り、死ぬなよ。セイレーン公爵領には、時期を見て援軍を送る気でいる。それまで持たせろ。」
「はっ。」

 陛下は、セイレーンも助けてくれるようだった。

「宰相、イフリート公爵を潰す材料を集めよ。材料が揃い次第、イフリート公爵を潰し、セイレーン公爵領に兵を送るぞ。」
「はっ。」

 そう言って、陛下がひとしきり指示を送ると、皇妃殿下が、私をキラキラした目で見た。

「アリアさん。」
「はい、皇妃殿下。」
「アレックスさんの恋愛話は、ネタの大小に関わらず、随時報告しなさい。第一級機密書類として。」
「はい。」

 私は素直に答えた

「これでよろしい。」
「ここでの話は最高機密だ良いな。」
「「「「はっ。」」」」

 私は、別れて、アレックス達の待つ馬車に乗り邸宅に戻った。邸宅に戻ると、アレックス達に殿下が問題なく戻れることになったことだけを話、帝都の現状を説明した。

「帝都及び、帝都周辺の治安は安定しており、闇ギルドも、残った2マフィアで、帝都闇社会を牛耳り、治安の悪化を抑制させているの。」
「では、帝都の戒厳令は、無駄な?」
「いえ、違うのよ。」
「イフリートの狙いはあくまでこれ以上帝都で混乱を起こさないこと。特に、イフリート公爵家の者が混乱を起こさないことにあるの。その為に、帝都の学校も一時閉鎖にしているのよ。」

 そう言うと、みんな一瞬遠くを見た。遠くを見た後アレックスくんがある提案をしてきた。

「であれば、セイレーンに戻りますか?実は帝都のハイエルン事務所と、アクアのが…」

 私は、アレックスくんの提案を聞き、別の提案をしてみた

「それなら、その前に、帝都第一迷宮を潜らない?」
「どうしてですか?」
「帝都第一迷宮は、別名籠城迷宮。帝都が籠城した際に、食糧や、薬草等の物資を確保できる迷宮として知られているの。どうせ出発には、兄上だけでなく、いくつかの承認が必要になるし、その間でも、セイレーンの為の物資を。」
「そうですか・・・・スノーさんは」
「私は良いわよ。修行にもなるし」

スノーさんは二つ返事でうんと言い、ロッシもうなずいていた。
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