オルタナティブ・ガーディアンズ ~救世の英雄は世界に希望を灯す~

黄昏詩人

文字の大きさ
上 下
13 / 49

~災いを呼ぶ青年編 第4話~

しおりを挟む
[幸運]

 グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・五月___アルヴェント大陸南部・中継都市ガロック

 「おぉいッ!誰かぁッ!誰かいねぇのかよぉぉッ!」

 地下牢全体にある男の醜い大声が響く。さっきからずっと柵から両腕を伸ばし、叫び続けていた。彼の声を聞きつけて看守が二人、やって来る。その内、一人の看守の腰には牢屋の鍵がぶら下がっていた。

 「さっきから何を騒いでいる⁉喧しいぞ!」

 「頼むよぉぉ・・・早くここから出してくれよぉぉ・・・ここ、さっきからスゲエ数の蛇が壁中にいるんだよぉぉぉ・・・」

 「はぁ?蛇なんてどこにもいないぞ?・・・薬が切れて幻覚でも見えてんのか。」

 「あああああッ⁉薬ッ!クスリッ、クスリが欲しいよぉぉぉぉッ!」

 「・・・ちっ、ヤク中が。どうする?無理やり眠らせるか?」

 「ああ、そうしよう。このまま騒ぎ続けられたら他の罪人共を無駄に刺激しかねん。」

 「ったく面倒くせぇ。こんな屑、ぶっ殺せるような決まりがあればいいのによ。」

 「そんなこと言うな。こいつらは囚人法で保護の対象だ。むやみに暴力を振るったり、殺したりでもしたら追放処分を食らうぞ。」

 「んなもん、なんぼでも理由つけて誤魔化しゃいいだろ。どうせこいつ等を助ける奴なんかいねぇんだからよ。」

 横暴な態度を取る男の看守が腰のバッグから一本の注射器を取り出す。注射器の中には透明の液体が入っている。これは騒ぐ囚人を眠らせる強力な睡眠剤だ。この注射を見て、騒いでいた囚人が更に騒ぎ出した。

 「おい、今から扉を開けるからしっかり押さえてろよ?」

 横暴な男が腰の鍵を取って牢の鍵を開けた___

 その瞬間、間髪入れずに牢の中から囚人が飛び出し、注射器を持っている男を突き飛ばした。男は突き飛ばされ、手に持っている鍵を反対側の牢の中に投げてしまった。そしてその牢の中には、先程『問題児』と言われた青年が入っていた。

 男が体勢を立て直そうとした時、囚人が横暴な男の喉に喰らいつき、引き千切った。男の首から大量に血が出る。

 「がぁッ・・・はッ・・・」

 男はバタバタと地面でもがき苦しみながら首を抑える。出血は止まらず、どんどん血が地面に広がっている。囚人がもう一人の看守に顔を向けると、その看守は剣を抜き、囚人の首を跳ね飛ばした。ボーン、ボーンと囚人の首がボールのように転がっていく。

 それらの様子を見ていた他の囚人達は一斉に騒ぎ出した。まるで今までのうっ憤を晴らすかのように聞くに堪えない暴言や罵声が飛び交う。それらの罵声は地面で苦しみもがく男に向けられていて、どれだけ嫌われているのだろうかと青年は牢の中に投げ込まれた鍵を手にしながら思った。

 「おい、大丈夫か⁉」

 囚人の首を斬り飛ばした看守が声をかけるが、首を食いちぎられた看守は瞼を大きく開けたまま、絶命していた。何とも無様な死に様だ。

 青年はその隙に鍵を開け、扉を蹴り開ける。看守が青年に気がつく頃には、青年は看守の顔に蹴りを入れて気絶させる。

 「やるじゃねぇか、坊主!ほら、早くその鍵をこっちに寄こしやがれ!」

 周りの囚人共が青年に向かって声を荒げる。青年は彼らのことなんかどうでもよかったので、適当に囚人がいる牢に鍵を投げ込んでその場を去った。囚人はキャッチしようとしたが、上手くキャッチできずに床へ落ちる。囚人がその鍵を取ろうとした時、何処からか現れた野良猫がその鍵を加えて何処かへ行ってしまった。

 「おい、待てや、クソ猫!何処へ行きやがるッ!鍵を返しやがれ畜生がッ!」

 囚人は猫に怒鳴るが、肝心の猫は我関せずとばかりにそそくさと鍵を咥えたままその場を後にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...