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~魔族襲撃編 最終話~
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[闇の声]
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・五月___とある廃遺跡
___戻ったか。
フードの男がアルテミスを連れて廃遺跡へと帰還すると、暗闇の奥から威圧感のある低い声が響いてきた。男はアルテミスを地面に雑に置くと、その場に膝をついた。
「只今帰還しました、キング。」
___成果を報告せよ。
「アフターグロウ内の駐屯基地機密書庫にてキングと歴代魔王の『遺体』の在処が書かれた書物を発見しました。侵入した痕跡は残しておりませんのでご安心を。今後はこの遺体の回収を中心に行ないたいと思います。」
___書物は焼かなかったのか?
「書庫は基地の地下にあり、構造上火の手が回らない仕様となっております。もし書庫を燃やせば何者かが書庫に侵入し、我々の思惑を探知されてしまう恐れがあった為、そのように判断いたしました。」
___成程、納得した。理由があるのなら、それ以上何も問うまい。
闇の中から唸り声のような溜息が聞こえてきた。フードの男は一拍間を置き、言葉を続ける。
「また、同時に行われたアフターグロウへの攻撃ですが、街と駐屯していた王都軍の機能を停止させる事には成功しましたが、その場に居合わせた三名の八英雄にアルテミスが撃破されました。」
男はそう言うと、横に転がっているアルテミスに手をかざした。その瞬間、アルテミスの体を蒼い炎が包み、胸に空いた穴が一瞬で治った。アルテミスが閉じていた瞼を開き、体を起こす。
「アルテミス、キングに報告せよ。」
男の声にアルテミスは咄嗟に起き上がって膝をつく。
___アルテミス、随分と酷くやられたものだな。
「申し訳ありません、ヴェルヴォルグ様。不覚を取られてしまいました。___この失敗の責任は必ず・・・」
___そこまでかしこまらなくて良い・・・まだ貴様も『本体』ではないのだ。本来の力を発揮できなくとも、しょうがない。
「・・・身に染みるお優しき言葉、感謝いたします。」
アルテミスは頭を下げたまま、声がする闇の方へ返事をする。暫くの静寂の後、闇の中から魔王ヴェルヴォルグが二人に指令を出す。
___『ミネルヴァ』、アルテミス。我らの遺体を探せ。どこからでも構わん・・・損害被らずに早急に回収せよ。良いな?早急にだぞ。人間どもや日和った魔族共が我々の動きに勘づき、態勢を整える間を与えてはならん。
「御意。」
「承知いたしました。」
アルテミスと『ミネルヴァ』と呼ばれた男が返事をして立ち上がる。フードの男___『ミネルヴァ』のフードが外れ、中性的な見た目をした男の顔が露になった。サラサラしたストレートの長髪で髪の色はブロンド、鋭い眼つきに瞳の色は銀色である。二人は闇に背を向けてその場を後にする。
「・・・ミネルヴァ様。この度は貴方のお手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした。」
廃遺跡の通路を歩きながらアルテミスがアテナに声をかける。彼は彼女の方に顔を向ける事無く、歩きながら言葉を返す。
「別に気にしてはいない。只次は同じミスをするな。キングは寛大なお心をお持ちだが、同じミスを繰り返す愚か者を嫌う。次は命が無いと思え。」
「承知いたしました。深く胸に刻んでおきます。」
アルテミスがミネルヴァの右後ろを歩きながら返事をする。その時、二人の前に二人の男が現れる。一人はアルテミスと同じ銀色の髪で、髪の毛を全体的に逆立てているのが特徴だ。革ジャンに革ズボン、腰には銀のチェーンを巻き付けているなど、かなり派手な見た目をしている。
「Hey , My Pretty Sister ! 無事に戻って来てくれたんだね~!」
「お兄様、無事に帰還いたしまし___きゃっ」
アルテミスが返事を返していると、派手な服を着た男が彼女に抱きついた。アルテミスは恥ずかしそうに男から離れようとするが、彼は離してくれない。
「お兄様!恥ずかしいですから離してください!ミネルヴァ様と『ポセイドン』様が傍にいらっしゃるのにッ・・・」
「No Problem ! 誰が傍にいたって関係ないさ!僕はただ、ただただ可愛い妹を愛でるだけなんだから!誰にも邪魔はさせないよ!」
「そう言う問題じゃありません!単純に恥ずかしいので止めてほしんですッ!」
アルテミスが必死に男を剥がそうとし、男は剥がされまいと必死に抱きつき続ける。そんな二人を無視し、ミネルヴァはもう一人の男と会話し始める。男の名はポセイドン、厳つい老人で髪が無い代わりにふくよかな白髭を生やしているのが特徴で額には無数の傷跡があり、歴戦の老兵の風貌を感じさせる。
「見つけたか。儂らの『遺体』は。」
「見つけたとも。これがその在処だ。」
ミネルヴァはポセイドンにある巻物を手渡す。ポセイドンは巻物を開き、中身を確認する。
「それぞれの遺体の場所はそれに記されている。迅速に回収し、万全な状態を整えよとのご命令だ。」
「・・・承知した。___行くぞ、『アポロン』。」
ポセイドンがアルテミスに抱きついている男___『アポロン』に呼びかける。彼は顔を嫌そうに歪ませる。
「ええ~!もう行くの~?もう少し俺の可愛い妹を愛でてもいいじゃん!行きたいのならポセイドン一人で行きゃあいいでしょ?」
「呆けるなよ、若造。キングの命令を無視する気か?それに一人で行けるものなら一人で行かせてもらいたいものだが、キングがツーマンセルで動けと指示している以上、単独で行動は出来ん。・・・不快の極みだがな。」
「じゃあミネルヴァと行きなよ。僕は妹と行くからさ。」
「お兄様・・・勝手は駄目ですよ?ちゃんとヴェルヴォルグ様の指示に従わないと・・・」
「あはっ!僕の妹が僕の為に怒ってくれた!怒った声も可愛いなぁ~。やっぱ僕の妹は最高だね!」
アポロンは全く聞く耳を持たずに、妹へ過剰にスキンシップを図ろうとする。その様子を見て、ポセイドンが額に血管を浮き上がらせて怒りを顕わにするが、その直前にミネルヴァが彼に話しかける。
「ポセイドン、私が同行しよう。キングは二人組で行動しろとは言ったが、誰と組むかは指定してはいない。・・・アルテミス、私の代わりに今度はアポロンと組め。」
「了解しました。・・・兄の我儘で申し訳ありません・・・」
「本当に⁉やったぁ!ありがとうミネルヴァ!」
「やったぁ!・・・じゃありませんよ!ミネルヴァ様やポセイドン様に迷惑かけるなんて信じられません!」
「ご、ごめんよ~!許しておくれよ~アルテミス~。___でもやっぱ怒った顔も可愛いな~。」
アポロンはアルテミスに抱きついたまま、反省しているのかしていないのか良く分からない態度をとる。ポセイドンは短く溜息を吐く。
「・・・こんな奴でも元『魔王』とはな。___ミネルヴァ、世話をかけたな。」
「構わん。任務に支障が出ないよう行動するのも私の務めの内だ。・・・アポロン、わざわざバディを変えてやったんだ___変なミスを犯せば殺すからな。覚悟しておけ。」
「OK , OK ! ちゃんと予定通りに事は進めるさぁ~。」
アポロンは陽気な声で返事をする。ミネルヴァとポセイドンは転送魔術で何処かへ去って行った。残されたアルテミスとアポロンもまた転送魔術でミネルヴァ達とは別の場所へ消えた。
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・五月___とある廃遺跡
___戻ったか。
フードの男がアルテミスを連れて廃遺跡へと帰還すると、暗闇の奥から威圧感のある低い声が響いてきた。男はアルテミスを地面に雑に置くと、その場に膝をついた。
「只今帰還しました、キング。」
___成果を報告せよ。
「アフターグロウ内の駐屯基地機密書庫にてキングと歴代魔王の『遺体』の在処が書かれた書物を発見しました。侵入した痕跡は残しておりませんのでご安心を。今後はこの遺体の回収を中心に行ないたいと思います。」
___書物は焼かなかったのか?
「書庫は基地の地下にあり、構造上火の手が回らない仕様となっております。もし書庫を燃やせば何者かが書庫に侵入し、我々の思惑を探知されてしまう恐れがあった為、そのように判断いたしました。」
___成程、納得した。理由があるのなら、それ以上何も問うまい。
闇の中から唸り声のような溜息が聞こえてきた。フードの男は一拍間を置き、言葉を続ける。
「また、同時に行われたアフターグロウへの攻撃ですが、街と駐屯していた王都軍の機能を停止させる事には成功しましたが、その場に居合わせた三名の八英雄にアルテミスが撃破されました。」
男はそう言うと、横に転がっているアルテミスに手をかざした。その瞬間、アルテミスの体を蒼い炎が包み、胸に空いた穴が一瞬で治った。アルテミスが閉じていた瞼を開き、体を起こす。
「アルテミス、キングに報告せよ。」
男の声にアルテミスは咄嗟に起き上がって膝をつく。
___アルテミス、随分と酷くやられたものだな。
「申し訳ありません、ヴェルヴォルグ様。不覚を取られてしまいました。___この失敗の責任は必ず・・・」
___そこまでかしこまらなくて良い・・・まだ貴様も『本体』ではないのだ。本来の力を発揮できなくとも、しょうがない。
「・・・身に染みるお優しき言葉、感謝いたします。」
アルテミスは頭を下げたまま、声がする闇の方へ返事をする。暫くの静寂の後、闇の中から魔王ヴェルヴォルグが二人に指令を出す。
___『ミネルヴァ』、アルテミス。我らの遺体を探せ。どこからでも構わん・・・損害被らずに早急に回収せよ。良いな?早急にだぞ。人間どもや日和った魔族共が我々の動きに勘づき、態勢を整える間を与えてはならん。
「御意。」
「承知いたしました。」
アルテミスと『ミネルヴァ』と呼ばれた男が返事をして立ち上がる。フードの男___『ミネルヴァ』のフードが外れ、中性的な見た目をした男の顔が露になった。サラサラしたストレートの長髪で髪の色はブロンド、鋭い眼つきに瞳の色は銀色である。二人は闇に背を向けてその場を後にする。
「・・・ミネルヴァ様。この度は貴方のお手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした。」
廃遺跡の通路を歩きながらアルテミスがアテナに声をかける。彼は彼女の方に顔を向ける事無く、歩きながら言葉を返す。
「別に気にしてはいない。只次は同じミスをするな。キングは寛大なお心をお持ちだが、同じミスを繰り返す愚か者を嫌う。次は命が無いと思え。」
「承知いたしました。深く胸に刻んでおきます。」
アルテミスがミネルヴァの右後ろを歩きながら返事をする。その時、二人の前に二人の男が現れる。一人はアルテミスと同じ銀色の髪で、髪の毛を全体的に逆立てているのが特徴だ。革ジャンに革ズボン、腰には銀のチェーンを巻き付けているなど、かなり派手な見た目をしている。
「Hey , My Pretty Sister ! 無事に戻って来てくれたんだね~!」
「お兄様、無事に帰還いたしまし___きゃっ」
アルテミスが返事を返していると、派手な服を着た男が彼女に抱きついた。アルテミスは恥ずかしそうに男から離れようとするが、彼は離してくれない。
「お兄様!恥ずかしいですから離してください!ミネルヴァ様と『ポセイドン』様が傍にいらっしゃるのにッ・・・」
「No Problem ! 誰が傍にいたって関係ないさ!僕はただ、ただただ可愛い妹を愛でるだけなんだから!誰にも邪魔はさせないよ!」
「そう言う問題じゃありません!単純に恥ずかしいので止めてほしんですッ!」
アルテミスが必死に男を剥がそうとし、男は剥がされまいと必死に抱きつき続ける。そんな二人を無視し、ミネルヴァはもう一人の男と会話し始める。男の名はポセイドン、厳つい老人で髪が無い代わりにふくよかな白髭を生やしているのが特徴で額には無数の傷跡があり、歴戦の老兵の風貌を感じさせる。
「見つけたか。儂らの『遺体』は。」
「見つけたとも。これがその在処だ。」
ミネルヴァはポセイドンにある巻物を手渡す。ポセイドンは巻物を開き、中身を確認する。
「それぞれの遺体の場所はそれに記されている。迅速に回収し、万全な状態を整えよとのご命令だ。」
「・・・承知した。___行くぞ、『アポロン』。」
ポセイドンがアルテミスに抱きついている男___『アポロン』に呼びかける。彼は顔を嫌そうに歪ませる。
「ええ~!もう行くの~?もう少し俺の可愛い妹を愛でてもいいじゃん!行きたいのならポセイドン一人で行きゃあいいでしょ?」
「呆けるなよ、若造。キングの命令を無視する気か?それに一人で行けるものなら一人で行かせてもらいたいものだが、キングがツーマンセルで動けと指示している以上、単独で行動は出来ん。・・・不快の極みだがな。」
「じゃあミネルヴァと行きなよ。僕は妹と行くからさ。」
「お兄様・・・勝手は駄目ですよ?ちゃんとヴェルヴォルグ様の指示に従わないと・・・」
「あはっ!僕の妹が僕の為に怒ってくれた!怒った声も可愛いなぁ~。やっぱ僕の妹は最高だね!」
アポロンは全く聞く耳を持たずに、妹へ過剰にスキンシップを図ろうとする。その様子を見て、ポセイドンが額に血管を浮き上がらせて怒りを顕わにするが、その直前にミネルヴァが彼に話しかける。
「ポセイドン、私が同行しよう。キングは二人組で行動しろとは言ったが、誰と組むかは指定してはいない。・・・アルテミス、私の代わりに今度はアポロンと組め。」
「了解しました。・・・兄の我儘で申し訳ありません・・・」
「本当に⁉やったぁ!ありがとうミネルヴァ!」
「やったぁ!・・・じゃありませんよ!ミネルヴァ様やポセイドン様に迷惑かけるなんて信じられません!」
「ご、ごめんよ~!許しておくれよ~アルテミス~。___でもやっぱ怒った顔も可愛いな~。」
アポロンはアルテミスに抱きついたまま、反省しているのかしていないのか良く分からない態度をとる。ポセイドンは短く溜息を吐く。
「・・・こんな奴でも元『魔王』とはな。___ミネルヴァ、世話をかけたな。」
「構わん。任務に支障が出ないよう行動するのも私の務めの内だ。・・・アポロン、わざわざバディを変えてやったんだ___変なミスを犯せば殺すからな。覚悟しておけ。」
「OK , OK ! ちゃんと予定通りに事は進めるさぁ~。」
アポロンは陽気な声で返事をする。ミネルヴァとポセイドンは転送魔術で何処かへ去って行った。残されたアルテミスとアポロンもまた転送魔術でミネルヴァ達とは別の場所へ消えた。
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