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~避難民防衛編 第3章~
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「シャーロット!」
女性達の内、癖毛のある深紅色の短髪をしている女性が大声で叫んだ。シャーロットは彼女達を目にすると大きな声で返事をする。
「お姉ちゃん!お母さん!」
シャーロットがフォルト達から離れて姉のキャレットと母親のエリーシャの下へと走り寄ると、エリーシャがシャーロットを抱き抱えて頬にキスをした。
「あぁ、シャーロット!久しぶりに貴女を抱きしめられて良かったわ!大丈夫?何処か怪我はしてない?」
「うん・・・大丈夫・・・会いたかったよ、お母さん・・・」
「私達もよ、シャーロット。貴女が元気な様で本当に嬉しいわ・・・」
エリーシャが愛おしそうにシャーロットの頬に自分の頬をすり合わせる。シャーロットは照れ臭そうに頬を赤らめるが、エリーシャの頬ずりを拒もうとはしなかった。
そんな中、キャレットがフォルト達の下へと近づいて来て声をかける。ヴァスティーソが何故か目を異常に輝かせてキャレットと嘗め回すかのように見つめていた。
「妹が世話になっているわね。・・・どう?迷惑かけてない?」
「うん、全然迷惑かけてないよ。シャーロットと一緒にいると楽しいし・・・それにシャーロットのおかげで何度もあの後起こった危機を脱することも出来たから寧ろこっちが迷惑かけてるような気がするよ・・・」
「そう・・・」
キャレットがシャーロットの方へと顔を向けて、僅かに頬を緩ませた。そんなキャレットに今度はフォルトが話しかける。
「でも突然シャーロットが旅に付いてくるって言った時はびっくりしたよ・・・只森の中を案内するだけかと思ったから・・・」
「ちょっとしたサプライズをしようと思ってね、貴方達には知らせなかったのよ。言ったら貴方達もシャーロットが同行するのを渋るかなぁって思ってね。」
「ん・・・まぁ・・・そうだね・・・」
「だから黙っておくことにしたの。そうすれば、貴方達も連れて行かざるを得ないでしょ?」
「随分強引な方法だな。」
ケストレルが呆れたように呟いた。ヴァスティーソはさり気なくキャレットの後ろへ回り込み、彼女のパンツ越しにはっきりとラインが分かる尻を見て『おぉ・・・』と気持ちの悪い笑みを浮かべていた。
「それにしてもよくシャーロットが旅に出る許可を出したよね?まだ11歳の女の子が旅に出るって不安じゃなかったの?」
ロメリアの言葉にキャレットが返事をする。
「そりゃあ最初はこの子何言ってるのかしらって思ったわよ。あの子突然変な事言い出す癖があるから・・・好奇心が強いせいかどうか知らないけれど・・・」
「・・・」
「でもまぁ、あの子がどうしても旅に出たいって・・・貴方に付いて行きたいってすごく言ってたから・・・そんなに言うのならっていうことで旅に出る許可を出したのよ。貴方や彼女と一緒なら大丈夫でしょうって母さんも言ってたしね。」
「僕と?」
「そう、貴方と。あの子、貴方に少し気があるみたいよ?旅に出る前に貴方の事聞いたら顔を赤らめてたから。」
フォルトはキャレットの話を聞いて、シャーロットに視線を向けた。シャーロットはエリーシャと何やら談笑しており、とても楽しそうだった。
フォルトがそんなシャーロットを見つめていると、ロメリアがにやけ顔でフォルトに囁いてきた。
「良かったね~フォルト?あんな可愛いシャーロットに好かれるなんて・・・隅に置けないねぇ~?」
「んん、もうっロメリアたらっ!一々からかわないでよ・・・」
「でも嬉しいんでしょ?もっと素直になっていいんだよ~?」
ロメリアが先程脳筋呼ばわりした事の仕返しなのか、しつこくフォルトに絡んでくる。フォルトは突っかかって来るロメリアを無視してキャレットと話を続ける。その頃ヴァスティーソはフォルト達の後ろに戻ってきて、キャレットの胸を見つめていた。
「ところで何で古都に?只シャーロットに会いに来た・・・訳じゃないよね?」
「ええ、その通りよ。今回古都に来たのはコーラス・ブリッツの襲撃に備える為・・・あの森に居たら奴らの襲撃に耐えきれないから古都に避難してきたの。シャーロットに会いに来たのはついでよ。」
「よく森の中でコーラス・ブリッツが宣戦布告した情報を仕入れたな?まだ出回り始めて間もないのに・・・」
「私達ヴァンパイアは感覚が鋭いことの作用で危機察知能力が高いの。数日前に里にいる皆が不穏な気配を感じてね・・・それで長である母さんの指示によって皆で逃げてきたの。既に里の場所は先の襲撃で知られている・・・奴らはきっと森にいる私達を滅ぼしにやって来る筈だしね。」
「じゃあ他のヴァンパイア連中も今古都にいるのか?」
「ええ、60人ほど。皆武装して何時でも戦闘出来るように準備しているわ。」
「キャレットさん達も戦うの?町の住民と同じように隠れるんじゃなくって・・・」
「私達も勿論戦うわ。古都の防衛にいる兵士が全滅すれば隠れていても殺されるのは明白な事だしね。それに私達ヴァンパイアは継戦力が高いのよ?首さえ切られなければ死なないし。」
「おまけに魔術も使えて戦闘能力は人間を大きく上回る・・・戦力としては申し分ないな。」
「ルーストさんはヴァンパイア達の援助にどう思っているの?」
「私達としても彼女達のサポートは非常に心強いよ。・・・でも突然今までお伽話でしか聞いたことの無いヴァンパイア族の人達が押し寄せてきた時は少し驚いたよ・・・シャーロットちゃんを見た時にヴァンパイア族の存在は信じてはいたけど・・・」
「それにヴァンパイア族の人達は皆綺麗で・・・男性は美男子揃い、女性は絶世の美女揃いという話通りの美形揃いで・・・驚きましたわ。」
ナターシャがそう話すと、ヴァスティーソがキャレットを見つめながら大きく頷いた。キャレットが先程から不審な動きをするヴァスティーソを細目で不潔なものを見るように見つめると、エリーシャがシャーロットを連れてこちらに来た。
「おおっ、ほうぉっ!」
ヴァスティーソがエリーシャを見つめると突然変な声を上げた。どうやら人妻感溢れる美女に深い感動を覚えたようだ。後、子供2人を出産しているのに見事な体をしている事も彼の性癖を強く刺激するようだ。
「皆さんごめんなさいね、お忙しい所時間を取ってしまって・・・」
「いいえ!全然問題ありませんよ、奥さん!遠路はるばる古都にお越し頂きありがとうございます!」
「ヴァスティーソ?」
「あらあら、挨拶がお上手ですこと。」
エリーシャがヴァスティーソに微笑むと、ヴァスティーソが蕩けたスライムのように頬を緩ませた。フォルト達がヴァスティーソにドン引く中、エリーシャがフォルト達に話しかける。
「それよりも、先程シャーロットから聞きましたがフォルトさん達はグリュンバルド大陸へと向かうおつもりなんですね?・・・娘もフォルトさん達に付いて行くつもりだと言っておりましたので・・・」
「はい。・・・でも、向こうに行くのには危険が伴いますので・・・もし、エリーシャさんがシャーロットを行かせたくないのなら僕達からもシャーロットを説得して古都に留まらせるようにします。シャーロットは僕達と一緒に行きたいと言ってくれてとても嬉しいんですけど・・・命の保証は出来ないので・・・」
フォルトがそう言うと、シャーロットが顔を俯けた。エリーシャがシャーロットの方に顔を向けると、直ぐにフォルト達の方へと顔を向けた。
「いいえ、構いませんよ。この子が行きたいのなら、私は止めません。もうこの子は私が一々口を出して言うことを聞かせるような年ではありませんし・・・何より、この子の意思を尊重したいですから・・・」
エリーシャがシャーロットの頭を優しく撫でると、シャーロットが目を閉じて嬉しそうにはにかむ。キャレットがエリーシャに話しかける。
「じゃあ母さん。今からこの子着替えさせてくるね。」
「頼むわね。」
キャレットがシャーロットを連れて謁見の間から出ていくと、ロメリアがエリーシャに話しかける。
「エリーシャさん・・・着替えるって何にですか?」
「今の私達が着ている服にですよ。この服は私達女性ヴァンパイアの戦闘服なんです。体にフィットしたデザインとなっており、使用している布も刃や弾丸を通さない特殊な素材を用いてヴァンパイア族に伝わる独自の裁縫術で作られているんです。」
「戦闘服・・・確かに動きやすそうですね。露出も無いですし、しっかりと全身が守られている・・・」
「でもそれでいて美しい体のラインがはっきりと見える・・・ふふふふふ、素晴らしいねぇ・・・」
「・・・オッサン・・・あんた本ッ当に変態だな・・・」
「・・・男の人ってあんなに変態なんですの?」
「んな訳あってたまるか、お姫様。あのオッサンぐらいだぜ、飛びッ切りで変態なのは。大抵の男はまともだから勘違いするなよ?」
ケストレルもナターシャと同じく不快なものを見る目でヴァスティーソを見つめるが、当人は全く気にも留めていないようでエリーシャを見つめていた。逆にここまで堂々とセクハラが出来る男に呆れを通り越して尊敬の念すら覚える。
シャーロットが身支度を整えている間、フォルト達はサンセットフィート港へと向かう準備を整える。準備が整え終わりシャーロットを待っていた所、着替え終えたシャーロットがキャレットと共に帰ってきた。
シャーロットもエリーシャ達と同様の戦闘服に身を包んでおり、以前の分厚いドレス姿とはうって変わって体のラインがはっきりと分かるようになっていた。ドレスを身に纏っていた時には服が邪魔で気が付かなかったが、シャーロットもヴァンパイア族の例に漏れず、非常に整った美しいスタイルをしていた。
シャーロットはフォルトの前に行き、恥ずかしそうに足をモジモジさせながら腰の前に両手を組んで話しかける。
「あの・・・フォルト・・・どう・・・ですか?似合ってます・・・か?」
「うん!とっても似合ってるよ!それにしてもシャーロット・・・綺麗なスタイルしてるね?」
「や・・・も・・・もうフォルトったら・・・ヴァスティーソみたいなこと言わないで下さい・・・恥ずかしい・・・です・・・」
シャーロットが頬を梅のように赤く染めると、顔を俯けながらより体をモジモジさせる。そんな中、ヴァスティーソが目に見えぬ速さでシャーロットの後ろに回り込む。
シャーロットが後方に何者かの気配を感じ、振り返るとヴァスティーソがにやけながら立っていたので思わずフォルトに飛びついた。シャーロットの暖かな体温と心地よい匂いがフォルトに伝わり、フォルトの顔も赤くなる。
「きゃっ!な、何ですかヴァスティーソ⁉」
「いやぁ~シャーロットちゃん~・・・小さくていいお尻してるぅ~。」
「オッサン、ちょっとは自重しろよ!」
「まぁ、ヴァスティーソさん。娘のお尻に興味があるんですか?」
「何で満更でも無い顔してんだよ、エリーシャさんよぉ・・・」
「うぅ・・・ヴァスティーソから絶対セクハラされるって思ってました・・・この服、少しきつくて・・・それにお尻の形とかはっきり分かって・・・ちょっと恥ずかしい・・・」
「大丈夫、慣れるわよシャーロット。それよりも自分のスタイルの良さを誇りなさいよ!」
「む・・・無理だよ・・・私・・・お姉ちゃんみたいに・・・積極的じゃないし・・・」
シャーロットがフォルトの体に抱きついたまま、フォルトに顔を埋める。フォルトがどうしたらいいか分からずにオロオロしていると、突然謁見の間に兵士が飛び込んできて大声で報告をし始める。
「只今現地に潜伏している諜報部隊から入った情報です!コーラス・ブリッツが大陸南東部にあるサンセットフィート港へと移動を始めました!」
「何だと⁉数は⁉」
「ワイバーン騎兵隊が1000!到着時刻はおよそ今から3時間後です!」
「3時間後・・・ギリギリだな。混乱が長引けば奴らの襲撃を受けるぞ!」
謁見の間が混乱に包まれる中、ルーストが全体に指示を出す。
「今すぐにロメリアさん達をサンセットフィートへと送れ!バリスト!結界の準備は⁉」
「何時でも発動できます!・・・ロメリアさん達は結界のなるべく内側に入ってくれ!」
フォルト達5人は身を寄せ合うように結界の中心に集まると、周囲が眩い光に包まれていく。ルーストがヴァスティーソに声をかける。
「ヴァスティーソ大隊長!ロメリアさん達を任せるぞ!」
「分かってる!全員無事に連れて帰って来るから安心して待ってろ!」
「シャーロット!フォルトさんやロメリアさんと離れたらダメよ⁉」
「・・・うんッ!」
「ロメリア!フォルト!妹を頼むわよ!」
「はい!」
フォルト達はキャレット達に返事をすると、サンセットフィート港へと転送された。ロメリア達が転送された後の謁見の間には、先程の情報による混乱が怒号と化して飛び交っていた。
「シャーロット!」
女性達の内、癖毛のある深紅色の短髪をしている女性が大声で叫んだ。シャーロットは彼女達を目にすると大きな声で返事をする。
「お姉ちゃん!お母さん!」
シャーロットがフォルト達から離れて姉のキャレットと母親のエリーシャの下へと走り寄ると、エリーシャがシャーロットを抱き抱えて頬にキスをした。
「あぁ、シャーロット!久しぶりに貴女を抱きしめられて良かったわ!大丈夫?何処か怪我はしてない?」
「うん・・・大丈夫・・・会いたかったよ、お母さん・・・」
「私達もよ、シャーロット。貴女が元気な様で本当に嬉しいわ・・・」
エリーシャが愛おしそうにシャーロットの頬に自分の頬をすり合わせる。シャーロットは照れ臭そうに頬を赤らめるが、エリーシャの頬ずりを拒もうとはしなかった。
そんな中、キャレットがフォルト達の下へと近づいて来て声をかける。ヴァスティーソが何故か目を異常に輝かせてキャレットと嘗め回すかのように見つめていた。
「妹が世話になっているわね。・・・どう?迷惑かけてない?」
「うん、全然迷惑かけてないよ。シャーロットと一緒にいると楽しいし・・・それにシャーロットのおかげで何度もあの後起こった危機を脱することも出来たから寧ろこっちが迷惑かけてるような気がするよ・・・」
「そう・・・」
キャレットがシャーロットの方へと顔を向けて、僅かに頬を緩ませた。そんなキャレットに今度はフォルトが話しかける。
「でも突然シャーロットが旅に付いてくるって言った時はびっくりしたよ・・・只森の中を案内するだけかと思ったから・・・」
「ちょっとしたサプライズをしようと思ってね、貴方達には知らせなかったのよ。言ったら貴方達もシャーロットが同行するのを渋るかなぁって思ってね。」
「ん・・・まぁ・・・そうだね・・・」
「だから黙っておくことにしたの。そうすれば、貴方達も連れて行かざるを得ないでしょ?」
「随分強引な方法だな。」
ケストレルが呆れたように呟いた。ヴァスティーソはさり気なくキャレットの後ろへ回り込み、彼女のパンツ越しにはっきりとラインが分かる尻を見て『おぉ・・・』と気持ちの悪い笑みを浮かべていた。
「それにしてもよくシャーロットが旅に出る許可を出したよね?まだ11歳の女の子が旅に出るって不安じゃなかったの?」
ロメリアの言葉にキャレットが返事をする。
「そりゃあ最初はこの子何言ってるのかしらって思ったわよ。あの子突然変な事言い出す癖があるから・・・好奇心が強いせいかどうか知らないけれど・・・」
「・・・」
「でもまぁ、あの子がどうしても旅に出たいって・・・貴方に付いて行きたいってすごく言ってたから・・・そんなに言うのならっていうことで旅に出る許可を出したのよ。貴方や彼女と一緒なら大丈夫でしょうって母さんも言ってたしね。」
「僕と?」
「そう、貴方と。あの子、貴方に少し気があるみたいよ?旅に出る前に貴方の事聞いたら顔を赤らめてたから。」
フォルトはキャレットの話を聞いて、シャーロットに視線を向けた。シャーロットはエリーシャと何やら談笑しており、とても楽しそうだった。
フォルトがそんなシャーロットを見つめていると、ロメリアがにやけ顔でフォルトに囁いてきた。
「良かったね~フォルト?あんな可愛いシャーロットに好かれるなんて・・・隅に置けないねぇ~?」
「んん、もうっロメリアたらっ!一々からかわないでよ・・・」
「でも嬉しいんでしょ?もっと素直になっていいんだよ~?」
ロメリアが先程脳筋呼ばわりした事の仕返しなのか、しつこくフォルトに絡んでくる。フォルトは突っかかって来るロメリアを無視してキャレットと話を続ける。その頃ヴァスティーソはフォルト達の後ろに戻ってきて、キャレットの胸を見つめていた。
「ところで何で古都に?只シャーロットに会いに来た・・・訳じゃないよね?」
「ええ、その通りよ。今回古都に来たのはコーラス・ブリッツの襲撃に備える為・・・あの森に居たら奴らの襲撃に耐えきれないから古都に避難してきたの。シャーロットに会いに来たのはついでよ。」
「よく森の中でコーラス・ブリッツが宣戦布告した情報を仕入れたな?まだ出回り始めて間もないのに・・・」
「私達ヴァンパイアは感覚が鋭いことの作用で危機察知能力が高いの。数日前に里にいる皆が不穏な気配を感じてね・・・それで長である母さんの指示によって皆で逃げてきたの。既に里の場所は先の襲撃で知られている・・・奴らはきっと森にいる私達を滅ぼしにやって来る筈だしね。」
「じゃあ他のヴァンパイア連中も今古都にいるのか?」
「ええ、60人ほど。皆武装して何時でも戦闘出来るように準備しているわ。」
「キャレットさん達も戦うの?町の住民と同じように隠れるんじゃなくって・・・」
「私達も勿論戦うわ。古都の防衛にいる兵士が全滅すれば隠れていても殺されるのは明白な事だしね。それに私達ヴァンパイアは継戦力が高いのよ?首さえ切られなければ死なないし。」
「おまけに魔術も使えて戦闘能力は人間を大きく上回る・・・戦力としては申し分ないな。」
「ルーストさんはヴァンパイア達の援助にどう思っているの?」
「私達としても彼女達のサポートは非常に心強いよ。・・・でも突然今までお伽話でしか聞いたことの無いヴァンパイア族の人達が押し寄せてきた時は少し驚いたよ・・・シャーロットちゃんを見た時にヴァンパイア族の存在は信じてはいたけど・・・」
「それにヴァンパイア族の人達は皆綺麗で・・・男性は美男子揃い、女性は絶世の美女揃いという話通りの美形揃いで・・・驚きましたわ。」
ナターシャがそう話すと、ヴァスティーソがキャレットを見つめながら大きく頷いた。キャレットが先程から不審な動きをするヴァスティーソを細目で不潔なものを見るように見つめると、エリーシャがシャーロットを連れてこちらに来た。
「おおっ、ほうぉっ!」
ヴァスティーソがエリーシャを見つめると突然変な声を上げた。どうやら人妻感溢れる美女に深い感動を覚えたようだ。後、子供2人を出産しているのに見事な体をしている事も彼の性癖を強く刺激するようだ。
「皆さんごめんなさいね、お忙しい所時間を取ってしまって・・・」
「いいえ!全然問題ありませんよ、奥さん!遠路はるばる古都にお越し頂きありがとうございます!」
「ヴァスティーソ?」
「あらあら、挨拶がお上手ですこと。」
エリーシャがヴァスティーソに微笑むと、ヴァスティーソが蕩けたスライムのように頬を緩ませた。フォルト達がヴァスティーソにドン引く中、エリーシャがフォルト達に話しかける。
「それよりも、先程シャーロットから聞きましたがフォルトさん達はグリュンバルド大陸へと向かうおつもりなんですね?・・・娘もフォルトさん達に付いて行くつもりだと言っておりましたので・・・」
「はい。・・・でも、向こうに行くのには危険が伴いますので・・・もし、エリーシャさんがシャーロットを行かせたくないのなら僕達からもシャーロットを説得して古都に留まらせるようにします。シャーロットは僕達と一緒に行きたいと言ってくれてとても嬉しいんですけど・・・命の保証は出来ないので・・・」
フォルトがそう言うと、シャーロットが顔を俯けた。エリーシャがシャーロットの方に顔を向けると、直ぐにフォルト達の方へと顔を向けた。
「いいえ、構いませんよ。この子が行きたいのなら、私は止めません。もうこの子は私が一々口を出して言うことを聞かせるような年ではありませんし・・・何より、この子の意思を尊重したいですから・・・」
エリーシャがシャーロットの頭を優しく撫でると、シャーロットが目を閉じて嬉しそうにはにかむ。キャレットがエリーシャに話しかける。
「じゃあ母さん。今からこの子着替えさせてくるね。」
「頼むわね。」
キャレットがシャーロットを連れて謁見の間から出ていくと、ロメリアがエリーシャに話しかける。
「エリーシャさん・・・着替えるって何にですか?」
「今の私達が着ている服にですよ。この服は私達女性ヴァンパイアの戦闘服なんです。体にフィットしたデザインとなっており、使用している布も刃や弾丸を通さない特殊な素材を用いてヴァンパイア族に伝わる独自の裁縫術で作られているんです。」
「戦闘服・・・確かに動きやすそうですね。露出も無いですし、しっかりと全身が守られている・・・」
「でもそれでいて美しい体のラインがはっきりと見える・・・ふふふふふ、素晴らしいねぇ・・・」
「・・・オッサン・・・あんた本ッ当に変態だな・・・」
「・・・男の人ってあんなに変態なんですの?」
「んな訳あってたまるか、お姫様。あのオッサンぐらいだぜ、飛びッ切りで変態なのは。大抵の男はまともだから勘違いするなよ?」
ケストレルもナターシャと同じく不快なものを見る目でヴァスティーソを見つめるが、当人は全く気にも留めていないようでエリーシャを見つめていた。逆にここまで堂々とセクハラが出来る男に呆れを通り越して尊敬の念すら覚える。
シャーロットが身支度を整えている間、フォルト達はサンセットフィート港へと向かう準備を整える。準備が整え終わりシャーロットを待っていた所、着替え終えたシャーロットがキャレットと共に帰ってきた。
シャーロットもエリーシャ達と同様の戦闘服に身を包んでおり、以前の分厚いドレス姿とはうって変わって体のラインがはっきりと分かるようになっていた。ドレスを身に纏っていた時には服が邪魔で気が付かなかったが、シャーロットもヴァンパイア族の例に漏れず、非常に整った美しいスタイルをしていた。
シャーロットはフォルトの前に行き、恥ずかしそうに足をモジモジさせながら腰の前に両手を組んで話しかける。
「あの・・・フォルト・・・どう・・・ですか?似合ってます・・・か?」
「うん!とっても似合ってるよ!それにしてもシャーロット・・・綺麗なスタイルしてるね?」
「や・・・も・・・もうフォルトったら・・・ヴァスティーソみたいなこと言わないで下さい・・・恥ずかしい・・・です・・・」
シャーロットが頬を梅のように赤く染めると、顔を俯けながらより体をモジモジさせる。そんな中、ヴァスティーソが目に見えぬ速さでシャーロットの後ろに回り込む。
シャーロットが後方に何者かの気配を感じ、振り返るとヴァスティーソがにやけながら立っていたので思わずフォルトに飛びついた。シャーロットの暖かな体温と心地よい匂いがフォルトに伝わり、フォルトの顔も赤くなる。
「きゃっ!な、何ですかヴァスティーソ⁉」
「いやぁ~シャーロットちゃん~・・・小さくていいお尻してるぅ~。」
「オッサン、ちょっとは自重しろよ!」
「まぁ、ヴァスティーソさん。娘のお尻に興味があるんですか?」
「何で満更でも無い顔してんだよ、エリーシャさんよぉ・・・」
「うぅ・・・ヴァスティーソから絶対セクハラされるって思ってました・・・この服、少しきつくて・・・それにお尻の形とかはっきり分かって・・・ちょっと恥ずかしい・・・」
「大丈夫、慣れるわよシャーロット。それよりも自分のスタイルの良さを誇りなさいよ!」
「む・・・無理だよ・・・私・・・お姉ちゃんみたいに・・・積極的じゃないし・・・」
シャーロットがフォルトの体に抱きついたまま、フォルトに顔を埋める。フォルトがどうしたらいいか分からずにオロオロしていると、突然謁見の間に兵士が飛び込んできて大声で報告をし始める。
「只今現地に潜伏している諜報部隊から入った情報です!コーラス・ブリッツが大陸南東部にあるサンセットフィート港へと移動を始めました!」
「何だと⁉数は⁉」
「ワイバーン騎兵隊が1000!到着時刻はおよそ今から3時間後です!」
「3時間後・・・ギリギリだな。混乱が長引けば奴らの襲撃を受けるぞ!」
謁見の間が混乱に包まれる中、ルーストが全体に指示を出す。
「今すぐにロメリアさん達をサンセットフィートへと送れ!バリスト!結界の準備は⁉」
「何時でも発動できます!・・・ロメリアさん達は結界のなるべく内側に入ってくれ!」
フォルト達5人は身を寄せ合うように結界の中心に集まると、周囲が眩い光に包まれていく。ルーストがヴァスティーソに声をかける。
「ヴァスティーソ大隊長!ロメリアさん達を任せるぞ!」
「分かってる!全員無事に連れて帰って来るから安心して待ってろ!」
「シャーロット!フォルトさんやロメリアさんと離れたらダメよ⁉」
「・・・うんッ!」
「ロメリア!フォルト!妹を頼むわよ!」
「はい!」
フォルト達はキャレット達に返事をすると、サンセットフィート港へと転送された。ロメリア達が転送された後の謁見の間には、先程の情報による混乱が怒号と化して飛び交っていた。
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