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あの日から約1週間

俺は無事に生きている。
小屋周りの探索もほぼほぼ終え、新しい素材も大量に手に入れた。



真っ暗な空に散りばめられた星を見上げる
古ぼけた小屋の裏で、小屋を背に俺は待っているのだ、あるものを。


あの後大きな犬は、瞬く間に元気になり、俺が魚を食べ終わるのと同時に砂浜を駆け、あっという間に崖の上へと姿を消してしまった
何とも言えぬ物悲しさに泣きそうになったのを今でも覚えている
その日は、陽が暮れるまで何匹か魚をとり、散々迷った挙句、古びた小屋を第一拠点にする事を決め、小屋の中に落ちてた落ち葉を片付け、魔素水で床を綺麗にし、小屋の硬い床で夜を明かした。

次の日、朝日と共に目が覚めて、小屋の扉を開くと、そこには何故か色とりどりの果物と、絶命した鳥が大きな籠一杯に入れられ置かれていた。
《鑑定》で見てみると、それら全ては食用に適されていたので、怪しみながらも有り難くいただく事にした。
なお鳥は《独創魔法》を使う事によって、可食部だけ取り出す事に成功した

そしてまた次の日、扉の前には野菜の様なものと、絶命した兎のような獣

そしてまた翌日
果実と、信じられないほど大きな鳥

そして翌日
野菜と、熊の様な大きな獣


果実は主に、俺が森で獲った木苺の様なものと、林檎のようなもの。他に俺が森で見かけた事ない葡萄やオレンジもあった。
野菜は殆どが葉物野菜。欲を言うとトマトや根菜類が欲しい…

だが、大きな鳥と大きな獣のおかげで、俺はフカフカの布団を作る事に成功した
方法はというと、まずインベントリに全てを収納
次に《独創魔法》で分解し、毛皮と羽毛を魔素水で洗ったのち、もう一度《独創魔法》を布団を創り出した。
魔素水で洗ったおかげで、においは全くない
寝心地も抜群だ
なお、この手順は《鑑定》さんの提案である


他にも色々作った、沢山探索もできた。
何もこれも、全ては毎日安定して供給される食料のおかげだ。これのお陰で俺は、飢え死ぬ心配をせず安心して探索だけに没頭する事ができた


夜寝る前には無いのに、朝早くには必ず扉の前にある大量の食料
だいたい察しは付いている


真っ暗闇の中きらめく星々を見上げながら、ひたすら息を殺す

目的のものが現れるまで、暇を潰そうと、この1週間の事を頭の中で整理していく

小屋の左手に広がる草原は、何処まで草原で、朝から日暮れまで歩いたが何も見つからなかった為、それ以上進むのは断念した
小屋の右手側に広がるのは森。こちらは沢山いい素材がとれるので重宝している。奥まで進むと、見上げるほど巨大な岩があり行き止まりだ。恐らく魔素水のあるトンネルと繋がっている岩では無いだろうか?
トンネルの先は、正直怖いので行くのはやめた。トンネルよりこちら側で生活できているので、行く必要は無い


《独創魔法》もだいぶ使いこなせるようになった
おかげで小屋の中は少し片付き、生活感が感じられるようになりつつある。ベッド、テーブルセット…と最低限の物は作った

この1週間で俺が作った物の中でいうと、最高傑作は恐らくローションだと思う
本当に、本当に、くだらない思いつきだった
海で海藻を見つけて、そういえば…ローションの原料って海藻だったな。から始まり、傷薬として使ったアエの葉に、そういえば潤滑剤としても使われると表記があったな。と思い出し
それならその2つで、切れ痔でも痛く無いローションが出来るのでは?!!と考えついた時にはもう完成していた。完璧なローションが。
傷薬としての作用もある、実用的なローションだ
実に有意義で、孤独溢れる1週間だった



ガサ、と静寂を何かが切り裂く
息を殺しながら頭を出すと、視界に入る白いモフモフ
今まさに、大きな籠を扉の前へと置くところだ

絶対に逃さない。ペットにしてやる…!!!
小屋の陰から素早く飛び出すと同時、そのモフモフ目掛けて突っ込んでいた。
強い意志で白い毛を掴み握りしめる

小さく唸り声が聞こえたかと思うと、次の瞬間何がどうなったのか視界がグルリとまわり、地面の上へと押し倒されていた
肩にかかるのは重みと、柔らかい肉球
その白い前足に押さえつけられながらも、俺はしっかりとその首へと抱きついた



「俺の家族になって!!!!頼む!!」
「…わふっ?」


耳元で少し間の抜けた鳴き声が聞こえた。




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