最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~古都編 第8章~

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[腹パン]

 「あぁ⁉何だ何だぁ?何で糞野郎がこんな所にいるんだぁ?しかもシャツのボタンまで取りやがって・・・何考えてんだ、お前ぃ?」

 クローサーが顔をやや下に向けて睨みつける。ケストレルはボタンを素早く閉じる。

 「というか、おい?そこの女共。何やってんだ手前ら?」

 「・・・申し訳ありません・・・クローサー大隊長・・・」

 「不審者にのぼせ上がるたぁ、どういう事だ、おい!」

 クローサーは怒りを込めた右足を思いっきり床に叩きつけると、空気が激しく揺れた。使用人達はクローサーの迫力に圧倒されて体を石のように強張らせる。

 クローサーが怒りで顔を歪ませていると、ロストルが穏やかな口調で彼を落ち着かせる。

 「まぁまぁ、クローサー。少し落ち着いてごらん?彼女達怯えちゃってるよ?」

 「知らねぇよ、そんなこたぁ。親衛部隊の癖に何侵入者とじゃれ合ってんのかって聞いてんだよぉ。只でさえ俺達の中に裏切者が紛れ込んでいるっていう状況なのによぉ・・・」

 クローサーが舌を打ってケストレルと使用人達を睨みつけていると、ガーヴェラがケストレルに接近していく。彼女の目は先程から変わらず冷たいままで、何を考えているのが全く読めなかった。

 ガーヴェラがケストレルの目の前に立った・・・その時。

 ドゴォッ!

 「ぐっ・・・!」

 ガーヴェラは渾身のアッパーをケストレルの腹部にお見舞いした。ガーヴェラの拳は彼の腹部に深くめり込み、激しい痛みが全身に走る。ケストレルは汽車で食べた朝食を吐き出しそうな感覚を覚えるが、何とか堪える。

 ガーヴェラはそのままケストレルの頭を掴むと、床へと勢い良く押し当てる。そのまま右膝を彼の頭にのせて圧迫する。

 「ゴミ屑が・・・陛下に甘んじて貴様を見逃していたが・・・どうやら間違いだったようだな?」

 ガーヴェラはそのまま膝に体重を乗せてよりケストレルの頭を圧迫する。その様子を見たロストルがガーヴェラに話しかける。

 「おやおや・・・中々激しいね、ガーヴェラ大隊長?」

 「・・・五月蠅いですよ、ロストル大隊長。この男は立ち入り禁止区域に入った・・・それも元八重紅狼のコイツが・・・奴らの組織から抜けたといって油断はできない。・・・こいつは牢屋に入れます。」

 「いいのかい?彼は陛下が招いた客人だよ?」

 「だからと言ってこいつを見逃す訳にはいかない・・・牢屋にて取り調べを行い、問題無ければ直ぐに出しますよ。」

 ガーヴェラはそう言うと、顔をケストレルの耳元に近づける。すると、誰にも聞こえないように囁いた。

 「・・・フォルトは大隊長室に居るのか?」

 「・・・ああ・・・いる・・・」

 「ロメリアとシャーロットは?」

 「いない・・・あいつらが衛兵の注意を引き付けてくれた・・・」

 「成程・・・」

 ガーヴェラはそう言うと、ケストレルに微笑んだ。ケストレルはその笑みを瞬間、嫌な予感しかしなかった。

 「分かった。・・・お疲れ様だったな。」

 そう呟いた直後、ガーヴェラはケストレルの頭を全力で床に押し付けるように叩きつけた。ケストレルは一瞬で目の前が暗くなり、意識を失った。

 ガーヴェラがその場から立ち上がると、魔術部隊大隊長のバリストがケストレルに拘束用の魔術をかける。

 「・・・これで拘束出来た。暴れてもこいつの力では自力で解除は不可能だろう。」

 「・・・感謝します、バリスト大隊長。」

 ガーヴェラが感謝の言葉を述べると、通路の奥から衛兵達が複数名走ってきて気絶したケストレルを連れて行った。ケストレルがその場から消えると、クローサーが呆れたように溜息をつきながら言葉を発する。

 「・・・ったく、今日は面倒くせぇ日だな?調子が狂う。」

 「クローサーの調子がいい日ってあったっけ?」

 「何だと?今何つった、ロストル?」

 「別に。何も?」

 ロストルはそう言うと、大隊長室へと繋がるドアを開けて奥へと入って行く。クローサー達も彼に続いて扉の奥へと入って行く。

 『フォルト・・・頼むから見つかるなよ・・・』

 ガーヴェラは彼らの後を追って扉の奥へと行く事無く、ロメリア達がいる来賓部屋へと歩きだした。
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