最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~避難民防衛編 第7章~

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[襲撃]

 「敵襲確認!北西よりコーラス・ブリッツのワイバーン騎兵隊が接近!その数・・・およそ1000!」

 「クソッ!さっきまで通じていた無線が突然使えなくなった!妨害されたかッ!」

 「早く戦闘態勢に入れ!ここで沈む訳にはいかんぞ!」

 船が慌ただしくなり、緊張が漂う。ロメリアが信じられないとばかりに焦りの表情を浮かべる。

 「北西から⁉サンセットフィート港がある方向はここから南西の方角じゃあ・・・」

 「奴ら、結界に感知されないよう迂回してきたんだ!・・・通りで後ろから気配がしない訳だッ・・・」

 フォルト達の視線の先には雲霞の如く広がっている黒いワイバーンの姿が確認できる。もしかしたら1000以上いるんじゃないか・・・フォルトは直感でそう感じた。

 古都軍の船がすぐさま戦闘態勢に入って行く。周囲が緊張状態に包まれる中、フォルトがヴァスティーソに話しかける。

 「ヴァスティーソ。」

 「何だい、少年?」

 「僕、ニファルと空に上がって戦うよ。出来るだけ船の方にワイバーンを近づけさせないようにしたいんだ。」

 フォルトの提案にロメリアがすぐさま反論する。

 「だ、駄目だよ!あんな大軍にたった1人で突っ込んだら死んじゃうよ!」

 「大丈夫、ニファルと一緒なら落ちないから。ね?」

 「ガウッ!」

 フォルトがニファルの頬を撫でると、ニファルは勇ましく唸った。ヴァスティーソがフォルトに話しかける。

 「でも少年、どうやって戦うつもりだい?ワイバーンに乗って戦闘をする場合、あまり近接武器は使わない・・・魔術を使って攻撃するんだよ?少年だけじゃあ戦えないんじゃないかな?」

 ヴァスティーソが静かに語ると、シャーロットがフォルトに近づき、彼の横に立った。

 「フォルト・・・ワイバーンは2人乗り・・・出来ますか?」

 「うん。以前僕とロメリアは一緒に乗ってたけど全然問題なかったよ?」

 フォルトがそう告げると、シャーロットはフォルトの目を真っ直ぐ見つめた。フォルトは思わず彼女の目から伝わる気迫に押されてしまった。
 
 「・・・私が乗ります。私なら魔術が使えますからフォルトの役に立てるはず・・・だから・・・その・・・私を連れて行ってくれませんか?私、フォルトの邪魔にならないよう頑張りますから・・・」

 「・・・」

 「それに・・・」

 「それに?」

 「・・・」

 シャーロットが少し恥ずかしそうに頬を赤く染めて笑みを浮かべる。フォルトは黙ってしまった彼女の笑みを見て、大きく頷いた。

 「・・・分かった。一緒に行こうよ、シャーロット?僕一人じゃあ厳しいからシャーロットが一緒に来てくれるなんて心強いや!」

 「フォルト・・・」

 シャーロットはフォルトの顔を真っすぐ見ながら優しく微笑んだ。フォルトはシャーロットに微笑み返すとニファルに乗った。

 「さぁ、シャーロット!僕の後ろに!」

 「はい!」

 シャーロットはフォルトの手をそっと握ると、フォルトが一気に引き上げて後ろに座らせた。シャーロットは両腕をフォルトの腰に絡ませて、体を密着させる。フォルトの背中からシャーロットの温もりと柔らかい体の感触が伝わってくる。フォルトが頬を染めて後ろに顔を向けると、シャーロットも少し恥ずかしそうに顔を覗かせてきてフォルトは咄嗟にロメリア達の方に顔を向けた。ロメリアはフォルトを細目でじぃ・・・見つめてきており、ケストレルはにやにやと笑みを浮かべていた。

 「じゃ・・・じゃあ皆行ってくるね!シャーロット!しっかり掴まっててね!」

 「勿論です・・・絶対に離れません。」

 フォルトが手綱を引いてニファルを大空へと飛び上がらせた。フォルトとシャーロットはニファルの背中に乗って蒼穹へと飛び込んでいった。
 
 ヴァスティーソ達が大空に舞いがって行ったニファル達を見上げながら呟いた。

 「おぉ~速いね~!もう見えなくなっちゃったよ~!」

 ヴァスティーソが感心しながら空を見上げる。ロメリアは空に上がったフォルトから視線を逸らし、迫り来るコーラス・ブリッツの大軍を見つめた。

 「さて・・・と。私達も出来る事をやらないと!」

 「そうだな。あのガキ共のお荷物になるのだけは御免だぜ。」

 ケストレルが呟き、ロメリア達は船の上で他の戦闘員達と共に戦闘態勢を整える。フォルトとシャーロットを乗せたニファルは船団の上を大きく旋回していた。
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