最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~古都編 最終章~

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[出航]

 「・・・来たな。」

 古都の港に停泊させてある専用船のデッキに立っていたガーヴェラが乗船してきたフォルト達を見つけると呟いた。同じく既にデッキへと到着していたヴァスティーソが彼女の声に反応して首を向ける。

 ガーヴェラ達の下へと歩いてきたケストレルとシャーロットがガーヴェラとヴァスティーソに声をかけた。

 「待たせたな。」

 「・・・お待たせ・・・です。」

 「ごめんね~2人共。いきなりの準備で大変だっただろ~?」

 「いいえ・・・荷物は常に纏めていましたから・・・」

 「準備が早くて助かるよ。・・・なぁ。1つ聞いていいか?」

 「何だ?」

 ガーヴェラがケストレルとシャーロットの後ろにいるフォルト達に視線を向けた。

 「・・・あの2人何であんなに離れているんだ?さっきまで一緒に歩いていただろう?」

 ケストレルとシャーロットが振り向いて2人を見ると、互いに背中を向けてそれぞれデッキの端に立っていた。

 「あの2人・・・部屋に戻ってからあんな感じなんです・・・一言も言葉を交わさないし・・・目を合わせても直ぐ互いに背けちゃうんです・・・」
 
 「喧嘩しちゃったの~?・・・何で?」

 「分かんないです・・・あの2人の仲が悪くなっているのなんて初めてですから・・・」

 「参ったな・・・」

 ガーヴェラが頭に右手を置くと、ヴァスティーソが声を上げる。
 
 「ま、あの2人なら勝手に仲直りするでしょ。喧嘩の原因は分かんないけど、大したことないと思うよ~。・・・んじゃ、出航合図出してくるよ~。」

 ヴァスティーソがデッキの端に行くと右手を振り上げて、何回か回した。すると錨が外れ、船は徐々に漆黒の大海原へと静かに出ていった。月の眩い光だけが海面を照らしている。

 ヴァスティーソは凍えるような海風を受けながらガーヴェラ達の下へと戻る。

 「うぃ~寒いッ!・・・俺もぅ部屋に戻るわ。寒いし、何よりも眠たい・・・皆も早く寝ろよ~?」

 ヴァスティーソはそう告げると、1人勝手に船内へと入って行った。

 「・・・私達も船内に入るぞ。もう夜も遅い・・・早く寝ないと疲れも取れないし、肌も悪くなるからな。」

 「・・・そういう意識はしっかりしてんだな。少し女らしくて安心したよ。」

 「どういう意味だ?」

 「別に。」

 ケストレルはガーヴェラに説明することなく、船内へと少し急ぎ足で入って行った。ガーヴェラも彼の後を追うように入って行く。

 シャーロットは船内に入る前に、海を眺めているフォルトの下へと近づいていき、声をかけた。彼女の深紅色の髪がゆらりと揺れる。

 「・・・フォルト、そろそろ中に入りましょう?ここに居たら風邪・・・引いちゃいます・・・よ?」

 「・・・うん、直ぐに行くよ。・・・声かけてくれてありがとうね、シャーロット。」

 フォルトはシャーロットの方を向いて微笑む。シャーロットはその陰のある笑みを見ると、何も言うことなく船内へと戻っていった。

 デッキにはフォルトとロメリア・・・2人だけが残された。フォルトはロメリアの方を向いて彼女の背中を見つめる。ロメリアは反対のデッキから海を眺めていて、翡翠色の羽織が揺らめいて、綺麗な太腿がチラチラ視線の中へと入って来る。

 「・・・」

 フォルトは一瞬、彼女の話しかけようとしたが直ぐに足が止まってしまった。

 彼女が怒っている理由・・・それをフォルトは薄っすらと感じ取っていた。

 『ロメリア・・・僕がロメリアの考えを尊重しないで勝手に付いていくって言っちゃったから怒ってるんだろうな・・・』

 フォルトは心の中でそう呟くと、船内の方へと歩いていく。今はなるべく彼女に話しかけずに、気持ちを落ち着かせた方がいいのかもしれない・・・そう思ったからだ。

 フォルトが船内に入ると、ロメリアただ1人だけがデッキに残された。ロメリアはただ静かに・・・雲が半分ほどかかった月を眺めていた。
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