最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~看板娘とウェイター編 第4章~

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[看板娘とウェイター]

 「・・・以上で説明は終わりですが、何か質問はありますか?」

 ジョージはロメリアとフォルトにそれぞれの役割を説明した後に一言そう付け加えた。2人は互いに顔を見合わせ、問題は無いという事を確認する。

 「いいえ、大丈夫です!」

 「分かりました・・・そろそろ、ですかね。」

 ジョージは懐に忍ばせていた懐中時計を取り出して現時刻を確認する。時刻は11時54分・・・そろそろ営業開始時間だ。

 「では、そろそろ営業開始ですので気を引き締めて頑張っていきましょう!午後の8時まで一切の休憩はありませんので、用は済ませておいてください。」

 「はい!」

 ロメリアとフォルトが元気よく声を上げる。ジョージは軽く微笑んでから席を立った。

 「それじゃあロメリアさん、初めの30分は私と一緒にお客様の呼び込みをしましょうか。その後、私は調理の方へと向かいますのでそれまでに慣れておいてくださいね?」

 ロメリアのそう言うと、ジョージはフォルトの方に顔を向ける。

 「フォルト君は先程渡したエプロンを着て最初は受付の前に立っていてください。その後はお客様の注文を聞いてその情報をまとめた伝票を調理場に持って行き、そして料理が完成次第、早く注文したお客様の順番に提供してください。誰がどの順番で何を注文したのか・・・大変ですけどしっかりと覚えておいてくださいね。」

 「分かりました。」

 フォルトが返事をすると、ジョージとロメリアが店の外へと出ていった。ロメリアは店から出ていく時、フォルトにガッツポーズをして口パクで『頑張れっ!』と言った。

 フォルトは素早くこの店の名前と薔薇の刺繍がデカデカとされているエプロンを着用し、受付前へと歩いていく。

 受付の前に立ってふと外を見ると、既に何十人もの人が店の前に列を作って並んでいた。

 『うわぁ・・・こんだけ並んでいたら、直ぐに席が埋まるな・・・』

 フォルトが外に並んでいる人達を眺めていると、その奥でロメリアが左手を口元に添え、右手を天に元気良く振り上げて大きな声を上げていた。

 「さぁさぁ皆さん!後もう少しで『食事処 ローゼンフレッシュ』が開店しますよ~!何とこのお店ではこの地域で採れた新鮮な畜産物と農作物を使った伝統料理が『全部』!『全部』食べられるんですよ~!子供からお年を召した方まで!こってりしたものからあっさりしたものまで!お一人様!お子様を連れた家族の皆様!真夏の太陽の様にアツアツのカップル!熟年夫婦!どんどん、いらっしゃ~いっ!」

 ロメリアはまだぎこちない点が見られるが、向日葵の様な満面の笑顔を咲かせて周囲の人々に呼びかけていた。周りの店の前にいる呼び込みの人達も負けじと声を張り上げて自分の店の良さを全力でアピールしている。後もう少しで祭りが開幕するという合図が街全体に轟いていており、店の前にある大通りにはもう埋め尽くさんばかりの人が溢れかえっている。

 そして他の呼び込みの人達が声を上げている中、ロメリアの声は他の呼び込み達の声と比べても一際大きく響いていて、周囲の人達はロメリアの声に引き寄せられるようにどんどん店の前に列を作っていく。ジョージもロメリアがこんなに開店前に客を呼んでいることに嬉しさをにじませた笑みを浮かべ、ロメリアと一緒に周囲に声を張り上げていた。

 フォルトがその光景を見ていると、後ろからジョージの息子で調理担当のバンカーが肩に手を置いて話しかけてきた。

 「凄いな、お前の姉ちゃんは。リティよりも呼び込み上手かもしんねえな。」

 バンカーはそう言ってフォルトの肩を強く何度も叩いた。

 「さて、そろそろ開店だ。姉ちゃんに負けねえよう頑張れよ?」

 「はい!」

 フォルトが元気よく返事をすると、ロイナが店の入口へと向かっていきドアを開けた。

 「大変お待たせいたしました!さぁさぁ、お入りくださいませ!」

 ロイナの挨拶と共に雪崩のように店内に客達が流れ込んでくる。ロイナとフォルトが人数を確認してそれぞれ適切な席へと連れて行く。

 あっという間に席が埋まって室内の待機席も埋まり、屋外にもまだ人が大量に並んでいた。

 直ぐに客席からメニュー表を持ったお客様達がフォルトに向かって声をかけ始める。

 「すみませ~ん!注文良いですか~?」

 「はい!只今参ります!」

 フォルトは伝票を持って、声をかけてくれた客の方へと走っていく。

 店の中が、祭りが始まったことを喜ぶ人達の声で一杯になった。
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