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~真夏のビーチバレー編 第8章~
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[対決]
「うおりゃぁ!」
ロメリアはフォルトから高く上げられたボール目掛けてタイミングよく飛び上がると、相手コートの中へとスパイクによって放たれたボールが弾丸の様に入って行き、浜辺の砂浜を舞い上げた。
審判員が笛を吹いて試合終了の合図を轟かせる。
「そこまで!只今の準決勝・・・4対21にてフォルトチームの勝利です!」
ゲームの終了と同時に周りの観客が万雷の拍手を周囲に響かせて、コートを包み込む。フォルト達はネット越しに相手チームと向かい合うと、互いに頭を下げて健闘をたたえ合った。
相手チームがコートから退場すると、審判員が全体にアナウンスする。
「現時刻より5分後にこのコートにて決勝戦を行いたいと思います!決勝のチームは今大会初参加のフォルトチームと大会2連覇中のカトレスチームとなります!」
そのアナウンスが終わると、フォルト達のコートで行われる決勝戦を目に焼き付けようと、人々が山の様に周囲を取り囲んでいった。コートが見えない人は近くの小屋の上に登ったり、浜辺から上がって街の中からスコープを覗き込んで眺めたりしていた。
フォルト達は自分達のコートの中に輪になる様に座ると、連戦で荒くなった呼吸を落ち着けていった。
「とうとう決勝戦まで来たね!」
「うん!もうここまで来たら優勝目指して突っ走るまでだよ!・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
「ロメリア・・・息上がってんぞ?」
「試合が進んでいくにつれてほぼ連戦の状態だったからね・・・特に3回戦以降はもう連続だったし・・・」
「まぁそうでもしねえと、陽が暮れるまでに試合終わんねえよ。3072人いるんだろ?」
ケストレルが沖の方に視線を移すと、既に太陽が少し沈みかけており空が赤黒く染まっていた。フォルトが時計を取り出して時刻を確認すると、午後6時12分・・・この試合が終わったら完全に陽が暮れてしまうだろう。
ロメリアが両腕を真上に上げて背中を伸ばすと、う~んと声を上げた。
「何回試合したか・・・もう覚えてないよ~・・・」
「・・・多分6試合目・・・だと思う。」
「そんなにやってたの⁉・・・通りで息が上がる訳だね・・・」
「といっても2,3,4回戦は相手が棄権して試合してねえから実質3試合目だな。・・・いや、2試合目か。1回戦も相手チームが直ぐに棄権したからな。」
ケストレルはフォルトの方に視線を移し、フォルトは顔を少し俯ける。フォルトが殺人的サーブを繰り出してしまったため、その場面を目撃していたチームは試合開始前に自ら試合を放棄するという選択をしてしまってフォルト達は全く試合をすることなく5回戦まで来てしまった。だがそれ以降のチームはフォルトのサーブを見ていなかった為、棄権することなく勝負を挑んできた。
フォルトがあのサーブをした際は苛立っていた上に戦闘状態になっていたこともあったので、普通にサーブを打っても大きく円を描いて相手コートにやんわりと入って行くだけだったのでサーブは基本的にロメリアが行う事になった。勿論スパイク何て通常状態では出来る訳が無かったのでロメリア任せとして、フォルトはひたすらにボールを高く上げてロメリアが打ちやすいようにしていた。
「それにしてもフォルトの知り合いのチームがこの大会2連覇しているなんてな。お前達は知っていたのか?」
「ううん!私達も全然知らなかったんだよ!」
「僕も知らなかったな。毎年来ているとは言っていたけど、そんなに強かったなんて・・・」
フォルト達がその情報を知ったのは1回戦が終わって、リティ達の観戦に行った時だった。相手チームが早々に棄権してしまったのでフォルト達は異常に早く終わってしまっていたが、それ以外のコートでは熱い試合が繰り広げられており、コートの内外問わず熱気に包まれていた。
リティ達が試合をやっている第1コートも同様に熱い熱気に包まれており、人が多すぎて高台から見下ろすことしかできなかったが、確かにリティ達のチームは非常に連携が取れていた。それぞれの役割を明確に決めているようで、それぞれの役割を完璧にこなしていた。バンカーがブロックし、リティが打ち上げて、ラックが鋭いスパイクをお見舞いする・・・リティがスパイクをするときもあったが、彼女の場合も兄であるラックとあんまり変わらない程の強い一撃だった。
その光景を見ていると。隣にいる観客達がリティ達のことを『流石、大会連覇中のチームだな』と称賛しているのを聞いて、その時に初めて知った情報だった。
「リティさん達強そうだったよね・・・」
「そうだな。・・・誰だっけ・・・あのブロックしてた奴・・・」
「バンカーさんの事?」
「ああそいつだ。あの男・・・砂浜だって言うのに凄い高さ飛んでいたぞ。それにあいつの腕に当たったボールの殆どが弾き返されてた・・・恐らく俺じゃあいつには勝てねえ。」
「ちょっと、ケストレル⁉何試合前から弱気になってるの!やってみないと勝てないかどうかなんてわからないじゃん!」
ロメリアがケストレルに声を上げると、丁度反対のコートにリティ達が入ってきた。バンカーとラックはフォルト達を見つめて頬を釣り上げると、肩を回し始めて試合の準備を始める。リティがネットの前にまでやって来てフォルト達に声をかけてきたのでロメリア達はその場から立ち上がって彼女を見る。
「フォルト君、ロメリアさん・・・あと・・・」
「ケストレルだ。」
「ケストレルさん・・・決勝、宜しくお願いします。あと・・・楽しみましょうね?」
「はいっ!こちらこそ、宜しくお願いします!」
ロメリアはネットの下から手を伸ばすと、リティと固い握手をした。リティは『貴女達には負けない』とばかりに熱い闘志の炎を目に宿らせながらロメリアに笑みを浮かべる。
フォルト達とリティ達がネット越しに正面に並ぶと、審判員が号令を発した。
「それでは只今より決勝戦を行いたいと思います!両チームともそれぞれの持ち場について下さい!」
審判の号令と共に観客席から爆音の様な歓声が上がり、フォルトの手はプレッシャーによってちょっぴり震えてきた。
「おぉお・・・凄い歓声・・・」
「決勝だからな。それに向こうのチームは勝ったら3連覇だし注目も凄いんだろ。」
「うう~・・・ちょっと体が震えてきちゃったよ・・・」
フォルト達が体を軽く動かしながら体勢を整えていると、審判からロメリアに向かってボールが投げられた。号令の前にフォルトとバンカーがくじを引いて、フォルトがサーブ権を獲得していたからだ。
ロメリアはボールを手に取ると左手に添えてふぅ・・・と息を吐いて目を瞑り、精神を集中させる。ロメリアはゆっくりと目を開けると、フォルトの方を見た。
「行くよ・・・」
「うん・・・」
ロメリアは息を一気に吸い込むと、ボールを持っている左手を高く上げてボールを宙に浮かすと、落ちてきたボール目掛けて右手で力一杯に叩いて飛ばした。
「来るぞっ!」
後ろで構えていたラックがネットスレスレで飛び込んできたボールをアンダーハンドでネットの真上に打ち上げる。
「はいっ!」
リティがネットの傍にまで走って近づくと、その場から飛び上がってボールを捕らえる。ロメリアがケストレルに叫んだ。
「ケストレル!来るよっ」
「分かってるよ!」
ケストレルはリティがスパイクを放つ直前にその場から飛び上がり、ボールを防ぐようにブロックの体勢を取る。リティの高さではケストレルの手に塞がれる・・・これならボールを弾くことが出来るはずだと、ケストレルは確信した。
だがリティのスパイクは想像以上に強く、ケストレルの手に当たるとそのまま勢いを殺すことが出来ずに斜め下へと移動し、ネットスレスレに叩き落とした。フォルトが咄嗟に腕を伸ばしながら滑り込んでボールを弾くことに成功するも、ボールはネット下から相手のコートへと入ってしまい、相手の得点となってしまった。
審判は点数表を捲って1対0とした後に、ボールをリティに渡した。点数を取られてしまったことでサーブ権が移ってしまったのだ。
ロメリアが小さく舌を打つフォルトとケストレルに励ましの声をかける。
「ああ~!どんまいッ、フォルト、ケストレル!」
「悪ィ、ボール止められなかった・・・手がめっちゃ痛ぇ・・・」
「ごめんロメリア・・・ボール取れなかったよ。」
「大丈夫だよ、大丈夫!次1本取ればいいんだからっ!ほらっ、サーブが来るよ、構えて!」
フォルト達が元の場所に戻ると、リティがフォルト目掛けてサーブを放った。
『ボールの勢いは良いけど、高さはある・・・これなら安定して高く打ち上げられるっ!』
フォルトは素早くボールの着弾地点に移動すると、ネットの傍に高く打ち上げた。しかし、ビーチバレーでその瞬間、ロメリアがボール目掛けて走っていく。
「行くよっ!」
ロメリアは砂を激しく蹴り飛ばして飛び上がると、ボールをスパイクで思いっきり打ち込んだ。ボールはバンカーのブロックによって勢いを失うと、後ろにいたリティが落ち着いてアンダーハンドで低く飛ばすと、ラックがボールを指先で押し出すようにフォルト達のコートに戻した。
ロメリアがボールを撃ち込んだ直ぐ後に帰ってきたので、フォルトは咄嗟にボールの真下へと滑り込んだ。
『次は落とさないっ!』
「はぁっ!」
フォルトはボールを空高く打ち上げると、ロメリアと視線を合わせる。ロメリアはフォルトに小さく頷くと、後ろへとバックステップした直ぐ後に、助走をつけて再びネットの真上に来たボール目掛けて飛び上がった。
「でやぁっ!」
ロメリアはスパイクを打とうとした時、バンカーがブロックをするために飛び上がってロメリアの目の前に巨大な壁の様に現れた。
だがロメリアは一切の迷いを表すことなく、ボールを捉えた。
『フォルトが打ち上げてくれたボール・・・絶対に入れてやるっ!』
ロメリアは全力でボールを打ち込んだ。先程よりも激しい音を響かせたボールはバンカーのブロックをものともせず、そのまま砂浜へと直撃した。周りから盛大な歓声が上がる。審判が点数を捲り、1対1になる。
「やったぁ!これで同点!流石ロメリアだね!」
フォルトの言葉を受けたロメリアはフォルトに片目を瞑って微笑むと、ボールをフォルトに手渡した。
「さぁ、次はフォルトのサーブだよ!こっからどんどんいい流れに乗って行こう!」
ロメリアのエールを受けたフォルトとケストレルは深く深呼吸をして集中する。リティ達も真剣な面持ちになって、まるで獲物を狙う虎の様に鋭い目つきになった。
陽が沈んでいき、気温は徐々に下がって行ってはいたが周りの熱気はより激しさを増していた。
「うおりゃぁ!」
ロメリアはフォルトから高く上げられたボール目掛けてタイミングよく飛び上がると、相手コートの中へとスパイクによって放たれたボールが弾丸の様に入って行き、浜辺の砂浜を舞い上げた。
審判員が笛を吹いて試合終了の合図を轟かせる。
「そこまで!只今の準決勝・・・4対21にてフォルトチームの勝利です!」
ゲームの終了と同時に周りの観客が万雷の拍手を周囲に響かせて、コートを包み込む。フォルト達はネット越しに相手チームと向かい合うと、互いに頭を下げて健闘をたたえ合った。
相手チームがコートから退場すると、審判員が全体にアナウンスする。
「現時刻より5分後にこのコートにて決勝戦を行いたいと思います!決勝のチームは今大会初参加のフォルトチームと大会2連覇中のカトレスチームとなります!」
そのアナウンスが終わると、フォルト達のコートで行われる決勝戦を目に焼き付けようと、人々が山の様に周囲を取り囲んでいった。コートが見えない人は近くの小屋の上に登ったり、浜辺から上がって街の中からスコープを覗き込んで眺めたりしていた。
フォルト達は自分達のコートの中に輪になる様に座ると、連戦で荒くなった呼吸を落ち着けていった。
「とうとう決勝戦まで来たね!」
「うん!もうここまで来たら優勝目指して突っ走るまでだよ!・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
「ロメリア・・・息上がってんぞ?」
「試合が進んでいくにつれてほぼ連戦の状態だったからね・・・特に3回戦以降はもう連続だったし・・・」
「まぁそうでもしねえと、陽が暮れるまでに試合終わんねえよ。3072人いるんだろ?」
ケストレルが沖の方に視線を移すと、既に太陽が少し沈みかけており空が赤黒く染まっていた。フォルトが時計を取り出して時刻を確認すると、午後6時12分・・・この試合が終わったら完全に陽が暮れてしまうだろう。
ロメリアが両腕を真上に上げて背中を伸ばすと、う~んと声を上げた。
「何回試合したか・・・もう覚えてないよ~・・・」
「・・・多分6試合目・・・だと思う。」
「そんなにやってたの⁉・・・通りで息が上がる訳だね・・・」
「といっても2,3,4回戦は相手が棄権して試合してねえから実質3試合目だな。・・・いや、2試合目か。1回戦も相手チームが直ぐに棄権したからな。」
ケストレルはフォルトの方に視線を移し、フォルトは顔を少し俯ける。フォルトが殺人的サーブを繰り出してしまったため、その場面を目撃していたチームは試合開始前に自ら試合を放棄するという選択をしてしまってフォルト達は全く試合をすることなく5回戦まで来てしまった。だがそれ以降のチームはフォルトのサーブを見ていなかった為、棄権することなく勝負を挑んできた。
フォルトがあのサーブをした際は苛立っていた上に戦闘状態になっていたこともあったので、普通にサーブを打っても大きく円を描いて相手コートにやんわりと入って行くだけだったのでサーブは基本的にロメリアが行う事になった。勿論スパイク何て通常状態では出来る訳が無かったのでロメリア任せとして、フォルトはひたすらにボールを高く上げてロメリアが打ちやすいようにしていた。
「それにしてもフォルトの知り合いのチームがこの大会2連覇しているなんてな。お前達は知っていたのか?」
「ううん!私達も全然知らなかったんだよ!」
「僕も知らなかったな。毎年来ているとは言っていたけど、そんなに強かったなんて・・・」
フォルト達がその情報を知ったのは1回戦が終わって、リティ達の観戦に行った時だった。相手チームが早々に棄権してしまったのでフォルト達は異常に早く終わってしまっていたが、それ以外のコートでは熱い試合が繰り広げられており、コートの内外問わず熱気に包まれていた。
リティ達が試合をやっている第1コートも同様に熱い熱気に包まれており、人が多すぎて高台から見下ろすことしかできなかったが、確かにリティ達のチームは非常に連携が取れていた。それぞれの役割を明確に決めているようで、それぞれの役割を完璧にこなしていた。バンカーがブロックし、リティが打ち上げて、ラックが鋭いスパイクをお見舞いする・・・リティがスパイクをするときもあったが、彼女の場合も兄であるラックとあんまり変わらない程の強い一撃だった。
その光景を見ていると。隣にいる観客達がリティ達のことを『流石、大会連覇中のチームだな』と称賛しているのを聞いて、その時に初めて知った情報だった。
「リティさん達強そうだったよね・・・」
「そうだな。・・・誰だっけ・・・あのブロックしてた奴・・・」
「バンカーさんの事?」
「ああそいつだ。あの男・・・砂浜だって言うのに凄い高さ飛んでいたぞ。それにあいつの腕に当たったボールの殆どが弾き返されてた・・・恐らく俺じゃあいつには勝てねえ。」
「ちょっと、ケストレル⁉何試合前から弱気になってるの!やってみないと勝てないかどうかなんてわからないじゃん!」
ロメリアがケストレルに声を上げると、丁度反対のコートにリティ達が入ってきた。バンカーとラックはフォルト達を見つめて頬を釣り上げると、肩を回し始めて試合の準備を始める。リティがネットの前にまでやって来てフォルト達に声をかけてきたのでロメリア達はその場から立ち上がって彼女を見る。
「フォルト君、ロメリアさん・・・あと・・・」
「ケストレルだ。」
「ケストレルさん・・・決勝、宜しくお願いします。あと・・・楽しみましょうね?」
「はいっ!こちらこそ、宜しくお願いします!」
ロメリアはネットの下から手を伸ばすと、リティと固い握手をした。リティは『貴女達には負けない』とばかりに熱い闘志の炎を目に宿らせながらロメリアに笑みを浮かべる。
フォルト達とリティ達がネット越しに正面に並ぶと、審判員が号令を発した。
「それでは只今より決勝戦を行いたいと思います!両チームともそれぞれの持ち場について下さい!」
審判の号令と共に観客席から爆音の様な歓声が上がり、フォルトの手はプレッシャーによってちょっぴり震えてきた。
「おぉお・・・凄い歓声・・・」
「決勝だからな。それに向こうのチームは勝ったら3連覇だし注目も凄いんだろ。」
「うう~・・・ちょっと体が震えてきちゃったよ・・・」
フォルト達が体を軽く動かしながら体勢を整えていると、審判からロメリアに向かってボールが投げられた。号令の前にフォルトとバンカーがくじを引いて、フォルトがサーブ権を獲得していたからだ。
ロメリアはボールを手に取ると左手に添えてふぅ・・・と息を吐いて目を瞑り、精神を集中させる。ロメリアはゆっくりと目を開けると、フォルトの方を見た。
「行くよ・・・」
「うん・・・」
ロメリアは息を一気に吸い込むと、ボールを持っている左手を高く上げてボールを宙に浮かすと、落ちてきたボール目掛けて右手で力一杯に叩いて飛ばした。
「来るぞっ!」
後ろで構えていたラックがネットスレスレで飛び込んできたボールをアンダーハンドでネットの真上に打ち上げる。
「はいっ!」
リティがネットの傍にまで走って近づくと、その場から飛び上がってボールを捕らえる。ロメリアがケストレルに叫んだ。
「ケストレル!来るよっ」
「分かってるよ!」
ケストレルはリティがスパイクを放つ直前にその場から飛び上がり、ボールを防ぐようにブロックの体勢を取る。リティの高さではケストレルの手に塞がれる・・・これならボールを弾くことが出来るはずだと、ケストレルは確信した。
だがリティのスパイクは想像以上に強く、ケストレルの手に当たるとそのまま勢いを殺すことが出来ずに斜め下へと移動し、ネットスレスレに叩き落とした。フォルトが咄嗟に腕を伸ばしながら滑り込んでボールを弾くことに成功するも、ボールはネット下から相手のコートへと入ってしまい、相手の得点となってしまった。
審判は点数表を捲って1対0とした後に、ボールをリティに渡した。点数を取られてしまったことでサーブ権が移ってしまったのだ。
ロメリアが小さく舌を打つフォルトとケストレルに励ましの声をかける。
「ああ~!どんまいッ、フォルト、ケストレル!」
「悪ィ、ボール止められなかった・・・手がめっちゃ痛ぇ・・・」
「ごめんロメリア・・・ボール取れなかったよ。」
「大丈夫だよ、大丈夫!次1本取ればいいんだからっ!ほらっ、サーブが来るよ、構えて!」
フォルト達が元の場所に戻ると、リティがフォルト目掛けてサーブを放った。
『ボールの勢いは良いけど、高さはある・・・これなら安定して高く打ち上げられるっ!』
フォルトは素早くボールの着弾地点に移動すると、ネットの傍に高く打ち上げた。しかし、ビーチバレーでその瞬間、ロメリアがボール目掛けて走っていく。
「行くよっ!」
ロメリアは砂を激しく蹴り飛ばして飛び上がると、ボールをスパイクで思いっきり打ち込んだ。ボールはバンカーのブロックによって勢いを失うと、後ろにいたリティが落ち着いてアンダーハンドで低く飛ばすと、ラックがボールを指先で押し出すようにフォルト達のコートに戻した。
ロメリアがボールを撃ち込んだ直ぐ後に帰ってきたので、フォルトは咄嗟にボールの真下へと滑り込んだ。
『次は落とさないっ!』
「はぁっ!」
フォルトはボールを空高く打ち上げると、ロメリアと視線を合わせる。ロメリアはフォルトに小さく頷くと、後ろへとバックステップした直ぐ後に、助走をつけて再びネットの真上に来たボール目掛けて飛び上がった。
「でやぁっ!」
ロメリアはスパイクを打とうとした時、バンカーがブロックをするために飛び上がってロメリアの目の前に巨大な壁の様に現れた。
だがロメリアは一切の迷いを表すことなく、ボールを捉えた。
『フォルトが打ち上げてくれたボール・・・絶対に入れてやるっ!』
ロメリアは全力でボールを打ち込んだ。先程よりも激しい音を響かせたボールはバンカーのブロックをものともせず、そのまま砂浜へと直撃した。周りから盛大な歓声が上がる。審判が点数を捲り、1対1になる。
「やったぁ!これで同点!流石ロメリアだね!」
フォルトの言葉を受けたロメリアはフォルトに片目を瞑って微笑むと、ボールをフォルトに手渡した。
「さぁ、次はフォルトのサーブだよ!こっからどんどんいい流れに乗って行こう!」
ロメリアのエールを受けたフォルトとケストレルは深く深呼吸をして集中する。リティ達も真剣な面持ちになって、まるで獲物を狙う虎の様に鋭い目つきになった。
陽が沈んでいき、気温は徐々に下がって行ってはいたが周りの熱気はより激しさを増していた。
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