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~真夏のビーチバレー編 最終章~
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[異大陸へ]
「お疲れ様でした皆!今からお互いの健闘を称えて・・・かんぱ~いっ!」
すっかり陽が沈んで夜空が星の海で満たされた中、闇に染まって星を映す海を一望できるとある料亭の一室からリティの元気溢れる声が温かく響いた。試合が終了し、フォルト達のチームの表彰式が終わった後に、リティが皆でご飯食べようと誘ってくれて、フォルト達はリティ達と共に着替える事無く、食事処へと向かったのだった。
リティの挨拶と共に浜辺にいた姿のままであるフォルト、ロメリア、ケストレル、バンカー、ラックの5人は立ち上がってカクテルが入ったジョッキを掲げているリティに対してそれぞれが持っているジョッキを掲げながら声を上げる。
「お疲れさまでした!」
「お疲れ~!今日は沢山飲んじゃうぞ~!」
「駄目だよ、ロメリア!あんまり飲みすぎるとお酒取り上げちゃうからね!少し前に酔っぱらって僕に絡んで来たり、戻したりしたのを忘れた訳じゃないよね⁉」
「もう~お母さんみたいなこと言わないでよ、フォルト~!私だって今回はしっかりと自制するって!」
ロメリアはへらへらと笑いながらフォルトの肩に自分の肩を軽くぶつけると、自分のジョッキに入っているオレンジカクテルをゴクゴクと豪快に飲んでいった。フォルトは溜息をつきながらも自分のジョッキに入ったオレンジジュースをゆっくりと飲んでいく。氷が入ってキンキンに冷たくなっているジュースが火照ったフォルトの体の中を通っていくのをその身で感じる。
ラックとリティ、バンカーの3人もお互いに雑談を交わしながら食事を進めていっていた。勿論酒も沢山に飲んでいたので、ケストレル達の顔は少し赤く染まっており、フォルトは目の前にあるベーコンピザをゆっくりと食べながら彼らを眺めた。ピザを食いちぎると、とろりと蕩けたチーズがビヨ~ンと伸びた。
『皆あんなに一気に酒飲んでいるのに全然酔ってないな。それにさっきまでビーチバレーしてたって言うのに・・・凄く元気だなぁ・・・』
フォルトはビーチでの激しい熱戦を繰り広げたおかげてすっかりと疲れ果ててしまい、正直食事よりも直ぐにベッドに横になりたかった。食事をしていれば眠気も収まるかと思っていたが、そうはならず、寧ろ眠気が増してしまって瞼が非常に重たくなってしまっていた。ロメリアは『んん~!』と感動しながらオニオンスープを飲み干していた。
そんな中、フォルトとロメリアの下にケストレルが、ビールが入ったジョッキを持って話しかけてくる。
「どうした、フォルト?せっかく優勝したのに浮かねえ顔して・・・」
「・・・眠たいんだ。今日は沢山動いちゃったし・・・お腹もちょっとずつ膨れてきちゃったから・・・」
「成程なぁ。道理でさっきから虚ろな目でふらふらと体を揺らしてるわけだ。」
フォルトは小さく頷くと半目になって体をロメリアにくっつけた。ロメリアの柔らかい肌が体に触れて包み込むように温かさがフォルトの眠気を増長させる。
「眠たいの?」
「少し・・・ね。」
フォルトは恥ずかしそうに少し微笑むと、ロメリアが足を揃えて自分の太腿に手を置いた。
「横になる?眠たいのに無理に起きているのはきついでしょ?」
「・・・いいの?」
「うん。もし爆睡しちゃってたらベッドにまで運んであげるから。」
ロメリアが優しく微笑むと、フォルトはありがとうと呟いてロメリアの太腿を枕にして横になった。心地よい太腿の感触と香りがフォルトを一気に夢の世界へと誘い、あっという間にすぅ・・・すぅ・・・と静かな寝息を立て始めた。
ロメリアは優しくフォルトの頭を撫でる。
「・・・寝ちゃった。今日いっぱい頑張ったもんね・・・」
「ふんっ・・・フォルトは凄い奴だな。まさかあそこから打ち返すなんて誰が思うかよ。」
ケストレルは椅子の背もたれに腕を回すと、ビールを一気に口の中へと運んでいく。ロメリアは優しい眼差しでフォルトの寝顔を見つめると少し悲しそうな顔をした。ケストレルはそんなロメリアの表情を見て不思議に思い声をかける。
「ロメリア?お前まで、何でそんな浮かない顔してんだ?もしかしてお前の眠たいのか?」
「ううん、違うの。・・・今回もフォルトに頼っちゃったなぁ~って・・・思っちゃって・・・」
「・・・」
「もしフォルトがいなかったら優勝は絶対に出来なかった・・・私がボールをコートの遥か外に打ち上げちゃったから・・・」
ロメリアはフォルトの頭を優しく撫で続ける。
「森の中でも葡萄畑でも・・・フォルトは一番前で戦ってくれた。私が土に埋もれている間は1人で魔物と戦っていたし、森でも幽霊と戦っている時、あまり役に立てなかった・・・情けないなぁ・・・『お姉ちゃん』なのに『弟』に頼りっぱなしだ・・・」
その時、海から爽やかな夜風がさらぁ・・・と吹いてきてロメリアの髪を優しく揺らめかせる。
ケストレルは手に持っているジョッキを机の上に置くと、ロメリアを見て少し小馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「な・・・何?」
ロメリアが困惑しながら聞くと、ケストレルはロメリアをニヤニヤと笑みを浮かべながら話し始めた。
「お前・・・考えすぎだよ。フォルトの顔をよく見てみろよ。」
ロメリアが改めてフォルトの顔を覗き見ると、フォルトは幸せな夢を見ているのか小さく微笑みながら寝言を言い始める。
「ロメリア・・・離れないでね・・・ずっと傍に・・・」
フォルトは『うぅん・・・』と体をもぞもぞと動かすと再び静かな寝息をかき始めた。ロメリアが寝言を聞いて口を小さく開けてフォルトを見つめ続けていると、ケストレルが言葉を続ける。
「フォルトだってお前に頼ってるんだよ。こいつも・・・お前が傍にいてくれるんだから安心してお前に体を預けられているんだ。・・・だからもうあんまりマイナスに考えるなよ?これまで通り、いつも通りに接すればいいと思うぜ。お前の役に立てて、こいつも満足しているだろうし。」
「・・・そうなのかな・・・」
ロメリアがフォルトの肩にそっと手を置いていると、ケストレルが席を急に立ち上がった。
「あ~あ!全く幸せな悩みだな!・・・大切な人が傍にいてくれるってだけで贅沢なのによ。」
ケストレルはそう言い放つと、店の外へと歩いていく。
「ケストレル・・・どこ行くの?」
「宿に戻るんだよ。俺も眠くなったからな。・・・ロメリアも早く寝ろよ?胸がそれ以上大きくならなくても知らねえぜ?」
「む、胸の大きさは関係ないでしょ⁉それに!今だってそれなりにあるんだからっ!」
「あっはっは!見れば分かるぜ、そんなことは!」
ケストレルはそう笑い飛ばすと、机の上に自分の分のお金を置くと店から出ていった。ロメリアは小さく溜息をつくと、ジョッキに中に入っているカクテルを一気飲みした。
その日はそのまま食事を終えると、ロメリアがフォルトをおんぶして宿まで戻ってベッドに寝かせると、ロメリアも自分のベッドの中に入って夢の中へと落ちていった。
翌日、宿を出るとリティ達と挨拶を軽く交わしてから船着き場へと向かってフィルテラスト大陸のエメラリア港行の船に乗る。指定された客室へと行き、荷物を置くと船の甲板へと向かった。
船は既に大海原へと出ており、爽やかな海風が2人の間をさり気なく通り過ぎていく。
「うわぁ~!ロメリア!海の上を動いているよ!これが船ってやつなんだね!」
「うん・・・船酔いとかはしてない?」
「全然!それに、こんな綺麗な景色が目の前に広がっているのに船酔いしてちゃあしっかりと目に焼き付けられないからしてられないよ!」
フォルトは目を真珠の様に輝かせながら大海原を見つめ続ける。自分という存在が世界にとって矮小なものであるということを感じながら広大な世界を実感していたフォルトの心は快晴の大空の様に晴れ渡っていた。未知の世界との遭遇はフォルトの好奇心を強く刺激する。
ロメリアも大海原に視線を向けていると、フォルトの方に顔を向けた。フォルトの明るい顔を眺めながら彼女はそっとフォルトに体を添わせた。
「ロメリア?」
フォルトは目を点にしてロメリアを見つめると、ロメリアはフォルトの方を向いて微笑むと、大海原に顔を向けた。
『フォルト・・・私はずっと傍にいるよ。・・・いつまでも・・・』
大海の空に輝く太陽が2人を明るく祝福する。
「お疲れ様でした皆!今からお互いの健闘を称えて・・・かんぱ~いっ!」
すっかり陽が沈んで夜空が星の海で満たされた中、闇に染まって星を映す海を一望できるとある料亭の一室からリティの元気溢れる声が温かく響いた。試合が終了し、フォルト達のチームの表彰式が終わった後に、リティが皆でご飯食べようと誘ってくれて、フォルト達はリティ達と共に着替える事無く、食事処へと向かったのだった。
リティの挨拶と共に浜辺にいた姿のままであるフォルト、ロメリア、ケストレル、バンカー、ラックの5人は立ち上がってカクテルが入ったジョッキを掲げているリティに対してそれぞれが持っているジョッキを掲げながら声を上げる。
「お疲れさまでした!」
「お疲れ~!今日は沢山飲んじゃうぞ~!」
「駄目だよ、ロメリア!あんまり飲みすぎるとお酒取り上げちゃうからね!少し前に酔っぱらって僕に絡んで来たり、戻したりしたのを忘れた訳じゃないよね⁉」
「もう~お母さんみたいなこと言わないでよ、フォルト~!私だって今回はしっかりと自制するって!」
ロメリアはへらへらと笑いながらフォルトの肩に自分の肩を軽くぶつけると、自分のジョッキに入っているオレンジカクテルをゴクゴクと豪快に飲んでいった。フォルトは溜息をつきながらも自分のジョッキに入ったオレンジジュースをゆっくりと飲んでいく。氷が入ってキンキンに冷たくなっているジュースが火照ったフォルトの体の中を通っていくのをその身で感じる。
ラックとリティ、バンカーの3人もお互いに雑談を交わしながら食事を進めていっていた。勿論酒も沢山に飲んでいたので、ケストレル達の顔は少し赤く染まっており、フォルトは目の前にあるベーコンピザをゆっくりと食べながら彼らを眺めた。ピザを食いちぎると、とろりと蕩けたチーズがビヨ~ンと伸びた。
『皆あんなに一気に酒飲んでいるのに全然酔ってないな。それにさっきまでビーチバレーしてたって言うのに・・・凄く元気だなぁ・・・』
フォルトはビーチでの激しい熱戦を繰り広げたおかげてすっかりと疲れ果ててしまい、正直食事よりも直ぐにベッドに横になりたかった。食事をしていれば眠気も収まるかと思っていたが、そうはならず、寧ろ眠気が増してしまって瞼が非常に重たくなってしまっていた。ロメリアは『んん~!』と感動しながらオニオンスープを飲み干していた。
そんな中、フォルトとロメリアの下にケストレルが、ビールが入ったジョッキを持って話しかけてくる。
「どうした、フォルト?せっかく優勝したのに浮かねえ顔して・・・」
「・・・眠たいんだ。今日は沢山動いちゃったし・・・お腹もちょっとずつ膨れてきちゃったから・・・」
「成程なぁ。道理でさっきから虚ろな目でふらふらと体を揺らしてるわけだ。」
フォルトは小さく頷くと半目になって体をロメリアにくっつけた。ロメリアの柔らかい肌が体に触れて包み込むように温かさがフォルトの眠気を増長させる。
「眠たいの?」
「少し・・・ね。」
フォルトは恥ずかしそうに少し微笑むと、ロメリアが足を揃えて自分の太腿に手を置いた。
「横になる?眠たいのに無理に起きているのはきついでしょ?」
「・・・いいの?」
「うん。もし爆睡しちゃってたらベッドにまで運んであげるから。」
ロメリアが優しく微笑むと、フォルトはありがとうと呟いてロメリアの太腿を枕にして横になった。心地よい太腿の感触と香りがフォルトを一気に夢の世界へと誘い、あっという間にすぅ・・・すぅ・・・と静かな寝息を立て始めた。
ロメリアは優しくフォルトの頭を撫でる。
「・・・寝ちゃった。今日いっぱい頑張ったもんね・・・」
「ふんっ・・・フォルトは凄い奴だな。まさかあそこから打ち返すなんて誰が思うかよ。」
ケストレルは椅子の背もたれに腕を回すと、ビールを一気に口の中へと運んでいく。ロメリアは優しい眼差しでフォルトの寝顔を見つめると少し悲しそうな顔をした。ケストレルはそんなロメリアの表情を見て不思議に思い声をかける。
「ロメリア?お前まで、何でそんな浮かない顔してんだ?もしかしてお前の眠たいのか?」
「ううん、違うの。・・・今回もフォルトに頼っちゃったなぁ~って・・・思っちゃって・・・」
「・・・」
「もしフォルトがいなかったら優勝は絶対に出来なかった・・・私がボールをコートの遥か外に打ち上げちゃったから・・・」
ロメリアはフォルトの頭を優しく撫で続ける。
「森の中でも葡萄畑でも・・・フォルトは一番前で戦ってくれた。私が土に埋もれている間は1人で魔物と戦っていたし、森でも幽霊と戦っている時、あまり役に立てなかった・・・情けないなぁ・・・『お姉ちゃん』なのに『弟』に頼りっぱなしだ・・・」
その時、海から爽やかな夜風がさらぁ・・・と吹いてきてロメリアの髪を優しく揺らめかせる。
ケストレルは手に持っているジョッキを机の上に置くと、ロメリアを見て少し小馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「な・・・何?」
ロメリアが困惑しながら聞くと、ケストレルはロメリアをニヤニヤと笑みを浮かべながら話し始めた。
「お前・・・考えすぎだよ。フォルトの顔をよく見てみろよ。」
ロメリアが改めてフォルトの顔を覗き見ると、フォルトは幸せな夢を見ているのか小さく微笑みながら寝言を言い始める。
「ロメリア・・・離れないでね・・・ずっと傍に・・・」
フォルトは『うぅん・・・』と体をもぞもぞと動かすと再び静かな寝息をかき始めた。ロメリアが寝言を聞いて口を小さく開けてフォルトを見つめ続けていると、ケストレルが言葉を続ける。
「フォルトだってお前に頼ってるんだよ。こいつも・・・お前が傍にいてくれるんだから安心してお前に体を預けられているんだ。・・・だからもうあんまりマイナスに考えるなよ?これまで通り、いつも通りに接すればいいと思うぜ。お前の役に立てて、こいつも満足しているだろうし。」
「・・・そうなのかな・・・」
ロメリアがフォルトの肩にそっと手を置いていると、ケストレルが席を急に立ち上がった。
「あ~あ!全く幸せな悩みだな!・・・大切な人が傍にいてくれるってだけで贅沢なのによ。」
ケストレルはそう言い放つと、店の外へと歩いていく。
「ケストレル・・・どこ行くの?」
「宿に戻るんだよ。俺も眠くなったからな。・・・ロメリアも早く寝ろよ?胸がそれ以上大きくならなくても知らねえぜ?」
「む、胸の大きさは関係ないでしょ⁉それに!今だってそれなりにあるんだからっ!」
「あっはっは!見れば分かるぜ、そんなことは!」
ケストレルはそう笑い飛ばすと、机の上に自分の分のお金を置くと店から出ていった。ロメリアは小さく溜息をつくと、ジョッキに中に入っているカクテルを一気飲みした。
その日はそのまま食事を終えると、ロメリアがフォルトをおんぶして宿まで戻ってベッドに寝かせると、ロメリアも自分のベッドの中に入って夢の中へと落ちていった。
翌日、宿を出るとリティ達と挨拶を軽く交わしてから船着き場へと向かってフィルテラスト大陸のエメラリア港行の船に乗る。指定された客室へと行き、荷物を置くと船の甲板へと向かった。
船は既に大海原へと出ており、爽やかな海風が2人の間をさり気なく通り過ぎていく。
「うわぁ~!ロメリア!海の上を動いているよ!これが船ってやつなんだね!」
「うん・・・船酔いとかはしてない?」
「全然!それに、こんな綺麗な景色が目の前に広がっているのに船酔いしてちゃあしっかりと目に焼き付けられないからしてられないよ!」
フォルトは目を真珠の様に輝かせながら大海原を見つめ続ける。自分という存在が世界にとって矮小なものであるということを感じながら広大な世界を実感していたフォルトの心は快晴の大空の様に晴れ渡っていた。未知の世界との遭遇はフォルトの好奇心を強く刺激する。
ロメリアも大海原に視線を向けていると、フォルトの方に顔を向けた。フォルトの明るい顔を眺めながら彼女はそっとフォルトに体を添わせた。
「ロメリア?」
フォルトは目を点にしてロメリアを見つめると、ロメリアはフォルトの方を向いて微笑むと、大海原に顔を向けた。
『フォルト・・・私はずっと傍にいるよ。・・・いつまでも・・・』
大海の空に輝く太陽が2人を明るく祝福する。
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