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~葡萄狩り編 第9章~
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[連撃]
「フォルト・・・あの魔物、何か様子おかしくない?」
ロメリアが小刻みに体を震わせて、全身に赤みがかかり始めた魔物を見ながら小声で呟いた。ケストレルはその魔物の様子を見ると鼻で笑い飛ばす。
「ふんっ、俺達が奴の予想以上の実力を持ってたから思わずビビってんじゃねえのか?」
「俺達っていうよりフォルトにじゃないかな?戦っていたのはフォルトだけだし・・・というか、怖がっているっていうよりも怒ってない、あれ?」
ロメリアがケストレルにツッコミを入れた瞬間、魔物が両腕を横に広げてフォルト達に向かって威嚇するように激しい咆哮を轟かせる。魔物の周囲に生えている葡萄の木が激しく揺れ、それらの木に生えている実が内側から破裂し、周囲に葡萄の果汁を撒き散らす。
ロメリア達もあまりの音量に思わず耳を塞いで顔をしかめた。
「いいっ⁉なんて叫び・・・鼓膜が破れそうっ!」
「鼓膜どころか・・・頭が割れそうだぜ・・・」
ケストレル達は脳が直接揺さぶられるような感覚を覚えながらも魔物の姿を辛うじて捉えていると、魔物は咆哮を終えた瞬間にフォルト達目掛けて襲い掛かってきた。
「皆っ、来るよ!」
フォルトの合図と共にロメリアとケストレルが魔物の側面に回り込むように斜め前方に移動し始めた。フォルトは鎖鎌を激しく回し始めると、魔物に向かって全力で投げつける。
魔物はフォルトから投げつけられた鎌を腕で弾いて、自分の周りに回り込んでいるロメリアとケストレルに一切目を向ける事無くフォルト目掛けて突き進んでいく。
「グガァァァァァッ!」
魔物はフォルトに攻撃が届く範囲まで接近すると、拳を強く握りフォルト目掛けて腕を大きく振るった。人間が手に力を込めた時に腕の筋肉が膨張し太くなるように、魔物の腕もバキバキバキッと木が軋む音と共に太くなっていく。
通常時の2倍近くまで直ぐに膨らむと、フォルト目掛けて鋭い突きを繰り出した。拳の速度が音速を超えているのか、バリィッと空気の壁を突き破る音と空気の膜が魔物の腕に腕輪の様に出現する。
だがフォルトはそんな状況に置いても一切気を乱すことはしなかった。フォルトは弾き飛ばされてしまった鎖鎌の鎖を勢いよく自分の懐の方へと引いて鎌を呼び寄せる。
呼び寄せられた鎌は僅かな円を描いて魔物の首目掛けて飛び込んいき、硬い岩の窪みにフックをかけるように魔物の項に刃が食い込んだ。
「ふんっ!」
フォルトはそのまま鎖を一気に引いて、体を滑らせる。魔物の拳がフォルトの頭スレスレを通過して地面を抉り飛ばす。魔物の拳が当たった所には、小さなクレーターが出来ていた。
フォルトは魔物の股の下を潜り抜けると、そのまま魔物の後頭部まで飛び上がり、項に刺さっている鎌を手に持って体を回転させてその勢いで魔物の首を跳ね飛ばした。
しかしフォルトが首を跳ね飛ばした瞬間に首から茨が伸びて直ぐにくっついてしまった。魔物は首がくっつくと体を捻り、腕を思いっきり振って裏拳を炸裂させる。フォルトは咄嗟に魔物の頭を蹴って空中で軌道を変えると、裏拳を回避し地面へと着地する。
『動きがさっきと比べて段違いに早くなっているっ!そして再生速度も速くなっていて首を斬っただけじゃ足止めにもならない!』
フォルトが軽く舌を打つと、魔物は地面を激しく蹴って体を捻らせながらフォルトへと襲い掛かってきた。
『来るっ!』
フォルトが鎖鎌を構えて魔物の攻撃に備えていると、魔物の後ろにケストレルが大剣を振り上げた状態で現れた。
「うおらぁ!これでも食らいなッ!」
ケストレルは大剣を力任せに振り下ろすと、魔物の左腕を切り落としてそのついでに左足をも切断する。そのままケストレルの大剣は地面に深くめり込んでドォォンッという鈍い音と共に土煙が宙に舞う。
魔物がフォルトの目の前で体勢を崩して地面に倒れると、顔を上げる。それと同時にロメリアが魔物とフォルトの間に割って入ってくる。
「てやぁっ!」
ロメリアは魔物に背中を見せながら乱入した後、右足を軸にして体を回転させて勢いをつけると、魔物の顔面に棍を思いっきりぶつけた。魔物の顔面にヒビが入ると同時に、ロメリアが持っている棍にも少しヒビが入る。ケストレルとロメリアはこれなら多少の足止めは出来たはず・・・と思っていた。
ところが魔物はケストレルによって切断された左腕と左足を瞬時にくっつけると、体を地面に付けたまま足で周囲を薙ぎ払った。
「ぐっ!」
ケストレルは大剣で魔物の重い蹴りを防ぐが、大剣の刃が魔物の蹴りによって割れてしまい、激しいヒビが入ってしまった。そしてケストレルは魔物に蹴り飛ばされて、近くにある葡萄の木に思いっきり叩きつけられてしまう。ケストレルは全身に力を込めて衝撃に備えるが、激しい痛みに襲われて意識が朦朧とする。
魔物はそのまま周囲を薙ぎ払い、今度はロメリアを蹴り飛ばそうとしていた。ロメリアには回避する時間が残されていなかったので、棍を構えて攻撃に備えたが、フォルトは心の中で大きく叫んだ。
『まずいっ!ロメリアじゃコイツの攻撃は防げないっ!棍が折れて、蹴りの直撃を食らってしまう!』
ケストレルは大柄の男性という事もあって耐久力はそれなりにあるが、ロメリアは女性であり、体は鍛えてはいるががっしりとはしておらず、攻撃を防ぐよりも躱す方が彼女のスタイルに合っている為、こんな大型の魔物の蹴りを食らえば間違いなく致命傷を受けてしまう。フォルトの体が反射的に動き出した。
ロメリアに向かって鎖鎌を投げつけて鎖を胴に巻き付けると、フォルトは全力でロメリアを引き寄せる。うっ!と低い声を上げて体をくの字に曲げながらロメリアの体は魔物から離れていき、スレスレで蹴りを回避した。フォルトはロメリアの体を受け止めると、直ぐに鎖を外してロメリアに声をかける。
「ロメリア、ごめん急に引っ張って!大丈夫だった⁉」
「うん!フォルトの手を煩わせちゃったね・・・」
フォルトはロメリアの腰に腕を回し、優しく抱えて一緒に立ち上がるとお互いに背中を合わせて武器を構える。魔物は体を勢いよく起こすとフォルトとロメリアの方をじぃ・・・と不気味に見つめた。
魔物の体は先程よりも赤みを増しており、体中から湯気を流れ出しながら体を激しく震わせている。どうやら、フォルト達に相当怒りを覚えているらしい。
「ゲゲ・・・グァァァァァッ!」
魔物は地面を強く蹴り上げ、フォルト達に向かって飛び掛かっていく。手を開き、フォルトとロメリアを鷲掴みにして握りつぶそうと思っているようだ。
だがこの時、その魔物の視線は完全にフォルトとロメリア・・・この2人にしか向いていなかった。
それが、『ソイツ』の命運を分けた。
「隙だらけだぜ、魔物さんよぉっ!」
何時の間にかケストレルがフォルト達に向かって行っている魔物の背後を取り、大剣を横に振るい両足を切断する。大剣を振るった際に全身に激しい痛みが走ったが、ケストレルは歯を食いしばってその痛みに耐える。
「ゲゲッ⁉」
魔物は両足を斬られた瞬間茨を生やして足をくっつけると、視線を後ろに向けた。しかし、もう魔物の背後にはケストレルの姿は何処にもなかった。魔物がケストレルの姿を見失っていると、『上』からケストレルの声が聞こえてきた。
「こっちだぜ、間抜け!」
魔物が再びフォルト達の方へと顔を向けて上を見ると、地面に頭から落下しながら大剣を構えているケストレルの姿が見えた。魔物は咄嗟に宙に向かって拳を振り上げるが、ケストレルは体を捻って空中で機動を変えることにより攻撃を躱して、魔物の懐に入ることに成功した。
「うおォォォォォッ!」
ケストレルは体全体を使って魔物の胸に大剣を振り当てた。ケストレルの既にヒビが入った大剣が粉々に砕け、刃の欠片が陽の光を反射しながら粉雪のように宙を舞う。
ケストレルが地面に受け身を取って落ち、顔を上げて魔物の胸部に視線を映すとくっと唇を噛んだ。何故なら魔物の胸部には激しいヒビが入ってはいたが、未だにコアは硬皮に辛うじて守られたままだったからだ。
「くそっ!威力が足りなかったか!」
魔物は体を大きく仰け反らせると、視線をケストレルに向けて拳を突き出した。ケストレルは体に蓄積されたダメージによって身動きを取り事が出来ず、迫りくる拳を自分の力で回避することが出来なかった。
「ちぃっ!」
ケストレルが目を塞いで魔物の攻撃に身を構えていると、フォルトがケストレルの前に盾になる様に現れ、ケストレルに向けられた拳の軌道を腕を鎖鎌で切り刻んで吹き飛ばすことによって変え、攻撃を防いだ。
「ロメリアッ!」
「おっけ~!連撃任せてッ!」
ロメリアはフォルトとケストレルの真上を飛び越えるように飛び上がると、体を前に一回転させて棍を魔物の胸目掛けて思いっきり振り下ろす。
ロメリアの棍は激しくヒビの入った硬皮を砕き、魔物のコアを露出させた。赤黒く、鈍く輝く丸いコアが不気味にゆっくりと点滅している。
ロメリアは魔物の硬皮を砕いた後、魔物の体を足場にして宙を舞ってフォルトの下へと近づく。
「フォルト!締めは任せたよっ!」
「了解っ!」
フォルトは鎖鎌を構え、魔物のコアに向かって飛び込む。深く深呼吸し、体全体に酸素を巡らして意識を活性化させる。
「グァァァァァッ!」
魔物がフォルトに向かって叫びながら鋭い拳を最期の力を振り絞り突き出してくるが、フォルトは鎖を魔物の腕や腰に一瞬でがっしりと巻き付けて拘束すると、鎌を大きく振りかぶった。
「止めだっ!」
フォルトは魔物の胴を両断するように鎌を振るうと、周囲の風を巻き取りながら魔物の胴全体を激しく斬り刻み、中心のコアにも鎌と鎌に纏った風が当たり、粉々に吹き飛ばした。
「フォルト・・・あの魔物、何か様子おかしくない?」
ロメリアが小刻みに体を震わせて、全身に赤みがかかり始めた魔物を見ながら小声で呟いた。ケストレルはその魔物の様子を見ると鼻で笑い飛ばす。
「ふんっ、俺達が奴の予想以上の実力を持ってたから思わずビビってんじゃねえのか?」
「俺達っていうよりフォルトにじゃないかな?戦っていたのはフォルトだけだし・・・というか、怖がっているっていうよりも怒ってない、あれ?」
ロメリアがケストレルにツッコミを入れた瞬間、魔物が両腕を横に広げてフォルト達に向かって威嚇するように激しい咆哮を轟かせる。魔物の周囲に生えている葡萄の木が激しく揺れ、それらの木に生えている実が内側から破裂し、周囲に葡萄の果汁を撒き散らす。
ロメリア達もあまりの音量に思わず耳を塞いで顔をしかめた。
「いいっ⁉なんて叫び・・・鼓膜が破れそうっ!」
「鼓膜どころか・・・頭が割れそうだぜ・・・」
ケストレル達は脳が直接揺さぶられるような感覚を覚えながらも魔物の姿を辛うじて捉えていると、魔物は咆哮を終えた瞬間にフォルト達目掛けて襲い掛かってきた。
「皆っ、来るよ!」
フォルトの合図と共にロメリアとケストレルが魔物の側面に回り込むように斜め前方に移動し始めた。フォルトは鎖鎌を激しく回し始めると、魔物に向かって全力で投げつける。
魔物はフォルトから投げつけられた鎌を腕で弾いて、自分の周りに回り込んでいるロメリアとケストレルに一切目を向ける事無くフォルト目掛けて突き進んでいく。
「グガァァァァァッ!」
魔物はフォルトに攻撃が届く範囲まで接近すると、拳を強く握りフォルト目掛けて腕を大きく振るった。人間が手に力を込めた時に腕の筋肉が膨張し太くなるように、魔物の腕もバキバキバキッと木が軋む音と共に太くなっていく。
通常時の2倍近くまで直ぐに膨らむと、フォルト目掛けて鋭い突きを繰り出した。拳の速度が音速を超えているのか、バリィッと空気の壁を突き破る音と空気の膜が魔物の腕に腕輪の様に出現する。
だがフォルトはそんな状況に置いても一切気を乱すことはしなかった。フォルトは弾き飛ばされてしまった鎖鎌の鎖を勢いよく自分の懐の方へと引いて鎌を呼び寄せる。
呼び寄せられた鎌は僅かな円を描いて魔物の首目掛けて飛び込んいき、硬い岩の窪みにフックをかけるように魔物の項に刃が食い込んだ。
「ふんっ!」
フォルトはそのまま鎖を一気に引いて、体を滑らせる。魔物の拳がフォルトの頭スレスレを通過して地面を抉り飛ばす。魔物の拳が当たった所には、小さなクレーターが出来ていた。
フォルトは魔物の股の下を潜り抜けると、そのまま魔物の後頭部まで飛び上がり、項に刺さっている鎌を手に持って体を回転させてその勢いで魔物の首を跳ね飛ばした。
しかしフォルトが首を跳ね飛ばした瞬間に首から茨が伸びて直ぐにくっついてしまった。魔物は首がくっつくと体を捻り、腕を思いっきり振って裏拳を炸裂させる。フォルトは咄嗟に魔物の頭を蹴って空中で軌道を変えると、裏拳を回避し地面へと着地する。
『動きがさっきと比べて段違いに早くなっているっ!そして再生速度も速くなっていて首を斬っただけじゃ足止めにもならない!』
フォルトが軽く舌を打つと、魔物は地面を激しく蹴って体を捻らせながらフォルトへと襲い掛かってきた。
『来るっ!』
フォルトが鎖鎌を構えて魔物の攻撃に備えていると、魔物の後ろにケストレルが大剣を振り上げた状態で現れた。
「うおらぁ!これでも食らいなッ!」
ケストレルは大剣を力任せに振り下ろすと、魔物の左腕を切り落としてそのついでに左足をも切断する。そのままケストレルの大剣は地面に深くめり込んでドォォンッという鈍い音と共に土煙が宙に舞う。
魔物がフォルトの目の前で体勢を崩して地面に倒れると、顔を上げる。それと同時にロメリアが魔物とフォルトの間に割って入ってくる。
「てやぁっ!」
ロメリアは魔物に背中を見せながら乱入した後、右足を軸にして体を回転させて勢いをつけると、魔物の顔面に棍を思いっきりぶつけた。魔物の顔面にヒビが入ると同時に、ロメリアが持っている棍にも少しヒビが入る。ケストレルとロメリアはこれなら多少の足止めは出来たはず・・・と思っていた。
ところが魔物はケストレルによって切断された左腕と左足を瞬時にくっつけると、体を地面に付けたまま足で周囲を薙ぎ払った。
「ぐっ!」
ケストレルは大剣で魔物の重い蹴りを防ぐが、大剣の刃が魔物の蹴りによって割れてしまい、激しいヒビが入ってしまった。そしてケストレルは魔物に蹴り飛ばされて、近くにある葡萄の木に思いっきり叩きつけられてしまう。ケストレルは全身に力を込めて衝撃に備えるが、激しい痛みに襲われて意識が朦朧とする。
魔物はそのまま周囲を薙ぎ払い、今度はロメリアを蹴り飛ばそうとしていた。ロメリアには回避する時間が残されていなかったので、棍を構えて攻撃に備えたが、フォルトは心の中で大きく叫んだ。
『まずいっ!ロメリアじゃコイツの攻撃は防げないっ!棍が折れて、蹴りの直撃を食らってしまう!』
ケストレルは大柄の男性という事もあって耐久力はそれなりにあるが、ロメリアは女性であり、体は鍛えてはいるががっしりとはしておらず、攻撃を防ぐよりも躱す方が彼女のスタイルに合っている為、こんな大型の魔物の蹴りを食らえば間違いなく致命傷を受けてしまう。フォルトの体が反射的に動き出した。
ロメリアに向かって鎖鎌を投げつけて鎖を胴に巻き付けると、フォルトは全力でロメリアを引き寄せる。うっ!と低い声を上げて体をくの字に曲げながらロメリアの体は魔物から離れていき、スレスレで蹴りを回避した。フォルトはロメリアの体を受け止めると、直ぐに鎖を外してロメリアに声をかける。
「ロメリア、ごめん急に引っ張って!大丈夫だった⁉」
「うん!フォルトの手を煩わせちゃったね・・・」
フォルトはロメリアの腰に腕を回し、優しく抱えて一緒に立ち上がるとお互いに背中を合わせて武器を構える。魔物は体を勢いよく起こすとフォルトとロメリアの方をじぃ・・・と不気味に見つめた。
魔物の体は先程よりも赤みを増しており、体中から湯気を流れ出しながら体を激しく震わせている。どうやら、フォルト達に相当怒りを覚えているらしい。
「ゲゲ・・・グァァァァァッ!」
魔物は地面を強く蹴り上げ、フォルト達に向かって飛び掛かっていく。手を開き、フォルトとロメリアを鷲掴みにして握りつぶそうと思っているようだ。
だがこの時、その魔物の視線は完全にフォルトとロメリア・・・この2人にしか向いていなかった。
それが、『ソイツ』の命運を分けた。
「隙だらけだぜ、魔物さんよぉっ!」
何時の間にかケストレルがフォルト達に向かって行っている魔物の背後を取り、大剣を横に振るい両足を切断する。大剣を振るった際に全身に激しい痛みが走ったが、ケストレルは歯を食いしばってその痛みに耐える。
「ゲゲッ⁉」
魔物は両足を斬られた瞬間茨を生やして足をくっつけると、視線を後ろに向けた。しかし、もう魔物の背後にはケストレルの姿は何処にもなかった。魔物がケストレルの姿を見失っていると、『上』からケストレルの声が聞こえてきた。
「こっちだぜ、間抜け!」
魔物が再びフォルト達の方へと顔を向けて上を見ると、地面に頭から落下しながら大剣を構えているケストレルの姿が見えた。魔物は咄嗟に宙に向かって拳を振り上げるが、ケストレルは体を捻って空中で機動を変えることにより攻撃を躱して、魔物の懐に入ることに成功した。
「うおォォォォォッ!」
ケストレルは体全体を使って魔物の胸に大剣を振り当てた。ケストレルの既にヒビが入った大剣が粉々に砕け、刃の欠片が陽の光を反射しながら粉雪のように宙を舞う。
ケストレルが地面に受け身を取って落ち、顔を上げて魔物の胸部に視線を映すとくっと唇を噛んだ。何故なら魔物の胸部には激しいヒビが入ってはいたが、未だにコアは硬皮に辛うじて守られたままだったからだ。
「くそっ!威力が足りなかったか!」
魔物は体を大きく仰け反らせると、視線をケストレルに向けて拳を突き出した。ケストレルは体に蓄積されたダメージによって身動きを取り事が出来ず、迫りくる拳を自分の力で回避することが出来なかった。
「ちぃっ!」
ケストレルが目を塞いで魔物の攻撃に身を構えていると、フォルトがケストレルの前に盾になる様に現れ、ケストレルに向けられた拳の軌道を腕を鎖鎌で切り刻んで吹き飛ばすことによって変え、攻撃を防いだ。
「ロメリアッ!」
「おっけ~!連撃任せてッ!」
ロメリアはフォルトとケストレルの真上を飛び越えるように飛び上がると、体を前に一回転させて棍を魔物の胸目掛けて思いっきり振り下ろす。
ロメリアの棍は激しくヒビの入った硬皮を砕き、魔物のコアを露出させた。赤黒く、鈍く輝く丸いコアが不気味にゆっくりと点滅している。
ロメリアは魔物の硬皮を砕いた後、魔物の体を足場にして宙を舞ってフォルトの下へと近づく。
「フォルト!締めは任せたよっ!」
「了解っ!」
フォルトは鎖鎌を構え、魔物のコアに向かって飛び込む。深く深呼吸し、体全体に酸素を巡らして意識を活性化させる。
「グァァァァァッ!」
魔物がフォルトに向かって叫びながら鋭い拳を最期の力を振り絞り突き出してくるが、フォルトは鎖を魔物の腕や腰に一瞬でがっしりと巻き付けて拘束すると、鎌を大きく振りかぶった。
「止めだっ!」
フォルトは魔物の胴を両断するように鎌を振るうと、周囲の風を巻き取りながら魔物の胴全体を激しく斬り刻み、中心のコアにも鎌と鎌に纏った風が当たり、粉々に吹き飛ばした。
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