最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~古都防衛編 第7章~

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 虎高が言葉を区切りこちらを見て来たので俺が言葉を引き継ぐ。

 「まあ、申し訳ないがここで発言して万が一にでも敵に知られると面倒な為詳細は起誓文に記してからみんなに伝えようと思う。しかし、みながこのように自分たちで考えて行動してくれるのはとても嬉しい。ただ与えられる命令を愚直にこなす。

 それも立派だが自分たちで考えて判断してその場の上官に提案するのもまた大切なことだ。言ったから行動に移されるかどうかは別だが言わなければ指揮官はその提案に気づいていないかもしれない。もしかしたら、より良い提案が君たちから出て戦況を変えるかもしれない。恐れずに行動に移してほしい。

 また、これから君たちには指揮官として働くことを期待されている。指揮官という立場は兵を指揮して戦場で有利になるように動く者だ。兵を指揮するために統制を恐怖や威圧感で取るのではなく、人格や人柄で是非統制を取ってほしい。そうすることで下のものは意見が言いやすくなる。それは自分達がその立場になった今ならわかるはずだ。それに加えて、彼らの提案を受け入れ実行に移す場合失敗しても責めてはいけない。君たちが実行に移すと指揮官として判断したなら、上のものとして責任は自分にもあると考えよ。反省点を受け入れてより良くすることは大事だがな。

 俺が伝えたいのはこんなところだ。これからもよろしく頼むぞ。」

 皆の顔が引き締まり応!という声が部屋に響いた。俺は皆の顔を見て頷くとサッとその場を立ち去る。話が終わった後にいつまでもいると彼らが中々その場を立ち去り辛いのを理解しているからだ。

 立ち去った後、俺に用意された部屋へと向かい小太郎を呼び出し話を聞く。

 「小太郎、今川の別働隊と本隊の様子について聞かせてくれ。」

 「はっ、まずは別働隊に御座いますが確実に岡部親綱を工藤政豊殿が討ち取り朝比奈泰能殿に交渉で遺体を渡した後、そのままこちらへと向かっているそうでございます。その後、朝比奈泰能殿本人は護衛を30人ほどつけ、こちらに向かっているそうです。残った軍は副官に任せているようです。

 今川本隊では雑兵が絶望しています。彼らに戦意は全くなく、いつ我らの大砲から攻撃を受けるか、後ろから襲われないかなど恐怖しています。また、将官ですが太原雪斎と今川義元は何度も話をしているそうです。話の内容までは探れませんでしたが他の将兵から漏れ出ている話だと交渉で時間を引き伸ばし少しでも関東での動きを援助するか、さっさとこちら側での交渉を少しでも有利にまとめて今川に利があるようにしようという考えが二つ流れております。

 これは多分ですが太原雪斎の手によるものだと考えられます。」

「なるほどな、よくわかった助かる。朝比奈泰能が到着して更に話し合いを明日すると思う。無理はせずに情報を探ってくれ。」

 「はっ!」

 「それと、千葉利胤に羽鮒城を任せて残りの将は先に港へ向かうように指示を出せ、兵はそのままだ。加えて武田との交渉も開始したいから武田信繁の方に使者を送ってくれ、こちらに特に賠償や責任問題にするつもりはない武田とはこれまでとは変わらない取引を約束するからさっさと軍を引けとな。なんなら古米を渡してやってもいいな、古米を羽鮒城に集めて敵の兵に食わせてやれ。」

 「は?、はっ、わかりました。」

 これで、相手の雑兵が今川 武田に戻った時に北条の振る舞いの良さを広めてくれるはずだ。これから同盟を組んだ後はどんどんと人が流れてくるはずだ。笑いが止まらないね。武田にお咎めなしで帰してやれば今川と武田の間では不信感が生まれ、他国からは武田と北条は手を取り合っているように見えるはずだ。

~side今川義元~

 「くそッ!親綱を亡くしてしまったというのか… 元信、お主が岡部家をこれから盛り立てるのだ。我は親綱に恥じぬように生きる。ついてこい。」

 古参の重臣の死に今川将官は動揺が隠せない様子だが我の言葉に対して涙腺を緩ませ、はっ!と声を震わせる。これで敵討ちという流れよりも我の判断についていくという形になった。

 「悔しい事だが、我らが準備した策よりも相手が用意していた備えの方が一枚も二枚も上手だったのだ。今は耐え忍ぶのだ。我らは河東を手に入れることはできないだろうが何としてでも敵対関係を解決して京を目指す!我らが天下を取るのだ!前を向け今川の将よ!我らが京を取れば此度の敗戦が無駄にはならない!えい!えい!」

「「「「応!!!!」」」」
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