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~避難民防衛編 第4章~
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[疾走]
「皆さん押さないで下さい!押すと前の人が潰れてしまいますのでご協力をお願いします!」
フォルト達が転送された先で聞こえてきたのは、けたたましい喧騒だった。老若男女入り混じった怒号があちこちに飛び交い、それらの声を必死に抑えようと警告する人の声が負けじと周囲に轟いていた。
フォルト達が転送されたのはサンセットフィートの浜辺だった。かつてフォルトとロメリア、ケストレルがビーチバレーした場所・・・そしてロメリアの水着が流された場所だった。
砂浜には以前の活気はどこかに消え失せ、あちこちに大小様々な鞄から帽子、クマのぬいぐるみといった本来ビーチにあるはずの無いものが散乱していた。港には大型の船が幾つも停泊しており、出航していく船には遠くからでも視認できる程人がびっしりと詰まっていた。
「あの船に乗ってる人も港にいる人達もあれ全員・・・避難民ですか?」
「みたいだな。港に停泊してある大小様々な船に取り合えず乗って、フィルテラスト大陸へと向かう気みてぇだが・・・恐らく今この場にいる住民達を乗せることは出来ないだろうな。」
「あの中にテロリストが紛れてても分かんねぇよな・・・避難民に紛れてフィルテラスト大陸へ侵入する可能性も十分あるぜ?」
「でもこの状態じゃあ身元確認なんて出来る訳ない・・・視界に入った人達を乗せれるだけ乗せている感じだから・・・」
フォルト達が人で溢れ返っている港と船を浜辺から見つめていると、後ろから気配がして声をかけられた。
「おい貴様ら何者だ!ゆっくりとこっちを向け!」
フォルト達が男達の声に反応して後ろを振り返ると、そこには複数名の鎧を着た男達が槍を構えて立っていた。先頭にいる男が首を素早く振るとフォルト達の周囲を取り囲んで槍を向ける。ヴァスティーソが小さく顔を頷きながら囁いた。
「おおっと。早速手厚い歓迎だね~?」
ヴァスティーソがそう声を上げると、ロメリアがフォルト達の前に出て皆に聞こえるよう声を張った。
「私達は古都から皆さんを助けに来た者達です!皆さんの救援依頼を受けてやって来たんです!」
「依頼を受けてやって来ただと?たった5人でか?しかもその内2人は子供・・・怪しい奴らめ・・・」
「信じて下さい、本当なんです!古都からの親書もほら!今持っているんです!」
ロメリアがルーストから受け取った親書を男達の所へ持っていこうと両手を上げてゆっくりと歩きだした。男達が警戒を崩さずに槍を構えてロメリアを睨みつけていた。
するとその時、先程ロメリアを怪しんでいた隊長格と思われる兵士の横にいた兵士が何かをふと思い出したかのように目を大きく見開いて口を半開きにすると槍を下ろした。彼の他にも幾らかの兵士はロメリアの姿を見つめている内に槍を地面へと向けていく。
「き、貴様ら!何武器を下ろしている⁉早く構えんか!」
隊長格と思われる男がそう叫ぶと、一番初めに槍を下ろした彼の横にいる兵士が彼に呼びかける。
「貴方の方こそ武器を下ろした方がいい。目の前のお方に見覚えは無いのか?」
「何だと?貴様、どの口が・・・」
男が口出しをしてきた兵士を威嚇しながらロメリアを横目で見つめていると、彼も彼女のことを思い出したようですぐさま態度を豹変させた。
「まさか貴女は・・・ロメリア様⁉本当に・・・ロメリア様なのですか⁉」
「・・・『元』だけどね。」
ロメリアが呟くと、隊長格の兵士が槍を天に向けて膝をついた。周りにいる兵士も一斉に矛先を空に向けると膝をついて頭を下げた。その光景を見たヴァスティーソは口笛を吹いた。
隊長格の兵士が緊張気味にロメリアに話しかける。
「も・・・申し訳ありませんでした、ロメリア様!このご無礼をどうか・・・どうかお許し下さい!」
「・・・顔を上げて?私はもう王族じゃないんだからそんなに頭下げないでよ。・・・皆もほら、顔を上げてよ?こんなたった1人の女に頭下げなくていいんだから・・・」
ロメリアは周囲に膝をついている兵士達に優しく語り掛ける。ロメリアはそのまま周囲を見渡すと、先程隊長格の男に進言した兵士に話しかける。その兵士がゆっくりと顔を上げてロメリアの顔を見つめると、ロメリアは懐かしいものを見るかのように頬を緩めた。
「久しぶりだね、リース・・・最後に会ったのは勘当されたあの日に城門の前で声をかけてくれた時だったよね?確か『困ったことがあれば直ぐに呼んでくれ。直ぐに駆け付けるから。』・・・だったかな?」
「ロメリア様に覚えて頂けたとは光栄の極みです。」
「止めてよ、リース!いっつも城を抜け出す時に見過ごしてくれてたのが貴方だったのに私が忘れる訳ないでしょ?というか、城にいた皆は今でもはっきりと覚えているよ!・・・城の皆はどうしてる?」
「・・・分かりません。私達若い衆もコーラス・ブリッツの者達と交戦しようとした所、隊長や年配の兵士が俺達に国民を連れて逃げるよう命令をしたので・・・私含め若い近衛兵は城の皆様がどうなったかは・・・」
「・・・」
「申し訳ありませんでした、ロメリア様・・・みすみす、敵に背中を見せながら逃げてきてしまい・・・最期まで戦わず逃げてきてしまい・・・申し訳ありません・・・」
「何言ってるの!貴方は国民を連れて逃げるという使命があるんでしょ⁉・・・私に謝るより、先輩達から託された任務を全うしなさい。・・・大丈夫、貴方ならきっと出来るから。」
ロメリアが屈託のない笑みを浮かべると、リースは嬉しさと安堵を滲ませた笑みを薄っすらと浮かべた。ロメリアと面識があるということはこの男は近衛兵・・・兵士の中でも熟練の者なのだろうかとフォルトは2人を見つめながら考えていた。
ロメリアの促しで兵士達が一斉に立ち上がると、ロメリアが親書を隊長格の男に見せてリースに現在の状況を尋ねた。
「今の状況は?」
「芳しくありません・・・民達は兵士の言う事を全く聞かず、我先に脱出船へと乗り組んでいる状況です。現在でも人混みに圧迫されて死者すら出ている状態です。」
「人間の醜い所だな。自分の命が最優先で自分さえ生きられるのなら他者の命を文字通り踏みつぶしてもいいって感じだな。・・・ま、それが普通なんだけどな。」
ケストレルが港に固まっている民衆の方を見つめながら呆れたように呟いた。ロメリアが質問を続ける。
「指揮者は?フォルエンシュテュール家の者はいる?」
「先の混乱で指揮系統が滅茶苦茶になっていて・・・誰も指示を出しておらず、各兵士が各々の判断で出している状況です。そしてフォルエンシュテュール家の人達は全員消息不明で・・・彼らが不在の状況もこの混乱に一因になっています。」
「やはり報告通り、誰もいないっぽいね・・・それに軍隊の指揮も王族が握っていたのか・・・部隊長とかはいないの?」
フォルトの質問にリースは首を激しく左右に振る。
「いますが全員意見がバラバラで・・・撤退指示を出す者もいれば応戦指示を出す者がいる・・・もう我々の手には負えません!」
「相当現場は混乱してるみたいだな・・・どうするロメリア?例の情報を教えたほ・・・」
ケストレルがロメリアにコーラス・ブリッツが再進軍を始めたことを伝えるか提案したその時だった。ロメリアが突然、港に向かって全力疾走し始めたのだ。
フォルト達に一切言葉を告げずに走り去っていくロメリアにフォルトが叫んだ。
「ロメリア⁉勝手に何処に行くのさ⁉」
「追いましょう、フォルト!ロメリア・・・きっとみんなの前に出るつもりですよ!」
「おいおい!あんな混乱してる中、突然姿を見せたら余計パニックになるぞ⁉」
「全く・・・ロメリアちゃんと一緒にいたら飽きないねぇ!」
フォルト達はロメリアの後を追って砂浜を疾走する。既にロメリアは砂浜から街の中へと入っており、人混みの中へと紛れ込んでいた。
ロメリアは人混みをかき分けながら、船が停泊する港口へと向かう。体が左右から激しく圧迫されながらもロメリアは着実に前へと進んでいく。
「すみません!前を・・・前を失礼しますッ!」
ロメリアが大声で叫びながら前へと進んでいると、周囲の人々がロメリアの事を感づき始めた。
「おい見ろよあの女・・・あれロメリア様じゃね?」
「私の見間違いかしら?今ロメリア様が横を通って行ったような・・・」
「ね~ね~おと~さん!今お姫様がいたよ~!」
周りの人々がロメリアの噂をする中、ロメリアは何とか人混みの最前列へと到着した。その時、フォルト達は人混みの中をかき分けており、フォルトはシャーロットの手を握って離れないようにしていた。
ロメリアが船の前で隊列を組んで誘導している兵士に向かって突っかかると、兵士がロメリアの体を止めて、顔を見て叫んだ。
「おい貴様!勝手に割り込むな・・・ってロメリア様⁉何でここにッ・・・」
「ちょっと色々あるんだけど・・・お願い!ここを通してくれる⁉」
「駄目です!船に乗る順番は守って下さい!」
「違うの!船に乗るんじゃなくって・・・皆に声をかけてあげたいだけなの!」
「声をかけるって急に何を・・・っていうか今からですか⁉」
「そう!今ここで!だから通してッ!お願いッ!」
ロメリアはそう力を込めて呟くと、兵士達を押しのけて隊列の先へと向かう。そのまま民衆を見渡せる台座に登ると、ロメリアは目の前に広がる人の海を見渡す。
「お、おい!あの人を見ろ!ロメリア様だ!」
「本当だ!勘当されて何処にいるのか分からなかったのに・・・」
民衆達がロメリアの姿を見て騒めく中、ロメリアは皆に向かって大きな声を張り上げた。
「皆、驚かせちゃってごめんね!少しだけ・・・ほんの少しだけ!私の話を聞いて欲しいの!」
ロメリアの言葉を受けて先程までの喧騒が嘘のように止み、静寂が訪れた。フォルト達は人混みの中、ロメリアの姿を民衆目線で見上げていた。もう王族でないのに、ロメリアの言葉を全員が聞き入れたことに、フォルト達は改めてロメリアの評判の良さ、人柄の良さを感じ取った。
ロメリアが静まり返った民衆に対して高まる胸の鼓動を抑えながら言葉を発し始めた。
「皆さん押さないで下さい!押すと前の人が潰れてしまいますのでご協力をお願いします!」
フォルト達が転送された先で聞こえてきたのは、けたたましい喧騒だった。老若男女入り混じった怒号があちこちに飛び交い、それらの声を必死に抑えようと警告する人の声が負けじと周囲に轟いていた。
フォルト達が転送されたのはサンセットフィートの浜辺だった。かつてフォルトとロメリア、ケストレルがビーチバレーした場所・・・そしてロメリアの水着が流された場所だった。
砂浜には以前の活気はどこかに消え失せ、あちこちに大小様々な鞄から帽子、クマのぬいぐるみといった本来ビーチにあるはずの無いものが散乱していた。港には大型の船が幾つも停泊しており、出航していく船には遠くからでも視認できる程人がびっしりと詰まっていた。
「あの船に乗ってる人も港にいる人達もあれ全員・・・避難民ですか?」
「みたいだな。港に停泊してある大小様々な船に取り合えず乗って、フィルテラスト大陸へと向かう気みてぇだが・・・恐らく今この場にいる住民達を乗せることは出来ないだろうな。」
「あの中にテロリストが紛れてても分かんねぇよな・・・避難民に紛れてフィルテラスト大陸へ侵入する可能性も十分あるぜ?」
「でもこの状態じゃあ身元確認なんて出来る訳ない・・・視界に入った人達を乗せれるだけ乗せている感じだから・・・」
フォルト達が人で溢れ返っている港と船を浜辺から見つめていると、後ろから気配がして声をかけられた。
「おい貴様ら何者だ!ゆっくりとこっちを向け!」
フォルト達が男達の声に反応して後ろを振り返ると、そこには複数名の鎧を着た男達が槍を構えて立っていた。先頭にいる男が首を素早く振るとフォルト達の周囲を取り囲んで槍を向ける。ヴァスティーソが小さく顔を頷きながら囁いた。
「おおっと。早速手厚い歓迎だね~?」
ヴァスティーソがそう声を上げると、ロメリアがフォルト達の前に出て皆に聞こえるよう声を張った。
「私達は古都から皆さんを助けに来た者達です!皆さんの救援依頼を受けてやって来たんです!」
「依頼を受けてやって来ただと?たった5人でか?しかもその内2人は子供・・・怪しい奴らめ・・・」
「信じて下さい、本当なんです!古都からの親書もほら!今持っているんです!」
ロメリアがルーストから受け取った親書を男達の所へ持っていこうと両手を上げてゆっくりと歩きだした。男達が警戒を崩さずに槍を構えてロメリアを睨みつけていた。
するとその時、先程ロメリアを怪しんでいた隊長格と思われる兵士の横にいた兵士が何かをふと思い出したかのように目を大きく見開いて口を半開きにすると槍を下ろした。彼の他にも幾らかの兵士はロメリアの姿を見つめている内に槍を地面へと向けていく。
「き、貴様ら!何武器を下ろしている⁉早く構えんか!」
隊長格と思われる男がそう叫ぶと、一番初めに槍を下ろした彼の横にいる兵士が彼に呼びかける。
「貴方の方こそ武器を下ろした方がいい。目の前のお方に見覚えは無いのか?」
「何だと?貴様、どの口が・・・」
男が口出しをしてきた兵士を威嚇しながらロメリアを横目で見つめていると、彼も彼女のことを思い出したようですぐさま態度を豹変させた。
「まさか貴女は・・・ロメリア様⁉本当に・・・ロメリア様なのですか⁉」
「・・・『元』だけどね。」
ロメリアが呟くと、隊長格の兵士が槍を天に向けて膝をついた。周りにいる兵士も一斉に矛先を空に向けると膝をついて頭を下げた。その光景を見たヴァスティーソは口笛を吹いた。
隊長格の兵士が緊張気味にロメリアに話しかける。
「も・・・申し訳ありませんでした、ロメリア様!このご無礼をどうか・・・どうかお許し下さい!」
「・・・顔を上げて?私はもう王族じゃないんだからそんなに頭下げないでよ。・・・皆もほら、顔を上げてよ?こんなたった1人の女に頭下げなくていいんだから・・・」
ロメリアは周囲に膝をついている兵士達に優しく語り掛ける。ロメリアはそのまま周囲を見渡すと、先程隊長格の男に進言した兵士に話しかける。その兵士がゆっくりと顔を上げてロメリアの顔を見つめると、ロメリアは懐かしいものを見るかのように頬を緩めた。
「久しぶりだね、リース・・・最後に会ったのは勘当されたあの日に城門の前で声をかけてくれた時だったよね?確か『困ったことがあれば直ぐに呼んでくれ。直ぐに駆け付けるから。』・・・だったかな?」
「ロメリア様に覚えて頂けたとは光栄の極みです。」
「止めてよ、リース!いっつも城を抜け出す時に見過ごしてくれてたのが貴方だったのに私が忘れる訳ないでしょ?というか、城にいた皆は今でもはっきりと覚えているよ!・・・城の皆はどうしてる?」
「・・・分かりません。私達若い衆もコーラス・ブリッツの者達と交戦しようとした所、隊長や年配の兵士が俺達に国民を連れて逃げるよう命令をしたので・・・私含め若い近衛兵は城の皆様がどうなったかは・・・」
「・・・」
「申し訳ありませんでした、ロメリア様・・・みすみす、敵に背中を見せながら逃げてきてしまい・・・最期まで戦わず逃げてきてしまい・・・申し訳ありません・・・」
「何言ってるの!貴方は国民を連れて逃げるという使命があるんでしょ⁉・・・私に謝るより、先輩達から託された任務を全うしなさい。・・・大丈夫、貴方ならきっと出来るから。」
ロメリアが屈託のない笑みを浮かべると、リースは嬉しさと安堵を滲ませた笑みを薄っすらと浮かべた。ロメリアと面識があるということはこの男は近衛兵・・・兵士の中でも熟練の者なのだろうかとフォルトは2人を見つめながら考えていた。
ロメリアの促しで兵士達が一斉に立ち上がると、ロメリアが親書を隊長格の男に見せてリースに現在の状況を尋ねた。
「今の状況は?」
「芳しくありません・・・民達は兵士の言う事を全く聞かず、我先に脱出船へと乗り組んでいる状況です。現在でも人混みに圧迫されて死者すら出ている状態です。」
「人間の醜い所だな。自分の命が最優先で自分さえ生きられるのなら他者の命を文字通り踏みつぶしてもいいって感じだな。・・・ま、それが普通なんだけどな。」
ケストレルが港に固まっている民衆の方を見つめながら呆れたように呟いた。ロメリアが質問を続ける。
「指揮者は?フォルエンシュテュール家の者はいる?」
「先の混乱で指揮系統が滅茶苦茶になっていて・・・誰も指示を出しておらず、各兵士が各々の判断で出している状況です。そしてフォルエンシュテュール家の人達は全員消息不明で・・・彼らが不在の状況もこの混乱に一因になっています。」
「やはり報告通り、誰もいないっぽいね・・・それに軍隊の指揮も王族が握っていたのか・・・部隊長とかはいないの?」
フォルトの質問にリースは首を激しく左右に振る。
「いますが全員意見がバラバラで・・・撤退指示を出す者もいれば応戦指示を出す者がいる・・・もう我々の手には負えません!」
「相当現場は混乱してるみたいだな・・・どうするロメリア?例の情報を教えたほ・・・」
ケストレルがロメリアにコーラス・ブリッツが再進軍を始めたことを伝えるか提案したその時だった。ロメリアが突然、港に向かって全力疾走し始めたのだ。
フォルト達に一切言葉を告げずに走り去っていくロメリアにフォルトが叫んだ。
「ロメリア⁉勝手に何処に行くのさ⁉」
「追いましょう、フォルト!ロメリア・・・きっとみんなの前に出るつもりですよ!」
「おいおい!あんな混乱してる中、突然姿を見せたら余計パニックになるぞ⁉」
「全く・・・ロメリアちゃんと一緒にいたら飽きないねぇ!」
フォルト達はロメリアの後を追って砂浜を疾走する。既にロメリアは砂浜から街の中へと入っており、人混みの中へと紛れ込んでいた。
ロメリアは人混みをかき分けながら、船が停泊する港口へと向かう。体が左右から激しく圧迫されながらもロメリアは着実に前へと進んでいく。
「すみません!前を・・・前を失礼しますッ!」
ロメリアが大声で叫びながら前へと進んでいると、周囲の人々がロメリアの事を感づき始めた。
「おい見ろよあの女・・・あれロメリア様じゃね?」
「私の見間違いかしら?今ロメリア様が横を通って行ったような・・・」
「ね~ね~おと~さん!今お姫様がいたよ~!」
周りの人々がロメリアの噂をする中、ロメリアは何とか人混みの最前列へと到着した。その時、フォルト達は人混みの中をかき分けており、フォルトはシャーロットの手を握って離れないようにしていた。
ロメリアが船の前で隊列を組んで誘導している兵士に向かって突っかかると、兵士がロメリアの体を止めて、顔を見て叫んだ。
「おい貴様!勝手に割り込むな・・・ってロメリア様⁉何でここにッ・・・」
「ちょっと色々あるんだけど・・・お願い!ここを通してくれる⁉」
「駄目です!船に乗る順番は守って下さい!」
「違うの!船に乗るんじゃなくって・・・皆に声をかけてあげたいだけなの!」
「声をかけるって急に何を・・・っていうか今からですか⁉」
「そう!今ここで!だから通してッ!お願いッ!」
ロメリアはそう力を込めて呟くと、兵士達を押しのけて隊列の先へと向かう。そのまま民衆を見渡せる台座に登ると、ロメリアは目の前に広がる人の海を見渡す。
「お、おい!あの人を見ろ!ロメリア様だ!」
「本当だ!勘当されて何処にいるのか分からなかったのに・・・」
民衆達がロメリアの姿を見て騒めく中、ロメリアは皆に向かって大きな声を張り上げた。
「皆、驚かせちゃってごめんね!少しだけ・・・ほんの少しだけ!私の話を聞いて欲しいの!」
ロメリアの言葉を受けて先程までの喧騒が嘘のように止み、静寂が訪れた。フォルト達は人混みの中、ロメリアの姿を民衆目線で見上げていた。もう王族でないのに、ロメリアの言葉を全員が聞き入れたことに、フォルト達は改めてロメリアの評判の良さ、人柄の良さを感じ取った。
ロメリアが静まり返った民衆に対して高まる胸の鼓動を抑えながら言葉を発し始めた。
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