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しおりを挟む最悪な週末だ
人が騒めく繁華街で空を見上げたが、星一つ見えやしない。
明日は日曜日
1週間ぶりの休みだ。と胸を高鳴らせる俺に今朝、同棲中の彼氏から突然告げられた「別れ」の言葉
付き合って約2年、正直いつかこんな日が来るのでは、と心のどこかで思っていた。
…思ってはいたが
一つ想定外だったのは
「今月中には出て行ってほしい」という言葉
玄関で革靴を履きながら、笑顔で「分かった」と今朝は言った。
言ったが、今頭の中は怒りで溢れていた
「…はあ、」
一つ、深い溜息を吐きコンビニで買った缶ビールを煽った。
「ふざけんじゃねえ!そのアパートの名義は俺なんだよ!くそっ」
空になったビールの缶をグシャリと握り潰し、乱暴にゴミ箱へと投げ捨てる
早く帰って話をしなければ、と思う反面、足は一向に家路へと向かわない。いや、向かいたくない
今朝は出なかった怒りの言葉が沸々と湧き上がる
別れてくれ。とは言うけれど、そもそも俺たちが本当に付き合っていたかも怪しいものだ。
本人が別れると言っているのだから、付き合ってる自覚はあったのだろう…きっと
2年付き合ってキスの一つも無かったけどな!!!!
そりゃ毎日終電で帰る俺だって少しくらい悪かったかもしれないが、そもそも!そうだ、そもそも、アパートの名義は俺で、支払いも俺で、更に言うなら光熱費も食費も…生活費は全部俺。
お前はただのヒモ男だったじゃねぇか、ちくしょう!!!
「くそ!!!」
人目を憚らず悪態をつきしゃがみ込む
本当やってられない。好きだから、好きで養っていたのだ。あいつがそれで幸せなら、俺も幸せだった。
でも、あいつが他の誰かと幸せになる為に尽くしていたのではない
涙目でスマホを開き、昼休憩の時にきたメッセージをもう一度見る
何度見ても変わらない、たった一行の文
「結婚することにした」
「くそ、ふざけんなっ…」
涙が落ちないように空を仰ぐ。雲一つない真っ暗な空。煌びやかな街明かりのせいで星は見当たらない
帰ろう。いつまでもこうしているわけにもいかない。
怒りは鎮まらないが、俺たちはもう終わったのだ、そもそも始まってすらいなかったかもしれない。
どんなに怒鳴り散らしたって、変わる事が無いくらい俺には分かる。
あいつにとって俺は、都合のいい人間だったのだ
これからの事を考えよう。
そうだ、音楽でも聴きながら帰ろう。少しは気が紛れる
鞄から取り出したイヤホンを耳へと嵌め、深呼吸をして気合を入れた
酒で少し覚束ない足で立ち上がり前を向く
たまには普段聴かないような曲でも聞いてみようと思い、スマホを操作しながら重たい足を踏み出した
良くわからない流行りの最新曲を再生しながら歩みを進める
今はこんな曲が流行ってるのか…なんてじじ臭い事を考えながら、曲に耳を傾けた
普段俺が聞く音楽とは全く違ったジャンル
歌詞も個性的で、こんな言葉選びがあるのか…と感心さえ覚える
とても独特で共感こそは出来ないが、ほんの少し自分の世界観が広がった気さえした
こういうの作れる人、なんていうんだっけ…とても独特で…そう
「……独創的な…」
とても眩い光が、煌めいた気がした。
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