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~新たなる旅の始まり編 第5話~
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[正体]
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・五月___アルヴェント大陸南西部・フィオル村
「やはり・・・その程度では足止め出来んか。」
ヒュッセルはウィルベールの方へ歩きながら、腰の剣を抜いた。右手にはカットラスという長刀を、左手にはファルシオンという短刀を持っている。ヒュッセルはこの二刀を用いた戦闘を得意としている。彼も魔力を解放し、ウィルベールと対峙する。
ヒュッセルから感じ取れる魔力はウィルベールが知っているものと一致する。しかし、ウィルベールはそれでも疑っていた。___根拠はなくとも、目の前にいる男は決してヒュッセルではないということを。
「まだ疑ってるのか?全く、本当におめでたいな。まぁ、昔の仲間がまさか襲ってくるなんて、普通は信じたくは無いよな?」
「・・・」
「でも事実、俺はこうしてお前の前に立っている。・・・お前を殺すために、な。」
ヒュッセルは再び頬を吊り上げて不敵に微笑む。だがウィルベールは一切動じない。彼はじっと『目の前にいる敵』を見つめながら、ぼそりと呟いた。
「そうか・・・じゃあ儂が次に何をするのか___分かるな?」
そう言った瞬間、ウィルベールから底知れぬ殺気が放たれ、ヒュッセルに襲い掛かる。次の瞬間、ウィルベールがいつの間にかにヒュッセルの目の前にまで接近しており、躊躇なく斧を振った。ヒュッセルは驚いた顔になり、ウィルベールの攻撃を防ぐ。彼の攻撃を防いだ瞬間、衝撃波が周囲に広がる。
「躊躇なしかよッ___お前、とうとう腹くくったかッ!」
「・・・」
「変わったな、お前は・・・昔のお前はもっと・・・仲間には優しかったよ___なッ!」
ヒュッセルはウィルベールを押し返すと、今度はウィルベールの方へ接近する。
「《 双華刃 》」
ヒュッセルは双剣を交差させ、ウィルベールの首目掛けて振る。ウィルベールは体を反って姿勢を低くすることで回避し、その勢いを活かしてヒュッセルの体を蹴り飛ばす。大きく吹き飛ばされたヒュッセルにウィルベールはまたもや自ら間合いを詰めると、攻撃を繰り出す。ウィルベールの一撃はどれも重く、ヒュッセルは体勢を整えられていない。
「やるじゃないかッ・・・ウィルベールッ!やはり・・・やはりお前は『本物』だ!」
「・・・」
「《 双嵐閃 》ッ!」
ヒュッセルは体を捻り、その勢いを活かして広範囲の斬撃を繰り出す。ところがウィルベールは容易くそれらの斬撃を防ぐ。回避するのでもなく、正面から全て受け切ったのだ。
『馬鹿なッ⁉正面から防ぐだと⁉』
「・・・双嵐閃___前方より同時に八つの斬撃を敵に刻む高速斬術・・・あいつの得意技だな。」
ウィルベールはヒュッセルの腹部を全力で殴り、勢いよく吹き飛ばした。ヒュッセルは衝撃で一瞬息が止まる。
「だが___どの斬撃も『軽すぎる』。本当にあいつが放った技なら、儂でも全ての斬撃を防ぐことは不可能だ。こんな斧では簡単にスライスされる。」
ウィルベールは吹き飛ばしたヒュッセルに斬りかかる。ヒュッセルは間一髪で横に転がり、回避する。
「それに双華刃___二刀を交差させ、相手の首を刎ねる斬術・・・これも本当に奴が放った技ならあんな簡単に見極めさせてくれないだろうな。あいつなら、その技は最初に使わない。斬り合いの最中に突然繰り出してくるはずだからな。」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「奴の姿になって私を欺くつもりだったのだろうが・・・本気で出来ると思っていたなら正気を疑うぞ。儂がどれだけの間、あいつと共に死線をくぐり抜けてきたと思ってる?」
ヒュッセルは一気にウィルベールから間合いを取る。ウィルベールは離れるヒュッセルを睨みつけながら、魔力を斧に集中させる。
「後どうでもいい事だが___お前は儂が躊躇なく斬りかかったときに驚いていたが、奴なら驚かなかっただろうな。」
ウィルベールは斧を振り上げると、勢いよく振り下ろし、魔力で生成した巨大な刃を真空波のように高速で放つ。その速度は音速を超え、周囲の炎を吹き飛ばしながらヒュッセルへ向かう。ヒュッセルは咄嗟に刀で防ごうとするが、巨大な刃はヒュッセルを縦に両断した。
「___《 断葬 》」
ウィルベールは技名を呟く。久しぶりに繰り出した技の割にはまあまあの威力だ。ヒュッセルの体は左肩から縦に斬られ、左半身が大きく欠損した。
「畜生ッ!畜生ッ!」
ヒュッセルは傷口を抑え、噴き出す大量の血を何とか防ごうとしていた。そんなヒュッセルの元へ近づき、目の前で足を止めた。地面に座り込んでいたヒュッセルは目の前に立って見下ろしている老英雄を見上げる。彼はじっと、無表情のまま見つめている。
「まだ正体を隠すつもりか?いい加減本当の姿を晒したらどうだ?」
「・・・はっ、お前何時までそれを___」
ヒュッセルが話していたその時、ウィルベールはヒュッセルの両足を切断する。彼の両足から噴水のように血が噴き出る。
「ぐああああッ⁉」
「一々叫ぶな。あいつなら例え四肢が切り落とされてもそんなに情けない声で騒がないぞ。」
ウィルベールはそう言ってヒュッセルが纏っていた黒マントを奪い取る。襟にくっついている星と薔薇が組み合わさった紋章を見て、ウィルベールは目を細めた。
「聖星勲、あいつだけが持ってる王都軍総団長の証。レプリカじゃないな。・・・これを何処で手に入れた?」
ウィルベールがヒュッセルを踏みつけて尋ねる。胸部を強く圧迫され、彼はまともに呼吸が出来ていない。
「がっ・・・はっ・・・」
「何黙ってる。早く言え。」
ウィルベールは強烈な魔力を放ちながら威圧する。ヒュッセルはこの時、心から恐怖を覚えた。
パリ・・・パリッ・・・
ヒュッセルの顔に出来の悪い陶芸品のようなヒビが入り、崩れていく。顔が完全に崩れた時、ウィルベールは予想外の顔に少し驚いた。
「___魔族じゃ無いのか?」
ヒュッセルの顔の下に隠れていた男はニヤリと笑みを浮かべる。ウィルベールはてっきりオークやオークキングを率いていたという点から魔族が擬態しているとばかり思っていたが、まさか人間とは思っていなかった。・・・今日は奇妙なことがよく起こる。
「流石・・・八英雄の筆頭___『不撓のウィルベール』だな・・・噂以上の実力だ・・・」
「お前・・・何者だ?何処に所属している?誰の差し金だ?」
ウィルベールが淡々と問い詰める。するとその時、男の体が突如炎に包まれた。男は何処か勝ち誇った顔をウィルベールに見せつける。
「証拠を消すつもりか。」
ウィルベールは炎が男の頭を包み込む前に男の首を斬り落とす。男の首がゴロンゴロンと転がっていく。男の体は炎に焼かれ、灰と化して消えた。舞い上がる灰を手で払いながら、男の首の所へ向かう。
『何者だったんだ、アイツは。ヒュッセルのマントを持っているってことは王都軍に関係する者なのか?』
ウィルベールが足元に転がる男の首を前にして考え込んでいると、遠くから誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。
「お爺様ッ!」
ウィルベールが声のした方を振り向くと、レフィナがバックソードを右手に携えてこちらに走って来ていた。
「レフィナ、儂が帰って来るまで村から離れるなと言っただろ。」
「すみません・・・でもお爺様が心配で・・・」
「心配してくれるのはとても嬉しいが、役割を放棄するのは感心せんな。お前は休暇中であろうとも王都軍に所属する剣術士、個人の感情よりも民を守ることを優先しろと教えられた筈じゃないのか?」
ウィルベールはエヴァンに叱責する。レフィナは顔を俯け、申し訳なさそうな顔をする。
「・・・ごめんなさい・・・」
レフィナは小さな声でウィルベールに謝罪の言葉を述べた。ウィルベールは彼女の頭にそっと手を置いて優しく撫でる。
「そういう所、本当に母親そっくりだな。・・・あいつも俺の言う事聞かないことが多かったしな。」
彼女の頭を右手で撫でた後、左手で足元に転がっている男の髪を持って、彼女に見せる。
「レフィナ。一つ聞くが、この男を知ってるか?」
「え・・・ひっ!」
レフィナは目の前に差し出された男の生首を見て、少し後ろに下がる。それにちょっと顔色が悪くなったようにも見える。
「この男、ヒュッセルのマントを着ていた。あいつしか持っていない聖星勲をつけたマントをだ。もし王都軍の奴ならば、心当たりがあるのかと思ってな。」
「・・・」
「どうだ?知ってるか?」
彼女がまじまじとその生首を見る。少しの間の後、静かに口を開いた。
「___この方、私達第一師団の第三騎兵分隊隊長です!」
「名前は?」
「ロンベルです。ロンベル・アーディット隊長。でもロンベル隊長は擬態の能力などは持っていないとは思いますが・・・それと、ロンベル隊長率いる第三分隊は先月消息不明になっていたんです。」
「消息不明?理由は?」
「私も詳しくは存じませんが・・・ただ風の噂で聞いた話によると、定期連絡が途切れ、そのまま消息が分からなくなった、と。」
「他に知ってることはあるか?何の任務だったか、とかは?」
「いえ・・・私が知っているのはそれぐらいです・・・」
「そうか。・・・いや、今はそれだけの情報を教えてくれただけでも十分だ。助かった。」
ウィルベールは辺りを見渡す。炎の勢いは収まって来ていたが、周囲には村人達の死体が散乱していた。この感じだと___生存者は数名・・・最悪全滅しているかも知れない。
「生存者を探すぞ。床の下、壁の裏・・・隠れていそうなところを片っ端から当たるぞ。」
「はい!」
ウィルベールはロンベルの頭を持ったまま、レフィナを連れて生存者を探し始める。炎の勢いは収まりつつあるものの、黒煙が天を覆いつつあった。
グレゴルド王朝・第九紀・四十五年・五月___アルヴェント大陸南西部・フィオル村
「やはり・・・その程度では足止め出来んか。」
ヒュッセルはウィルベールの方へ歩きながら、腰の剣を抜いた。右手にはカットラスという長刀を、左手にはファルシオンという短刀を持っている。ヒュッセルはこの二刀を用いた戦闘を得意としている。彼も魔力を解放し、ウィルベールと対峙する。
ヒュッセルから感じ取れる魔力はウィルベールが知っているものと一致する。しかし、ウィルベールはそれでも疑っていた。___根拠はなくとも、目の前にいる男は決してヒュッセルではないということを。
「まだ疑ってるのか?全く、本当におめでたいな。まぁ、昔の仲間がまさか襲ってくるなんて、普通は信じたくは無いよな?」
「・・・」
「でも事実、俺はこうしてお前の前に立っている。・・・お前を殺すために、な。」
ヒュッセルは再び頬を吊り上げて不敵に微笑む。だがウィルベールは一切動じない。彼はじっと『目の前にいる敵』を見つめながら、ぼそりと呟いた。
「そうか・・・じゃあ儂が次に何をするのか___分かるな?」
そう言った瞬間、ウィルベールから底知れぬ殺気が放たれ、ヒュッセルに襲い掛かる。次の瞬間、ウィルベールがいつの間にかにヒュッセルの目の前にまで接近しており、躊躇なく斧を振った。ヒュッセルは驚いた顔になり、ウィルベールの攻撃を防ぐ。彼の攻撃を防いだ瞬間、衝撃波が周囲に広がる。
「躊躇なしかよッ___お前、とうとう腹くくったかッ!」
「・・・」
「変わったな、お前は・・・昔のお前はもっと・・・仲間には優しかったよ___なッ!」
ヒュッセルはウィルベールを押し返すと、今度はウィルベールの方へ接近する。
「《 双華刃 》」
ヒュッセルは双剣を交差させ、ウィルベールの首目掛けて振る。ウィルベールは体を反って姿勢を低くすることで回避し、その勢いを活かしてヒュッセルの体を蹴り飛ばす。大きく吹き飛ばされたヒュッセルにウィルベールはまたもや自ら間合いを詰めると、攻撃を繰り出す。ウィルベールの一撃はどれも重く、ヒュッセルは体勢を整えられていない。
「やるじゃないかッ・・・ウィルベールッ!やはり・・・やはりお前は『本物』だ!」
「・・・」
「《 双嵐閃 》ッ!」
ヒュッセルは体を捻り、その勢いを活かして広範囲の斬撃を繰り出す。ところがウィルベールは容易くそれらの斬撃を防ぐ。回避するのでもなく、正面から全て受け切ったのだ。
『馬鹿なッ⁉正面から防ぐだと⁉』
「・・・双嵐閃___前方より同時に八つの斬撃を敵に刻む高速斬術・・・あいつの得意技だな。」
ウィルベールはヒュッセルの腹部を全力で殴り、勢いよく吹き飛ばした。ヒュッセルは衝撃で一瞬息が止まる。
「だが___どの斬撃も『軽すぎる』。本当にあいつが放った技なら、儂でも全ての斬撃を防ぐことは不可能だ。こんな斧では簡単にスライスされる。」
ウィルベールは吹き飛ばしたヒュッセルに斬りかかる。ヒュッセルは間一髪で横に転がり、回避する。
「それに双華刃___二刀を交差させ、相手の首を刎ねる斬術・・・これも本当に奴が放った技ならあんな簡単に見極めさせてくれないだろうな。あいつなら、その技は最初に使わない。斬り合いの最中に突然繰り出してくるはずだからな。」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「奴の姿になって私を欺くつもりだったのだろうが・・・本気で出来ると思っていたなら正気を疑うぞ。儂がどれだけの間、あいつと共に死線をくぐり抜けてきたと思ってる?」
ヒュッセルは一気にウィルベールから間合いを取る。ウィルベールは離れるヒュッセルを睨みつけながら、魔力を斧に集中させる。
「後どうでもいい事だが___お前は儂が躊躇なく斬りかかったときに驚いていたが、奴なら驚かなかっただろうな。」
ウィルベールは斧を振り上げると、勢いよく振り下ろし、魔力で生成した巨大な刃を真空波のように高速で放つ。その速度は音速を超え、周囲の炎を吹き飛ばしながらヒュッセルへ向かう。ヒュッセルは咄嗟に刀で防ごうとするが、巨大な刃はヒュッセルを縦に両断した。
「___《 断葬 》」
ウィルベールは技名を呟く。久しぶりに繰り出した技の割にはまあまあの威力だ。ヒュッセルの体は左肩から縦に斬られ、左半身が大きく欠損した。
「畜生ッ!畜生ッ!」
ヒュッセルは傷口を抑え、噴き出す大量の血を何とか防ごうとしていた。そんなヒュッセルの元へ近づき、目の前で足を止めた。地面に座り込んでいたヒュッセルは目の前に立って見下ろしている老英雄を見上げる。彼はじっと、無表情のまま見つめている。
「まだ正体を隠すつもりか?いい加減本当の姿を晒したらどうだ?」
「・・・はっ、お前何時までそれを___」
ヒュッセルが話していたその時、ウィルベールはヒュッセルの両足を切断する。彼の両足から噴水のように血が噴き出る。
「ぐああああッ⁉」
「一々叫ぶな。あいつなら例え四肢が切り落とされてもそんなに情けない声で騒がないぞ。」
ウィルベールはそう言ってヒュッセルが纏っていた黒マントを奪い取る。襟にくっついている星と薔薇が組み合わさった紋章を見て、ウィルベールは目を細めた。
「聖星勲、あいつだけが持ってる王都軍総団長の証。レプリカじゃないな。・・・これを何処で手に入れた?」
ウィルベールがヒュッセルを踏みつけて尋ねる。胸部を強く圧迫され、彼はまともに呼吸が出来ていない。
「がっ・・・はっ・・・」
「何黙ってる。早く言え。」
ウィルベールは強烈な魔力を放ちながら威圧する。ヒュッセルはこの時、心から恐怖を覚えた。
パリ・・・パリッ・・・
ヒュッセルの顔に出来の悪い陶芸品のようなヒビが入り、崩れていく。顔が完全に崩れた時、ウィルベールは予想外の顔に少し驚いた。
「___魔族じゃ無いのか?」
ヒュッセルの顔の下に隠れていた男はニヤリと笑みを浮かべる。ウィルベールはてっきりオークやオークキングを率いていたという点から魔族が擬態しているとばかり思っていたが、まさか人間とは思っていなかった。・・・今日は奇妙なことがよく起こる。
「流石・・・八英雄の筆頭___『不撓のウィルベール』だな・・・噂以上の実力だ・・・」
「お前・・・何者だ?何処に所属している?誰の差し金だ?」
ウィルベールが淡々と問い詰める。するとその時、男の体が突如炎に包まれた。男は何処か勝ち誇った顔をウィルベールに見せつける。
「証拠を消すつもりか。」
ウィルベールは炎が男の頭を包み込む前に男の首を斬り落とす。男の首がゴロンゴロンと転がっていく。男の体は炎に焼かれ、灰と化して消えた。舞い上がる灰を手で払いながら、男の首の所へ向かう。
『何者だったんだ、アイツは。ヒュッセルのマントを持っているってことは王都軍に関係する者なのか?』
ウィルベールが足元に転がる男の首を前にして考え込んでいると、遠くから誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。
「お爺様ッ!」
ウィルベールが声のした方を振り向くと、レフィナがバックソードを右手に携えてこちらに走って来ていた。
「レフィナ、儂が帰って来るまで村から離れるなと言っただろ。」
「すみません・・・でもお爺様が心配で・・・」
「心配してくれるのはとても嬉しいが、役割を放棄するのは感心せんな。お前は休暇中であろうとも王都軍に所属する剣術士、個人の感情よりも民を守ることを優先しろと教えられた筈じゃないのか?」
ウィルベールはエヴァンに叱責する。レフィナは顔を俯け、申し訳なさそうな顔をする。
「・・・ごめんなさい・・・」
レフィナは小さな声でウィルベールに謝罪の言葉を述べた。ウィルベールは彼女の頭にそっと手を置いて優しく撫でる。
「そういう所、本当に母親そっくりだな。・・・あいつも俺の言う事聞かないことが多かったしな。」
彼女の頭を右手で撫でた後、左手で足元に転がっている男の髪を持って、彼女に見せる。
「レフィナ。一つ聞くが、この男を知ってるか?」
「え・・・ひっ!」
レフィナは目の前に差し出された男の生首を見て、少し後ろに下がる。それにちょっと顔色が悪くなったようにも見える。
「この男、ヒュッセルのマントを着ていた。あいつしか持っていない聖星勲をつけたマントをだ。もし王都軍の奴ならば、心当たりがあるのかと思ってな。」
「・・・」
「どうだ?知ってるか?」
彼女がまじまじとその生首を見る。少しの間の後、静かに口を開いた。
「___この方、私達第一師団の第三騎兵分隊隊長です!」
「名前は?」
「ロンベルです。ロンベル・アーディット隊長。でもロンベル隊長は擬態の能力などは持っていないとは思いますが・・・それと、ロンベル隊長率いる第三分隊は先月消息不明になっていたんです。」
「消息不明?理由は?」
「私も詳しくは存じませんが・・・ただ風の噂で聞いた話によると、定期連絡が途切れ、そのまま消息が分からなくなった、と。」
「他に知ってることはあるか?何の任務だったか、とかは?」
「いえ・・・私が知っているのはそれぐらいです・・・」
「そうか。・・・いや、今はそれだけの情報を教えてくれただけでも十分だ。助かった。」
ウィルベールは辺りを見渡す。炎の勢いは収まって来ていたが、周囲には村人達の死体が散乱していた。この感じだと___生存者は数名・・・最悪全滅しているかも知れない。
「生存者を探すぞ。床の下、壁の裏・・・隠れていそうなところを片っ端から当たるぞ。」
「はい!」
ウィルベールはロンベルの頭を持ったまま、レフィナを連れて生存者を探し始める。炎の勢いは収まりつつあるものの、黒煙が天を覆いつつあった。
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