上 下
35 / 43
はじまり

29

しおりを挟む

「今日は此処で野宿となりそうですね」
「腹減ったーー」




はあ。どうしよう。
俺の隣から聴こえてくるのは、2人の喋り声と、焚き火のパチパチと弾ける音
いつの間にか着せらた自分の服に、ベタつかない身体

ああ。どうしよう。
記憶を遡らなくても、ばっちりと覚えている

勝手に魔法を使い、勝手に魔力枯渇を起こし、ロワンに魔力を分けてもらい……
何故か勝手に催淫効果が顕れ、勝手に発情状態へと。
うん、ここまではまだ仕方ない。知らなかったから!魔力枯渇とか知らなかったから!

問題はその後
自分が気持ちよくなりたいが為に、淫にアルドを誘い、果てはロワンまで…
しかも一度ならず、何度も、何度も…何度も
その上俺はずっとマグロ。ただ寝てただけ、自分から懇願しておいて、ただただ気持ちよくしていただいただけで、俺は本当に何もしてない
尻だして、精子だして、アンアン言ってただけ!
そして、意識飛ばしただけ……

ええええ…ただのドクズじゃん。
2人とも呆れてるだろうな…
こ、こんな淫乱……アルドは性魔力に敵わなかったからヤっただけだろうし、ロワンはきっと優しさからだろう…優しいからロワン

これは、やっぱり起きると共に土下座?
土下座だよね?
よし、土下座しよう。
そして、お腹空いたって言ってるし美味しいご飯出そう。謝り倒そう…
正式にパーティー組む前にパーティー解散とか笑えないよ本当。笑えない…ここで捨てられたら詰む…


よし、それでは心を決めて
華麗に飛び起きて土下座をキメよう


「っすいまッわわーーー!」


「とっ、トウヤ?!?」
「なァにやってンだお前?」


「…ぐ、最上級の土下座??」
「ドゲザ…??」
「頭打っただろ?」


起き上がると同時に顔面から地面へと沈み込んだ俺と、そんな俺を見下ろす美形2人。
どうしてこうなった…

思ったより足腰に力が入らなかったからだ。ていうか全然入らない、身体痛い!なにこれ!なにこれ!股関節と腰が…!

しかも!!土下座文化無かった!異世界にはなかった!!無意味!!

地面に沈んだ俺の両脇を其々に抱えられ、起こしてもらい、そのまま焚き火の前へと座らされた。


「あの、ゴメンナサイ…」

「え、何がですか??」


「なんか…こう、欲情?発情?しちゃって…
何か色々、ヤっていただいて…スミマセンデシタ」
「俺は役得ってヤツだったと思ってっけど?」
「トウヤが謝る事なんて1つもないですよ。
それより、身体は大丈夫ですか?」



あ…うん、役得ね。俺の性魔力は美味しかったですかアルドさん。

天使の様な微笑みで、俺の手を取ったロワンは、身体の心配までしてくれる…どこまで優しいのだこのイケメンは!!
感動で少し目頭が熱くなる

身体は全然大丈夫じゃ無いけど、なんて言うか…これは、そう、自業自得だ。
俺の瞳を心配そうに覗き込むロワンに、強がって、大丈夫だと告げると、その顔は心配顔から忽ち困り顔へと変わっていく


「…トウヤ、嘘はダメですよ」
「明日も歩くんだ、しっかり回復しろ」


右隣で、痛む俺の腰を摩るロワン
左隣からはアルドが、ポーチから取り出したポーションを俺の膝の上へと転がした

なんだこの、至れり尽くせり感…
更に申し訳なさが加速していく
も、もうちよっと文句言うとか、雑に扱ってくれてもいいんですよ?
じゃないと、俺が居た堪れない…

でもアルドが言う通り、明日も歩くのでお礼と共にポーションを乾いた喉へと流し込んだ。
ん?明日も歩く?明日も……よ、よかった、パーティー解消の心配もなそう!

ポーションを飲み終わると同時、しゅんと眦を下げたロワンが俺へと向き直る、そして細く消え入りそうな声で言葉を続けた



「…緊急時だったとはいえ、私が軽率に貴方へ魔力を与えたせいで…申し訳ありません」


えっ、え?
俺今もしかして謝られてる?!なんで??

もしかして、俺があんな状態になったの、魔力を入れた自分の所為だと思ってる?
というか、魔力にも催淫効果あるの?

でも、あの時ロワンに魔力を貰ってなかったら…最悪の場合、待っていたのは死

死ぬより全然良いから、気にする事なんて無いのに!


「魔力譲渡でこんな副作用…
聞いた事ねぇけどなァ?今回は仕方ねえよ」


俺が頭の中でグルグルと考えている間、沈黙が続いた為か、俺より先にアルドが口を開いた。
しかも、まさかの、ロワンを庇う様な発言…
嘘だろ?アルドが?

も、もしかして俺が黙ってたから怒ってるとか思われた?
それはまずい!そんな事ないよロワン!
ただ、理解が追いついてないだけだから!


「ろ、ロワンは悪くないから!
むしろ、感謝してるくらいだから!気にしないで!ね?」
「……本当ですか?ありがとうございます」


パッと大輪の薔薇を咲かせたように表情を緩めたロワンが、目を細め長い睫毛を伏せて俺の手を握った。
頬は朱色に染め、安心し切った顔でニッコリと微笑むロワンの姿はとても美しく、少しドキドキとする


「…ですが、今後は軽率に噛み付かない様気をつけますね。貴方にどの様な効果が及ぶのか分かりかねませんので」
「あ?うん、そうしてくれると助かる?」


行為中にめちゃくちゃ噛まれた記憶があるが、アレはノーカウントなのだろうか?きっとそうなのだろう。
俺も魔力枯渇を起こさない様に最新の注意を払うようにしよう。暫くは絶対に魔法は使わない!!


「なァ、腹減ったんだけど?」


俺が決意を固めていると、低い声でアルドが呟いた
そうだった。忘れていた、謝罪も込めて沢山食べて頂こう!!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

双子攻略が難解すぎてもうやりたくない

はー
BL
※監禁、調教、ストーカーなどの表現があります。 22歳で死んでしまった俺はどうやら乙女ゲームの世界にストーカーとして転生したらしい。 脱ストーカーして少し遠くから傍観していたはずなのにこの双子は何で絡んでくるんだ!! ストーカーされてた双子×ストーカー辞めたストーカー(転生者)の話 ⭐︎登場人物⭐︎ 元ストーカーくん(転生者)佐藤翔  主人公 一宮桜  攻略対象1 東雲春馬  攻略対象2 早乙女夏樹  攻略対象3 如月雪成(双子兄)  攻略対象4 如月雪 (双子弟)  元ストーカーくんの兄   佐藤明

からっぽを満たせ

ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。 そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。 しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。 そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

僕を愛さないで

レモンサワー
BL
母が僕を庇って、死んでしまった時から僕の生活は一変した。 父も兄も温かい目じゃなく、冷たい目で僕を見る。 僕が母を殺した。だから恨まれるのは当然。 なのにどうして、君は母親殺しの僕を愛しいと言うの?どうして、僕を愛してくれるの? お願いだから僕を愛さないで。 だって、愛される喜びを知ってしまったら1人、孤独になった時耐えられないから。捨てられてしまった時、僕はきっと絶望してしまうから。 これは愛されなくなってしまった優しい少年が、少年のことを大事に思う人と出会い、とびきりに愛される物語。 ※R15に念の為に設定していますが主人公がキスをするぐらいです。

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

処理中です...