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~魔皇会議編 第12話~
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[緊急招集]
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・六月___ゲオルグラディア大陸北部・魔王城・訓練場___闘技大会まで、残り七日
闘技大会まで残り一週間に迫る中、デュンケルハイトとの訓練はより厳しくなっていく。というのも午前中は基礎トレーニングや魔力コントロールを洗練させる訓練という比較的穏やかなものだが、午後からは陽が完全に落ちるまでひたすら実戦のようにデュンケルハイトと模擬戦闘を行うものだった。彼は全く本気を出さなかったが、だからといって手を抜くことはしない。日を追うごとに徐々にどんどん強さの段階を上げていき、グラズウィンにプレッシャーをかけていった。
「動きが硬いですよ!もっと足を動かして!」
デュンケルハイトは模擬戦闘中も適宜アドバイスを送る。グラズウィンは地水火風の四属性を巧みに合わせて魔術を繰り出し、飽和攻撃を仕掛ける。日頃のトレーニングの成果もあってか、技の精度も一週間前とは比較にならない程上達した。それでもデュンケルハイトは全ての攻撃を避けたり、弾いたりして無効化する。
「技のキレが甘くなってます!集中を絶やさぬように!」
デュンケルハイトはそう言って目の前から姿を消して、彼の背後に現れる。彼は視線を後方に向けて魔術陣を展開し、氷の氷柱を大量に射出する。ところがその氷柱はデュンケルハイトを通り過ぎていく。デュンケルハイトの姿がまるで煙のように消えていった。
次の瞬間、腹部に強い衝撃を受けてグラズウィンは吹き飛んだ。彼の前方にデュンケルハイトがおり、腹部に掌打を食らわせていた。グラズウィンは芝生の上をゴロゴロと転がる。
「ぐっ・・・」
「目で敵を追うなと何度も言ってますよね?魔力で敵の居場所を察知する癖をつけるようにと。もし私が手加減していなければ間違いなく死んでましたよ?」
デュンケルハイトはゆっくり立ち上がるグラズウィンに向かって説教を行う。実はこの説教、もう耳にタコが出来る程聞いていたことだったのだが、どうも目で追うのが癖となっているおかげで中々に改善が厳しい。どうしても視界の情報を頼ってしまう。
「さぁ、早く立ってください。休むのは夜寝る時で良いでしょう?」
「よく言ってくれるぜ・・・こっちはあんたらと違って訓練後にメシを調達しないといけないのによ。」
グラズウィンは起き上がると服についた汚れを落とすこと無く深呼吸し、魔力を練り始める。デュンケルハイトも拳を構えて戦闘態勢に入った。
「じゃあ行くぜ。今度こそその顔面に一発当ててやるよ!」
「良い心掛けです。口先だけで終わらぬよう頑張りましょうね。」
デュンケルハイトは小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら呟く。グラズウィンが怒りで更に魔力を上昇させ、攻撃を行おうとした___
その時だった。
「デュンケルハイト様!」
城へ続く林道から男の声が聞こえてきた。二人はぴたりと体を一瞬固まらせ、男の方へ体を向けた。やって来た男はディルメルガの側近の一人だった。
「訓練中お邪魔致します。急用故、失礼を承知して申し上げます。只今ディルメルガ様より、四魔皇及びグラズウィン様の緊急招集がかかりました。」
「緊急招集だと?」
「は?僕もか?何でだよ?」
「仔細については私も伝えられておらず、ただお二方を魔王城の謁見の間へお連れするようにと言われた次第で御座います。」
側近の男は地面に片膝をつき、頭を下げながら二人にそう告げた。デュンケルハイトは無言でコートを置いている切り株の所まで行き、コートを手に取るとそれを羽織った。
「承知した。グラズウィン様、参りましょう。」
「ちょ、ちょっと待てよ・・・最近風呂入ってないし身だしなみが全然整ってない・・・せめて顔だけでも洗わせて・・・」
「駄目です。緊急招集がかけられたということは一刻を争う事態ということです。それに訓練中ということは皆存じておりますので、汚くても問題無いかと。」
デュンケルハイトはそう言うが、グラズウィンは不服そうな顔をする。しかし彼も直ぐに折れて魔王城へ向かった。
謁見の間へ到着すると、既にディルメルガと他の三人が揃っていた。デュンケルハイトが自分の定位置につくと、グラズウィンは謁見の間のど真ん中に立たされた。
「ディルメルガ、訓練中急に呼び出して済まぬな。皆の者も突然のことで迷惑をかける。」
「いいえ、とんでもありません。我々四魔皇はディルメルガ様のご命令とあらば、例えどのような事態に陥ろうとも参上いたす所存であります。」
デュンケルハイトがディルメルガに告げる。それを見ていたオルフェ―シュチが一瞬顔をしかめて不快な顔をする。ディルメルガは少し嬉しそうな顔を見せたが、直ぐに真顔に戻った。
「さて、今回諸君を呼んだ訳だが、どうもアルヴェント大陸で謎の魔族に関する被害が発生しているそうだ。現在判明しているだけでもガロックとアフターグロウの街が壊滅的被害を受けている。」
「謎の魔族だと?ふ~む、興味深いね。___で、その情報源は何処からだね?」
「この情報は実際にその魔族に襲撃された勇者ウィルベール___奴から送られてきた。」
「ほう、あの男か。まだ寿命で死んでいなかったのか、随分としぶとい男だな。」
「信憑性はあるのですか?その話が嘘である可能性もありましょう。我々を貶めているのやもしれません。」
「その点については問題ない。街への被害についてはアルヴェント大陸に駐屯させている者より嘘でないことを把握済みだ。___それにあの男は我々を嵌めるような真似をする奴ではない。」
ディルメルガは頬を僅かに吊り上げる。
「全く___ディルメルガ、お前の奴に対する信頼は本当に呆れるね。魔族でもない人間を、ましてや一時は最大の脅威であった勇者を魔王ともあろうお前が信用するとはね。」
「当たり前だ。今まで戦ったどの男よりも面白い男だったからな。___人間と魔族が共生する社会を作る・・・そんな世迷言を実現させつつある男なのだからな。」
ディルメルガはそう言うと、肘置きを握りしめ砕いた。
「だからこそ・・・今回の事件は許すことが出来ん。例え被害を受けたのが人間だけであろうが、正体不明の魔族が襲撃してきたとあれば向こうは我らが仕掛けたと思うのは当然の事。そうなれば今まで積み重ねてきた信用・信頼が根元から崩れ去る。折角ここまで来たのだ・・・再び混沌の世に戻す訳にはいかん。」
ディルメルガは体を震わせる。彼の体から夥しい魔力が滲み出ていることから、本当にあの地獄のような世界が嫌いなのだろう。常に争いの絶えない世界。人間だけでなく、隙を見せれば同族にも殺されたあの混沌の二千年を。
「人間側から他に情報は無いのですか?特に勇者ウィルベールからの情報であれば、敵の詳細などの情報も受け取ってはおられないのですか?」
「勿論、その情報もあちらから受け取った。向こうの話によれば、アフターグロウを襲撃した魔族は自分を『アルテミス』と名乗ったそうだ。」
「アルテミス・・・六代目の魔王と同じ名ですね。」
「そうだ。街を襲撃した魔族は女、しかも弓を使っていたというだ。」
「それはそれは・・・面白い事になってきたね。もしその女が本当にアルテミス本人だった場合、生き返ったということになるよ。当時の勇者一行に倒された魔王が再びこの世で暴れるとは・・・実に奇怪だ。」
マルファスが悪巧みをしてそうな笑みを浮かべ、考え込む。
「敵の狙いは何でしょうか?」
「それに関しては未だに不明だ。何をもって人間の街を攻撃したのか・・・何の目的も無しに攻撃をするような奴らではない事には違いない。」
「そうだね。もっと言うと、奴らが今の我々魔族を味方と思っていない可能性も十分考えられるよ。当時の魔族___いや、今代の魔族以外は皆、覇道主義ばかりだ。力こそが正義の時代を生きた奴らから見れば、我々の存在など見るに堪えんだろうね。」
マルファスは溜息交じりにそう告げた。確かにかつての魔族から見れば人間と共生する等軟弱極まる行為。魔族としての誇りを捨てた恥知らずと罵ることだろう。味方と思ってくれる方が逆に非現実的だろう。
「とにかく、我々も万が一のことに備え、暫くの間常時戦闘態勢を取ることにする。大陸全土にわたり警戒レベルを上げ、反対派を中心とした奴らの動向に注視しろ。また、今後恐らく王都より何かしらの話がこちらへ来るだろう・・・その際は直にお前達へ共有させる。」
「了解致しました。」
「あと、来週開催される闘技大会に関してだが___グラズウィン、我はお前に付いて行くことが出来なくなった。理由は言わなくても分かろうな?」
「・・・はい。」
「案ずる必要は無い。我は行けないが、デュンケルハイトはお前と同行するのに変更は無い。だからお前は安心して向かうが良い。・・・お前の勇姿を見に行くことが出来なくて、誠に残念だ。」
ディルメルガは悲しそうな目で息子を見つめる。グラズウィンは目を下に向けて、父から目を逸らした。
「・・・会議はここまでだ。また何か新たな情報が入り次第共有す___」
ディルメルガが会議を終わらせようとした___その時、謁見の間の扉が勢いよく開き、一人の魔族が現れた。その魔族は必死な形相でこちらに駆け寄ってくる。
「何事だ?」
男は階段の下に来ると、膝まついた。
「ほ・・・報告します!げ、現・・・現在大陸西部の『星后陵墓』と『幻王陵墓』が謎の二人組の魔族に襲撃されています!防衛に当たっていたヴェアウルフ・ドラゴン族の両部隊が食い止めておりますが、侵攻を止められません!」
その魔族の報告に一同がざわつく。ディルメルガは王座から立ち上がる。
「マルファス、デュンケルハイト!我と共に来い!オルフェ―シュチとドルキューラは我が不在の間、この魔王城を守護せよ!グラズウィン、お前はこの城から外へ出るな!良いな!」
「・・・」
「承知いたしました。」
「分かったよ。」
「承知。兵を魔王城に召集致しましょう。」
「了解しました。空の警備はお任せを。」
四魔皇各位返事をすると、マルファスが転送魔術を展開し、デュンケルハイト、ディルメルガと共にその場から消えた。オルフェ―シュチとドルキューラは自身の側近を呼び、指示を出し始める。暫くして魔王城を囲むように防護結界が幾層にも張られるなど戦闘態勢に入り、城内が慌ただしくなる。
そんな中、グラズウィンはただ茫然とその場に立ちつくしていた。何の役割も与えられず、見いだせないまま___ただ外へ出るなという父からの言葉を受けて。
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・六月___ゲオルグラディア大陸北部・魔王城・訓練場___闘技大会まで、残り七日
闘技大会まで残り一週間に迫る中、デュンケルハイトとの訓練はより厳しくなっていく。というのも午前中は基礎トレーニングや魔力コントロールを洗練させる訓練という比較的穏やかなものだが、午後からは陽が完全に落ちるまでひたすら実戦のようにデュンケルハイトと模擬戦闘を行うものだった。彼は全く本気を出さなかったが、だからといって手を抜くことはしない。日を追うごとに徐々にどんどん強さの段階を上げていき、グラズウィンにプレッシャーをかけていった。
「動きが硬いですよ!もっと足を動かして!」
デュンケルハイトは模擬戦闘中も適宜アドバイスを送る。グラズウィンは地水火風の四属性を巧みに合わせて魔術を繰り出し、飽和攻撃を仕掛ける。日頃のトレーニングの成果もあってか、技の精度も一週間前とは比較にならない程上達した。それでもデュンケルハイトは全ての攻撃を避けたり、弾いたりして無効化する。
「技のキレが甘くなってます!集中を絶やさぬように!」
デュンケルハイトはそう言って目の前から姿を消して、彼の背後に現れる。彼は視線を後方に向けて魔術陣を展開し、氷の氷柱を大量に射出する。ところがその氷柱はデュンケルハイトを通り過ぎていく。デュンケルハイトの姿がまるで煙のように消えていった。
次の瞬間、腹部に強い衝撃を受けてグラズウィンは吹き飛んだ。彼の前方にデュンケルハイトがおり、腹部に掌打を食らわせていた。グラズウィンは芝生の上をゴロゴロと転がる。
「ぐっ・・・」
「目で敵を追うなと何度も言ってますよね?魔力で敵の居場所を察知する癖をつけるようにと。もし私が手加減していなければ間違いなく死んでましたよ?」
デュンケルハイトはゆっくり立ち上がるグラズウィンに向かって説教を行う。実はこの説教、もう耳にタコが出来る程聞いていたことだったのだが、どうも目で追うのが癖となっているおかげで中々に改善が厳しい。どうしても視界の情報を頼ってしまう。
「さぁ、早く立ってください。休むのは夜寝る時で良いでしょう?」
「よく言ってくれるぜ・・・こっちはあんたらと違って訓練後にメシを調達しないといけないのによ。」
グラズウィンは起き上がると服についた汚れを落とすこと無く深呼吸し、魔力を練り始める。デュンケルハイトも拳を構えて戦闘態勢に入った。
「じゃあ行くぜ。今度こそその顔面に一発当ててやるよ!」
「良い心掛けです。口先だけで終わらぬよう頑張りましょうね。」
デュンケルハイトは小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら呟く。グラズウィンが怒りで更に魔力を上昇させ、攻撃を行おうとした___
その時だった。
「デュンケルハイト様!」
城へ続く林道から男の声が聞こえてきた。二人はぴたりと体を一瞬固まらせ、男の方へ体を向けた。やって来た男はディルメルガの側近の一人だった。
「訓練中お邪魔致します。急用故、失礼を承知して申し上げます。只今ディルメルガ様より、四魔皇及びグラズウィン様の緊急招集がかかりました。」
「緊急招集だと?」
「は?僕もか?何でだよ?」
「仔細については私も伝えられておらず、ただお二方を魔王城の謁見の間へお連れするようにと言われた次第で御座います。」
側近の男は地面に片膝をつき、頭を下げながら二人にそう告げた。デュンケルハイトは無言でコートを置いている切り株の所まで行き、コートを手に取るとそれを羽織った。
「承知した。グラズウィン様、参りましょう。」
「ちょ、ちょっと待てよ・・・最近風呂入ってないし身だしなみが全然整ってない・・・せめて顔だけでも洗わせて・・・」
「駄目です。緊急招集がかけられたということは一刻を争う事態ということです。それに訓練中ということは皆存じておりますので、汚くても問題無いかと。」
デュンケルハイトはそう言うが、グラズウィンは不服そうな顔をする。しかし彼も直ぐに折れて魔王城へ向かった。
謁見の間へ到着すると、既にディルメルガと他の三人が揃っていた。デュンケルハイトが自分の定位置につくと、グラズウィンは謁見の間のど真ん中に立たされた。
「ディルメルガ、訓練中急に呼び出して済まぬな。皆の者も突然のことで迷惑をかける。」
「いいえ、とんでもありません。我々四魔皇はディルメルガ様のご命令とあらば、例えどのような事態に陥ろうとも参上いたす所存であります。」
デュンケルハイトがディルメルガに告げる。それを見ていたオルフェ―シュチが一瞬顔をしかめて不快な顔をする。ディルメルガは少し嬉しそうな顔を見せたが、直ぐに真顔に戻った。
「さて、今回諸君を呼んだ訳だが、どうもアルヴェント大陸で謎の魔族に関する被害が発生しているそうだ。現在判明しているだけでもガロックとアフターグロウの街が壊滅的被害を受けている。」
「謎の魔族だと?ふ~む、興味深いね。___で、その情報源は何処からだね?」
「この情報は実際にその魔族に襲撃された勇者ウィルベール___奴から送られてきた。」
「ほう、あの男か。まだ寿命で死んでいなかったのか、随分としぶとい男だな。」
「信憑性はあるのですか?その話が嘘である可能性もありましょう。我々を貶めているのやもしれません。」
「その点については問題ない。街への被害についてはアルヴェント大陸に駐屯させている者より嘘でないことを把握済みだ。___それにあの男は我々を嵌めるような真似をする奴ではない。」
ディルメルガは頬を僅かに吊り上げる。
「全く___ディルメルガ、お前の奴に対する信頼は本当に呆れるね。魔族でもない人間を、ましてや一時は最大の脅威であった勇者を魔王ともあろうお前が信用するとはね。」
「当たり前だ。今まで戦ったどの男よりも面白い男だったからな。___人間と魔族が共生する社会を作る・・・そんな世迷言を実現させつつある男なのだからな。」
ディルメルガはそう言うと、肘置きを握りしめ砕いた。
「だからこそ・・・今回の事件は許すことが出来ん。例え被害を受けたのが人間だけであろうが、正体不明の魔族が襲撃してきたとあれば向こうは我らが仕掛けたと思うのは当然の事。そうなれば今まで積み重ねてきた信用・信頼が根元から崩れ去る。折角ここまで来たのだ・・・再び混沌の世に戻す訳にはいかん。」
ディルメルガは体を震わせる。彼の体から夥しい魔力が滲み出ていることから、本当にあの地獄のような世界が嫌いなのだろう。常に争いの絶えない世界。人間だけでなく、隙を見せれば同族にも殺されたあの混沌の二千年を。
「人間側から他に情報は無いのですか?特に勇者ウィルベールからの情報であれば、敵の詳細などの情報も受け取ってはおられないのですか?」
「勿論、その情報もあちらから受け取った。向こうの話によれば、アフターグロウを襲撃した魔族は自分を『アルテミス』と名乗ったそうだ。」
「アルテミス・・・六代目の魔王と同じ名ですね。」
「そうだ。街を襲撃した魔族は女、しかも弓を使っていたというだ。」
「それはそれは・・・面白い事になってきたね。もしその女が本当にアルテミス本人だった場合、生き返ったということになるよ。当時の勇者一行に倒された魔王が再びこの世で暴れるとは・・・実に奇怪だ。」
マルファスが悪巧みをしてそうな笑みを浮かべ、考え込む。
「敵の狙いは何でしょうか?」
「それに関しては未だに不明だ。何をもって人間の街を攻撃したのか・・・何の目的も無しに攻撃をするような奴らではない事には違いない。」
「そうだね。もっと言うと、奴らが今の我々魔族を味方と思っていない可能性も十分考えられるよ。当時の魔族___いや、今代の魔族以外は皆、覇道主義ばかりだ。力こそが正義の時代を生きた奴らから見れば、我々の存在など見るに堪えんだろうね。」
マルファスは溜息交じりにそう告げた。確かにかつての魔族から見れば人間と共生する等軟弱極まる行為。魔族としての誇りを捨てた恥知らずと罵ることだろう。味方と思ってくれる方が逆に非現実的だろう。
「とにかく、我々も万が一のことに備え、暫くの間常時戦闘態勢を取ることにする。大陸全土にわたり警戒レベルを上げ、反対派を中心とした奴らの動向に注視しろ。また、今後恐らく王都より何かしらの話がこちらへ来るだろう・・・その際は直にお前達へ共有させる。」
「了解致しました。」
「あと、来週開催される闘技大会に関してだが___グラズウィン、我はお前に付いて行くことが出来なくなった。理由は言わなくても分かろうな?」
「・・・はい。」
「案ずる必要は無い。我は行けないが、デュンケルハイトはお前と同行するのに変更は無い。だからお前は安心して向かうが良い。・・・お前の勇姿を見に行くことが出来なくて、誠に残念だ。」
ディルメルガは悲しそうな目で息子を見つめる。グラズウィンは目を下に向けて、父から目を逸らした。
「・・・会議はここまでだ。また何か新たな情報が入り次第共有す___」
ディルメルガが会議を終わらせようとした___その時、謁見の間の扉が勢いよく開き、一人の魔族が現れた。その魔族は必死な形相でこちらに駆け寄ってくる。
「何事だ?」
男は階段の下に来ると、膝まついた。
「ほ・・・報告します!げ、現・・・現在大陸西部の『星后陵墓』と『幻王陵墓』が謎の二人組の魔族に襲撃されています!防衛に当たっていたヴェアウルフ・ドラゴン族の両部隊が食い止めておりますが、侵攻を止められません!」
その魔族の報告に一同がざわつく。ディルメルガは王座から立ち上がる。
「マルファス、デュンケルハイト!我と共に来い!オルフェ―シュチとドルキューラは我が不在の間、この魔王城を守護せよ!グラズウィン、お前はこの城から外へ出るな!良いな!」
「・・・」
「承知いたしました。」
「分かったよ。」
「承知。兵を魔王城に召集致しましょう。」
「了解しました。空の警備はお任せを。」
四魔皇各位返事をすると、マルファスが転送魔術を展開し、デュンケルハイト、ディルメルガと共にその場から消えた。オルフェ―シュチとドルキューラは自身の側近を呼び、指示を出し始める。暫くして魔王城を囲むように防護結界が幾層にも張られるなど戦闘態勢に入り、城内が慌ただしくなる。
そんな中、グラズウィンはただ茫然とその場に立ちつくしていた。何の役割も与えられず、見いだせないまま___ただ外へ出るなという父からの言葉を受けて。
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〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
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