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「世話になったな。また近い内に必ず来る!」
「うん、ありがとな。近くに来た時は是非寄って」


雨が上がり、爽やかな空気が吹き込む中、ディーダに別れを告げた。
久々に人と触れ合ったお陰が気分が明るい

草原へと消えていくディーダに手を振った後、戦利品をテーブルの上へと並べる
砂糖、胡椒、大豆。それとオマケにとくれた短剣と本が1冊。
ローションとゴム、その他に木や石で作った食器数点と物々交換した

そう、待ちに待った砂糖!!!!
もうこれだけで食べたい。舐めたい!舐めようう!そうしよう。


「あまーーーーい!!」

最高。これだよこれ。
脳が活性化されている気がする!もっと食べたい…食べたいが!
少ししか無いから大切に使わなければ…
ウキウキしながら全て一度インベントリへと収納する
これで何が作れるかワクワクする!
そういえばおまけに貰った本は何の本なんだろう?読めるのだろうか?砂糖しか見て無くて忘れていた。
ふと気になって収納したばかりの本を取り出す。


《冒険者手引き》
冒険者の愛読書


冒険者が居る系の異世界だったかあー。
文字も普通に読めるようなので、一先ず軽く読んでみようか?と表紙を開くと同時
室内にノックの音が響いた

ディーダが忘れ物でもしたのだろうか?
ノックの音に短い返事をし、本を閉じて扉を開いた。



「……………どちら様?」


扉の先にいたのはディーダではない
彼よりも若い男が1人。黒一色の服に銀のプレートを胸に当てたその男は、眉間に皺を寄せている
褐色の肌。白い短髪から覗くアイスグレーの瞳にはどこか見覚えがあった


「…さっきの男は誰だ」


…誰、と言われましても。まずお前が誰だ
ぶっきら棒に言い放つその男に警戒心が芽生え、腰の後ろへと回した右手にインベントリから出した短剣を握り込む
ついさっき貰った短剣が早速役に立つ時が来たのか?


「おい、剣をしまえ」


何でどいつもこいつも見えるんですかね?
透視能力でも持ってるのか?
眉間に寄せていた皺が一層濃さを増し、アイスグレーの瞳が冷たく俺を見下ろした
この男が言うさっきの男、とはディーダの事か?なんだあいつ?お尋ね者だったとか?


「さっきの男は行商人…ときいた。
それよりお前は誰だ、此処に何しに来た」


後ろ手に握った短剣に力を込める
しまえと言われてしまう訳がない。こんな態度のデカい怪しい男に言われて、はい分かりました。と聞いてやれる程聞き分けは良くない


「……俺は……………
———冒険者だ。この辺りは俺の縄張りだ」



なんだその間!!絶対嘘じゃねぇかこの野郎!
縄張りってお前は犬か何かか?
それで言うならこの辺りはウチのポチの縄張りですけど?!
怪しすぎるので《鑑定》を使用

《ラルフレッド》
冒険者

の表示のみ。本当なのか??
それとも、人間を《鑑定》で見るには限界があるとか…?
ディーダの時も本人から申告された情報しか浮かび上がらなかった。


「お前はここに1人で住んでいるのか?」
「そうだが何か問題あるか?」

「……いや、この辺りはモンスターも出る。もし助けが必要な時は俺を呼べ。…ラルフレッドだ」
「それはご親切にどうも?…フユキだ」
「そうか。邪魔したな」


それだけ言うと、その男ラルフレッドは踵を返し、右側にある森の中へと姿を消していった。
…何だったんだあいつ。何しに来たんだ?
今日は訪問者が多いな…と思いながら本の前へと戻り、小さな椅子へと腰掛けた。

ああ、ソファが欲しい。ソファまではいかなくても、大きな椅子が欲しい。そうだロッキングチェアを作ろう!そうしよう
だが今日はもうなんだか疲れた。
短剣を収納し、机に突っ伏しながらペラペラと本を捲る
冒険者ねえ…?
自称冒険者のラルフレッドと言うあの男、森へと入って行ったが、あの森は行き止まりだ
まさか森の中に住んでたりしないよな…?今まで出会した事もないし…
小屋から森の行き止まりまでは、半日もあれば往復できる距離だ。あの森はそんなに広くない
まさかのご近所さん?嫌だ、あんな無愛想な男


そういえば飯食ってない、と思うと同時、ギギギと扉が開いた
大好きな白いモフモフ


「ポチーーー!!お帰りー!!
聞いてくれよ、今日はすっごい疲れたんだ!」


まだ昼過ぎだというのに、すっごい疲れたんだ!とその白いモフモフへと抱きついた。

はあ。最高の癒しだ
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