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~看板娘とウェイター編 第1章~
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[隣町の宿屋]
「う~ん!今日も雲一つない良い天気・・・絶好の旅日和だね!」
ロメリアは街道沿いにある宿を出た先で大きく天に手を伸ばして背を伸ばす。ロメリアの胸の膨らみがはっきりと見える。
帝都を飛び出て今日で3日目、あの日からずっとこんな天気だ。雨1つ、澱んだ雲1つなく2人を祝福してくれている。
ロメリアが手を下ろして大きく息を吐くと、フォルトの方を振り向いた。
「それじゃ、先に行こっか!今日こそは町に着けるといいね!」
「さっき店の中で地図を見せて貰ったんだけど、この街道をまっすぐ行くと『フェリル』っていう小さな町があるらしいんだ。今日はその街を目指して歩こうよ。」
「いいね~。それじゃあ早速行ってみよっか!」
子供の様にロメリアが返事をして、帝都とは逆の方向へと歩いていく。フォルトもロメリアの横にくっついて周りの風景を見ながら歩く。
今フォルト達が歩いているこの場所は左右に街道を挟んで畑が広がっており、様々な野菜が実っていた。茄子、ピーマン、トマト、トウモロコシ、米・・・その他にも牛や豚、鶏といった畜産も数多く存在していて、糞の匂いが夏風に乗って漂ってくる。ロメリアはこの匂いが少し苦手な様で神妙な顔をしてはいるが、フォルトはもうこれ以上の悪臭を何十年と体験しているので草食動物のフンの匂いなど気にはならなかった。
そのまま街道を進んでいると、街道沿いにあった民家が数多く見えるようになってきた他に道ですれ違う人も増えてきたので、街が近づいてきているという雰囲気がする。
街道を進んでいると小さな坂が目の前に現れて2人がその坂を上って一番上に到着すると、そこから大きな街が見えた。帝都を出てから初めて2人は町の近くにまでやってきたのだった。
「フォルト、見えたね!あの街が『フェリル』っていう街かな?」
「多分ね。でも何か、小さな町の割には人が多くいない?」
「確かに・・・いくら帝都に一番近い街だからといっても多すぎるよね?何かイベントがあるのかな?」
「取り合えず行ってみようよ。検問所にいる人に聞いたら何か分かるかもしれない。」
フォルトとロメリアは気になる心を押さえながら坂を下りていき、街に近づいていく。
街の前にまで行った2人は検問所の前に立ったが、そこには多くの人が馬や台車を引いて長い行列を作って待っていた。台車の中には沢山の木箱や樽がびっしりと乗せられていて、積み荷が落ちないよう縄で何重にも台車に縛り付けられていた。
「うわぁ・・・凄い人と荷物・・・見て、フォルト!私達の前にある台車に乗っている樽、帝都から運ばれて来てるよ!」
「ほんとだ・・・やっぱり何かあるんだよ、この街で。」
フォルトが樽を眺めていると、ロメリアが前にいる馬に引かせている台車に乗った行商人の人に声をかけた。男がロメリアの声を受けて首を後ろに向ける。
「あの、すみません!凄い人と荷物ですけど、この街で何かあるんですか?」
「ああ、今日は年に一回の祭りがある日なんだ。この大陸中から祭りに参加しようと沢山の人が集まってくるから検問所の前はこの有様だ。普通なら直ぐに入れるんだけどな。」
「へぇ~そうなんですね!因みにこの祭りの目玉って何ですか?」
「この街で採れた数多くの食材を使っての美味しい料理を食べることかなぁ。この街の農作物や畜産物はどれも美味しくてよ、食べたら病み付きになっちまうぜ。」
「はぁ!料理だってよ、フォルト!街に入ったらいっぱい食べ回ろうよっ!」
ロメリアがフォルトを呼んで目を輝かせながら声をかける。その様子を見た行商人はふ~んと2人を見つめる。
「2人は姉妹かい?」
「あっ・・・僕男なんです・・・」
「あ、弟さんだったか!すっごい綺麗な顔してるから勘違いしちまった!そりゃあ悪い事を言っちまったな、すまねえ!」
「気にしないで下さい、おじさん・・・聞き慣れていますから・・・」
フォルトは頬を緩ませて微笑むが、内心呆れてしまっていた。
『ホント・・・帝都を出てから何度言われたかな・・・』
フォルトは帝都を出てから何度も女の子だと勘違いされていた。勿論、自分の事を男だと一目で理解してくれる人も普通にいたのだが、これまで旅の途中で会話をした人の半数近くに自分の性別を間違われていた。
フォルトも最初は女の子と間違われることに一々反応を示してしまっていたが、最近ではもうそれも自分の個性ではないかと思うようにした。
それから30分以上並んでいると、漸く検問所の目の前にまでやってきた。ロメリアとフォルトは自分の名前を告げてブラックリストに載っていないか確認された。フォルトは貧困街出身であるため、検問所を抜けられるか不安になったが無事に突破することが出来た。手荷物の検査を素早く終わらせると荷物を受け取って街の中に入る。
街の中には多くの人が今日行われる祭りに向けて最後の調整を行っているらしく、慌ただしく動き回っていた。
「うわぁ~・・・すごい人の数・・・今日宿取れるかなぁ、ロメリア?」
「う~ん・・・さっきの検問所の雰囲気からして街の外からもたくさん人が来ているから早めに宿屋に行った方が良いよね・・・」
フォルトは周囲を見渡すと、少し離れた所に『宿』と大きな看板が張られている建物を見つけた。
「取り合えず、あそこにある宿屋に行ってみようよ。寝るとこが無いと祭りを楽しむどころじゃないからね。」
「そうだね。・・・フォルト、離れないようにしっかりと付いて来てね。」
ロメリアはフォルトの手を繋ぐと、道に密集している人々をかき分けながら奥にある宿に向かって歩き出した。
街の活気がどんどん大きくなっていき、熱気が増していく。
「う~ん!今日も雲一つない良い天気・・・絶好の旅日和だね!」
ロメリアは街道沿いにある宿を出た先で大きく天に手を伸ばして背を伸ばす。ロメリアの胸の膨らみがはっきりと見える。
帝都を飛び出て今日で3日目、あの日からずっとこんな天気だ。雨1つ、澱んだ雲1つなく2人を祝福してくれている。
ロメリアが手を下ろして大きく息を吐くと、フォルトの方を振り向いた。
「それじゃ、先に行こっか!今日こそは町に着けるといいね!」
「さっき店の中で地図を見せて貰ったんだけど、この街道をまっすぐ行くと『フェリル』っていう小さな町があるらしいんだ。今日はその街を目指して歩こうよ。」
「いいね~。それじゃあ早速行ってみよっか!」
子供の様にロメリアが返事をして、帝都とは逆の方向へと歩いていく。フォルトもロメリアの横にくっついて周りの風景を見ながら歩く。
今フォルト達が歩いているこの場所は左右に街道を挟んで畑が広がっており、様々な野菜が実っていた。茄子、ピーマン、トマト、トウモロコシ、米・・・その他にも牛や豚、鶏といった畜産も数多く存在していて、糞の匂いが夏風に乗って漂ってくる。ロメリアはこの匂いが少し苦手な様で神妙な顔をしてはいるが、フォルトはもうこれ以上の悪臭を何十年と体験しているので草食動物のフンの匂いなど気にはならなかった。
そのまま街道を進んでいると、街道沿いにあった民家が数多く見えるようになってきた他に道ですれ違う人も増えてきたので、街が近づいてきているという雰囲気がする。
街道を進んでいると小さな坂が目の前に現れて2人がその坂を上って一番上に到着すると、そこから大きな街が見えた。帝都を出てから初めて2人は町の近くにまでやってきたのだった。
「フォルト、見えたね!あの街が『フェリル』っていう街かな?」
「多分ね。でも何か、小さな町の割には人が多くいない?」
「確かに・・・いくら帝都に一番近い街だからといっても多すぎるよね?何かイベントがあるのかな?」
「取り合えず行ってみようよ。検問所にいる人に聞いたら何か分かるかもしれない。」
フォルトとロメリアは気になる心を押さえながら坂を下りていき、街に近づいていく。
街の前にまで行った2人は検問所の前に立ったが、そこには多くの人が馬や台車を引いて長い行列を作って待っていた。台車の中には沢山の木箱や樽がびっしりと乗せられていて、積み荷が落ちないよう縄で何重にも台車に縛り付けられていた。
「うわぁ・・・凄い人と荷物・・・見て、フォルト!私達の前にある台車に乗っている樽、帝都から運ばれて来てるよ!」
「ほんとだ・・・やっぱり何かあるんだよ、この街で。」
フォルトが樽を眺めていると、ロメリアが前にいる馬に引かせている台車に乗った行商人の人に声をかけた。男がロメリアの声を受けて首を後ろに向ける。
「あの、すみません!凄い人と荷物ですけど、この街で何かあるんですか?」
「ああ、今日は年に一回の祭りがある日なんだ。この大陸中から祭りに参加しようと沢山の人が集まってくるから検問所の前はこの有様だ。普通なら直ぐに入れるんだけどな。」
「へぇ~そうなんですね!因みにこの祭りの目玉って何ですか?」
「この街で採れた数多くの食材を使っての美味しい料理を食べることかなぁ。この街の農作物や畜産物はどれも美味しくてよ、食べたら病み付きになっちまうぜ。」
「はぁ!料理だってよ、フォルト!街に入ったらいっぱい食べ回ろうよっ!」
ロメリアがフォルトを呼んで目を輝かせながら声をかける。その様子を見た行商人はふ~んと2人を見つめる。
「2人は姉妹かい?」
「あっ・・・僕男なんです・・・」
「あ、弟さんだったか!すっごい綺麗な顔してるから勘違いしちまった!そりゃあ悪い事を言っちまったな、すまねえ!」
「気にしないで下さい、おじさん・・・聞き慣れていますから・・・」
フォルトは頬を緩ませて微笑むが、内心呆れてしまっていた。
『ホント・・・帝都を出てから何度言われたかな・・・』
フォルトは帝都を出てから何度も女の子だと勘違いされていた。勿論、自分の事を男だと一目で理解してくれる人も普通にいたのだが、これまで旅の途中で会話をした人の半数近くに自分の性別を間違われていた。
フォルトも最初は女の子と間違われることに一々反応を示してしまっていたが、最近ではもうそれも自分の個性ではないかと思うようにした。
それから30分以上並んでいると、漸く検問所の目の前にまでやってきた。ロメリアとフォルトは自分の名前を告げてブラックリストに載っていないか確認された。フォルトは貧困街出身であるため、検問所を抜けられるか不安になったが無事に突破することが出来た。手荷物の検査を素早く終わらせると荷物を受け取って街の中に入る。
街の中には多くの人が今日行われる祭りに向けて最後の調整を行っているらしく、慌ただしく動き回っていた。
「うわぁ~・・・すごい人の数・・・今日宿取れるかなぁ、ロメリア?」
「う~ん・・・さっきの検問所の雰囲気からして街の外からもたくさん人が来ているから早めに宿屋に行った方が良いよね・・・」
フォルトは周囲を見渡すと、少し離れた所に『宿』と大きな看板が張られている建物を見つけた。
「取り合えず、あそこにある宿屋に行ってみようよ。寝るとこが無いと祭りを楽しむどころじゃないからね。」
「そうだね。・・・フォルト、離れないようにしっかりと付いて来てね。」
ロメリアはフォルトの手を繋ぐと、道に密集している人々をかき分けながら奥にある宿に向かって歩き出した。
街の活気がどんどん大きくなっていき、熱気が増していく。
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