45 / 49
~魔皇会議編 第13話~
しおりを挟む
[墓荒し]
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・六月___ゲオルグラディア大陸西部・星后・幻王陵墓地___闘技大会まで、残り七日
「これは・・・酷い様だね。」
マルファスが陵墓の周囲に倒れている無残なヴェアウルフやドラゴン達の死体を見て、思わず声を漏らした。生存者の姿が見えない代わりに、古墳のような小さな山となっている陵墓の上には二つの人影が見える。
「貴様ら、その場から動くな!」
デュンケルハイトが二つの影に向かって叫ぶ。二人はゆっくりとデュンケルハイト達に体を向ける。
「Oh , My Sister . 何やら新たなお客さんが来ちゃったようだよ~。」
「・・・そうですね。思ったよりも早い到着でしたね。」
お茶らけた男の声と凛とした女の声が聞こえてきた。そんな二人に対し、ディルメルガが陵墓に近づく。
「お前達、今自分が何をしているのか分かっておるのか?」
ディルメルガがそう告げた直後、上にいる女が彼の足元に矢を放った。放たれた矢は彼の足の指の前に刺さった。
「今のは警告だ。それ以上近づけば、今度は貴様の眉間を撃ち抜く。」
「ほう?汚らわしい侵入者の分際で警告とは・・・随分と舐められたものじゃないか、ディルメルガ。これは丁寧に教え込む必要があるんじゃないかね?」
「ああ・・・我もそう思う。」
マルファスの言葉に返事をしたディルメルガは魔力を漲らせていく。その様子を見た男が、大袈裟なジェスチャーで間に入る。
「Stop , Stop ! 僕達は別に君達と争いに来た訳じゃないんだ。___『今はね』。」
「今は?」
「僕達はただ『かつて失ったもの』を取りに来ただけなんだ。___妹が失礼な態度を取ってしまい、大変失礼だったね。謝るよ。」
男がそう告げた瞬間、瘴気が少し薄まり、陽の光が差し込んできた。二人の影が剥がれていき、はっきりと姿を現した。その二人の姿を見たマルファスが目を細める。
「金色の月と星を模した弓使いの魔族・・・片方の女は勇者ウィルベールから貰った情報と一致するよ。」
「Oh , 今の魔族は人間と通じているのかい?時代は変わったものだね~。」
「えぇ、そうですねお兄様。___情けない方へ変わってしまいましたね。」
アルテミスが吐き捨てるように告げた。隣にいたアポロンは下の三人に自分の名を告げる。
「そう言えば自己紹介をしていなかったね、いけない、いけない。僕の名前はアポロン。隣にいるのは僕の愛する可愛い可愛い妹のアルテミスだ。」
「・・・アルテミス・・・アポロン・・・かつての魔王と同じ名か。___兄妹揃って魔王の真似か?」
「まさか!僕達は正真正銘本物の『元魔王』さ。・・・でも当時の魔族は皆死んじゃってるから証明できないか~、残念。・・・あ、でも長生きしてるエルフとかは僕達の事知ってるかも。気になったら彼らに聞いてみれば~?君達彼らとも仲良くなったらしいし、教えてくれると思うよ~?」
アポロンはへらへらと魔王らしからぬ振る舞いをする。マルファスがディルメルガの横へやって来る。
「ディルメルガ、奴の言葉を信じるか?」
「・・・あの態度。本当のことを言っているのか嘘を言っているのかさっぱり分からん。」
「お前の読心術でも読めないのか。___となると、あいつが本当に魔王かどうかはさておいても中級以下・・・いや並の上級魔族ではないというのは確かだな。お前が読めない奴となると・・・」
「我と同様に魔王クラスの魔族か魔王と同等程度の膨大な魔力を有する上級魔族に限られる。・・・どうであれ、厄介な奴らに変わりない。」
ディルメルガはそう言うと、魔力を一気に解き放った。アポロンはピクリとも動揺しなかったが、アルテミスは咄嗟に矢を番える。
「マルファス、デュンケルハイト___構えよ。ここで奴らを潰す。例えあの者達が誠に古の魔王の『怨念』であろうとも、我の世にそのような忌々しき『闇』は不要だ。」
「了解ッ!」
「・・・ま、あの者達を捉えたら私がもらうことでいいかな?色々と確かめてみたいからね。」
デュンケルハイトとマルファスも戦闘態勢に入る。アルテミスが三人に狙いを定める中、アポロンはアルテミスの肩に手を置いた。
「相手にする必要は無いよ、僕の愛しの妹。既に目的は達した。僕達はこのまま家に帰るよ。変に作戦を変えちゃったら後で怒られちゃうからね。」
「・・・了解しました。」
アルテミスは弦をゆっくりと戻す。その時、アポロンが周囲に転送魔術を展開する。デュンケルハイトが拳に蒼炎を纏わせて突撃する。同時にマルファスとディルメルガも瘴気を纏った無数の錆びついた槍を召喚し、一気に射出する。
「逃がさんッ!」
槍とデュンケルハイトの拳が彼らの目の前に来た___が、その瞬間に二人はその場から姿を消した。デュンケルハイトの拳は陵墓に巨大なクレーターを作り、槍は墓標のように突き刺さった。
「中々にやるね。周囲に逃走防止結界を張っていたのに、それを全て抜けていったよ。・・・あの短期間で中々にやる。」
「・・・」
「ディルメルガ、そんな怖い顔をしないでくれよ?私だって別に手を抜いていた訳じゃない。現行存在する最高の結界を張ってたんだ。それが破られた以上、現段階ではどうしようもない。直ぐに改良を施すよ。」
「頼むぞ、マルファス。今度遭遇した際は奴らを逃がさぬように新術を開発するのだ。」
ディルメルガはそう告げて古墳を登っていく。マルファスも彼の後に続く。頂上へ着くと、デュンケルハイトが深々と頭を下げた。
「申し訳ありません、ディルメルガ様。後もう少し早ければ___」
「謝る必要は無い。・・・それよりも奴らが盗んだものが気になる。」
ディルメルガは先へ進み、古墳中央の墓への入口へ向かう。入口は盛大に破壊されており、古墳の中へ続く階段が露となっていた。三人が階段を下りると、かつての魔王『星后アルテミス』と『幻王アポロン』の墓が荒らされていた。中に入っていた『死体』は無くなっており、砕けた墓標が代わりに入っていた。
「死体が無い・・・」
「まぁそもそもここには古の魔王の骨しか保管されていないからな。高価な物としてはそこらにある金剛石を用いた燭台や生前の姿を模した金の魔王像があるがそれらは盗まれてない・・・」
マルファスが言葉を途中で詰まらせる。
「どうした?」
「・・・当時の姿を模した魔王像・・・こいつか。・・・驚いたね。奴らの姿とそっくりじゃないか。特にあの男の方・・・この嫌みったらしい生臭った顔は像でもしっかりと表現されてるね。芸術点高いよ、これは。」
「芸術点に関してはどうでもよいが、確かに似ておるな。横にいた女もアルテミス像と瓜二つだ。」
「ではあの二人は正真正銘元魔王だと・・・いうことですか?」
「限りなく近いだろうね。まだはっきりと断言はできないが、ほぼほぼ同一人物といっても間違いじゃない。ただ・・・仮にあれが『本物』だとして、奴らはどうやって生きていた?」
「言われれば妙だな。復活したというのならば古墳は内側から破壊される筈。だが奴らは外から攻めてきた。魂だけで動いていたのか?」
「馬鹿馬鹿しいね。肉体も無しに魂だけで実体を得て動けるなどこの世に現時点までに存在する二万三千九百七十五の術の中にそんなものはないよ。誰かが開発すれば話は別だが、それほどの天才は今のこの世にはいない。かつて人間にも魔族にもいたどの天才でさえも編み出せなかった術なのだから。・・・しかし奴らがいるということはその術、又はそれに近いモノがあるということには違いない。・・・悔しいね。私が知らない術がこの世にあるというのが非常に腹立たしいよ。余りの腹立たしさに胃がひっくり返ってしまいそうだ。」
マルファスが不機嫌そうに舌を打つ。デュンケルハイトが墓を調べていると、ディルメルガが話しかけてきた。
「デュンケルハイトよ、お主に伝えたいことがある。」
「はい、何でしょうか?」
「此度の闘技大会の件についてだが・・・息子に伝えてくれ。『お前を大会に参加させん』とな。」
「・・・見送るということですか?」
「そうだ。勇者ウィルベールより奴らの情報を得た時からどうしようかと悩んでいたのだが・・・事が思ったよりも厄介なものだと今回認識させられた。大会が催されるコロッセウムは王都と同等の軍事規模を誇る上に、あの街自体が巨大な要塞であるので安心と思っていたが、そうは言ってられん。」
「・・・」
「我の意見をどう思う?」
「私は___」
デュンケルハイトは言葉に詰まった。ディルメルガが息子を想う気持ちは妹を持つ自分からすれば痛い程良く分かる。しかし来週の大会に向けて漸くやる気になってくれたグラズウィンの気持ちを想えば非常に複雑だった。暫し考えた後、デュンケルハイトは言葉を続けた。
「___賢明な判断だと思います。・・・ですが、一度ご子息と深く相談なされては如何かと。グラズウィン様の意思を汲んでから判断しても問題は無いかと思います。」
「うむ・・・そうだな。」
「・・・」
「デュンケルハイト、まずはお主から話せ。その後に、もし我と話したいと申したならば、連れて来るが良い。」
「承知いたしました。」
デュンケルハイトが小さく頭を下げて返答する。ディルメルガは何処か憂いた表情をしたままマルファスの方に顔を向ける。マルファスは何やら墓を調べていた。
「マルファス、我とデュンケルハイトは城へ戻るがお前はどうする?」
「私は残る。幾らか調べたいことがあるからな。」
「分かった。・・・デュンケルハイト、行くぞ。」
ディルメルガはそう言って足元に転送魔術を展開し、デュンケルハイトと共にその場から消えた。マルファスは一人残されると、静かに溜息をついた。
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・六月___ゲオルグラディア大陸西部・星后・幻王陵墓地___闘技大会まで、残り七日
「これは・・・酷い様だね。」
マルファスが陵墓の周囲に倒れている無残なヴェアウルフやドラゴン達の死体を見て、思わず声を漏らした。生存者の姿が見えない代わりに、古墳のような小さな山となっている陵墓の上には二つの人影が見える。
「貴様ら、その場から動くな!」
デュンケルハイトが二つの影に向かって叫ぶ。二人はゆっくりとデュンケルハイト達に体を向ける。
「Oh , My Sister . 何やら新たなお客さんが来ちゃったようだよ~。」
「・・・そうですね。思ったよりも早い到着でしたね。」
お茶らけた男の声と凛とした女の声が聞こえてきた。そんな二人に対し、ディルメルガが陵墓に近づく。
「お前達、今自分が何をしているのか分かっておるのか?」
ディルメルガがそう告げた直後、上にいる女が彼の足元に矢を放った。放たれた矢は彼の足の指の前に刺さった。
「今のは警告だ。それ以上近づけば、今度は貴様の眉間を撃ち抜く。」
「ほう?汚らわしい侵入者の分際で警告とは・・・随分と舐められたものじゃないか、ディルメルガ。これは丁寧に教え込む必要があるんじゃないかね?」
「ああ・・・我もそう思う。」
マルファスの言葉に返事をしたディルメルガは魔力を漲らせていく。その様子を見た男が、大袈裟なジェスチャーで間に入る。
「Stop , Stop ! 僕達は別に君達と争いに来た訳じゃないんだ。___『今はね』。」
「今は?」
「僕達はただ『かつて失ったもの』を取りに来ただけなんだ。___妹が失礼な態度を取ってしまい、大変失礼だったね。謝るよ。」
男がそう告げた瞬間、瘴気が少し薄まり、陽の光が差し込んできた。二人の影が剥がれていき、はっきりと姿を現した。その二人の姿を見たマルファスが目を細める。
「金色の月と星を模した弓使いの魔族・・・片方の女は勇者ウィルベールから貰った情報と一致するよ。」
「Oh , 今の魔族は人間と通じているのかい?時代は変わったものだね~。」
「えぇ、そうですねお兄様。___情けない方へ変わってしまいましたね。」
アルテミスが吐き捨てるように告げた。隣にいたアポロンは下の三人に自分の名を告げる。
「そう言えば自己紹介をしていなかったね、いけない、いけない。僕の名前はアポロン。隣にいるのは僕の愛する可愛い可愛い妹のアルテミスだ。」
「・・・アルテミス・・・アポロン・・・かつての魔王と同じ名か。___兄妹揃って魔王の真似か?」
「まさか!僕達は正真正銘本物の『元魔王』さ。・・・でも当時の魔族は皆死んじゃってるから証明できないか~、残念。・・・あ、でも長生きしてるエルフとかは僕達の事知ってるかも。気になったら彼らに聞いてみれば~?君達彼らとも仲良くなったらしいし、教えてくれると思うよ~?」
アポロンはへらへらと魔王らしからぬ振る舞いをする。マルファスがディルメルガの横へやって来る。
「ディルメルガ、奴の言葉を信じるか?」
「・・・あの態度。本当のことを言っているのか嘘を言っているのかさっぱり分からん。」
「お前の読心術でも読めないのか。___となると、あいつが本当に魔王かどうかはさておいても中級以下・・・いや並の上級魔族ではないというのは確かだな。お前が読めない奴となると・・・」
「我と同様に魔王クラスの魔族か魔王と同等程度の膨大な魔力を有する上級魔族に限られる。・・・どうであれ、厄介な奴らに変わりない。」
ディルメルガはそう言うと、魔力を一気に解き放った。アポロンはピクリとも動揺しなかったが、アルテミスは咄嗟に矢を番える。
「マルファス、デュンケルハイト___構えよ。ここで奴らを潰す。例えあの者達が誠に古の魔王の『怨念』であろうとも、我の世にそのような忌々しき『闇』は不要だ。」
「了解ッ!」
「・・・ま、あの者達を捉えたら私がもらうことでいいかな?色々と確かめてみたいからね。」
デュンケルハイトとマルファスも戦闘態勢に入る。アルテミスが三人に狙いを定める中、アポロンはアルテミスの肩に手を置いた。
「相手にする必要は無いよ、僕の愛しの妹。既に目的は達した。僕達はこのまま家に帰るよ。変に作戦を変えちゃったら後で怒られちゃうからね。」
「・・・了解しました。」
アルテミスは弦をゆっくりと戻す。その時、アポロンが周囲に転送魔術を展開する。デュンケルハイトが拳に蒼炎を纏わせて突撃する。同時にマルファスとディルメルガも瘴気を纏った無数の錆びついた槍を召喚し、一気に射出する。
「逃がさんッ!」
槍とデュンケルハイトの拳が彼らの目の前に来た___が、その瞬間に二人はその場から姿を消した。デュンケルハイトの拳は陵墓に巨大なクレーターを作り、槍は墓標のように突き刺さった。
「中々にやるね。周囲に逃走防止結界を張っていたのに、それを全て抜けていったよ。・・・あの短期間で中々にやる。」
「・・・」
「ディルメルガ、そんな怖い顔をしないでくれよ?私だって別に手を抜いていた訳じゃない。現行存在する最高の結界を張ってたんだ。それが破られた以上、現段階ではどうしようもない。直ぐに改良を施すよ。」
「頼むぞ、マルファス。今度遭遇した際は奴らを逃がさぬように新術を開発するのだ。」
ディルメルガはそう告げて古墳を登っていく。マルファスも彼の後に続く。頂上へ着くと、デュンケルハイトが深々と頭を下げた。
「申し訳ありません、ディルメルガ様。後もう少し早ければ___」
「謝る必要は無い。・・・それよりも奴らが盗んだものが気になる。」
ディルメルガは先へ進み、古墳中央の墓への入口へ向かう。入口は盛大に破壊されており、古墳の中へ続く階段が露となっていた。三人が階段を下りると、かつての魔王『星后アルテミス』と『幻王アポロン』の墓が荒らされていた。中に入っていた『死体』は無くなっており、砕けた墓標が代わりに入っていた。
「死体が無い・・・」
「まぁそもそもここには古の魔王の骨しか保管されていないからな。高価な物としてはそこらにある金剛石を用いた燭台や生前の姿を模した金の魔王像があるがそれらは盗まれてない・・・」
マルファスが言葉を途中で詰まらせる。
「どうした?」
「・・・当時の姿を模した魔王像・・・こいつか。・・・驚いたね。奴らの姿とそっくりじゃないか。特にあの男の方・・・この嫌みったらしい生臭った顔は像でもしっかりと表現されてるね。芸術点高いよ、これは。」
「芸術点に関してはどうでもよいが、確かに似ておるな。横にいた女もアルテミス像と瓜二つだ。」
「ではあの二人は正真正銘元魔王だと・・・いうことですか?」
「限りなく近いだろうね。まだはっきりと断言はできないが、ほぼほぼ同一人物といっても間違いじゃない。ただ・・・仮にあれが『本物』だとして、奴らはどうやって生きていた?」
「言われれば妙だな。復活したというのならば古墳は内側から破壊される筈。だが奴らは外から攻めてきた。魂だけで動いていたのか?」
「馬鹿馬鹿しいね。肉体も無しに魂だけで実体を得て動けるなどこの世に現時点までに存在する二万三千九百七十五の術の中にそんなものはないよ。誰かが開発すれば話は別だが、それほどの天才は今のこの世にはいない。かつて人間にも魔族にもいたどの天才でさえも編み出せなかった術なのだから。・・・しかし奴らがいるということはその術、又はそれに近いモノがあるということには違いない。・・・悔しいね。私が知らない術がこの世にあるというのが非常に腹立たしいよ。余りの腹立たしさに胃がひっくり返ってしまいそうだ。」
マルファスが不機嫌そうに舌を打つ。デュンケルハイトが墓を調べていると、ディルメルガが話しかけてきた。
「デュンケルハイトよ、お主に伝えたいことがある。」
「はい、何でしょうか?」
「此度の闘技大会の件についてだが・・・息子に伝えてくれ。『お前を大会に参加させん』とな。」
「・・・見送るということですか?」
「そうだ。勇者ウィルベールより奴らの情報を得た時からどうしようかと悩んでいたのだが・・・事が思ったよりも厄介なものだと今回認識させられた。大会が催されるコロッセウムは王都と同等の軍事規模を誇る上に、あの街自体が巨大な要塞であるので安心と思っていたが、そうは言ってられん。」
「・・・」
「我の意見をどう思う?」
「私は___」
デュンケルハイトは言葉に詰まった。ディルメルガが息子を想う気持ちは妹を持つ自分からすれば痛い程良く分かる。しかし来週の大会に向けて漸くやる気になってくれたグラズウィンの気持ちを想えば非常に複雑だった。暫し考えた後、デュンケルハイトは言葉を続けた。
「___賢明な判断だと思います。・・・ですが、一度ご子息と深く相談なされては如何かと。グラズウィン様の意思を汲んでから判断しても問題は無いかと思います。」
「うむ・・・そうだな。」
「・・・」
「デュンケルハイト、まずはお主から話せ。その後に、もし我と話したいと申したならば、連れて来るが良い。」
「承知いたしました。」
デュンケルハイトが小さく頭を下げて返答する。ディルメルガは何処か憂いた表情をしたままマルファスの方に顔を向ける。マルファスは何やら墓を調べていた。
「マルファス、我とデュンケルハイトは城へ戻るがお前はどうする?」
「私は残る。幾らか調べたいことがあるからな。」
「分かった。・・・デュンケルハイト、行くぞ。」
ディルメルガはそう言って足元に転送魔術を展開し、デュンケルハイトと共にその場から消えた。マルファスは一人残されると、静かに溜息をついた。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!
秋田ノ介
ファンタジー
主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。
『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。
ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!!
小説家になろうにも掲載しています。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~
詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。
現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。
アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。
しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。
本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに……
そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。
後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。
だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。
むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。
これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる