最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~大陸横断汽車編 最終章~

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[招集命令]

 「あ~あ・・・やっぱり彼らじゃ駄目だったね~」

 長い銀髪を携えている男の子はフォルト達が乗っている汽車を台地の上から見下ろしながらそう言葉を発した。男の子の美しく輝く銀髪が風に吹かれて揺れる。

 男の子の横には黒の薄いドレスを身に纏った銀髪の女性が立っていた。女性は髪を後ろに夜会巻きで纏めており、その視線は雪の降り積もる夜の様に冷たかった。

 「ね~お姉ちゃん~。お姉ちゃんはどう思った~?あの人達、勝てると思ってた~?」

 「・・・いいや。負けると思っていた。勝てる可能性は微塵も感じられなかった。」

 「だよね~。やっぱりお姉ちゃんもそう思ったか~。」

 男の子が両腕を頭の後ろで組んだ、頬を緩めながら奥で走っている汽車を見つめていると後ろから軽快な男の声が聞こえてきた。

 「これはこれは・・・お前達もここに来ていたのか。」

 男の子は後ろを振り向くと、そこには血を連想させる真っ赤なスーツに緑のシャツ、赤のネクタイに群青色のズボンを履いた男が立っていた。男の顔は全体的に白く塗られており、目元は黒く、口元はまるで裂けたかのように赤い塗料で塗られていた。まるでピエロの様で、常に笑みを浮かべているような不気味なフェイスペイントに男の子と傍に立っている女性は少し顔をしかめる。

 だが男の子はそんな男を見ると無邪気に喜びだした。

 「アルレッキーノじゃん!久しぶり~半年ぶりかな?」

 「そのぐらいだな。・・・相変わらず、姉弟で行動しているようだな?」

 「うん!僕お姉ちゃん大好きだし!それに、お姉ちゃん1人にしちゃったら殺されちゃうかもしれないからね~。ユーグレス、あいつ等に殺されちゃったでしょ?」

 「そうなんだよな~・・・仕事をしっかりこなす奴だっただけに少し残念だ。他の奴らは全員自分勝手に動くから使い辛くて困る。」

 アルレッキーノは愚痴を呟くと、男の子がアルレッキーノに対して話しかける。

 「ところでアルレッキーノは何で僕達の所に来たの?只雑談をするために来ただけじゃないよね?」

 「ああ、1つ『主席』から伝言を頼まれた。」

 「伝言?」

 「・・・『八重紅狼は至急ロメスティルニア大陸に集結せよ。』・・・とのことだ。」

 「うげ~・・・絶対説教だよ・・・嫌だなぁ・・・」

 「承知した。」

 「より詳細な集合地点は現地に到着次第使者がお前達を見つけるとのことだから、取り合えずワイバーンに乗って大陸に集合しろ。」

 「アルレッキーノも僕達と一緒に行くの?」

 「俺は少し遅れていく。まだ『仕事』が残っているもんでな。」

 アルレッキーノはそう言うと、2人に背を向けて歩き出した。

 「それじゃあな、『ヨーゼフ』、『ユリシーゼ』。また会おう。」

 そう告げると、アルレッキーノの姿は霧に包まれ、直ぐに霧散してその場から消え失せた。ヨーゼフと呼ばれる男の子は姉のユリシーゼを見つめる。

 「・・・はぁ行きたくないなぁ~・・・でも行かないと駄目だよね~・・・しょうがない、行こうかお姉ちゃん。」

 ヨーゼフは口笛を吹いてワイバーンを呼び寄せると、ワイバーンの背中にさっと乗った。ユリシーゼも口笛を吹いてワイバーンを呼ぶ。

 2人はワイバーンに乗って大空へと飛び上がると、北に向けて飛行を始めた。ヨーゼフの長い銀髪が激しく乱れる。
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