最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~帝都決戦編 第7章~

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[忘却されし王族]

 「___ふっ!」

 ヴァスティーソはヨーゼフの背後に回り込み、刀を振り下ろす。刀がヨーゼフに当たる瞬間、ヨーゼフは残像を残すほどの勢いで回避する。そしてひらりと身を翻し、無数のマスケット銃を展開、掃射する。

 ヴァスティーソもヨーゼフに負けず劣らず目にも止まらぬ速さで弾幕を正面から突破し、ヨーゼフに斬りかかる。ヨーゼフも流石に200を超えるマスケット銃から放たれた弾丸を全弾真正面から回避されたことに驚いたが、直ぐに後退し、再度体勢を整えようとした。

 だがヨーゼフが後ろへ退いていると、ケストレルがいつの間にか後ろへ回り込んでいた。彼は大剣を横に薙ぎ払う。ヨーゼフが彼の大剣を周囲に展開したマスケット銃で防ごうとしたが、ガーヴェラの放った魔弾により、マスケット銃は弾き飛ばされてしまった。

 「はあぁッ!」

 大剣はヨーゼフの胴に深くめり込む。刃が丁度ヨーゼフの体の中央・・・背骨か何かに当たったのか、そこで止まった。ケストレルは一切躊躇することなく勢い任せに大剣を振り、ヨーゼフを吹き飛ばした。ヨーゼフは体勢を崩したまま、木で組まれた柵を次々と壊していく。

 土煙に巻かれてヨーゼフの姿が見えなくなる中、ケストレルは腹部を抑えてその場にしゃがみこむ。彼は顔を歪めながら、ヨーゼフから受けた傷を確認する。

 『ちっ・・・そろそろ限界、か。』

 ケストレルは腹部を抑えていた左手を見る。彼の右手には茶色と赤色が混じった血液と腐敗した肉がついていた。腐敗臭が鼻をつき、思わず目を細める。

 そんなケストレルの下にヴァスティーソが近づき、声をかける。

 「ケストレル、君はもう下がれ。その傷じゃあ、これ以上の戦闘はもう無理だろう?」

 「いや・・・まだ行け・・・るッ!」

 ケストレルは立ち上がろうとするが、強烈な痛みでその場に座り込んでしまった。ヴァスティーソはケストレルの方を一切見ず、ヨーゼフが吹き飛んで行った方を見ながら話を続ける。

 「『勇猛』と『無謀』は違うよ、ケストレル。それ以上無理に動いて傷を広げれば、少年やロメリアちゃんの助けに行けなっちゃうんじゃない?」

 「・・・」

 「だから後は俺に任せて、一旦退却して治療してもらうといい。状態異常能力の進行を少しでも遅らせるんだ。」

 ヴァスティーソがそう告げると、ガーヴェラも近くにやって来た。

 「ヴァスティーソ大隊長。」

 「お、丁度いいタイミングで来たね、ガーヴェラ大隊長。・・・彼を後ろに下がらせてくれないかい?さっきあの子から受けた傷がかなり悪化しちゃってるんだ。まだ控えてるウルフェンとの戦いにも彼の力は必要だから、ここで戦闘不能になってもらっちゃあ困るんだ。」

 「・・・了解しました。ヴァスティーソ大隊長の方こそ、お気を付けて。」

 「うん。了解した。まあ、あの子を倒すのももう時間の問題だと思うけどね。ケストレルの攻撃を受けた今、あの子の体も『裂傷』の状態異常能力に蝕まれているだろうし。・・・油断する気はないけどね。」

 ヴァスティーソが小さく口角を上げて微笑むと、土煙が一瞬で吹き飛び、ヨーゼフの姿が見えた。ヴァスティーソの言った通り、ヨーゼフの体はケストレルの状態異常能力に蝕まれており。体中ひび割れていた。また、彼の大剣によって受けた傷が相当深かったようで、胴体の左半身が削られていた。

 ヨーゼフが周囲にマスケット銃を展開するが、魔力を練れなくなっているのか顕現しても直ぐ粉々に崩れてしまう。ゆっくり近づいては来ているが、フラフラと真っ直ぐ歩けてはいなかった。

 それでもヴァスティーソは彼を見つめ続けている。ヴァスティーソは彼を見つめ続けながら、ケストレルに肩を貸しているガーヴェラに告げた。

 「ほら、噂をすればやって来たよ。・・・早く下がって。」

 ヴァスティーソがそう告げると、ガーヴェラはケストレルを連れてその場を去り始めた。

 ヴァスティーソが刀を構えていると、ヨーゼフはその場で立ち止まり、突然胸を抑えながら呻き始めた。

 「あ、がっ・・・ぅ、がぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 ヨーゼフは絶叫すると、彼の胸が突然裂けた。更に、裂けた胸から何か植物の根っこを連想させるような触手が現れ、彼の胸部を中心に巻き付いていく。また避けた胸を見ると、胸の中に金色に輝く球体が見える。

 『・・・何だ?』

 ヴァスティーソが警戒を強めると、ヨーゼフは天に向かって吠えるように叫ぶ。

 「いいい痛いッ!いだいよぉォォォォォォ、おおおおお姉ちゃんッ!痛いッ!痛いィィィィッ!」

 ヨーゼフがそう叫んだ、次の瞬間。ヨーゼフから大量の魔力が放出された。物凄い暴風にヴァスティーソは左腕で顔を覆う。

 白銀のオーラがヨーゼフを包み込む中、ヨーゼフの背中に一対の巨大な翼が生えた。純白の、天使を連想させるような羽が。ヴァスティーソは彼から感じる魔力と、変貌した姿に驚愕する。

 『一体・・・何なんだ、あの姿は。胸に巻き付いているあの蔦と言い、羽根といい・・・こんなものは初めて見るね。それにこの魔力量・・・こっから本番って訳かい?』

 ヴァスティーソが全身に魔力を漲らせ、改めて戦闘態勢を整えると、ヨーゼフは右腕を天に向かって伸ばす。すると、ヨーゼフの掌に不気味に黒く光っている槍が現れる。白銀のオーラを纏っているヨーゼフと漆黒のオーラを纏う槍の対称がすごく印象的に見える。

 ヨーゼフは槍を地面に突き刺した。すると、ヨーゼフやヴァスティーソを取り囲むように禍々しい黒炎が周囲を取り囲む。どうやらヨーゼフを倒さないと外へは出られないらしい。

 また、閉じ込められたのは2人だけではなかった。ガーヴェラとケストレルの2人も黒煙の結界の内側にいたのだ。

 「何だ⁉ちいっ、この炎・・・只の炎じゃない!」

 「・・・はっ、逃がすつもりはねぇってか?・・・どうすんだ、ガーヴェラ?無理やり通り抜けるか?」

 「貴様・・・この黒炎は突破できないと薄々分かってるのに、わざわざ私に聞くのか?」

 ガーヴェラは小さく舌を打つ。ケストレルはへへっと小さく笑う。

 この黒炎はヨーゼフの魔力によって顕現したもの・・・普通の炎ではなく、通り抜けようとするものを問答無用に灰と化す地獄の業火だ。勢いよく走り抜けようとしたところで無駄であり、水や土をかけても消えないだろう。

 ケストレルはガーヴェラの肩に回していた腕を退け、その場にしゃがみこむ。

 「ガーヴェラ・・・オッサンのサポートに行け。俺のことより・・・ヨーゼフの奴を倒すことに専念しろ・・・ぐっ!」

 ケストレルは口から血を吐く。どうやらヨーゼフから受けた状態異常が相当悪化しているようだ。

 「何を言っている!まともに動けないお前を放っておける訳が無いだろう!ほら、しっかりしろ!」

 「・・・」

 「おい!話を聞いているのか⁉」

 「聞いてるよ・・・さっきからずっと。」

 ケストレルは真っ直ぐガーヴェラの顔を見る。彼の顔は死人の様に真っ白で、生気を感じられなかった。

 「いいから・・・俺のことはほっといてオッサンの所へさっさと行け・・・あいつはお前やオッサンの方を脅威としてるだろうから、俺には攻撃してこねえよ・・・こんな死にかけの俺なんざ、眼中に無いだろうしな。」

 ケストレルはそう言うと、顔を下に向ける。ガーヴェラは何も言わず、ケストレルを見つめる。少しの間の後、ガーヴェラはリボルバーを抜き、ケストレルに話しかける。

 「分かった。不本意だが・・・今回だけはお前の言うことに従ってやろう。・・・その代わり、私が従ってやるからには、それ相応の働きをしてもらうぞ?」

 「・・・はいよ。」

 ケストレルは覇気のない返事をする。ガーヴェラは踵を返し、呟く。

 「・・・絶対に死ぬなよ。どんなに意識が朦朧としても決して寝るな。・・・分かったな?」

 ガーヴェラはそう言ってヴァスティーソの元へ走っていく。ケストレルは遠くなるガーヴェラの背中を見ながら小さく微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 『さて、と・・・向こうはどう動くかな?』

 槍を地面から引き抜き、右手に携えながら近づいてくるヨーゼフを見ながら、ヴァスティーソが彼の出方を見ていると、ガーヴェラが横にやって来る。ヴァスティーソはちらりと視線を横に逸らしてガーヴェラを見る。

 「・・・彼はどうしたの?」

 「離れた所に置いて来ました。」

 「離れた所・・・ねぇ。ここから普通に彼の姿が見えるんだけど?何処が離れた所なのかな?」

 「黒炎のせいで逃げられませんでしたので、出来る限り離れた所という意味です。」

 「彼、巻き込まれても知らないよ。」

 「いいですよ。・・・別に気にしていませんので。」

 ガーヴェラは銃を構える。ヴァスティーソは短く溜息をつき、ぼそりと呟いた。

 「はぁ・・・素直じゃないねぇ。」

 「・・・」

 「ま、いいや。今はあの子を何とかしないとね。」

 ヴァスティーソは息を吐いて精神を整えると、ガーヴェラに尋ねる。

 「ところでさ・・・あの子の名前や情報。彼から聞いてたりしない?」

 「いきなり何を・・・」

 「ちょっと・・・あの子が持っている槍がね、気になってね。」

 ヴァスティーソはヨーゼフが持っている槍を見つめる。ガーヴェラはリボルバーの撃鉄を起こし、話を続ける。

 「あの男が言っていた話では、名前は『ヨーゼフ・ロメルダーツェ・ローゼンヴァーグ』。コーラス・ブリッツへ入る前はロメスティルニア大陸の奥地にある廃城で過ごしていたそうです。」

 「・・・成程、あの子はローゼンヴァーグ家の末裔だったのか。納得したよ。」

 「何がです?」

 「あの子が持っている槍、あれは代々ローゼンヴァーグ家に伝わる神槍『グランニーヴェ』だよ。使い手の寿命を消費する代わりに絶大な力を得る、神槍とは名ばかりの呪いの武具だね。」

 「・・・何故知っているのですか?」

 「小さい頃、城の書庫で見つけた武具図鑑が好きだったんでね。それで偶々覚えてたんだよ。」

 ヴァスティーソは少し得意げな顔をしながら話を続ける。

 「神槍『グランニーヴェ』を保管していたローゼンヴァーグ家はかつて超がつくほどの名門王族だった。大昔には僕達ローゼルニルファーレ家と、ロメリアちゃんのフォルエンシュテュール家、そしてローゼンヴァーグ家の三大王族が世界の覇権を握っていたんだよ。」

 「でも今残っているのはローゼルニルファーレ家とフォルエンシュテュール家だけですよね?それにそこまで有名な王族なら何故ほとんどの人々が知らないのですか?」

 「さっきの話はね、今から1500年も前の話なんだ。はっきりとした理由は分からないけれど、ローゼンヴァーグ家は1500年前に没落し、彼らが支配していたロメスティルニア大陸は魔術師達がウィンデルバーグを建てるまで不法地帯と化したんだ。恐らく長い年月を経る内に忘れ去られたんだろうね。」

 「・・・」

 「それにしてもその末裔があんな姿になるなんて・・・悲しいね。」

 「同情でもしましたか?」

 「いいや。同情なんかしないさ。ただ・・・引導を渡してあげたいなって、思っただけだよ。歴史から消えた、哀しい王族の物語を、ね。」

 ヴァスティーソがそう言うと、ヨーゼフが一気に魔力を放出する、天を貫く魔力のオーラを身に纏いながら、ヨーゼフは静かに槍を構える。

 そして次の瞬間、ヨーゼフはヴァスティーソに目掛けて突撃する。ヨーゼフが通った地面が勢い良く抉れる。

 ヴァスティーソは一瞬でその場から姿を消すと、横に回り込んでヨーゼフに斬りかかる。ヨーゼフは素早く身を翻してヴァスティーソの剣戟を防ぐ。そのまま巻き取るように槍を動かし、ヴァスティーソの体勢を崩す。

 ヨーゼフはその隙に攻撃を仕掛けるが、背後に回り込んでいたガーヴェラが発砲する。ヨーゼフは一瞬だけガーヴェラに意識を持っていかれたが、一切振り向くことなく、周囲にマスケット銃を展開し、ガーヴェラに向けて一斉に掃射する。ガーヴェラは横に駆け抜けて回避する。

 ヨーゼフが一瞬ガーヴェラに意識を持っていかれた隙を活かしてヴァスティーソは体勢を立て直し、絡めとられていた剣を真上へ振り、槍を弾き飛ばす。だが弾き飛ばした槍は意思を持っているかのようにヴァスティーソの方へ飛んできた。

 ヴァスティーソは後ろへ下がったが、ヨーゼフがヴァスティーソの方へマスケット銃の戦列を構築し、順に発砲していく。ヴァスティーソは音速を超える勢いで刀を振り、刀に纏わせていた魔力と周囲の風を真空波の様に飛ばす。弾丸は細切れになり、ヴァスティーソを通り過ぎていく。

 ヨーゼフはガーヴェラに一切目を向ける事無く、ヴァスティーソの方へ槍を構えて突撃する。それから激しい近接戦となり、巧みな槍術と怒涛の勢いで攻めるヨーゼフに、ヴァスティーソは太刀筋が視認できない程の高速斬術で対応する。互いの武器がぶつかる度に周囲に発生した衝撃波が周囲を更地にしていく。

 ガーヴェラはリロードをして、ヨーゼフに狙いを定めようと構える。しかしあまりにも速すぎて捉えきれない。

 『くそッ!目で追え・・・無いッ!役に立ててないッ!ヴァスティーソ大隊長に任せてばかりだ!』

 ガーヴェラはより加速していく2人の戦闘速度を見ながら唇を噛む。

 『何て様なんだ、私は。この程度の実力しか無いの・・・ケストレルに偉そうなことを言っていたのか?あいつがもし万全な状態なら、きっとあの超人達の間に割って入れるだろう。それに比べ、私は・・・』

 ガーヴェラが自分の無力さを思い知らされていた___

 ___その時だった。

 「何ボケてやがる!ガーヴェラ!」

 ケストレルの叫び声がガーヴェラの意識を戻す。ガーヴェラの視線の先にはこちらに向かって突撃してくるヨーゼフの姿があった。どうやら意識を別の所へ持っていかれたのを見抜かれていた様で、ヨーゼフはヴァスティーソとの戦闘に集中する為に邪魔者のガーヴェラを排除すると決めたようだ。

 ガーヴェラの反応が遅れ、ヨーゼフがガーヴェラの懐にまで接近する。ヴァスティーソはヨーゼフが出現させたマスケット銃の戦列に阻まれていた。

 「ちぃッ!」

 ケストレルは腰に差している短刀を抜くと、ヨーゼフ目掛けて投擲する。ヨーゼフはケストレルのことを眼中に入れていなかったのか、短剣は反撃されずにヨーゼフの首に刺さり、刃先が貫通した。ヨーゼフはケストレルの方をギロリと睨みつける。

 ガーヴェラはその隙に後ろへ下がり、銃を構える。その際、妙に輝く心臓部が目に付き、すかさず狙いを定め連射する。

 「あああああああああああああっ!」

 ガーヴェラの放った弾丸がヨーゼフの胸で輝く球体に命中した瞬間、首を貫かれても蚊に刺された程度の反応しかしなかったヨーゼフが突然大きな叫び声をあげてよろめいた。ガーヴェラはヨーゼフの反応を見て、確信した。

 『あの心臓部が弱点か!というより、首に刺さった短剣の反応から見る感じだとそれ以外はダメージを受けないって感じだな・・・』

 ガーヴェラは続けて連射するが、ヨーゼフは咄嗟に左腕で全ての弾丸を受け止める。また、弾幕を突破してきたヴァスティーソがヨーゼフに接近する。

 ヴァスティーソがヨーゼフの背後から胸を貫こうとした、その時。

 「うあああああああああああああああああああッ!」

 ヨーゼフが突然雄叫びを上げ、纏っている魔力を炸裂させる。その時に発生した衝撃波で近くにいたヴァスティーソとガーヴェラは体勢を崩された状態で吹き飛ばされた。ガーヴェラは地面に叩きつけられると持っていた銃を落としてしまった。

 「ぐ・・・ぐあああああああああああっ!」

 ヨーゼフは首の短剣を引き抜いて地面に叩きつけると、ケストレルに向かって突撃していく。ガーヴェラを仕留め損なった原因を作ったからなのか、はたまた単に目障りだっただけだったのか・・・どういう理由かは知らないが、次の標的はケストレルに定めたらしい。

 「くっ・・・そ!」

 ケストレルは逃げようとしたが、痛みでまともに動けない。もうすぐ傍にまで接近していたヨーゼフを視界に捉えると、ケストレルの脳内に走馬灯が一気に流れる。

 かつて罪を犯した記憶・・・師匠とガーヴェラの家族を奪ってしまった記憶・・・フォルト達との記憶・・・妹をこの手で殺めた記憶・・・刹那の間、ケストレルは様々な感情が入り混じった記憶を思い浮かべ、笑みを浮かべた。

 別に面白くて笑った訳ではない・・・ただ、これで自分の人生が終わるのだと、罪を滅ぼすことなく、半端者として死ぬのだと理解したからだ。

 ヨーゼフが『死』を纏ってすぐ目の前にまでやって来た・・・ケストレルはゆっくりと目を瞑った。

 目を瞑ったその時、目の前にフォルトとロメリアの顔が思い浮かんだ。

 『あぁ・・・畜生。ここまで・・・か・・・すまねぇな・・・フォルト、ロメリア・・・お前らの所には・・・行けそうにねえ・・・。___約束守れなくて・・・ごめんな___』

 ケストレルは懺悔をするかのように呟き、死を迎える覚悟を整えた___

 ___その時だった。

 ドスッ!

 ケストレルの顔に何か温かい液体がついた。ケストレルがゆっくりと目を開けると、目の前の光景に言葉を失った。

 「ッ⁉」

 ヨーゼフも目の前の光景に驚いているようで動きが止まっていた。戦場が一瞬で静寂に包まれる。

 ケストレルが驚愕していた訳・・・それは___ガーヴェラがその身を盾にしてケストレルの前に立ち、胸を槍に貫かれながらもヨーゼフの槍を掴んでいたからだった___
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