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~ワイバーンレース編 第9章~
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[噂]
「はい、今日はそこまで!フォルト君、降りてきていいよ!」
グースの合図を受けて、フォルトはニファルの首に巻き付けている手綱を軽く引っ張りながら小声で着地するよう促した。ニファルは何も返事を返すことは無かったが、一旦距離を取ってからゆっくりと滑空しながらグースの目の前に着地した。フォルトの後ろに座っているロメリアも何度も飛行訓練を続けていくにつれて高所を飛ぶことに慣れていった。・・・最初は飛ぶたびに悲鳴を上げたり、口から泡吹いて気を失ったりしていたが。
ニファルと飛行訓練を始めてから9日が経ち、グースの指導の下ワイバーン操術を太陽が昇っている間ずっと行っていた。ワイバーンにも馬などと同じように操る為の手綱がついているのだが、ワイバーンは元々知性が非常に高い為、信頼さえ持ってくれていれば声をかけるだけでしっかりとこちらの指示を聞いてくれるので手綱を無理に操る必要は無いという。むしろ、ワイバーンはプライドが非常に高い生き物でもあるので、手綱を強く引きすぎたりしてしまうと、自分を服従させようとしていると勘違いしてよりこちらの言う事を聞いてくれないという。
『大事なのは上下関係を作るのではなく、対等な関係を作る事・・・屈服させたって完全には信頼してくれないからね。』
フォルトはグースの言葉を守りながら訓練に取り組むことで、ニファルとの関係を強く築くことが出来ていった。日が経つにつれてフォルトやロメリアにどんどん懐いていき、訓練の時もフォルト達の身を案じてあまり無理な機動をすることも少なくなっていった。休憩時間でも、食事の際にも2人の傍に近づいて中々離れようとしなかった。
フォルトとロメリアはニファルの背中から飛び降りると、ニファルに今日もお疲れ様と労いの言葉をかけて頭を撫でてから、グースの下へと歩いていった。グースは満足そうな笑みを浮かべて2人に話かける。
「フォルト君、もうワイバーンの操縦は覚えたようだね。こんな短期間であんなに操れるようになるなんて凄いや。流石、レイアさんが推薦してきてだけのことはあるね。」
「いいえ、自分なんてまだまだです。もっと覚えなきゃいけない技術が沢山ありますから・・・・」
フォルトが顔をゆっくりと左右に振りながら謙遜していると、グースはにんわりと頬を上げた。
「そんなに謙遜しなくていいんだよ?今の君なら問題なくレースの上位に食い込めるはずだからね。・・・ロメリアさんも、もう高所には慣れたかい?」
「はい!今ではニファルの背中に乗って空を飛ぶことが楽しくて仕方が無いんです!・・・明日のレース、一緒に頑張ろうね、ニファル!」
「ギャウッ!」
ロメリアの言葉を受けてニファルが元気のいい鳴き声を上げる。明日行なわれるレースに向けてフォルト達の気持ちは一つにまとまっていていき、温かい雰囲気になっていった。
そんなフォルト達が話をしている中、枯れた森の中からレイアが1つの大きな茶封筒を持って現れた。
「グースさん、そしてフォルト君とロメリアさん、お久しぶりです。」
「レイアさんじゃないですか。・・・フォルト君達の様子を見に来たのですか?」
「まぁそれもありますけど・・・今日は少し『ご報告』をしに来ました。」
「報告?」
グースが首を傾げて不思議そうに眉間に皴を寄せると、フォルトがレイアの下へと行きグースに説明する。
「実は1週間ほど前に僕とロメリアが去年のレースで起こった事件について調査してきて欲しいとレイアさんに依頼していたんです。」
「去年のレース・・・」
「はい。今年のレースのコースを確認したところ、昨年度と同じルートであるということが分かり、彼らから可能な限り事件が起こった場所の調査をして欲しいと言われたので、その報告をしに今日はやってきました。」
レイアはフォルトに大きめの茶封筒を手渡した。フォルトが茶封筒の封をしている紐を解いて中の資料を取り出すと、ロメリアとグースもその資料に顔を覗かせて一緒に目を通した。
「調査の結果としては、ニファル君のお母さん達がロストした区域には巨大な洞窟があり、恐らくその洞窟に潜んでいる魔物によって殺害された可能性が高いと思われます。彼らの死体状況を確認したところ、何かしらの兵器や巨大なノコギリといった人間が作り出したものによる傷跡ではなく、肉が引き延ばされていたり引き千切られている跡や、鋭い爪によるものであろう傷口から、人間が関与している可能性は極めて低いと考えられます。」
「どのような魔物かは分かっていたりしますか?」
「その点に関しては、私が実際に洞窟の中に入って確認してきました。立ち入り禁止の警告板がありましたが、調査の為ということで特別に許可を頂いて中に入ることが出来ました。・・・で調べた所、魔物の姿を確認することは出来ませんでしたが、巨大な糞や骨塚が多数見られました。それも糞はまだ温かった・・・」
「ということは・・・」
「いますね、確実に。調べた内容から魔物を特定するならば・・・恐らくワイバーンの上位種・・・『リンドヴルム』ではないかと。」
レイアの言葉を受けたグースが右手で口元を隠して狼狽えた。
「馬鹿な・・・リンドヴルムは1世紀以上前に絶滅が確認されている筈・・・それに仮にまだ生き残っていたとしてもどうしてこの大陸に・・・彼らは北のロメスティルニア大陸にしか生息していなかったはずだよ。」
「・・・本当にその・・・リンドヴルムっていう魔物なんですか?」
ロメリアの言葉にレイアは小さく頷く。
「間違いないです。骨塚にあった骨の形などを照らし合わせた所、彼らの特徴と一致しましたから・・・」
レイアの言葉を受けてロメリアとグースは黙り込んだ。そんな中、フォルトがレイアに質問を投げかける。
「レイアさん・・・そのドラゴンはどんな特徴をしているんですか?」
「文献によると全長は15~30m程、目は煌々と燃える炎の様だと。戦闘能力としては1匹で各地域の主要都市を殲滅出来、4匹いれば、大陸の首都を陥落させられると言われています。ワイバーンの何倍も硬い鱗を持ち、肉食でどんなものでも食らいますが、基本は自分の下位種のドラゴンを食べたそうです。」
「1匹で街が滅ぶ・・・」
「ていうか、小さくても15mなんで嘘でしょ?遭遇したら絶対に勝てないよ・・・」
フォルトとロメリアが互いに目を合わせて言葉を失っていると、グースがフォルトから資料を取り上げると、1人何処かへ急いで歩いていく。フォルトが遠ざかっていくグースの背中に向かって声を上げた。
「グースさん⁉何処に行くんですか⁉」
「大会委員会の所に行ってくるよ!こんな危険な魔物がレースの付近に生息しているかもしれないだなんて普通じゃないからね!話を聞いてくれるか分からないけど、一部だけでもコースを変更できないか聞いてくるよ!」
「ちょっと待ってくださいよ!まだ本当にその魔物がいるとは分かりませんし・・・そもそもそんな事出来るんですか⁉」
「分からない・・・でも僕はこれでも色んな所に顔が利くからね・・・取り合えず、行ってくるよ!家の鍵は開けていくから、中で待っていてくれ!」
グースはそう言ってリールギャラレーの街の方へと走って行った。まだ病み上がりで無茶をしてはいけないと医者から言われていたのに・・・
「無茶しますね、あの人は・・・また怪我しないといいですけれど・・・」
レイアがもう見えなくなったグースの方を向いて短い溜息をつくと、フォルト達の方を向いて声をかける。
「それじゃあ私も他の仕事があるからこれで失礼するけど・・・実は調査をしていく中で、面白い情報が1つ見つかったの。・・・役に立たないと思うけれど、一応貴方達にも話しておくわね。」
「何ですか、その情報って?」
フォルトとロメリアは少しだけその情報に興味が湧いてきて、胸の鼓動が若干早まる。
「『ジャッカル』っていう暗殺者の名前・・・知ってる?」
レイアの口からその名前が出てきた瞬間、フォルトの体が固まった。ロメリアは少し首を傾げて彼女に話しかける。
「うん、かつて世界にその名を轟かせた超凄腕のアサシンの事だよね?私も昔、歴史を学んでいる時にその人の事について学んだけど・・・それがどうしたの?」
「実は・・・彼にまつわる話が調査途中で出てきてね、あくまで噂だけどどうやら彼が使っていた7つの武器の1つがその洞窟の何処かに眠っているらしいの。」
「へぇ・・・で、そのジャッカルの7つの武器ってどんなものなの?」
「その辺に関する情報は曖昧なんだけど、はっきりと記されているのは『刃渡り1m程の刃に茨の紋様が刻まれた太刀』『万象を操る懐中時計』『紫苑色の魔導書』の3つだけ。残りの4つがどんなものなのかはまだ分かっていないの。」
「なんでその3つだけが分かっているの?」
「この3つの武器を持つ人、又は組織にジャッカルの直筆だと思われるサインが書かれた武器譲渡契約書が存在し、それぞれ正式にジャッカルの物だったと証明出来ているからね。所在も明らかになっているし。」
「そうなんだ・・・」
レイアは小さく鼻で笑い飛ばした。
「まぁ、レース中は武器を探している暇もないだろうし、元々噂だから本当にあるのかも怪しいんだけどね。話を鵜呑みにしないで戯言程度に聞き流しちゃって?私もあんまりこの話は信じていないから。」
レイアはそう言うと、『またね』と2人に対して告げてから何処かへと行ってしまった。陽が半分ほど沈み、肌寒い風が2人に吹きかかる。ニファルはフォルト達が話している間に1人そそくさと洞窟の中へと戻っており、体を丸めて眠っていた。
フォルト達はグースの家へと戻る道中、先程の話について語り合った。
「フォルト、さっきの話なんだけどさ?何でその洞窟にジャッカルの武器が落ちているなんて噂が出てきたんだろうね?」
「さぁ?噂ってどこから出て来るのか分からないからね。ジャッカルは世界中を歩き回っていたっていうし、人が近づかない洞窟があったらそんな噂が流れたっておかしくないんじゃない?誰も詳しく調査していないからきっと金銀財宝が眠っているはずだ!・・・的な感じ?」
「そうかな~?そんなものなのかな~?」
ロメリアは『う~ん』と首を傾げながらフォルトと一緒にグースの家へと歩いていく。
フォルト達の真上には無数の星が姿を現し始め、2つの特に輝く赤星が相変わらずフォルト達を見つめていた。
「はい、今日はそこまで!フォルト君、降りてきていいよ!」
グースの合図を受けて、フォルトはニファルの首に巻き付けている手綱を軽く引っ張りながら小声で着地するよう促した。ニファルは何も返事を返すことは無かったが、一旦距離を取ってからゆっくりと滑空しながらグースの目の前に着地した。フォルトの後ろに座っているロメリアも何度も飛行訓練を続けていくにつれて高所を飛ぶことに慣れていった。・・・最初は飛ぶたびに悲鳴を上げたり、口から泡吹いて気を失ったりしていたが。
ニファルと飛行訓練を始めてから9日が経ち、グースの指導の下ワイバーン操術を太陽が昇っている間ずっと行っていた。ワイバーンにも馬などと同じように操る為の手綱がついているのだが、ワイバーンは元々知性が非常に高い為、信頼さえ持ってくれていれば声をかけるだけでしっかりとこちらの指示を聞いてくれるので手綱を無理に操る必要は無いという。むしろ、ワイバーンはプライドが非常に高い生き物でもあるので、手綱を強く引きすぎたりしてしまうと、自分を服従させようとしていると勘違いしてよりこちらの言う事を聞いてくれないという。
『大事なのは上下関係を作るのではなく、対等な関係を作る事・・・屈服させたって完全には信頼してくれないからね。』
フォルトはグースの言葉を守りながら訓練に取り組むことで、ニファルとの関係を強く築くことが出来ていった。日が経つにつれてフォルトやロメリアにどんどん懐いていき、訓練の時もフォルト達の身を案じてあまり無理な機動をすることも少なくなっていった。休憩時間でも、食事の際にも2人の傍に近づいて中々離れようとしなかった。
フォルトとロメリアはニファルの背中から飛び降りると、ニファルに今日もお疲れ様と労いの言葉をかけて頭を撫でてから、グースの下へと歩いていった。グースは満足そうな笑みを浮かべて2人に話かける。
「フォルト君、もうワイバーンの操縦は覚えたようだね。こんな短期間であんなに操れるようになるなんて凄いや。流石、レイアさんが推薦してきてだけのことはあるね。」
「いいえ、自分なんてまだまだです。もっと覚えなきゃいけない技術が沢山ありますから・・・・」
フォルトが顔をゆっくりと左右に振りながら謙遜していると、グースはにんわりと頬を上げた。
「そんなに謙遜しなくていいんだよ?今の君なら問題なくレースの上位に食い込めるはずだからね。・・・ロメリアさんも、もう高所には慣れたかい?」
「はい!今ではニファルの背中に乗って空を飛ぶことが楽しくて仕方が無いんです!・・・明日のレース、一緒に頑張ろうね、ニファル!」
「ギャウッ!」
ロメリアの言葉を受けてニファルが元気のいい鳴き声を上げる。明日行なわれるレースに向けてフォルト達の気持ちは一つにまとまっていていき、温かい雰囲気になっていった。
そんなフォルト達が話をしている中、枯れた森の中からレイアが1つの大きな茶封筒を持って現れた。
「グースさん、そしてフォルト君とロメリアさん、お久しぶりです。」
「レイアさんじゃないですか。・・・フォルト君達の様子を見に来たのですか?」
「まぁそれもありますけど・・・今日は少し『ご報告』をしに来ました。」
「報告?」
グースが首を傾げて不思議そうに眉間に皴を寄せると、フォルトがレイアの下へと行きグースに説明する。
「実は1週間ほど前に僕とロメリアが去年のレースで起こった事件について調査してきて欲しいとレイアさんに依頼していたんです。」
「去年のレース・・・」
「はい。今年のレースのコースを確認したところ、昨年度と同じルートであるということが分かり、彼らから可能な限り事件が起こった場所の調査をして欲しいと言われたので、その報告をしに今日はやってきました。」
レイアはフォルトに大きめの茶封筒を手渡した。フォルトが茶封筒の封をしている紐を解いて中の資料を取り出すと、ロメリアとグースもその資料に顔を覗かせて一緒に目を通した。
「調査の結果としては、ニファル君のお母さん達がロストした区域には巨大な洞窟があり、恐らくその洞窟に潜んでいる魔物によって殺害された可能性が高いと思われます。彼らの死体状況を確認したところ、何かしらの兵器や巨大なノコギリといった人間が作り出したものによる傷跡ではなく、肉が引き延ばされていたり引き千切られている跡や、鋭い爪によるものであろう傷口から、人間が関与している可能性は極めて低いと考えられます。」
「どのような魔物かは分かっていたりしますか?」
「その点に関しては、私が実際に洞窟の中に入って確認してきました。立ち入り禁止の警告板がありましたが、調査の為ということで特別に許可を頂いて中に入ることが出来ました。・・・で調べた所、魔物の姿を確認することは出来ませんでしたが、巨大な糞や骨塚が多数見られました。それも糞はまだ温かった・・・」
「ということは・・・」
「いますね、確実に。調べた内容から魔物を特定するならば・・・恐らくワイバーンの上位種・・・『リンドヴルム』ではないかと。」
レイアの言葉を受けたグースが右手で口元を隠して狼狽えた。
「馬鹿な・・・リンドヴルムは1世紀以上前に絶滅が確認されている筈・・・それに仮にまだ生き残っていたとしてもどうしてこの大陸に・・・彼らは北のロメスティルニア大陸にしか生息していなかったはずだよ。」
「・・・本当にその・・・リンドヴルムっていう魔物なんですか?」
ロメリアの言葉にレイアは小さく頷く。
「間違いないです。骨塚にあった骨の形などを照らし合わせた所、彼らの特徴と一致しましたから・・・」
レイアの言葉を受けてロメリアとグースは黙り込んだ。そんな中、フォルトがレイアに質問を投げかける。
「レイアさん・・・そのドラゴンはどんな特徴をしているんですか?」
「文献によると全長は15~30m程、目は煌々と燃える炎の様だと。戦闘能力としては1匹で各地域の主要都市を殲滅出来、4匹いれば、大陸の首都を陥落させられると言われています。ワイバーンの何倍も硬い鱗を持ち、肉食でどんなものでも食らいますが、基本は自分の下位種のドラゴンを食べたそうです。」
「1匹で街が滅ぶ・・・」
「ていうか、小さくても15mなんで嘘でしょ?遭遇したら絶対に勝てないよ・・・」
フォルトとロメリアが互いに目を合わせて言葉を失っていると、グースがフォルトから資料を取り上げると、1人何処かへ急いで歩いていく。フォルトが遠ざかっていくグースの背中に向かって声を上げた。
「グースさん⁉何処に行くんですか⁉」
「大会委員会の所に行ってくるよ!こんな危険な魔物がレースの付近に生息しているかもしれないだなんて普通じゃないからね!話を聞いてくれるか分からないけど、一部だけでもコースを変更できないか聞いてくるよ!」
「ちょっと待ってくださいよ!まだ本当にその魔物がいるとは分かりませんし・・・そもそもそんな事出来るんですか⁉」
「分からない・・・でも僕はこれでも色んな所に顔が利くからね・・・取り合えず、行ってくるよ!家の鍵は開けていくから、中で待っていてくれ!」
グースはそう言ってリールギャラレーの街の方へと走って行った。まだ病み上がりで無茶をしてはいけないと医者から言われていたのに・・・
「無茶しますね、あの人は・・・また怪我しないといいですけれど・・・」
レイアがもう見えなくなったグースの方を向いて短い溜息をつくと、フォルト達の方を向いて声をかける。
「それじゃあ私も他の仕事があるからこれで失礼するけど・・・実は調査をしていく中で、面白い情報が1つ見つかったの。・・・役に立たないと思うけれど、一応貴方達にも話しておくわね。」
「何ですか、その情報って?」
フォルトとロメリアは少しだけその情報に興味が湧いてきて、胸の鼓動が若干早まる。
「『ジャッカル』っていう暗殺者の名前・・・知ってる?」
レイアの口からその名前が出てきた瞬間、フォルトの体が固まった。ロメリアは少し首を傾げて彼女に話しかける。
「うん、かつて世界にその名を轟かせた超凄腕のアサシンの事だよね?私も昔、歴史を学んでいる時にその人の事について学んだけど・・・それがどうしたの?」
「実は・・・彼にまつわる話が調査途中で出てきてね、あくまで噂だけどどうやら彼が使っていた7つの武器の1つがその洞窟の何処かに眠っているらしいの。」
「へぇ・・・で、そのジャッカルの7つの武器ってどんなものなの?」
「その辺に関する情報は曖昧なんだけど、はっきりと記されているのは『刃渡り1m程の刃に茨の紋様が刻まれた太刀』『万象を操る懐中時計』『紫苑色の魔導書』の3つだけ。残りの4つがどんなものなのかはまだ分かっていないの。」
「なんでその3つだけが分かっているの?」
「この3つの武器を持つ人、又は組織にジャッカルの直筆だと思われるサインが書かれた武器譲渡契約書が存在し、それぞれ正式にジャッカルの物だったと証明出来ているからね。所在も明らかになっているし。」
「そうなんだ・・・」
レイアは小さく鼻で笑い飛ばした。
「まぁ、レース中は武器を探している暇もないだろうし、元々噂だから本当にあるのかも怪しいんだけどね。話を鵜呑みにしないで戯言程度に聞き流しちゃって?私もあんまりこの話は信じていないから。」
レイアはそう言うと、『またね』と2人に対して告げてから何処かへと行ってしまった。陽が半分ほど沈み、肌寒い風が2人に吹きかかる。ニファルはフォルト達が話している間に1人そそくさと洞窟の中へと戻っており、体を丸めて眠っていた。
フォルト達はグースの家へと戻る道中、先程の話について語り合った。
「フォルト、さっきの話なんだけどさ?何でその洞窟にジャッカルの武器が落ちているなんて噂が出てきたんだろうね?」
「さぁ?噂ってどこから出て来るのか分からないからね。ジャッカルは世界中を歩き回っていたっていうし、人が近づかない洞窟があったらそんな噂が流れたっておかしくないんじゃない?誰も詳しく調査していないからきっと金銀財宝が眠っているはずだ!・・・的な感じ?」
「そうかな~?そんなものなのかな~?」
ロメリアは『う~ん』と首を傾げながらフォルトと一緒にグースの家へと歩いていく。
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