ドロップキング 〜 平均的な才能の冒険者ですが、ドロップアイテムが異常です。 〜

出汁の素

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第二章 アクア

第2話 3人のギルド長

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「ごめん下さい。」

 僕は、少女の宿屋に入ると、

「あっ、冒険者さん来てくれたんだね。」
「あぁ、僕はアレックスだよ。」
「おかーさん、お客さん。さっき言った冒険者さん。」

 そう言って、女将さんが出てきて、受付を済ませ、部屋に案内された。1人部屋で一泊50ゴールド、朝食夕食付き。相場感として、普通のクオリティで、普通の値段だ。とりあえず5日泊まることとし、また来るのでプールしておいて貰うことにした。

「アレックスさん。」
「えーと。」
「私は、マーサだよ。」
「マーサさん。ドボルベードさんが酷いと聞いたけど、詳しく教えてくれるかな?」
「えっ?」
「僕は、アリア様のクラン、アクアのクラン長代理なんだ、直接アリア様とお話ができるし、何を言っても問題ない立場にあるんだ。どんなことがあったか教えて欲しい。」
「あっ、えっ、」
「君の名前は絶対に出さないから・・・。」
「あっ、あの・・・。ゴクン」

 マーサは、唾をのみ込み語り始めた。

「5年前に前任のボボッガさんに代わり、ドボルベードさんが代官に変わったの。前任のボボッガさんは、副代官になったらしいんだけど、それから街が変わったの。内は商人ギルドに入っているんだけど、商人ギルドから連絡が着て、税金が増えたんだ、大人月1000ゴールドよ、微妙にきつくて、モーリシャスさんがお金を貸してくれてもダメで、最後はモーリシャスさんが力を貸してくれて、アクアを出ていった友だちもいたんだ。うちもきついかもしれない。空き地が多いでしょう。裏通りは殆ど空き地や、空き家よ。ここ5年で街の人の2割くらいいなくなったわ。あと、怖い船乗りさんが増えたの、ハーメリックの所に違いないけど、港に見知らぬ人たちが増えたわ。怖くて何をしているか分からないけど・・・。」
「そうか、じゃぁ、モーリシャスさんも、自腹を切って空き地や、空き家を買ってあげているんだろう。アリア様に預かったお金で買い上げて上げたら楽になるかな?タダで上げると怒られるけど、空き地や空き家を買い上げて上げるよ。一応、クラン長代理だからね。」
「そうなの?わかったわ。モーリシャスさんも喜んでくれるわ。私、伝えてくるね。」
「明日朝訪問するので、伝えといてください。」
「はいはいはーい。」

 マーサさんが駆け出していった。これで、モーリシャスさんの所は何とかなりそうだなぁ、後は行ってから考えるか。どうせ、金は魔石と金属、素材等を売りまくったので、アクアの土地全て買っても余裕で余る額あるし、本当にモーリシャスさんがサポートしてあげてたのであれば僕もサポートしてあげたしね。そんなことを思いつつ、夕食を食べ、次の朝商人ギルドに向かった。

「君が、アレックス君かな?」
「モーリシャスさんですね。」

 モーリシャスさんの執務室に入ると、小太りの禿げたおじさんが自己紹介をしてきた。

「マーサちゃんから聞いたが、空き地、空き家を全て買い取ってくれるそうですね。」
「はい、少しでもモーリシャスさんの助けになるかと思いまして。」
「いや、そんなことをして頂くても大丈夫ですが・・・。」
「どうせオーナーアリア様の金です。アリア様の失態で皆様にご迷惑をかけているのであれば、大体いくら位ですか?」
「えー、概算ですが7200万ゴールドです。流石に難しいでしょう。」
「では、これを」
 モーリシャスさんは、私が出した袋を見て目が輝いた

「1億ゴールドあります。これでどうでしょう。今、他の商人さんにお貸ししている借金もまとめて買い取れますかね?」
「おぉ・・・。うぅぅぅ・・・。良いでしょう。多少高くなりますが・・・。良いのですか。」
「手数料替わりです。権利書と、借用書を頂けますかね。」
「そうですか、お買いになられた場合、どこに保管されるんですか?結構な量になりますよ。」
「まぁ、クランの金庫に入れようかと思いますが・・・。」
「そうですか・・。わかりました。では、お売りします。」
「ありがとうございます。」
 モーリシャスさんは、笑みがこぼれて仕方ないとの表情で、私の提案をお受けいただいた。その後、契約書を交わし、権利書と、借用書を確認した。

「そう言えば、何かあった時に、商会等を買取ることが必要となる可能性があるので、商人ギルドに登録させて頂けますか?」
「いーですよ。でも、ルール的には1人が二つのギルドに入れないからなぁ。うー。そう、確かホールディングス制度っていうのがあって、他のギルドの商会なり、クランが、商会のオーナーになる制度が昔あったはずです。まあ、今適用している例が無いですけど、良いでしょう。こんなに商人達の事を考えてくれる方々ですから。」
「具体的には?」
「あぁ、普通オーナーを含めて、一つのギルドにしか入れないんですが、ホールディングスと認められた場合は、商会のオーナーになれるんです。今回の場合は、クランアクアが、商会のオーナーになれるってことですよ。会費は、クランの人分頂きますけどね。」
「とりあえず、クランは、オーナー含めて4人なので一月4000ゴールドですか、とりあえず、10万ゴールドお預けしときますね。」
「ありがとうございます。」
「そうそう、この街で以外でも商人ギルドにはいらなくても。」
「大丈夫です。商人ギルドの世界ネットワークで、正会員クラスの資格を発行しておきますので。」
「ありがとうございます。色々勉強になります。」
「君の様な、良い子が多いと、良いのだけどね。」
 そう言って、モーリシャスさんは、ニタニタと笑い見送ってくれた。僕は、受付で会員証を受け取り次のギルドに向かった。

「こんにちは。」
「こんにちは。」
「僕は、アレックス、新しく出来たクランアクアのクラン長代理です。若輩者ですがよろしくお願いします。」
「そうですか、私はアクアな職人ギルド長ラッツ。鍛治師です。」
 矍鑠とした、筋骨隆々のドワーフのお爺ちゃんだった。

「先程、商人ギルドのモーリシャスさんにお会いしてきたのですが、」
「あの、糞金貸しか。」
「まぁ、口は上手いし、良いことしてる感じでしたが、」
「良いこと?職人は、材料の流通を押さえられて、金を借りたらもうずっと奴隷扱いですよ。」
「そうですか。とりあえず、これで全てですか?」
「えっ」
 と、僕が出した借用書を見て、一枚一枚確認していった。

「これは、全てのはずです。」
「私が買取ました。」
「買い取ってどうされるんですか?」
「いや、何も、」
「何も?」
「そうです。今すぐ何かは考えてませんが、理想はあります。」
 そう言って、僕は、ラッツさんと2時間ほど話し込んで、職人幸せ構想を立ち上げた。お昼になったので、ラッツさんとランチをとり、港ギルドに向かった。

「あのー。」
 港ギルドは、酒場が併設しており、酒場に屈強な男達が朝から呑んだくれていた。
「あの~、すみません。ハーメリックさんいらっしゃいますか?」

 そう言うと、男達は一斉に僕を睨みつけ、1人の若い男が寄ってきた。
「なんだ坊主、うちのギルドに入りたいかい?やめとけやめとけ、うちに入っても仕事なんぞ無いから。」
「でも、港に船が、」
「あれは、ボボッガが連れてきた貿易船で、何も機密性が高い品をのっけて、おろしてるからうちらが荷運び出来ないんだ。でも、街に人が来て、多少活気が出るし、港使用料貰えるからこうやって呑んでられるんだがな。うっぷ」
「すみません。僕は、冒険者クランアクアのクラン長代理アレックスです。ハーメリックさんに挨拶に来たんですが。」
 そう言うと、奥の方からガラスのグラスが豪速球で飛んできた。僕は右手受け取り、1回転してで勢いを殺して何とかキャッチした。

「ただの小僧じゃない様だな。」
「一応Eランク冒険者です。」
「そうか、姫さんも自分の駒を増やしていっているんだな。」
 そう言って、ガラスを投げてきたガタイのデカい筋骨隆々のおじさんが、真っ直ぐ僕の方に寄ってきた。

「姫さんって、アリア様ですか?」
「あぁ、アリアの姫さんが小さい時、10年くらい前かな?」
「10年ですか?」
「そう、10年前、この街が、もう少し活気があった頃だ。今となっては少なくなったが、その頃は、アクア第一迷宮から出る鉱物を目当てにした冒険者が多くいたんだ。アクア第一迷宮は、ノーマルドロップが魔石ではなく鉱物で、単価的には魔石より稼げたから、それ目当ての冒険者と、冒険者目当ての宿、鉱物輸送の船、船員等良いサイクルで活性化していたんだ。それで10年前にアリア様が将来の領主になることが決まり、視察という名の顔見せにこの街に来たんだ。そん時は3歳の本当に可愛い子供だった。それを見た市民達はみんなおらが姫さんと呼んだんだ。」
「でも、今は何でこんな感じに?」
「あぁ、10年前に、ボボッガが赴任したんだ。それから、徐々にアクア第一迷宮に来る冒険者が減っていったんだ。理由はわかんねえが、今は、偶に流れの冒険者が来るくらいだ。その後、ボボッガが外国貿易船を呼び込んで来たが、俺たちの仕事にはなってねえし、そいつらは、買い物とかしてかねえから、徐々に街は活気を失っていった。あと、バーモンドから来た、高利貸しモーリシャスが、街の商会を次々に潰していったのもデカいな。知らないうちに商人ギルドを乗っ取り、有力商会を潰していった腕前は天才だよ。潰された商会の奴らは、散り散りになったんだ。」
「えー。宿屋のマーサさんの言うことと全然違うんだけど。」
「マーサ、あぁ、あの餓鬼か。モーリシャスは、弁が立つから、街の評判は悪くないんだ。この街の人は良い人が多いから、騙されやすいんだよ。正直言って、この街で誰が味方で誰が敵かわからねえけどな。」
「ハーメリックさん。ありがとうございました。ハーメリックさんが正しいか、モーリシャスさんが正しいか、僕には正直わかりません。でも、モーリシャスさんから、土地やら何やらで相当な金額の買い物をしてしまったので、モーリシャスさんを信じるしかないんです。」
「そうか。で、俺をどうするんだ。」
「さぁ、僕には何にも出来ません。ですが、港ギルドの皆さんにも姫がご迷惑をおかけしていると思うと、何もしないわけには行きません。」
「金でもくれんのか?」
「ただでお渡しできないので、うーん。今、港ってどのくらい空いてますか?」
「8割は空いてるよ。」
「じゃあ、8割の使用権を海に向かって10キロ位の利用権込みで幾らになります?」
「は?使用権か、港の脇のから岬まで付けて1日5000ゴールドでどうだ?」
「では、」

 そう言って僕は、1000万ゴールドを取り出して渡した。

「なんだよ。」
「明日から2000日分です。その代わり僕が更新を依頼し続ける限り、更新する権利を下さい。荷物の荷下ろし等があれば、皆さんにお願いします。」
「は?俺は吹っかけたんだぞ、姫さんでもそんな金出せないだろう。」
「公爵家を侮辱する行為に取られますよ。港の整備は必要なら私の方でやります。」
「おいおい、こんな莫大な額貰って何もしない訳には。」
「わかりました。ここにレベル10の土の属性魔石額40個あります。海を含めて厚さ10センチ、高さ5メールの壁で覆って下さい。良いですか。」
「わかりました。遠浅何で何とかなるでしょう。工事用魔導具もありますし。」
「ありがとうございます。」
 僕は大きく頭を下げた。

「そうだ、その魔導具幾らで買えるんですか?」
「おう、工事用魔導具は、50万ゴールド位だ。欲しいか?」
「はい。是非とも。趣味で」
「わかった。仕入れといてやるよ。貸す港の工事用としてなら問題ないだろう。金はいらない。サービスだ。ローカス、契約書を持ってこい。」
「はい。」
 僕は、契約書を締結し、ハーメリックさんと握手した。握手した際、ハーメリックさんが耳元に顔を近づけて来て、小声で、

「おい餓鬼、てめえ何企んでるんだ。」
 僕は笑顔で応じた。


 港ギルドを出て、拠点に戻ると、書類を持って執務室に向かった。書類を整理していると、ジジーンさんがやってきた。

「お疲れ様です。」
 そう言ってお茶を出してくれた。

「ありがとう。」
「その書類は?」
「モーリシャスさんから、商人や職人達向けの債権と、空き地、空き家の権利書。ハーメリックさんから、港の使用権です。大きな買い物しちゃいました。」
「大きいって、ど、どれだけかけたんですか?」
「秘密です。それより、明日から僕がいる時以外、この部屋には誰も入れないで下さい。」
「わかりました。」
「あっ、モーリシャスさんに言付けをお願いしたいんですが、とりあえず、債務者さん全員に、3か月間借用金の利息回収を停止する、いや無利子にすると伝えておいて頂きますか?モーリシャスさんのご行為とお伝えしても良いので。と。」
「どうしてです。」
「回収する人を雇ってこないといけないので、まだ、誰にも伝えていないので、モーリシャスさんが伝えて無ければ僕に誰も言って来ないでしょうし。モーリシャスさんが皆さんにお伝えになる前に。」
「わかりました。」
「私は、書類を整理してから帰りますね。」
 そう言うと、ジジーンさんはモーリシャスさんの所に行き、僕は宿屋に戻った。
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