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~魔皇会議編 第10話~
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[公平]
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・六月___ゲオルグラディア大陸北部・魔王城・訓練場___闘技大会まで、残り十三日
「陛下ッ!一体これは何のおつもりですか⁉」
オルフェ―シュチが昼夜を逆転させるというこの世の理を覆す魔術を発動したディルメルガに声を荒げる。神聖なる一対一の決闘に手を加えてくるなど例え魔王でもそれだけは許せなかった。一方のディルメルガはと言うと、頬杖をつきながら笑みを浮かべている。
「何のつもりか?勿論、『公平性』の為だ。デュンケルハイトが変身できないとなると、全力を出せていない状態で負けるからな。我々魔族の決闘は全身全霊を込めて戦い、勝敗をつけることを誇りとする。このような手を加えることは至極当然のことだろう?」
「当然の事⁉本気で仰っておられるのですか⁉大変申し上げにくいのですが、決闘とは無関係な外野が間に入るのは決闘を侮蔑する行為であり、公平性に欠くのではないかと存じますが___」
彼女がディルメルガに訴えを述べた瞬間、魔王は彼女に強烈な魔力の圧を浴びせる。他の魔族とは比べ物にならない程の魔力は有無を言わさず、彼女の頭を垂れさせた。ディルメルガの顔から笑みが消える。
「ほう?貴様が『公平性』という言葉を使うか。面白いな___デュンケルハイトが変身できない昼間を決闘の時間帯に指定した挙句に、変身して決着をつけようとするお前がか。」
「・・・」
「決闘が公平であるべきと言うのなら、お前は変身をするべきではなかったな。お前は変身せずとも優位に立てていた。お前があのままデュンケルハイトを倒していたならば、我から何も言うことはなかった。ただ、お前が奴の持っているハンデを理解していないとなると話は別だ。決闘は公平性を保つべき___ならばその場を設けることは公平性を保つための正当行為ではないか?・・・違うか?」
ディルメルガの言葉にオルフェ―シュチは何も反論出来なかった。それもそう、ディルメルガはただ昼夜を逆転させただけでデュンケルハイトに強化魔術や回復魔術を施した訳では無い。ただ彼も変身できる環境にしたというだけだった。
「正直に申すが、お前が昨日の夕刻私に決闘の件を伝えに来た時、落胆したぞ。まさか昼間に決闘を挑むとはな。歴代ドラゴン族とヴェアウルフ族の決闘は全て『夜』に行われていたというのに・・・」
「・・・」
「私はてっきり変身せずに倒すものかと思って何も言わなかったが・・・どうやら違ったようだな。残念だ、オルフェ―シュチ。」
ディルメルガは冷めた眼でオルフェ―シュチを見つめる。彼女は鋭い爪で地面を抉り、鋭い歯を噛みしめる。腹部が青黒い不気味な光を放ち始める。
『恩に着ます、ディルメルガ様ッ!』
デュンケルハイトは空を見上げ、銀色に輝く月を見つめる。次の瞬間、周囲に蒼炎の柱が上がり、彼を包み込んだ。オルフェ―シュチは体を起こして蒼炎の渦を見つめると、その渦が一気に弾け、漆黒の毛に包まれた巨大な狼が現れた。狼の全長は十メートル程で、手足に蒼炎を纏っている。狼の目は蒼い宝石のように透き通るような美しさで、その瞳で目の前のドラゴンを捉える。
「デュンケルハイトッ・・・」
「オルフェ―シュチ、続けるぞ。ここからが真の魔族の戦いだ。」
デュンケルハイトがそう告げると、両者同時に距離を詰める。デュンケルハイトが彼女の首に噛みついて絡みつくと、彼女は体をうねらせながら空へ上がる。目まぐるしく辺りの景色が変貌する中必死に食らいつくが、彼女の纏う鱗を砕けない。まるで世界最硬の金属であるオリハルコンと相違ないその固さは逆にこちらの歯が折れてしまいそうだ。
「無駄だッ!」
オルフェ―シュチは彼の背中を掴んで無理やり引き剥がすと、地面へ叩きつけた。そして空気を大量に吸い込み、腹を膨れさせる。腹の色が白色から青黒い色へ変貌し、地面に叩きつけられた彼に口を開くと高圧縮された水が音速の数倍の速さで射出された。デュンケルハイトは咄嗟に避けたが、彼女は避ける彼にひたすらブレス攻撃を仕掛け続ける。ウォーターカッターのように、大地はするりと裂け、周りの木々や大岩は豆腐の如く綺麗に両断される。余りの激しさに周りにいた人々も数名、そのウォーターカッターのようなブレスで切断されて絶命している者もいる。そのせいか、多くの人々が悲鳴をあげながら一斉にその場から逃げ始めた。
「ヴィオラさん!早くに逃げますよ!」
彼女の担任の先生が子供達を避難させながら語り掛けるが、ヴィオラはその場から一切動かずに戦いを見守り続ける。その担任と周りにいた生徒たちは彼女を置いてその場を後にした。
オルフェ―シュチはただひたすらにデュンケルハイトにブレスを吐き続ける。
「どうした、どうした⁉何時まで逃げ回るつもりだ⁉逃げ回っていては何時まで経っても私を倒すことは出来んぞ⁉」
「ああ・・・知ってるさ、そんな事は。」
デュンケルハイトは尻尾に蒼炎を纏わせると、体を捻りながら思いっきり振った。蒼炎は巨大な刃となり彼女に襲い掛かるが、彼女の水のブレスで打ち消される。打ち消した時、高温の蒸気が発生して辺り一面霧に包まれる。彼女は思わず後ろへ下がる。
『ぐっ、視界がッ!』
彼女の目の前が真っ白になった___その時、突如視界が真っ赤に染まり、激痛が走った。
「ぐあッ!目・・・目がぁッ・・・」
彼女が激しく首を振ってのたうち回る中、鋭い棘のついた巨大な尻尾で周囲を薙ぎ払う。
『くそッ、あの男・・・霧に紛れて私の目をッ・・・許さんッ!』
オルフェ―シュチは目の回復に専念するために激しく暴れる。しかしデュンケルハイトは彼女のむやみやたらと派手な攻撃を全て回避し、懐に入り込む。そして右手に蒼炎を圧縮させて力を込めると、渾身の力で彼女の胸部の装甲を殴った。鱗の破片が飛び散り、皮膚がほんの少し露になる。これなら噛み砕けると確信した彼は彼女の胸元に噛みついた。彼女は大きくのたうち、地面に仰向けで倒れる。
『このまま一気に片を付けるッ!』
デュンケルハイトは更に牙を突き立てて、彼女の肉に食い込ませる。このまま一気に勝負をつけたかったが___彼女も負けてはいなかった。
「舐める___なぁぁぁぁぁぁッ!」
オルフェ―シュチは彼を両手で掴むと、無理やり引き剥がす。剥がした時に多少皮膚が剥がれて血が噴き出たがそんなことは些細な問題だ。彼女はお返しとばかりに彼の首に横から噛みつき、無理やり引き千切った。鮮血が夜空を覆う。
「ぐうッ⁉」
「お兄ちゃんッ!」
ヴィオラが思わず叫んだ。デュンケルハイトは逃げようとしたが、彼女の爪が深く体に突き刺さって抜けない。彼が逃げようと必死にもがく中、彼女は大きな口を開ける。
「お返しだ!受け取れ!」
彼女は水のブレスを発射し、彼の左胸を貫いた。ブレスが命中する瞬間、咄嗟に体を少し横にずらした。爪がより深く食い込んでしまったが、心臓を撃ち抜かれるよりはましだ。魔力を大量に消費した今、心臓を貫かれると死んでしまう可能性があったからだ。
「避けたか。だが今度こそ殺してやるッ!」
オルフェ―シュチが口を大きく開けて彼の首を噛み千切ろうとする。だがその直後、デュンケルハイトの傷から噴き出ていた血が発火、周囲が蒼炎に包まれる。また彼の体に付着した血も蒼く燃え上がり、彼女の拘束を振り解いた。
「しまっ___」
彼女が彼を手放すと、その隙を突いて体を捻り、茨のように毛が鋭く尖っている尻尾を鞭のようにして彼女の胸を攻撃する。彼女の胸を叩きつけた衝撃波は蒼炎を纏い、周囲に拡散する。鱗の装甲が剥がれていた彼女の胸に攻撃は直撃し、痛みの余り彼女は後ろへ倒れた。デュンケルハイトも重傷を負っている為、着地できずに地面を転がる。両者倒れたまま動かず、僅かに残っていた人々が心配そうに見つめる。
「お・・・おい・・・二人共動かねえぞ?これどっちも意識失ってんじゃねぇか?確認した方がいいんじゃあ・・・」
観客が騒めく中、ディルメルガが部下に指示を出して確認に行かせる。部下が二人に近づいている中、二人共元の人間の姿に戻った。
「陛下、デュンケルハイト様は気絶しておられます。出血が酷く、一刻も早く処置した方がよろしいかと。」
「オルフェ―シュチ様もデュンケルハイト様同様、重傷で気を失っておられます。」
「直ぐ治療室へ連れて行け。・・・此度の決闘は両者気絶ということで引き分けだな。」
「はっ!」
ディルメルガの側近達は担架を持ってくると二人を載せて城の方へ向かって行く。デュンケルハイトが魔王城へ運ばれていく時、ヴィオラも側近達に付いて行く。
「お兄ちゃん!お兄ちゃんッ!」
「・・・」
「ヴィオラ様、あまりデュンケルハイト様のお体を揺らさないで下さい!」
側近達がヴィオラに忠告する。そのままオルフェ―シュチとデュンケルハイトは訓練場から姿を消した。彼らが姿を消すと、周りにいた観客達やディルメルガ達もぞろぞろと訓練場を去り始めた。
「ヴェアウルフ族が・・・初めてドラゴン族と引き分けた・・・」
木の上から観戦していたグラズウィンは先程の激闘を振り返る。そんな事をしていると、世界は再び昼間に戻った。瘴気で霞む太陽と空が朧に辺りを照らしている。
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・六月___ゲオルグラディア大陸北部・魔王城・訓練場___闘技大会まで、残り十三日
「陛下ッ!一体これは何のおつもりですか⁉」
オルフェ―シュチが昼夜を逆転させるというこの世の理を覆す魔術を発動したディルメルガに声を荒げる。神聖なる一対一の決闘に手を加えてくるなど例え魔王でもそれだけは許せなかった。一方のディルメルガはと言うと、頬杖をつきながら笑みを浮かべている。
「何のつもりか?勿論、『公平性』の為だ。デュンケルハイトが変身できないとなると、全力を出せていない状態で負けるからな。我々魔族の決闘は全身全霊を込めて戦い、勝敗をつけることを誇りとする。このような手を加えることは至極当然のことだろう?」
「当然の事⁉本気で仰っておられるのですか⁉大変申し上げにくいのですが、決闘とは無関係な外野が間に入るのは決闘を侮蔑する行為であり、公平性に欠くのではないかと存じますが___」
彼女がディルメルガに訴えを述べた瞬間、魔王は彼女に強烈な魔力の圧を浴びせる。他の魔族とは比べ物にならない程の魔力は有無を言わさず、彼女の頭を垂れさせた。ディルメルガの顔から笑みが消える。
「ほう?貴様が『公平性』という言葉を使うか。面白いな___デュンケルハイトが変身できない昼間を決闘の時間帯に指定した挙句に、変身して決着をつけようとするお前がか。」
「・・・」
「決闘が公平であるべきと言うのなら、お前は変身をするべきではなかったな。お前は変身せずとも優位に立てていた。お前があのままデュンケルハイトを倒していたならば、我から何も言うことはなかった。ただ、お前が奴の持っているハンデを理解していないとなると話は別だ。決闘は公平性を保つべき___ならばその場を設けることは公平性を保つための正当行為ではないか?・・・違うか?」
ディルメルガの言葉にオルフェ―シュチは何も反論出来なかった。それもそう、ディルメルガはただ昼夜を逆転させただけでデュンケルハイトに強化魔術や回復魔術を施した訳では無い。ただ彼も変身できる環境にしたというだけだった。
「正直に申すが、お前が昨日の夕刻私に決闘の件を伝えに来た時、落胆したぞ。まさか昼間に決闘を挑むとはな。歴代ドラゴン族とヴェアウルフ族の決闘は全て『夜』に行われていたというのに・・・」
「・・・」
「私はてっきり変身せずに倒すものかと思って何も言わなかったが・・・どうやら違ったようだな。残念だ、オルフェ―シュチ。」
ディルメルガは冷めた眼でオルフェ―シュチを見つめる。彼女は鋭い爪で地面を抉り、鋭い歯を噛みしめる。腹部が青黒い不気味な光を放ち始める。
『恩に着ます、ディルメルガ様ッ!』
デュンケルハイトは空を見上げ、銀色に輝く月を見つめる。次の瞬間、周囲に蒼炎の柱が上がり、彼を包み込んだ。オルフェ―シュチは体を起こして蒼炎の渦を見つめると、その渦が一気に弾け、漆黒の毛に包まれた巨大な狼が現れた。狼の全長は十メートル程で、手足に蒼炎を纏っている。狼の目は蒼い宝石のように透き通るような美しさで、その瞳で目の前のドラゴンを捉える。
「デュンケルハイトッ・・・」
「オルフェ―シュチ、続けるぞ。ここからが真の魔族の戦いだ。」
デュンケルハイトがそう告げると、両者同時に距離を詰める。デュンケルハイトが彼女の首に噛みついて絡みつくと、彼女は体をうねらせながら空へ上がる。目まぐるしく辺りの景色が変貌する中必死に食らいつくが、彼女の纏う鱗を砕けない。まるで世界最硬の金属であるオリハルコンと相違ないその固さは逆にこちらの歯が折れてしまいそうだ。
「無駄だッ!」
オルフェ―シュチは彼の背中を掴んで無理やり引き剥がすと、地面へ叩きつけた。そして空気を大量に吸い込み、腹を膨れさせる。腹の色が白色から青黒い色へ変貌し、地面に叩きつけられた彼に口を開くと高圧縮された水が音速の数倍の速さで射出された。デュンケルハイトは咄嗟に避けたが、彼女は避ける彼にひたすらブレス攻撃を仕掛け続ける。ウォーターカッターのように、大地はするりと裂け、周りの木々や大岩は豆腐の如く綺麗に両断される。余りの激しさに周りにいた人々も数名、そのウォーターカッターのようなブレスで切断されて絶命している者もいる。そのせいか、多くの人々が悲鳴をあげながら一斉にその場から逃げ始めた。
「ヴィオラさん!早くに逃げますよ!」
彼女の担任の先生が子供達を避難させながら語り掛けるが、ヴィオラはその場から一切動かずに戦いを見守り続ける。その担任と周りにいた生徒たちは彼女を置いてその場を後にした。
オルフェ―シュチはただひたすらにデュンケルハイトにブレスを吐き続ける。
「どうした、どうした⁉何時まで逃げ回るつもりだ⁉逃げ回っていては何時まで経っても私を倒すことは出来んぞ⁉」
「ああ・・・知ってるさ、そんな事は。」
デュンケルハイトは尻尾に蒼炎を纏わせると、体を捻りながら思いっきり振った。蒼炎は巨大な刃となり彼女に襲い掛かるが、彼女の水のブレスで打ち消される。打ち消した時、高温の蒸気が発生して辺り一面霧に包まれる。彼女は思わず後ろへ下がる。
『ぐっ、視界がッ!』
彼女の目の前が真っ白になった___その時、突如視界が真っ赤に染まり、激痛が走った。
「ぐあッ!目・・・目がぁッ・・・」
彼女が激しく首を振ってのたうち回る中、鋭い棘のついた巨大な尻尾で周囲を薙ぎ払う。
『くそッ、あの男・・・霧に紛れて私の目をッ・・・許さんッ!』
オルフェ―シュチは目の回復に専念するために激しく暴れる。しかしデュンケルハイトは彼女のむやみやたらと派手な攻撃を全て回避し、懐に入り込む。そして右手に蒼炎を圧縮させて力を込めると、渾身の力で彼女の胸部の装甲を殴った。鱗の破片が飛び散り、皮膚がほんの少し露になる。これなら噛み砕けると確信した彼は彼女の胸元に噛みついた。彼女は大きくのたうち、地面に仰向けで倒れる。
『このまま一気に片を付けるッ!』
デュンケルハイトは更に牙を突き立てて、彼女の肉に食い込ませる。このまま一気に勝負をつけたかったが___彼女も負けてはいなかった。
「舐める___なぁぁぁぁぁぁッ!」
オルフェ―シュチは彼を両手で掴むと、無理やり引き剥がす。剥がした時に多少皮膚が剥がれて血が噴き出たがそんなことは些細な問題だ。彼女はお返しとばかりに彼の首に横から噛みつき、無理やり引き千切った。鮮血が夜空を覆う。
「ぐうッ⁉」
「お兄ちゃんッ!」
ヴィオラが思わず叫んだ。デュンケルハイトは逃げようとしたが、彼女の爪が深く体に突き刺さって抜けない。彼が逃げようと必死にもがく中、彼女は大きな口を開ける。
「お返しだ!受け取れ!」
彼女は水のブレスを発射し、彼の左胸を貫いた。ブレスが命中する瞬間、咄嗟に体を少し横にずらした。爪がより深く食い込んでしまったが、心臓を撃ち抜かれるよりはましだ。魔力を大量に消費した今、心臓を貫かれると死んでしまう可能性があったからだ。
「避けたか。だが今度こそ殺してやるッ!」
オルフェ―シュチが口を大きく開けて彼の首を噛み千切ろうとする。だがその直後、デュンケルハイトの傷から噴き出ていた血が発火、周囲が蒼炎に包まれる。また彼の体に付着した血も蒼く燃え上がり、彼女の拘束を振り解いた。
「しまっ___」
彼女が彼を手放すと、その隙を突いて体を捻り、茨のように毛が鋭く尖っている尻尾を鞭のようにして彼女の胸を攻撃する。彼女の胸を叩きつけた衝撃波は蒼炎を纏い、周囲に拡散する。鱗の装甲が剥がれていた彼女の胸に攻撃は直撃し、痛みの余り彼女は後ろへ倒れた。デュンケルハイトも重傷を負っている為、着地できずに地面を転がる。両者倒れたまま動かず、僅かに残っていた人々が心配そうに見つめる。
「お・・・おい・・・二人共動かねえぞ?これどっちも意識失ってんじゃねぇか?確認した方がいいんじゃあ・・・」
観客が騒めく中、ディルメルガが部下に指示を出して確認に行かせる。部下が二人に近づいている中、二人共元の人間の姿に戻った。
「陛下、デュンケルハイト様は気絶しておられます。出血が酷く、一刻も早く処置した方がよろしいかと。」
「オルフェ―シュチ様もデュンケルハイト様同様、重傷で気を失っておられます。」
「直ぐ治療室へ連れて行け。・・・此度の決闘は両者気絶ということで引き分けだな。」
「はっ!」
ディルメルガの側近達は担架を持ってくると二人を載せて城の方へ向かって行く。デュンケルハイトが魔王城へ運ばれていく時、ヴィオラも側近達に付いて行く。
「お兄ちゃん!お兄ちゃんッ!」
「・・・」
「ヴィオラ様、あまりデュンケルハイト様のお体を揺らさないで下さい!」
側近達がヴィオラに忠告する。そのままオルフェ―シュチとデュンケルハイトは訓練場から姿を消した。彼らが姿を消すと、周りにいた観客達やディルメルガ達もぞろぞろと訓練場を去り始めた。
「ヴェアウルフ族が・・・初めてドラゴン族と引き分けた・・・」
木の上から観戦していたグラズウィンは先程の激闘を振り返る。そんな事をしていると、世界は再び昼間に戻った。瘴気で霞む太陽と空が朧に辺りを照らしている。
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