ドロップキング 〜 平均的な才能の冒険者ですが、ドロップアイテムが異常です。 〜

出汁の素

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第一章 はじまりの物語

第10話 光の先

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 光が消えてくるとそこはだだっ広い部屋だった。

「はっなに?」
「えい、死ね。」

 スノーさんの言葉に、忍び装束の男が叫び。また光る石を光らせ消えていった。死ねって叫んで逃げてくってなんだ?と思ったが、そもそもここは何処なんだ?

「あっ、アレックスくん。」
「スノーさんに、アリア様。」
「アレックスくん、なんでって、一味じゃないだろうし、偶々探索中かな?」
「はい、声が聞こえてきて見たら、」
「どこから聞いていたの?」
「えっあの。」

 僕が動揺していると、

「そうなのね。分かったわ。」

 なんか、全てを察られた感じだ。

「で、本音ベースで、アレックスくんソロで初級迷宮クリアできる?」
「えっ、なんで?」
「大抵の迷宮は、ボス部屋が一番きついところなんだけど、この迷宮は別なの。」
「別って?」
「この迷宮の最深部には2部屋あって一つがボス部屋、もう一つがモンスターハウス。」
「モンスターハウスって、モンスターが無闇矢鱈と発生していくトラップルームの?最深部でモンスタールームってことは、この迷宮のボスクラスのモンスターが大量発生する。」
「多分そうよ。それで、こっちがワープ石で、あの遠くに見えるのが入口。」
「モンスタールームに入口は」
「一つしかないわよ。」
 委員長バリバリの可憐なスノーさんでなく、真剣で緊張感満載の今まで見たことがないスノーさんだった。

「スノーさんなら抜けられるよね。」
「数体ならなんとかなるけど、気力が持たないわ。」

 僕は、一瞬悩んだが、皆んなが生きる事が一番だし、天使と思ったスノーさんには全てを打ち明けてもと決心した。

「スノーさん、アリア様、これからの事は全て、質問なし、他言無用でお願いします。あとこれを飲んでください。時間がないです、動き出しました。」

 そう言うと、僕は2粒のきのみを取り出した。

「何これ?」
「なんですの?」
「気力のきのみです。100程上昇させるだけの個数を合わせています。」
「100って・・・。」
「僕を信じてください。」

 そう言うと、アリア様は迷わずきのみを一粒とり飲み込んだ。それを見ていたスノーさんもきのみをとり飲み込むと。

「ほんと、気力が漲ってくるわ。」
「そうね、何でこんなものを」
「質問はなしで、サモン うし吉、サモン ウサ吉、サモン スラ吉、サモン ゴブ吉、サモン ホネ吉。」

 そういうと、5体の召喚獣を呼び出した。

「頼むぞお前ら、全力で出口まで、スノーさんとアリア様をお守りするんだ。」

「ウォー」「モー」………

 それぞれが、雄叫びをあげモンスター達に向かっって駆け出した。ウサ吉の蹴りで、コマンダースケルトン達を文字通り一蹴し、ボブ吉と、ホネ吉は左右に分かれ、一刀でジェネラルスケルトン、キングスケルトンを切り裂いていく。スラ吉は、体を伸ばし、遠くで詠唱しているウィザードスケルトン、エルダースケルトンを叩き殺していき、うし吉が走りながら片っ端から吹き飛ばし、踏み潰していく。まさに殲滅という状況を築いている。

「あの、アレックスくん。私たちの強化って要らなかったんじゃないの?」
「あっ、ええ、何か、想定以上にこいつら強かったみたいで。」
「じゃあ、この間に何でこんな力をもったか教えてくださいね。」
「アリア様、質問はなしで・・・。」
「私領主の一族として知る義務が、アレックスくん、私のこと様づけだし、・・・。」

 アリア様がニーっと睨んだ、可愛い。それはさておき、後々のことを考えると教えないと持たないのは分かったので、説明を始めた。周りから見たら、召喚獣達が、ボス級のモンスター達を殲滅して道を作っている中を、和気藹々と話しながら進んでいる光景は異様なものだが、その時見ている人はいないので、周りの戦闘を忘れて、約一キロ先の出口に向かった。

「まず、私の特性というか、何というかわかりませんが、…」
と、僕は、ドロップアイテムが異常なこと、召喚獣のレベルアップのこと、装備のこと、ロッシとの事など細かく話した。

「分かったわ。要は、私の金蔓になって、一生私に使えるってこと?」
「スノー、おふざけになられるのも大概にした方が良かってよ。」
「いやー。スノーがギルドを作って、私がクラン長で、そのクランにアレックスくん達が入ってだねー。クランを通じて、うちの商会経由でアレックスくんが得たドロップ品を売り捌けば、アレックスくんは足が付かずにドロップ品を売却できるし、ブラックダイガーも、スノーが後見人のクランには流石に手を出し辛いからロッシくんも守れるし、うちの実家の商会も卸取引で稼げるし、私も利益の幾ばくかは手に入るから、結果おんなじことでしょう。ねっアレックスくん。」

 僕は、こんな可愛い目で見られると弱く、唾を呑み込み、首を縦に振ってしまった。

「ありがとう、アレックスくん。でも、色仕掛けに弱すぎるよ。」

 僕は、この自然なスノーさんに本当に恋してしまったみたいだ。

「ってことで、アリアよろしくね。もうすぐ出口だし。」
「わっかたわよ。でもクランの名前は、スノーが決めるのよ。」
「大丈夫。もう決めているから。アクア、水の精霊よ。アリアの魔法属性と同じ水で揃えてみたの。アリアの領地の領都もアクアでしょう。」
「そうだけど、仮初よ。実際には代官が治めているし、結婚したら父に返上するし。小さな港町よ。」
「でも、アリアの村でしょう。だから本部もアクアに置くの。海上都市にするの。近くに巨大迷宮アクア第1迷宮もあるし。」
「了解よ。ではその方向で手続きを進めるわね。クラン長スノー、スノーが帝都で勉強中のクラン長代理・副クラン長アレックス。御用商人は、スノーの実家で良いわね。私が後見人で、オーナーは、私の結婚を考えて置かない。本部はアクアで、支部をセイルーンとし、場所は確保しくわ。」
「当面の資金は?」
「私のポケットマネーでどうにかなるでしょう。」

 勝手に、色々なことが決まっていく。本当のエリート様達って、こんな風にスパスパ物を決めていくんだろうな。

「あの、色々決めて頂いてありがとうございます。ですが、私の頭ではこんなにスムーズに物を決められないので、良いのでしょうか?」
「はぁ?できないじゃなくやらないだけよ。常に考え、悩み、勇気をもって決めるの。皆、その努力と、意気地が足りないだけなんだから。」
「まぁ、スノーは、見栄の為だけどね・・・。」
「何よ、アリア。ブー。」
「膨れないの、スノー。アレックスくん。スノーの言う通りよ。生きるために死ぬほど努力し、勇気を持ちなさい。その勇気があなたを動かすの。自分を信じなさい。もしそれが出来なければ、スノーを信じなさい。貴方を信じるスノーを信じなさい。そうすれば、出来る様になるわよ。」
「そうよ、失敗は恐れなくていいわよ。どうせみんな失敗を重ねて成長するんだし、上手く失敗することよ。ある程度の失敗はどうにかなるものだから。」

 出口直前まできて、僕の弱気をつつかれてしまった。そして僕は決心した。

「わかりました。今日、この出口を出てから、一歩踏み出す勇気を持ちます。皆さんにご迷惑をかけるかもしれませんが。」
「その一言は余分よ。今日命を救って貰った位の借りは返すから。」
「頑張ってねー。」

 そして僕は、二人の後をついて出口を出ていき、その日の深夜迷宮の出口にたどり着いた。
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