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~魔皇会議編 第5話~
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[全て自分の力で]
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・六月___ゲオルグラディア大陸北部・魔王城・訓練場___闘技大会まで、残り十四日
「グラズウィン様、本日はここまでにしましょう。」
デュンケルハイトは蒼炎の中、ただ無心に瞑想しているグラズウィンに声をかける。彼が右腕を払って蒼炎を消し飛ばすと、グラズウィンはゆっくりと目を開いた。グラズウィンは少し怪訝な顔をしている。
「なぁ、この訓練で本当に強くなれんのか?今日筋トレと瞑想しかしてねぇぞ。・・・つうか筋トレやり過ぎて明日絶対筋肉痛になると思うんだが・・・」
「でしょうね。ずっと部屋に引きこもってばかりでしたのでそうなるのも当然です。ですが筋肉痛になろうが明日以降はまた新たなトレーニングを加えます。訓練を始める前にもお伝えしましたが、生易しい方法ではたった二週間で強くなどなれません。今回するのは応急処置的なもの___一時的に貴方の体力を向上させる為だけのものです。勿論、訓練を続けていけば、確実に実力は上がります。なので頑張っていきましょう。」
「・・・」
「返事が聞こえないようですが、大丈夫ですか?」
「聞こえてるよ!お袋見てぇなことを言うな!」
グラズウィンは大きな溜息を漏らしながらその場から立ち上がり、空を見上げる。既に陽は落ちており、満天の星空が広がる。この大陸では夜になると瘴気の霧が薄まり、夜空が美しく見えるという特徴がある。グラズウィンは夜空を見上げながら、大きく口を開いて欠伸をした。
「あぁ眠・・・もう部屋に帰っていいか?」
「駄目です。今日から暫くの間はこの訓練場で野宿をして頂きます。」
「はぁッ⁉」
「家も食料も自分で調達するようお願いします。」
「ふざけんな!」
「大丈夫です、心配しないで下さい。この訓練場は暫く貸し切りですので何をしてもかまいません。ディルメルガ様やセレス様には許可を頂いておりますので・・・」
「そう言うことじゃねぇんだよ!何でこの僕が野宿何か貧乏ったらしい真似しなくちゃいけないんだって聞いてんだよ!」
「グラズウィン様を極限の状態に追い込む為です。生命の危機に瀕した時、生き物は底知れぬ力を発揮致します。今まで甘やかされて育ってきたグラズウィン様には丁度良いものと思いまして。___これも一つのトレーニングと思って頂ければ宜しいかと。」
「手前・・・」
グラズウィンが恨めしそうにデュンケルハイトを睨みつける。デュンケルハイトは彼の負の感情が大いに含まれた視線を無視し、言葉を続ける。
「そういう訳で、私達はこれで失礼いたします。ではまた明日。」
デュンケルハイトは眠そうに目を擦るヴィオラの手を握る。グラズウィンが呼び止めようとしたその時、デュンケルハイトは自身の周囲を蒼炎で包み、消えた。二人の姿が見えなくなると、彼は奥歯を強く噛みしめた。
「クソったれがッ・・・分かったよ、野宿すりゃあいいんだろ!寝床と夕飯も自分で手に入れりゃあ良いんだろ!やってやんよ!畜生が!」
グラズウィンは大声で叫び散らかすと、恨み言を呟きながら近くの森の中へ入って行った。
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・六月___ゲオルグラディア大陸北部・魔王城・訓練場___闘技大会まで、残り十四日
「グラズウィン様、本日はここまでにしましょう。」
デュンケルハイトは蒼炎の中、ただ無心に瞑想しているグラズウィンに声をかける。彼が右腕を払って蒼炎を消し飛ばすと、グラズウィンはゆっくりと目を開いた。グラズウィンは少し怪訝な顔をしている。
「なぁ、この訓練で本当に強くなれんのか?今日筋トレと瞑想しかしてねぇぞ。・・・つうか筋トレやり過ぎて明日絶対筋肉痛になると思うんだが・・・」
「でしょうね。ずっと部屋に引きこもってばかりでしたのでそうなるのも当然です。ですが筋肉痛になろうが明日以降はまた新たなトレーニングを加えます。訓練を始める前にもお伝えしましたが、生易しい方法ではたった二週間で強くなどなれません。今回するのは応急処置的なもの___一時的に貴方の体力を向上させる為だけのものです。勿論、訓練を続けていけば、確実に実力は上がります。なので頑張っていきましょう。」
「・・・」
「返事が聞こえないようですが、大丈夫ですか?」
「聞こえてるよ!お袋見てぇなことを言うな!」
グラズウィンは大きな溜息を漏らしながらその場から立ち上がり、空を見上げる。既に陽は落ちており、満天の星空が広がる。この大陸では夜になると瘴気の霧が薄まり、夜空が美しく見えるという特徴がある。グラズウィンは夜空を見上げながら、大きく口を開いて欠伸をした。
「あぁ眠・・・もう部屋に帰っていいか?」
「駄目です。今日から暫くの間はこの訓練場で野宿をして頂きます。」
「はぁッ⁉」
「家も食料も自分で調達するようお願いします。」
「ふざけんな!」
「大丈夫です、心配しないで下さい。この訓練場は暫く貸し切りですので何をしてもかまいません。ディルメルガ様やセレス様には許可を頂いておりますので・・・」
「そう言うことじゃねぇんだよ!何でこの僕が野宿何か貧乏ったらしい真似しなくちゃいけないんだって聞いてんだよ!」
「グラズウィン様を極限の状態に追い込む為です。生命の危機に瀕した時、生き物は底知れぬ力を発揮致します。今まで甘やかされて育ってきたグラズウィン様には丁度良いものと思いまして。___これも一つのトレーニングと思って頂ければ宜しいかと。」
「手前・・・」
グラズウィンが恨めしそうにデュンケルハイトを睨みつける。デュンケルハイトは彼の負の感情が大いに含まれた視線を無視し、言葉を続ける。
「そういう訳で、私達はこれで失礼いたします。ではまた明日。」
デュンケルハイトは眠そうに目を擦るヴィオラの手を握る。グラズウィンが呼び止めようとしたその時、デュンケルハイトは自身の周囲を蒼炎で包み、消えた。二人の姿が見えなくなると、彼は奥歯を強く噛みしめた。
「クソったれがッ・・・分かったよ、野宿すりゃあいいんだろ!寝床と夕飯も自分で手に入れりゃあ良いんだろ!やってやんよ!畜生が!」
グラズウィンは大声で叫び散らかすと、恨み言を呟きながら近くの森の中へ入って行った。
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