61 / 258
~ワイバーンレース編 第10章~
しおりを挟む
[轟く翼]
フォルト達がグースの家に到着し彼の帰りを待っていると午後8時過ぎに彼は浮かない顔をして帰ってきた。フォルト達が恐る恐る話しかけて結果を伺うと、レイアの集めた資料と彼の説得によって耳を貸してくれる人々もいたのだが、『レースが明日に控えているので急にコースを変更することは出来ない』との1点張りで退けられてしまったのだという。
その日は落ち込んでいるグースに変わってフォルトとロメリアがグースの許可を貰い夕食を作ると、明日のレースに備えて早々に就寝準備を終えて床についた。
翌日、空が明るみ始めた頃に目を覚ました2人は素早く身支度を整えると、軽い朝食をとった。余り胃に食べ物を詰め込みすぎると飛行中に戻してしまう可能性があったからだ。
朝食をとっている時、グースがフォルト達の下へとやって来てフォルト達の反対側の席に腰掛けた。
「おはよう、フォルト君、ロメリアさん。・・・昨日はよく眠れたかい?」
「はい。あっ、グースさんの朝食も作っておきましたよ。・・・焼いたベーコンと目玉焼きだけですけど。」
「ああ、これか・・・ありがとう、美味しそうだ。」
グースは傍に置いてあるナイフとフォークを手に取ると、輝く黄身にナイフを滑らせて、白身にゆっくりと流れ出る黄身が広がる。
食事を済ませたフォルト達はグースの家を出ると、ニファルの洞窟へと向かった。洞窟前に到着すると、既にニファルが広場で座って待ってくれており、フォルト達の姿を見ると嬉しそうに近づいてきた。彼の姿からは、最初に会った時の様に木の陰に隠れたりといった臆病な雰囲気は一切消え失せていた。
「おはよう、ニファル!いっぱい眠れた?」
「グルㇽㇽㇽㇽㇽッ!」
「一杯眠れたみたいだね~、良かったぁ!今日は頑張ろうねっ!」
ロメリアはニファルが差し出してきた頭を優しく包み込むと、頭を撫でた。ニファルも甘えた声で鳴いて、気持ちよさそうに目を閉じる。フォルトもロメリアの傍に立って、ニファルの頬に手をそっと触れた。
その様子を見ていたグースが、ロメリア達に向かって話しかけた。
「・・・フォルト君、ロメリアさん・・・」
「何ですか?」
「・・・今日のレース・・・無事に帰ってきてくださいね。ニファルと一緒に・・・2人揃って・・・」
「・・・」
「去年の大会の様に・・・父と兄みたいに言葉を発することができない状態で帰ってきてほしくない・・・優勝なんてどうでもいい・・・只無事にゴールしてくれるだけで、私は満足なんです・・・」
グースは涙を流してはいなかったが、顔を俯けて悲痛な声でフォルト達に訴えかけてきた。今日の朝・・・いや、昨日の夜から何処か気が沈んでいる感じはしたが、レイアからの情報を聞いたグースはフォルト達の身が心配でしょうがないのだろう。
フォルトとロメリアは目を合わせると、グースに優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ、グースさん。私達、ちゃ~んと無事に帰ってきますからっ!」
「僕達、例のコースに差し掛かった時はその洞窟に近づかないように飛びますから。・・・それに、優勝して帰ってきてあげますよ。グースさんに教わった技術とニファルの力なら優勝間違いないでしょうからね。」
ニファルはロメリアの腕の中から離れてフォルトをじぃ・・・と見つめると、フォルトはニファルに向かって強気な笑みを浮かべた。ニファルもその笑みに答えるように、目をギラギラと炎の様に輝かせる。
グースの暗く沈んでいた表情が少し明るみを帯びていき、フォルト達に向かって太陽の陽の光を照らしている朝露の様な爽やかな笑みを浮かべた。
その後、ニファルはフォルト達3人を背中に乗せると、リールギャラレーの上層部へと飛び立った。リールギャラレーは渓谷の中に作られた街であるので、その上層部ということは渓谷の上ということになる。フォルト達が上層部へと到着する頃には既にレースに参加する人達と無数のワイバーンが固まって待機していた。
上層部へと到着して最終確認を終えると、フォルトとロメリア、ニファルはグースと別れてスタート地点へと向かい、開始時刻まで周囲を見渡しながら待った。太陽はすっかり天に昇り、空は雲一つない、吸い込まれそうな深い青色に染まっていく。
「凄い数のワイバーンだね~・・・どのくらい参加するんだっけ?」
「確か、200・・・よりちょっと多いくらいだったかな。毎年レース中にワイバーン同士がけんかして事故が多発する上に死者も出るっていうのに結構な数。」
「うぅ~・・・ちょっと体が震えてきちゃうな~・・・ニファルはどうかな?」
「・・・グㇽㇽ・・・」
ニファルは周りにいるワイバーン達を見渡しながら、体が竦んでしまっているようだった。
「あはは・・・ロメリアみたいに体を震わせちゃってるよ。」
「しょうがないよ~。ニファルは元々ちょっと恥ずかしがり屋さんだし、こんなに多くのワイバーンの中に入ったことも初めてだろうし。。」
「大丈夫だよ、ニファル。僕とロメリアがずっと傍にいるからね。それに、ワイバーンの友達もこの大会で出来るかもね!」
「ギャウッ!」
フォルト達はレース開始時刻まで、少しでも気を紛らわすために雑談を交わした。会話を続けていくうちに、無駄に緊張して引き締まった顔をしていたロメリアとニファルは緊張が収まっていつもの落ち着いた表情に戻っていった。
・・・ゾクッ・・・
その時、フォルトは背後から何者かに見つめられている視線を感じ、咄嗟に後ろを振りむいた。しかし視線の先には特に変わった人影はなく、準備をしている人々が沢山いるだけだった。
『誰かに見られている様な感じがしたけど・・・気のせいかな?・・・僕も緊張してしまっているのだろうか・・・』
フォルトが後方を見渡していると、ロメリアが話しかけてくる。
「どうしたのフォルト?急に振り返ったりして・・・」
「・・・何でも無いよ。どうやら僕も緊張しちゃってるようだね。」
「もう・・・しっかりしてよフォルト?・・・緊張しちゃってるのなら、抱きしめてあげよっか?」
ロメリアがフォルトに向かって両腕を広げて満面の笑みを浮かべる。『さぁ私の胸に飛び込んでおいで!』と言わんばかりのポーズをとるが、フォルトは右掌をロメリアに向けて顔を背ける。
「いいよ・・・余計感覚が鈍っちゃうかもしれないから。」
「うえぇ⁉ちょっとそれどういうことっ⁉」
ロメリアはフォルトの態度に納得がいかないようで、フォルトの両肩を掴むと前後に思いっきり振ってフォルトの体を揺らした。フォルトは先程の視線もどうでもよくなり、レース前だというのに少し体の具合が悪くなってしまった。
時刻が午前9時になろうとした時、スタート地点に並んでいる参加者達の前に1人の大柄の男性が銃を片手に持って現れると、大声で呼びかけ始めた。
「皆様、おはようございます!本日はこのような雲一つない快晴の天気に恵まれたことを心よりお喜び申し上げます!・・・もう間もなくレース開始時刻となりますので、それぞれのワイバーンの背中に乗って待機してください!」
男の合図と共に参加者達が一斉に自分達のワイバーンの背中に乗り始めた。フォルトとロメリアもワイバーンの背中に乗ると、ロメリアがフォルトの背中に体を密着させてしっかりと掴まった。ロメリアの柔らかな胸の感触が背中から伝わってくる。
「ロメリア、僕にしっかり掴まっててね?後、周囲の状況確認は任せたよ!」
「おっけ~!」
「ニファルも昨日まで通りに落ち着いて飛んでいこうね!そうすれば優勝も間違いないだろうから!」
「グㇽㇽㇽㇽㇽッ!」
ロメリアとニファルは元気に返事をすると、フォルトは手綱をぎゅっと握って深く深呼吸した。朝の爽やかな乾いた空気が肺を埋め尽くしていく。
他の参加者達が全員ワイバーンの背中に乗って準備を終えると、前に立つ男が右腕を振り上げて、銃口を空へと向ける。
「では只今を持って時刻が午前9時となりましたので、第470回ワイバーンレースを開催します!それでは皆様、激しい空の旅をお楽しみください!」
男の宣言を受けて、ワイバーン達が咆哮を上げて、参加者達も負けない程の声量で雄叫びを上げる。フォルトとロメリアも喉が潰れそうな程の大声を上げ、ニファルも他のワイバーンに負けないとばかりに青空に咆哮を轟かす。
男が引き金を引いて銃声が辺りに響くと、一斉にワイバーンが大空へと翼を広げて飛び上がった。フォルト達もニファルに掛け声をかけて飛び上がると、前を飛んでいるワイバーンにくっついていくように真下に広がる渓谷へと飛び込んでいく。フォルト達の後ろからも次々と渓谷の中へとワイバーン達が潜っていく。
フォルト達の現在位置は先頭から19番目・・・スタート地点の位置取りが上手くいったため、序盤にしては良い位置につけたと思う。
「ニファル、落ち着いていこうね。1匹ずつ・・・丁寧に抜いていこうね。」
「ギュルㇽ・・・」
フォルトはニファルに優しく声をかけると、目の前にいるワイバーンの背中に狙いを定めた。ロメリアは周囲を確認しながら、地図を取り出して現在位置と状況を素早く把握していく。
だがレースが始まって序盤から熾烈な争いが巻き起こる中、フォルト達の後方に綺麗にV字の編隊を組んで飛んでいる5つの影があった。先頭の影が、付いて来ている仲間達にだけ聞こえるように呼び掛ける。
「こちらシャドウ1、シャドウ隊全員に告げる・・・対象、元王族『ロメリア・フィル・シュトルセン・フォルエンシュテュール』を捕捉。引き続き対象のワイバーンに追従し、指定したポイントまで決して姫に見つからずに飛行する。ポイントに到着次第、速やかに彼女と傍にいる子供、ワイバーンを排除しろ。。」
「了解しました、リーダー。」
黒装束が風によって不気味に影のように揺らめき、フォルト達と一定の間隔を保って背後にぴったりと付いて行く。
フォルト達がグースの家に到着し彼の帰りを待っていると午後8時過ぎに彼は浮かない顔をして帰ってきた。フォルト達が恐る恐る話しかけて結果を伺うと、レイアの集めた資料と彼の説得によって耳を貸してくれる人々もいたのだが、『レースが明日に控えているので急にコースを変更することは出来ない』との1点張りで退けられてしまったのだという。
その日は落ち込んでいるグースに変わってフォルトとロメリアがグースの許可を貰い夕食を作ると、明日のレースに備えて早々に就寝準備を終えて床についた。
翌日、空が明るみ始めた頃に目を覚ました2人は素早く身支度を整えると、軽い朝食をとった。余り胃に食べ物を詰め込みすぎると飛行中に戻してしまう可能性があったからだ。
朝食をとっている時、グースがフォルト達の下へとやって来てフォルト達の反対側の席に腰掛けた。
「おはよう、フォルト君、ロメリアさん。・・・昨日はよく眠れたかい?」
「はい。あっ、グースさんの朝食も作っておきましたよ。・・・焼いたベーコンと目玉焼きだけですけど。」
「ああ、これか・・・ありがとう、美味しそうだ。」
グースは傍に置いてあるナイフとフォークを手に取ると、輝く黄身にナイフを滑らせて、白身にゆっくりと流れ出る黄身が広がる。
食事を済ませたフォルト達はグースの家を出ると、ニファルの洞窟へと向かった。洞窟前に到着すると、既にニファルが広場で座って待ってくれており、フォルト達の姿を見ると嬉しそうに近づいてきた。彼の姿からは、最初に会った時の様に木の陰に隠れたりといった臆病な雰囲気は一切消え失せていた。
「おはよう、ニファル!いっぱい眠れた?」
「グルㇽㇽㇽㇽㇽッ!」
「一杯眠れたみたいだね~、良かったぁ!今日は頑張ろうねっ!」
ロメリアはニファルが差し出してきた頭を優しく包み込むと、頭を撫でた。ニファルも甘えた声で鳴いて、気持ちよさそうに目を閉じる。フォルトもロメリアの傍に立って、ニファルの頬に手をそっと触れた。
その様子を見ていたグースが、ロメリア達に向かって話しかけた。
「・・・フォルト君、ロメリアさん・・・」
「何ですか?」
「・・・今日のレース・・・無事に帰ってきてくださいね。ニファルと一緒に・・・2人揃って・・・」
「・・・」
「去年の大会の様に・・・父と兄みたいに言葉を発することができない状態で帰ってきてほしくない・・・優勝なんてどうでもいい・・・只無事にゴールしてくれるだけで、私は満足なんです・・・」
グースは涙を流してはいなかったが、顔を俯けて悲痛な声でフォルト達に訴えかけてきた。今日の朝・・・いや、昨日の夜から何処か気が沈んでいる感じはしたが、レイアからの情報を聞いたグースはフォルト達の身が心配でしょうがないのだろう。
フォルトとロメリアは目を合わせると、グースに優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ、グースさん。私達、ちゃ~んと無事に帰ってきますからっ!」
「僕達、例のコースに差し掛かった時はその洞窟に近づかないように飛びますから。・・・それに、優勝して帰ってきてあげますよ。グースさんに教わった技術とニファルの力なら優勝間違いないでしょうからね。」
ニファルはロメリアの腕の中から離れてフォルトをじぃ・・・と見つめると、フォルトはニファルに向かって強気な笑みを浮かべた。ニファルもその笑みに答えるように、目をギラギラと炎の様に輝かせる。
グースの暗く沈んでいた表情が少し明るみを帯びていき、フォルト達に向かって太陽の陽の光を照らしている朝露の様な爽やかな笑みを浮かべた。
その後、ニファルはフォルト達3人を背中に乗せると、リールギャラレーの上層部へと飛び立った。リールギャラレーは渓谷の中に作られた街であるので、その上層部ということは渓谷の上ということになる。フォルト達が上層部へと到着する頃には既にレースに参加する人達と無数のワイバーンが固まって待機していた。
上層部へと到着して最終確認を終えると、フォルトとロメリア、ニファルはグースと別れてスタート地点へと向かい、開始時刻まで周囲を見渡しながら待った。太陽はすっかり天に昇り、空は雲一つない、吸い込まれそうな深い青色に染まっていく。
「凄い数のワイバーンだね~・・・どのくらい参加するんだっけ?」
「確か、200・・・よりちょっと多いくらいだったかな。毎年レース中にワイバーン同士がけんかして事故が多発する上に死者も出るっていうのに結構な数。」
「うぅ~・・・ちょっと体が震えてきちゃうな~・・・ニファルはどうかな?」
「・・・グㇽㇽ・・・」
ニファルは周りにいるワイバーン達を見渡しながら、体が竦んでしまっているようだった。
「あはは・・・ロメリアみたいに体を震わせちゃってるよ。」
「しょうがないよ~。ニファルは元々ちょっと恥ずかしがり屋さんだし、こんなに多くのワイバーンの中に入ったことも初めてだろうし。。」
「大丈夫だよ、ニファル。僕とロメリアがずっと傍にいるからね。それに、ワイバーンの友達もこの大会で出来るかもね!」
「ギャウッ!」
フォルト達はレース開始時刻まで、少しでも気を紛らわすために雑談を交わした。会話を続けていくうちに、無駄に緊張して引き締まった顔をしていたロメリアとニファルは緊張が収まっていつもの落ち着いた表情に戻っていった。
・・・ゾクッ・・・
その時、フォルトは背後から何者かに見つめられている視線を感じ、咄嗟に後ろを振りむいた。しかし視線の先には特に変わった人影はなく、準備をしている人々が沢山いるだけだった。
『誰かに見られている様な感じがしたけど・・・気のせいかな?・・・僕も緊張してしまっているのだろうか・・・』
フォルトが後方を見渡していると、ロメリアが話しかけてくる。
「どうしたのフォルト?急に振り返ったりして・・・」
「・・・何でも無いよ。どうやら僕も緊張しちゃってるようだね。」
「もう・・・しっかりしてよフォルト?・・・緊張しちゃってるのなら、抱きしめてあげよっか?」
ロメリアがフォルトに向かって両腕を広げて満面の笑みを浮かべる。『さぁ私の胸に飛び込んでおいで!』と言わんばかりのポーズをとるが、フォルトは右掌をロメリアに向けて顔を背ける。
「いいよ・・・余計感覚が鈍っちゃうかもしれないから。」
「うえぇ⁉ちょっとそれどういうことっ⁉」
ロメリアはフォルトの態度に納得がいかないようで、フォルトの両肩を掴むと前後に思いっきり振ってフォルトの体を揺らした。フォルトは先程の視線もどうでもよくなり、レース前だというのに少し体の具合が悪くなってしまった。
時刻が午前9時になろうとした時、スタート地点に並んでいる参加者達の前に1人の大柄の男性が銃を片手に持って現れると、大声で呼びかけ始めた。
「皆様、おはようございます!本日はこのような雲一つない快晴の天気に恵まれたことを心よりお喜び申し上げます!・・・もう間もなくレース開始時刻となりますので、それぞれのワイバーンの背中に乗って待機してください!」
男の合図と共に参加者達が一斉に自分達のワイバーンの背中に乗り始めた。フォルトとロメリアもワイバーンの背中に乗ると、ロメリアがフォルトの背中に体を密着させてしっかりと掴まった。ロメリアの柔らかな胸の感触が背中から伝わってくる。
「ロメリア、僕にしっかり掴まっててね?後、周囲の状況確認は任せたよ!」
「おっけ~!」
「ニファルも昨日まで通りに落ち着いて飛んでいこうね!そうすれば優勝も間違いないだろうから!」
「グㇽㇽㇽㇽㇽッ!」
ロメリアとニファルは元気に返事をすると、フォルトは手綱をぎゅっと握って深く深呼吸した。朝の爽やかな乾いた空気が肺を埋め尽くしていく。
他の参加者達が全員ワイバーンの背中に乗って準備を終えると、前に立つ男が右腕を振り上げて、銃口を空へと向ける。
「では只今を持って時刻が午前9時となりましたので、第470回ワイバーンレースを開催します!それでは皆様、激しい空の旅をお楽しみください!」
男の宣言を受けて、ワイバーン達が咆哮を上げて、参加者達も負けない程の声量で雄叫びを上げる。フォルトとロメリアも喉が潰れそうな程の大声を上げ、ニファルも他のワイバーンに負けないとばかりに青空に咆哮を轟かす。
男が引き金を引いて銃声が辺りに響くと、一斉にワイバーンが大空へと翼を広げて飛び上がった。フォルト達もニファルに掛け声をかけて飛び上がると、前を飛んでいるワイバーンにくっついていくように真下に広がる渓谷へと飛び込んでいく。フォルト達の後ろからも次々と渓谷の中へとワイバーン達が潜っていく。
フォルト達の現在位置は先頭から19番目・・・スタート地点の位置取りが上手くいったため、序盤にしては良い位置につけたと思う。
「ニファル、落ち着いていこうね。1匹ずつ・・・丁寧に抜いていこうね。」
「ギュルㇽ・・・」
フォルトはニファルに優しく声をかけると、目の前にいるワイバーンの背中に狙いを定めた。ロメリアは周囲を確認しながら、地図を取り出して現在位置と状況を素早く把握していく。
だがレースが始まって序盤から熾烈な争いが巻き起こる中、フォルト達の後方に綺麗にV字の編隊を組んで飛んでいる5つの影があった。先頭の影が、付いて来ている仲間達にだけ聞こえるように呼び掛ける。
「こちらシャドウ1、シャドウ隊全員に告げる・・・対象、元王族『ロメリア・フィル・シュトルセン・フォルエンシュテュール』を捕捉。引き続き対象のワイバーンに追従し、指定したポイントまで決して姫に見つからずに飛行する。ポイントに到着次第、速やかに彼女と傍にいる子供、ワイバーンを排除しろ。。」
「了解しました、リーダー。」
黒装束が風によって不気味に影のように揺らめき、フォルト達と一定の間隔を保って背後にぴったりと付いて行く。
0
お気に入りに追加
358
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
素直になる魔法薬を飲まされて
青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。
王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。
「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」
「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」
わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。
婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。
小説家になろうにも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
やさしい魔法と君のための物語。
雨色銀水
ファンタジー
これは森の魔法使いと子供の出会いから始まる、出会いと別れと再会の長い物語――。
※第一部「君と過ごしたなもなき季節に」編あらすじ※
かつて罪を犯し、森に幽閉されていた魔法使いはある日、ひとりの子供を拾う。
ぼろぼろで小さな子供は、名前さえも持たず、ずっと長い間孤独に生きてきた。
孤独な魔法使いと幼い子供。二人は不器用ながらも少しずつ心の距離を縮めながら、絆を深めていく。
失ったものを埋めあうように、二人はいつしか家族のようなものになっていき――。
「ただ、抱きしめる。それだけのことができなかったんだ」
雪が溶けて、春が来たら。
また、出会えると信じている。
※第二部「あなたに贈るシフソフィラ」編あらすじ※
王国に仕える『魔法使い』は、ある日、宰相から一つの依頼を受ける。
魔法石の盗難事件――その事件の解決に向け、調査を始める魔法使いと騎士と弟子たち。
調査を続けていた魔法使いは、一つの結末にたどり着くのだが――。
「あなたが大好きですよ、誰よりもね」
結末の先に訪れる破滅と失われた絆。魔法使いはすべてを失い、物語はゼロに戻る。
※第三部「魔法使いの掟とソフィラの願い」編あらすじ※
魔法使いであった少年は罪を犯し、大切な人たちから離れて一つの村へとたどり着いていた。
そこで根を下ろし、時を過ごした少年は青年となり、ひとりの子供と出会う。
獣の耳としっぽを持つ、人ならざる姿の少女――幼い彼女を救うため、青年はかつての師と罪に向き合い、立ち向かっていく。
青年は自分の罪を乗り越え、先の未来をつかみ取れるのか――?
「生きる限り、忘れることなんかできない」
最後に訪れた再会は、奇跡のように涙を降らせる。
第四部「さよならを告げる風の彼方に」編
ヴィルヘルムと魔法使い、そしてかつての英雄『ギルベルト』に捧ぐ物語。
※他サイトにも同時投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる