女装をしたら、えらい目に遭わされました

葵井しいな

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 「バッカじゃねーの。付き合ってられるか」

 女装に興味があるとかなにを根拠に言ってるんだ。
 呆れたように首を振りつつ、部屋を後にしようとする。

 が、逃がさないとばかりに、肩を思いっきり掴まれた。
 とっさに振り返ると、亜里沙の勝気そうな目が爛爛と輝いている。
 まるで、おもちゃを見つけた子供のような感じだ。

 「早く着なさい」
 「い、嫌に決まってるだろ!」
 「着なさい」
 「いだだだだ!? やめろクソ亜里沙!」
 「……もし、このまま部屋を出て行ったら、お母さんに『麻耶があたしの制服でオナニーしてた』って泣きつくから」
 「はぁ!?」

 ふざっけんなよ、冤罪もいいとこじゃねーか!

 とはいえこのまま出て行ったらこの女、マジでやりかねない。
 母さんは俺とこのクソ姉貴の話だったら、クソ姉貴の話を信用してしまう側の人間だ。
 近場の偏差値低めの高校に通っている俺と、偏差値高めの有名女子高に通っている亜里沙。
 なんせ出来が違うのだから。
 
 「……分かったよ。着りゃいいんだろ、着れば!」

 しばらくして、俺は肩を落としながら言った。
 逃げたくても逃げられないのだから、諦めるしかない。

 「ふん、最初からそう言えばいいのよ。ほら、さっさと着替えて」
 「ぐっ……!」

 亜里沙の見つめる中、俺は着ていた服を脱ぎ、制服に手を伸ばす。
 頭から被り、袖を通していくとまるで姉貴に抱きしめられているかのような錯覚を覚えた。
 そんな風にされたこと、生まれてから一度だってないけどな。
 
 「スカートの穿き方、分かるわよね?」
 「まぁ、なんとなくは」

 腰まで上げて、フックで留める。
 足元がスース―してなんだか落ち着かない。

 「ほら、着替えたぞ。これでいいんだよな」
 「……」

 姉貴は無言でこちらを見つめている。
 なんだ? 似合わなさ過ぎて声も出ないってか?

 ま、当たり前だろうけど。
 俺男だし。

 「鏡、見てみなさい。ビックリすると思うわよ」
 「へ?」

 呆けているのかと思ったら、急にそんなことを言われたのでこっちは面食らってしまった。
 亜里沙の目はいたって真剣で、おちょくってるようには見えない。
 
 どうせキモい女装男が映るだけだろ、と思いつつも、姿見の前まで移動してみる。

 「……へぁ?」

 確かに姉貴の言う通り、俺は驚いた。
 驚き過ぎて、開いた口が塞がらない。

 なんせそこには、恥ずかしそうに顔を赤らめたがいたのだから。
 
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