最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~大陸横断汽車編 第22章~

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[古都へ向かって・・・]

 フォルト達はケストレルと合流すると、夕食を取り始めた。ケストレルとガーヴェラが先程まで何の話をしていたのか非常に気になる3人だったが、その話題に触れることは無かった。ケストレルも触れられたくないのか、フォルト達が投げかけた他愛のない会話に明るく反応していた。会話自体は楽しかったのだが、何処かもやもやの残る空気がフォルト達の間に漂っていた。

 フォルト達は夕食を楽しんだ後、就寝準備を整えると早々に床についた。それから2日間、フォルト達は街の中で代わりの汽車が到着するのを待った。

 そして街に到着してから3日目が経った早朝、代わりの汽車が到着したとのことでフォルト達は整備駅へと向かった。駅には多くの乗客達の他に古都軍に所属している兵士達が大勢武装して立っており、フード男と数人の仲間達を汽車の先頭へと連行していっているのが確認できた。彼らを連行している兵士の先頭にはガーヴェラがおり、この間涙を流していた時の面影は一切見せる事無く、普段の凛々しい顔つきをしていた。

 フォルト達含む乗客達は全部で13両ある汽車の中に次々と入って行き、10両目のとある4人用の個室へと入ると、荷物を置いて設置されているベッドに腰掛けると言葉を交わす。

 「やっと古都へと向かうことが出来るね。」

 「はい・・・でもこの2日間・・・とても楽しかったです。農場で作物を採る手伝いをしたり、夜に街の人達が劇をしてくれたり・・・皆とっても優しかったです。」

 「うん!それに料理もとても美味しかったね!特にあの濃厚なクリームシチューが一番美味しかったなぁ・・・具も大きくて沢山入っていたし・・・」

 ロメリア達が街に関する思い出を語っていると、ゆっくりと汽車が動き出した。窓から見えていた街の景色はどんどん小さくなっていき、見えなくなった。

 汽車が動き出してから暫く経ち、フォルト達が会話を楽しんでいると部屋のドアが開いた。フォルト達が開いたドアに顔を向けると、そこにはガーヴェラが少し頬を緩ませて立っていた。ガーヴェラはフォルト達に話しかける。ケストレルは一切表情を変える事無くガーヴェラに視線を向けていた。

 「やぁ。街での滞在は楽しかったか?」

 「はい。沢山の貴重な体験と思い出を得ることが出来ました!」

 「そうか・・・それは良かった。」

 ガーヴェラは部屋に入ると、扉を閉めて背をつける。

 「この汽車は明日の昼頃に古都へと到着する予定だ。君達には迷惑をかけてしまって申し訳ない。今後はこの事件を機に駅での警備システムの強化が検討されると思う。」

 「・・・あの男はどうするんですか?」

 「古都に着き次第、洗いざらい情報を吐いてもらう。今の所、呼びかけてはいるんだが、何も言葉を発しなくてな。食事も口にしていない。・・・向こうから話す気は・・・ゼロだ。」

 「大した忠誠心だね。・・・そんなに帝王が大切なのかな?」

 「兵士とはそう言うものだ。私達も国や王に忠誠を誓っている。情報を漏らすぐらいなら、舌を噛み切って自害するよ。」

 「お父さん・・・」

 ロメリアは表情を暗くして顔を俯けると、両手を膝の上において握りしめる。フォルト達はロメリアを心配そうに見つめた。

 ロメリアは街に滞在している時、フォルトとの会話で自分の父親がまた暗殺部隊を自分に差し向けてきたにショックを隠せなかった。ワイバーンレースの時といい、どうして自分は命を狙われなければいけないのか・・・何も父親達を批判してはいないし、自由に世界を旅したいだけなのに・・・ロメリアは怒りを覚える事無く、ただ父含め、家族『だった』人達に深い悲しみを覚えていた。

 ロメリアが再び悲しみに暮れている中、ガーヴェラが話を続ける。

 「後もう1つ聞きたいことがあるんだが・・・古都に着いたら何か用事が入っていたりしないか?」

 「用事?・・・ううん、特に何も入れてないよ。向こうに行ってから決めようかなって思ってたから。」

 「そうか・・・」

 ガーヴェラが小さく頷くと、フォルト達を見渡す。不思議に思ったフォルトがガーヴェラに声をかけた。

 「ガーヴェラ・・・どうしたの?」

 「実はな・・・『王』から直接君達を城へと招きたいとのことでな。古都へ到着次第、私と一緒に城へと来てくれないか?」

 ガーヴェラの言葉にフォルト達は互いに顔を見合わせると、驚きを隠せずに少し声を震わせながら話を続ける。
 
 「王って・・・古都を支配する王様?何で僕達が・・・」

 「君達のことを報告書に書いて提出したら、王と王女様が大変興味をお持ちになってな。ジャッカルの子孫に、元フォルエンシュテュール家の王女、元八重紅狼にヴァンパイアの少女・・・こんな異様な面子で旅をしているとは一体どんな者達なんだとね。そして是非とも君達に会いたいとおっしゃったのだ。」

 「・・・まぁ・・・確かに私達・・・こう指摘されると変わってますよね?」

 シャーロットの言葉を受けてフォルトは小さく乾いた笑みを浮かべた。確かにこのような面子・・・世界を歩き回るサーカス団より変わっていると思う。

 「それに・・・『ナターシャ王女』はロメリア・・・君とお話がしたいそうだ。」

 「私と?」

 「ああ。平民を大切にしたいと願うその思いを胸に抱いている貴女と以前からお話がしてみてかったと言っていてね・・・どうだろうか?会ってみないか?」

 「私・・・もう王族じゃないんだよ?それでもいいの?」

 「彼女はそんなこと気にしないらしい。君さえよければ、ぜひともご一緒させて欲しいとのことだ。」

 ロメリアはフォルト達を見つめる。

 「フォルト達は・・・大丈夫?」

 「僕は大丈夫だよ。それに城の中に入れるなんて滅多にないだろうからちょっとワクワクするかな。」

 「私も・・・フォルトと同じ意見・・・です。」

 「俺も別に問題無いぜ。向こうから会いたいって言ってんだろ?少しぐらいお話してやろうぜ?」

 フォルト達の返事を受けてロメリアはガーヴェラを見つめる。

 「じゃあ・・・そのお誘いに乗ります。」

 「了解した。それでは明日汽車から降りたら私の下へと来てくれ。ホームに立っているから直ぐに見つけられるはずだ。・・・一応城の中に入るのだから身だしなみには注意してくれ。」

 ガーヴェラはそう言うと、部屋から出ていった。ドアがゆっくりと閉まると、フォルト達は言葉を交わした。

 「それにしてもとんでもねぇことになったな?まさか古都に着いて真っ先に王様と会うなんてな。」

 「うん・・・街を観光するだけだと思っていたから少し緊張しちゃうな・・・」

 「身だしなみって言ってましたけど・・・私、この服しかないです・・・」

 「大丈夫だよ。そんなにだらしの無い服じゃない限りは問題ないと思うな。顔や髪を綺麗に整えるだけでいいと思うよ。」

 「それに向こうだって急なお願いなんだから多少は考慮してくれるだろ。こっちは旅をして服なんかあまり持っていないんだからな。・・・フォルトはそう言えばヴァンパイアの里でもらってたよな。」

 「でも皴がついちゃってるんだけど・・・これなら今着ている服の方が見栄えが良いよ・・・」

 フォルト達が言葉を交わしている中、ロメリアは暗い表情のまま窓から景色を眺めていた。青く深い空と赤褐色の大地が対称的で見る者を虜にする。

 汽車は荒野を突き進み、たった1本のレールが延々と続いていた。
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