最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~真夏のビーチバレー編 第5章~

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 「リティさん!それにバンカーさんとラックさんまでっ!」

 「2人共久しぶり~!まさかこの浜辺でロメリアさんとフォルト君に会えるなんてすごい偶然ですね!」

 白色のビキニを着て、茶色の麦わら帽子を被ったリティがロメリアとフォルトに輝く笑みを向けながら話しかけてきた。後ろにはバンカーとラックも立っており、2人共色違いのアロハシャツを着用していて、バッキバキに割れた腹筋を見せつけるように出している。

 「よぉ、フォルト!姉ちゃんと元気にしてたか?」

 「お久しぶりです、バンカーさん!あの後結構大変なことがありましたけど・・・今のところ何とか無事に旅を続けられています!」

 「へぇ、大変な事ね?今日の夜晩飯の時に聞かせてくれよ。」

 ラックがフォルトに話しかけると、ロメリアがリティ達に一つ質問を投げかけた。

 「リティさん達は今日この浜辺に何をしに来たの?泳ぎに来たの?」

 「まぁ泳ぐこともこの街に遊びに来た目的の1つだけど・・・私達の本命はあと少しで開かれるビーチバレー大会に参加することなんです。」

 「ビーチバレー大会・・・確か水着屋の店員も同じこと言ってた・・・他の街でもここのビーチバレー大会は有名なんですか?」

 「有名っちゃあ有名かもな。この時期に開かれる浜辺でのスポーツとしては一番の盛り上がりになるし・・・参加人数も1000人近くいるからな。ほら、浜辺を見てみろよ。」

 バンカーに言われて浜辺を見てみると、見渡す限りの浜辺にビーチバレー用のネットが張られており、コートの数だけでもざっと見て20以上はある。コートの中では既に多くのグループが練習していて、ボールを打ち上げていた。

 「フォルト達は参加しないのか?もう開始まで30分も無いけど、受付はまだしているはずだぜ。」

 「どうするロメリア?僕はロメリアがしたいって言うなら参加しても全然いいけど・・・」

 そう言うフォルトの方をロメリアは細目で見下ろす。

 「ねぇ、フォルト?こういうイベントがあったらさ・・・私がどんな反応するか、本当は分かっているでしょ?」
 
 ロメリアの僅かに興奮が隠せていない声から発せられる言葉を聞いてフォルトは微笑みながら短く溜息を吐いた。

 「・・・やっぱりそうか・・・参加するに決まっている・・・だよね?」

 「大正解っ!勿論参加するに決まってるじゃん!まだ受付しているんでしょ?今すぐにエントリーしに行こうよっ!」

 ロメリアがフォルトを引き連れて受付場へと行こうとした時、ラックが声を上げた。

 「待った!確かこのビーチバレー大会って3人1チームじゃないと参加できなかったような・・・」

 「あれ?そんなルールあったっけ?」

 「う~ん・・・そういえば新しくルールが出来てた気がする・・・以前は2人だけのチームとか4,5人いるチームがあったりと公平性に欠けてたから3人1チームとして参加するという人数規制をかけたような・・・」

 「え~!じゃあ私とフォルトだけじゃあ参加できないってこと?」

 「・・・でもあと一人誰か誘ったら参加できるんだよね?」

 「うん・・・でもあと少しの時間で誰か1人を誘うなんて厳しいんじゃないかな?」

 「じゃあ私が2人分という設定で・・・」
 
 「いや、それは厳しいだろロメリアさんよ・・・有名な選手なら実力的なハンデとしてまだ可能かもしれねえが無名の女性を2人分としてカウントしてくれって言うのは相当厳しいと思うぜ?」

 バンカーの言葉を受けてフォルトとロメリアは腕を組んで顔を伏せた。誰か都合よく一緒にビーチバレーやってくれる人はいないものか・・・とは思ったもののフォルトはある問題に気が付いた。

 『こういう団体でするスポーツって息が合わないと連携がとりづらいよね・・・果たして適当に仲間に入れた人と連携がうまく取れるかなぁ・・・』

 こういう集団でするスポーツに関しては顔見知り、もしくは常日頃から親しい人と一緒にやった方が実力は出るものだ。

 『というか、僕とロメリアはもう十分以上に親しいけど、臨時で入ってくれた人は少し居心地悪いかもしれないなぁ・・・でも知り合いもリティさん達ぐらいしかいないし・・・どうしよう・・・』

 フォルトがう~んと首を傾けながら小さく唸っていると、急に後ろから誰かが覆い被さってきた。

 「よぅ、フォルト!1週間ぶりだな。」
 
 何処か裏がありそうな陽気な声にフォルトが反応して後ろを振り向くと、そこにはアロハシャツを着たケストレルの姿があり、フォルトと視線が合うと白い歯を見せながら笑みを浮かべた。

 「ケストレルッ⁉何でこんな所にっ⁉」

 「何だその言い草は。まるで害虫を見た時のような反応しやがって・・・エルステッドでの仕事が終わってその帰り道にちょっとこの浜辺に立ち寄っただけだよ。」

 「じゃあ私達とここで再会したのは偶々ってこと?」

 「そう。偶々だよ、偶々。」

 ケストレルがフォルトの肩を何度も叩きながらそう言うと、ロメリアは目を細めて少し警戒しながら声を低くして発する。

 「何か怪しい~。もしかして私達の後をつけているの?」

 「何言ってんだロメリア・・・そんな訳ないだろう?・・・というか、この浜辺に来た時真っ先にお前達を見つけられたぜ。」

 「何で?」

 「だって・・・浜辺で遊んでいた奴らが『鮫が来た!』とか言いながら逃げてきて、何事かと思ってみてみたらフォルトが鮫に乗ってやって来てるわ、ロメリアは何故が水着してないわ・・・目立ちすぎだぜ、おたくら。」

 「・・・」

 フォルトとロメリアが言葉を失って佇んでいると、リティがロメリアに話しかけてくる。

 「ロメリアさん、この人は?」

 「ケストレルって言う傭兵だよ。少し前にエルステッドの街で開かれた葡萄狩りの時に出会ったんだ。」

 ふ~んとリティが言うと、バンカーが話に入ってくる。

 「顔見知りなのか。・・・そうだ!この人入れてエントリーすればいいんじゃないか?そしたら丁度3人になるぜ?」

 「エントリー?何の話をしてるんだ?」

 ケストレルが首を傾げているので、フォルトが説明を加える。

 「あと少しでビーチバレー大会があるんだけど、僕とロメリアじゃあと1人足りないってことで参加できないんだ。」

 「それで、偶々来た俺に一緒に参加してくれないかってことか?ほかの奴に頼んだらどうだ?暇そうな奴適当に連れてきたらいいんじゃねえか?」

 「それも考えたんだけど、もう時間もないし何より顔見知りでもない人とやってもうまく連携できる自信が無いんだ。」

 「成程ね・・・」

 ケストレルはこちらをまっすぐ見ているフォルトとロメリアの顔を交互に見ると、短く溜息をついて逆立てている髪の毛をいじりだした。

 「分かった。そのビーチバレー大会?ってやつにお前らと一緒に参加してやるよ。」

 「本当⁉」

 「ああ。でもあんまり期待すんなよ?俺はスポーツをやったことはあんまりないんだからよ。」

 あまり乗り気ではないケストレルに対してロメリアが優しく言葉をかけた。

 「・・・ありがとう、ケストレル。」

 「別に礼を言われる覚えはねえよ。・・・さっさとエントリーしに行こうぜ。もう時間ねえんだろ?」

 ケストレルはロメリアを軽くあしらうと1人勝手にエントリー場へと向かって行った。フォルトはロメリアの傍に近づいてそっと優しく手を握ると、ロメリアを引っ張りながらケストレルの後を追いかける。
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