最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~古都編 第6章~

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[陽動作戦]

 「さてと・・・こっからどうしたものかな・・・」

 フォルト達4人は立ち入り禁止区域の前にまで辿り着くことが出来てはいたものの、ドアの前には衛兵が2人立っていて中に侵入することが出来なかった。フォルト達は小声で囁き合う。

 「どうするんですか、フォルト?」

 「どうするって言っても・・・あそこに立たれていたら邪魔で入れないよ・・・」

 「別ルートを探すか?」

 「いや・・・ガーヴェラから貰った紙に地図が載っていたんだけど・・・このドアからじゃないと大隊長達の部屋へと続く通路に行けないんだ。」

 「どっかの部屋の窓から外に出て城の壁にくっついて移動すればどう?」

 「確かにその考えも頭を過ったけど・・・この城さ、標高3000m以上の山の上にあるんだよね?大隊長達の部屋窓から侵入する場合、城の裏側の壁を伝っていくけど・・・」

 「けど?」

 「確かに人の目はつかないと思うけどさ・・・断崖絶壁なんだよね。落ちたら・・・まず生きて帰ることは出来ないと思う。僕は渡り切る自信はあるけど・・・」

 フォルトがロメリア達を見渡すと、彼女達は苦笑いを浮かべた。

 「私・・・そんなところ・・・行けないです・・・怖くて・・・足が竦んじゃいます・・・」

 「俺も勘弁な。城の外壁を伝っていくなんて正気じゃねぇ。」

 フォルトがロメリアの方を見ると、彼女は両手を握りしめてガッツポーズをとった。

 「わ、私は大丈夫だよ!外壁を伝っていくのなんて・・・全然怖くないんだから!」

 ロメリアはそう強く言葉を発したが、両足が激しく震えていて汗が流れていた。どうやら本心では相当怖がっているようだ。

 『やっぱこの案は駄目だね。もっと安全な方法で侵入する手は無いかな?』

 フォルトが何とかしてあの扉を突破する手段を考えこんでいると、ケストレルが提案してきた。ケストレルの顔は自身に満ち溢れていて、フォルトは彼の提案に息を呑む。

 「・・・そうだ、いい事思いついたぞ!」

 「どんな?」

 「・・・ハニートラップ・・・色仕掛けだ。ロメリアとシャーロットであの2人をおびき寄せるんだよ。」

 「・・・え?」

 「は・・・はにー?」

 ロメリアとシャーロットが顔を見合わせていると、ケストレルが言葉を付け加える。

 「あの2人の門番は男だ。男は綺麗な女に目が無い・・・そこにロメリアとシャーロットが接近して誘惑し、視線と意識を逸らすことでフォルトと俺が中に侵入することが出来るって訳。・・・どうだ?いい案だろう?」

 「ゆ、誘惑って・・・私そんな誘惑するような服着てないよ⁉」

 「いいや、ロメリア。お前は気が付いていないかもしれないが、今ハッキリ言うぞ。・・・お前の服、良く見たら結構エロイぞ。」

 「えぇッ⁉ちょ、ちょっとケストレル⁉まさかいつも私をそんな目で・・・」

 「馬鹿野郎!そういう訳じゃねえよ!・・・フォルトもそう思うよな⁉」

 「え、そこで僕に同意を求めるの?う、う~ん・・・まぁ・・・僕としてはエロいというよりボーイッシュな感じなんだけれども・・・」

 フォルトは改めてロメリアの服を見たが結構薄着だということを思い知らされた。長袖の羽織を着用しているから意外に露出は少ないと思ってはいたが、羽織の下は浅黄色の薄いブラウスに丈の短い黒のショートパンツしか着ていない・・・太腿は露出しているし、胸元は見えている・・・それにショートパンツもやけにフィットしたものを選んでいるし・・・

 「そんな訳で、ロメリア。頼むぞ。・・・シャーロットはほどほどに。」

 「ちょっと待って!誘惑するってどうやってっ・・・」

 「尻でも太腿でも胸でも触らせてあげればいいんじゃね?お前毎日旅しているから体つきが非常に良いだろ?その引き締まった程良い健康的な肉付きの体を活かせば何とかできるだろうよ。」

 「そんな・・・嫌だよぉ・・・」

 ロメリアは今にも泣きそうな声で呟くが、『裏切り者を見つけるのに必要な事だからお願い・・・』みたいなことをフォルトとシャーロットがロメリアに語り掛け続けると何とか彼女は誘惑する仕事を受け入れてくれた。

 ロメリアには可哀想な事をしてしまったと思い、フォルト達は何度も頭を下げた。フォルトは後でもう一度謝ろうと心の奥底で自分自身に誓うと、ケストレルと共に別の柱の陰に隠れる。準備が整うと、シャーロットとロメリアに合図を送る。

 ロメリアとシャーロットはケストレル達に頷くとケストレルから渡された酒瓶を持って、酔いではなく恥ずかしさで顔を赤らめ、酔っぱらった演技をしながら歩いていった。ケストレルが何故酒瓶を持っていたのかは不思議だったが。

 扉の前にいる衛兵がロメリアの姿を確認すると、シャーロットがロメリアの下へと飛び出していった。

 「ロメリア!駄目ですよ、昼間から酒飲んだりしたら!」

 「いいじゃん、いいじゃ~ん!もう私16何だよ~!いつどこで飲もうが私の勝手でしょ~!」

 ロメリアはそう言いながら衛兵の下へと近づくと、変な笑い声を上げて彼らに話しかける。同時にロメリアは羽織を少しはだけさせて、肩を見せる。

 「あれ?衛兵さん何してるの~?」

 「・・・仕事です。ロメリア様・・・どうか飲酒はお部屋で行って頂けると助かるのですが・・・」

 「ええ~?そんなぁ~・・・ここで飲んだら・・・駄目ぇ?」

 ロメリアはそう言うと、視線を柱の陰にいるケストレル達へと向ける。するとケストレルが口パクで『脱げ』と指示を出してきた。

 『うう~・・・恥ずかしいよ~・・・でもここで私が彼らを引き寄せないとフォルト達が中に入れない・・・えぇい!もうどうにでもなれぇ!』
 
 ロメリアはそう言うと、翡翠色の羽織をするりと脱いで、衛兵の1人にもたれ掛かった。その際にロメリアは自分の年齢相応の胸を見せる。

 「ロ、ロメリア様⁉何してるんですか⁉困りますよ⁉」

 「うふ?貴方の体・・・温かいね。・・・ねぇ?ちょっとこっちに来てよ・・・私といいコト・・・しよ?」

 ロメリアはそう言うと、衛兵の1人を無理やり扉から引き離した。それと同時にもう1人の衛兵とシャーロットが2人に近づく。

 「ちょっとロメリア!衛兵さんに迷惑かけちゃダメですよ!」

 「ロメリア様!彼から離れて下さい!・・・というかお前も抱きつかれてまんざらでもない顔してんじゃねぇ!」

 ロメリアとシャーロットのおかげで衛兵2人が扉から離れて完全に彼女達に意識と視線を向けていた。

 「ケストレル、今だよ!」

 「おう!」

 フォルトとケストレルは素早く扉へと向かうと音を立てずに素早く扉の奥へと入った。ロメリアとシャーロットはフォルト達が入ったのを確認すると、お互いに視線を交わし、演技をする。

 「ほら、ロメリア立ってください!早くお部屋に帰りますよ!」

 「えぇ~!やぁぁだぁぁぁ!」

 「子供みたいに騒がないで下さいよ!恥ずかしい・・・」

 シャーロットはロメリアの羽織を持って彼女と共にその場から立ち去った。抱きつかれた衛兵は少し名残惜しそうにロメリアが消えていった方を見つめていた。

 退避が終えると、シャーロットはロメリアに羽織を手渡して話しかける。ロメリアは羽織を着る。

 「お疲れ様です、ロメリア。・・・いい演技でしたよ?」

 「恥ずかしかったよぉ・・・もう二度と色仕掛けなんかしない・・・するもんか・・・」

 ロメリアは恥ずかしさで梅のように顔を真っ赤に染めると、シャーロット共に自分達の部屋へと戻っていった。
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