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短編「悪役令嬢はお菓子作りに夢中です」
悪役令嬢はお菓子作りに夢中です
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「アリアーナ・ロゼリウスお前との婚約は解消させてもらう!」
そう高らかに宣言するのはわたくしの婚約者でこのクラリス王国の第一王子であり王太子でもあるクリス・リア・クラリス殿下、その傍らにはおびえた表情でクリス殿下に寄り添っているスバル・キャメロン男爵令嬢。
そんな二人を見つめながらとうとうこの時がきてしまったかとため息がでそうになる。
「・・・・クリス様、おっしゃっている意味がわかりません。わたくしはどうして婚約破棄を言い渡されているのでしょうか?」
場所は学園の中庭、生徒もまばらだがこちらを伺うように見ている。
わたくしは、やってもやっても終わらない正妃教育の課題を少しでもすすめるために山のような本を読んだあとに休憩として趣味で手作りしているお菓子と紅茶で一息ついていたところである。
しかし、そんなことはお構いなしという雰囲気で、クリスはスバルの肩を強く抱きしめ、わたくしを思い切りにらみつけながら言葉を続ける。
「お前に名前など呼ばれたくない!・・・分からないとは言わせないぞ!これまでスバルにしてきた数々のしうち!嫌がらせ!それは、将来正妃になるにふさわしいとは到底思えん!」
ちらり、とテーブルの半分を埋め尽くす正妃教育のための本を見て、またため息がでそうになるが我慢する。
「・・・わたくしは、そんなことしておりません」
本当に身に覚えがまったくなかった。
なぜならこうならないように日頃からスバルには近づくこともしていなかったのでいじめようがない。
なにより毎日の正妃教育の多さにそんな暇はぜんぜんなかった。
それに少しでも時間があればお菓子を作っていた。
貴族のそれも公爵家の令嬢としてはあまり褒められた趣味ではないが、昔からお菓子を作るのが好きだったのだからしょうがない。
これは私の前世からの趣味であり仕事でもあった。ちなみに現在も前世から知識を生かし自分が食べたいお菓子を広めるためにお菓子のブランドを立ち上げ事業を起こしていたりする。
もちろんわたくしがこういったことをしているのは家族しか知らない。
婚約者として月に一度会うお茶会で出るお菓子がわたくしの手作りだなんてこの男は知らないだろう。
お菓子に興味も持たないこの男に言う気など起きなかったというのもある。
ああ・・・こんな無駄な時間を送るくらいなら王太子の婚約者だの正妃教育だの今までとられた時間を返してほしい。
そして係わりをもたなくてもこうなってしまうんだなとスバルへ視線をむける。するとわかりやすいくらいビクついてクリスの後ろへ隠れてしまった。
・・・なんてあざというんだろう。
そう思っていると
「しらを切るつもりか!」
「そうは言われましても・・・本当にそんなことしておりませんし、何か証拠でもあるのですか?」
「スバルがそう言っている!・・・ほかに疑う余地があるのか!」
そのあまりのいいように思わず・・・断罪イベントついにきたー!とは思うけど、この王子・・・ゲームをしていたとき以上に馬鹿になってない?
好きな子の言葉をうのみに特に証拠ないって本当に馬鹿なのかしら?
ほっておいたわたくしが悪いのかしら・・・?そんなことないとは思いたいけど、だってクリスってわたくしの推しじゃじゃなかったのよね。
「しかし、本当にしていないのです・・・クリス様・・・・殿下はわたくしの言葉は信じてはくれないのですね」
この馬鹿本当どうしたらいいのかしら・・・というか、もうどうしようもないよね?という悲しみが隠し切れず伏し目がちにそう言うと
「いまさらしおらしくしても遅い!スバルは殺されかけたのだぞ!そんなやつのいうことなど信じれるはずがないだろうが!」
また恐ろしい剣幕で言い募ってくる。
そしてよくよく見るとスバルの手首には包帯が巻かれていた。
「・・・殺されかけた?」
言葉の意味がわからず聞きなおす。
「ふん!すでに賊は捕らえておる!そのものが言っておったのだ!お前に依頼されたとな!」
「・・・なっ!」
わたくしはしていない・・・そうならないように行動はしてきた。だって断罪されるのを知っていたから。
わたくしには前世の記憶がある。5歳のころに公爵邸で開かれたパーティのお菓子をつまみ食いして、そのあまりの不味さに驚いたて寝込んでしまったのだ。
普段デザートとして出るお菓子類はまぁ許せる範囲だったのだ、なぜかもっと美味しいお菓子を知っている気がしたけれど家庭で出るお菓子だものね。
こんなものよね・・一応公爵家だと一流の料理人が作ってるけどきっとお菓子は専門外なのね・・・と思っていた。
ただ、パーティに出ていたお菓子は許せなかった。こんな未完成もいいところのお菓子を人様にお出しするだなんて・・・と、
『・・わたくしが!わたくしならもっと美味しいお菓子を作れますのよ!』
と、しばらく寝込んだあとそう叫びながら飛び起きたわたくしを両親や兄弟たちが心配そうにしていたのは少し恥ずかしい思い出である。
しかし、その時なぜわたくしなら作れると思ってしまったのか、起きたばかりのぼんやりとした頭がすこしずつすっきりして思い出してしまった。
わたくしが前世で、こことはまったく違った世界で主に洋菓子といわれるお菓子を作る仕事をしてながら働いていたこと。たまの休みには友人がひどく薦めてきたので【魔法学園と秘密の愛の花園】という少しイタイタイトルの乙女ゲームをしていたこと。
魔法学園で魔法を学びつつ少し癖のある攻略対象たちと恋愛をしていくという内容だった。もちろんヒロインはスバル、クリスも攻略対象の一人だった。
クリスルートでそれを邪魔する位置づけにいたのが悪役令嬢のわたくしアリアーナ・ロゼリウスだった。
ちなみに少し俺様の入った残念な感じがいいという友人は推しがクリスだった。
「クリスちょっと馬鹿っぽいんだけどかわいいんだよね!だからこそアリアーナまじで邪魔!なんでこいつこんなにわがままなの?クリスかわいそう!ほんとヒロインちゃんがんばれ~」
と言っていたな・・・そしてわたくしがそのアリアーナになってしまっているな・・・と、
「なんで!?」
思わずそう叫ばずにはいられなかった。
その時にはすでに政略でクリスと婚約しており、自分の力だけでは婚約者を辞めることができなかった。
なのでそこへは文句をつけず、できる範囲で誠意に接しようと正妃教育もがんばった。
もしかしら未来にあのゲームのように婚約破棄されてしまうかもしれないが、それはヒロインにかかわらなければ大丈夫だろうと甘い考えを持っていた。
でも俺様で少し頭が残念なクリスとのなかを深める気が起きなかったのだ、お父様も国王陛下もわたくしがその手綱を握ればいいとおっしゃってましたしそこまで気にしていなかったが今の現状はそのあたりをなぁなぁにしてきた結果かも知れない。
だって、推しでもない王子と婚約して、したくもない正妃教育をして、わたくし何のために生まれてきたのって思ってしまいますわよね?!
そんなわけで、ほかの取れる時間はすべてわたくしが食べたいと思う前世で作っていたお菓子の再現に費やした。
この世界には魔法なんてすばらしいものがあり、わたくしは転生者としての日本で生きてきた知識のおかげか、魔法が得意だった。
本来なら魔法が正しく使えるようになるために入る学園であり、そこで初めて適正を調べ、いろいろとできるようになるのだが、前世の記憶を思い出したわたくしはゲームの中で使っていた魔法を試しに使ってみたのである。するとどうしたことかできてしまったのである。
それも本来なら適正のある属性特化または数個の属性を持っているだけでエリートとされ王宮魔道士になれる世界で火を出すことや水を出すだけでなくこの世界の常識にない、ものを収納する魔法や いろいろな属性を掛け合わせた複合魔法も使えてしまったのである。
何よりわたくしが喜んだのは氷が出せたことである、この世界は魔法があるせいか科学という概念がなく、魔法も精霊の力を借りているなど言われていた。
ものが燃える原理を知っていればそれだけで火の威力は上がるし、やれることの範囲はひろがるのに、もともとの適正にあった範囲でしかつかわないのでつよくなりようがない、そんななかでの魔法応用である。
これはお菓子を作るうえでとても重宝したのである。
火や風の魔法で食べ物を乾燥させたり、氷魔法で冷やしたりしてこの世界にはないアイスクリームも作り上げた。
最初は家族も料理場への出入りを嫌がっていたが、出来上がるお菓子を振舞ったところ喜んでくれ、そしてブランドを立ち上げ美味しいお菓子を世界に広めたいというわたくしの考えを応援してくれた。
そんな家族のあたたかさにむくいるためにも、嫌だが嫌と言えず自分なりに頑張ってこたえようとしてしていたクリスの婚約者と言う立場。ありえない量の課題が出る王妃教育。それが、すべて無駄になったのが、今である。
ふざけるな!
と言ってやりたい。
ちなみにゲームのアリアーナは典型的なわがままお嬢様でクリスにぞっこんでそんなクリスと仲を深めていくヒロインに嫉妬し嫌がらせも本当にしていた。
その上、スバルの殺害計画を立てていたことがばれて断罪されるのである。
王弟がお父様のため一族すべてを断罪するわけにいもいかずわがままの過ぎたアリアーナは勘当され修道院へ送られる最中、がけから落ちて死ぬのである。
正直魔法で空も飛べるので崖から落ちてのくだりは心配していなかった。
それに魔法でわたくしにかなうものはいない、前世の記憶もあるので一人でも生きていける。いじめもしていなければ、係わり合いをもっていないのだ。殺人計画を立てているなど思われようがないと思っていたが、これである。
強制力というやつだろうか?
本当に馬鹿馬鹿しいと我慢していたため息が思わずでてしまった。
「・・・はぁ、では殿下、破棄は受け入れます。わたくしもう帰ってもよろしいですか?」
その態度が気に入らなかったのかクリスはさらに怒る。
「な・・・!何だ、その態度は!」
「ですが殿下、あなた様に婚約を破棄された以上、そのことをお父様や国王陛下にお伝えしなくてはなりません」
「この犯罪者め!ただで帰すと思っているのか!」
しかしこのいつもの馬鹿に加えて恋愛馬鹿になってしまっているクリスに話は通じずさらにため息がでるのだった。
「ふぅ・・・そうは言われましてもわたくし身に覚えがありませんし、何よりスバルさんを殺す動機がありませんもの」
そんな態度のわたくしが気に入らなかったのかクリスはさらにとんちんかんなことを言い出した。
「この俺がスバルに惚れている!お前は嫉妬した!そうであろう!」
そしてそれが正解であるように威張り散らしている、あきれるばかりである。
「なぜですか?」
「ん?」
だから言ってやることにしたのだ。
「なぜわたくしが嫉妬しなければいけないのでしょうか?」
「え?」
いい加減、我慢の限界だった。
「わたくし、クリス殿下をお慕いしておりませんもの」
「え?」
クリス殿下は目を丸くしてこちらを見ている、後ろに隠れているスバルもだ。
「スバルさんと並んで歩いているところはよく見かけましたが、正直どうでもよかったのでほっておきました。スバルさんと言葉を交わしたこともありません」
「は・・・?」
クリスはわたくしの言葉が信じられないのかわたくしとスバルを交互に見ている。
「わたくしと殿下の婚約は政略でしょう?決まってしまっていたものはしょうがないと今まで我慢してきました。正直したくもない正妃教育もがんばりました」
「・・・・・・」
クリスはわけがわからないと言う顔をしている。
スバルは滝のように汗をかいていてる。
「別に愛がないのはよかったのです・・・それで国が回るなら、スバルさんが好きだと言うのなら好きにすればいいと思っていましたもの」
「・・・・・・」
「でも殿下、知っておりましたか?わたくしがどんなことを好ましく思っているのかを。そして正妃教育がわたくしの一日の大半を占めていて、好きなことは少ししかできない状況を」
今まで殿下に見せたことがない心からの微笑みをみせると、殿下はさらに目を見開く。
「このテーブルに置かれている本の山・・・何だと思っていますの?正妃教育の本ですわ。してもしても終わらない、毎日出る課題という苦行をどうして我慢していたかと言えば、お父様やお母様たち家族や国王陛下・・・おじ様がわたくしを愛してくれていたからですわ。それにわたくしのお菓子を美味しいと買ってくださるこの国の国民たちが大好きだからですわ。それが、この国のためになるならばわたくし一人がわがままを言うなんて馬鹿なことを・・・と、思っておりました。今も思っております。」
「・・・・・・・」
クリスは何も言わずこちらを見ている。そのほほが少し赤いような気もするが無視をする。
「ですが、わたくしのその幸せを奪うとおっしゃるのなら・・・我慢する必要ないですわよね?」
今までで一番の笑顔になっていたと思う。
「・・・・・・・」
クリスは言葉もなくだまったままだった。
「ですので婚約破棄は喜んでお受けします。お二人で仲良くしてくださいまし ではごきげんよう」
そう言い踵を返したところで、一人の愉快そうな男と目があった。
どうやらこの断罪と言う名の茶番を見ていたギャラリーの中にいたらしい。
「・・・・・ルイ様、見ていらしたのね・・・趣味が悪いわ」
「いやぁ、兄上が面白いことしているなと思ってさ」
そう言って近づいてくるのはルイス・リア・クラリス殿下。
クリスの弟でありわたくしと同い年のこの王国の第二王子だった。
ちなみに攻略対象者の一人だったりもする。少し腹黒なところもあるが民に優しくたまに素性を隠し王都にお忍びに行くような自由な人だ。
その普段見せない優しいところとスチルで美味しそうにお菓子を食べている姿があり、前世のわたくしの推しでもあった。
「もう、終わりましたわ」
「うん、終わったね~これで兄上は失脚だ、ははっ」
そう言って笑うルイスの目は笑ってはいなかった。
「笑えませんわよ・・・・まったく・・・ではわたくしは失礼させていただきます」
それが少し怖かったので目線をそらしながら逃げようとするがルイスに手を取られてしまった。
けっして強いわけではないが振りほどけなった。
「・・・・逃がさないよ、やっと兄上のものじゃなくなったんだ」
「ルイ様・・・はなしてください 帰れないじゃないですか」
「手は離さないよ。父上のところへ行くんだろ?このまま一緒に行こう」
そう言って笑うルイスの笑顔は先ほどとは違い優しくて思わず顔が赤くなる。
「なっ・・・はなしてください」
「ふふ・・・アリアは相変わらずかわいいね」
「からかわないでください!」
「からかってなんかないってば、いつも言ってるじゃないかアリアはかわいい、ずっと君のお菓子を食べていたい、兄上には勿体ないってね」
その言葉にさらに顔が赤くなる。
そんなやりとりをしていると、先ほどまでなぜか少し赤面していたクリスがまた恐ろしく不機嫌な顔に戻っていた。
「おい!こちらを無視するな!それにルイス!なぜお前がそんなにアリアーナと親しげなんだ!愛称何ぞで呼びあいおって!俺の婚約者だぞ!」
そのあまりな内容にあきれているとルイスが目を細めてクリスを睨んでいた。
「・・・それは先ほど兄上が破棄したではありませんか」
普段見ない弟のその表情にクリスはいいよどむ。
「・・・いや、それは」
「それに兄上知っておりましたか?アクアマリンのお菓子はもうこの国にはなくてはならないものになっているって。
・・・あの美味しいお菓子が二度とたべられなくなりますよ?」
アクアマリンそれはアリアーナが手がけているお菓子のブランドであり、王国中に店舗を持ち、王都にある本店は毎日行列ができ、他国からもこの国のお菓子はすばらしいと言わしめ、今では国益にも影響を与え、新作が発表されるとなれば世界中の注目が集まるほどになっている。しかしクリスは甘いものがあまり好きではなく、アリアーナとのお茶会の時にテーブルに並んでいたり、スバルとのデートで店舗へお忍びに行ったり、世界的にも有名なので存在自体は知っていたが、どうしてルイスが今その話を出したのか分からずクリスはルイスの次の言葉を待つことにした。
「・・・・・・・・・・どういうことですか!」
その沈黙を破ったのは以外にもスバルだった。
クリスのことを押しのけアリアーナたちの元までつめよる。
「アクアマリンのお菓子が食べられなくなるってどういうことですか!わたしあの美味しいお菓子の大ファンなんですよ!」
思わずその剣幕に・・・クリスは驚き、ルイスはあきれ、わたくしは笑い出してしまった。
「ふ・・・くすくす、ふふ」
「・・・アリアーナ」
その顔を見てまたクリスが少しほほをそめ呆然とこちらを見ているが無視する。
「スバルさん・・・ありがとうございます、そう言っていただけてうれしいですわ」
そんないきなり笑い出したわたくしに意味が分からないという顔をするスバル。
「アリアーナ様?・・・にお礼を言われるようなことは・・・」
「いえ、アクアマリンはわたくしの作ったお菓子を売るブランド、わたくしのお菓子をほめてくださりありがとうございます」
そう言って微笑めば、スバルは息をのみ先ほどまで震えていた顔を今度は真っ青にさせていた。
「え?そんな・・・アクアマリンのお菓子はアリアーナ様が作ったお菓子?」
「そうですわ・・・昔からお菓子を作るのが大好きでした。作ったお菓子を人に食べてもらうのも王妃教育以外の時間はお菓子を作っておりました。
だから美味しいと大ファンと言ってくださってうれしかったですわ」
さらに続くわたくしの言葉にとうとうスバルは泣き出してしまった。
「わ・・わたしなんてことを・・・アクアマリンはわたしの・・・」
もともと庶子だったスバル、母親は昔男爵邸で働いていたが男爵のお手つきになり夫人に追い出されてしまいその後妊娠が発覚した。
女でひとつでスバルを育てたのは本当に大変だったと思う。
親子二人で質素に暮らしていたのだが、はやり病で母が亡くしてしまい天涯孤独になってしまう、ちょうどはやり病で妻と息子をなくした男爵はスバルを見つけ出し引きとったのである。
父親が憎かったわけではない、母を助けてくれなかったことは許せないが、親子二人の生活は別に不幸ではなかったし、今不自由なくすごせているのも引きとってくれているからこそである。
ただ、そんな幸せな母との生活の中にある大切な思い出のひとつにアクアマリンのお菓子があった。
アクアマリンは”すべての人に美味しいお菓子をそしてお菓子で幸せのひと時を”をコンセプトにしており、貴族しか買えない高級なものから、庶民でも買える安価なものまでいろいろ取り揃えられていた。
貧乏な暮らしで毎日食べたりはできなかったが、少し贅沢をする時に買ったり、貯めたお小遣いで母への誕生日プレゼントで買ったお菓子を母と笑いあって食べた味が今でも忘れられない。
アクアマリンのお菓子はスバルの母との思い出であり、幸福だった過去の象徴だった。
「わたし・・・わたし・・・そんな、アリアーナ様があのお菓子を作ってくださってただなんて・・・」
真っ青な顔からあふれんばかりの涙を流しすスバルのほほにそっと触れる。
「スバルさん泣かないでください・・・お菓子は人を悲しい気もちにさせるものではありませんわ」
しかしその行動がさらにスバルの涙を助長させた。
「アリアーナ様!・・わたし、わたしあなたが憎かったんです!何でももってるあなたが!」
「スバルさん・・・」
「学園へ来て王太子の婚約者のあなたがまぶしかった・・・わたしは、庶子で、何ももってなくて・・それがくやしかった」
涙はとまることなくスバルはさらに言葉を続ける。
「だから、少しでも困ればいいと思ったの!・・・クリス様に言い寄って嫌な顔ひとつでもされればすぐにやめるつもりだった!でも、どんなにしても、こちらの事を気にする様子もなくて、わたしもどんどん後に引けなくなって・・・どんどん惨めな気持ちになっていって。ごめ、ごめんなさい アリアーナ様ごめんなさいっ」
「いいんですよスバルさん・・・気持ちはわかります。ほしいものが手に入らないって本当に嫌で、我慢なりませんもの」
そうって微笑めばスバルは大きな目に涙をためながら目を見開きわたくしを見ていた。
「ふふ・・謝罪を受け入れます。断罪されそうになったことは少し腹がたちましたが、おかげでクリス殿下と婚約破棄できましたもの。それにわたくし、わたくしのお菓子を好きな人を嫌いにはなりませんわ」
それはわたくしのお菓子を好きじゃないクリスのことなんて好きでもなんでもないという気持ちをこめての言葉だった。
もともとクリスにちょっかいをかけていたスバルについてはなんとも思っていなかった。
ヒロインちゃんがんばれ!とさえ思っていたし、わたくしのお菓子を好きだと大ファンだと言ってくれるこの子への高感度はむしろ前より増している。
「アリアーナ様ごめんなさい・・・っ・・・ありがとうございっ・・・ます、アクアマリンのお菓子・・・大好きですぅ・・・うぐぅ・・・う うわーーーーん ごめんなさいーーー」
「また、お菓子食べてくださいね・・・今度作って来ますから一緒に食べましょう?」
「・・・・・・アリアーナ様!!!」
とうとうその場に崩れ落ちさらに泣きじゃくるスバルを横目にクリスはわなわなと振るえながら叫ぶ。
「では!・・・俺を愛していると言ったのは嘘か!」
「言った覚えもありませんし、今後言うつもりはありません。わたくしは他に好きなことがございます。殿下のために時間をさくことはもうしたくありません」
「なっ・・・!」
怒り顔のクリスの相手は面倒だ、もういっそ瞬間移動でこの場を離れ王宮の国王陛下の元か、家に帰ってしまおうかと考えていたら
「・・・逃がさないって言ってるでしょ?」
ルイスに握られていた手の力が少し強まった。
「ルイ様・・・」
「アリア・・・君のお菓子を大好きな人を君は嫌いにはならないんだろう?」
そう言って笑うルイスのとてもいい笑顔に腹黒さを感じつつ、また赤面してしまう。
「知ってるよ?・・・・美味しそうに食べる人の顔見るの好きでしょ?僕へお菓子を振舞って僕が食べている時が一番かわいい顔してるんだよ?」
「なっ・・・!」
その言葉にさらに顔が赤くなる。
だってしょうがないじゃない。
推しの美味しそうにお菓子を食べる姿が目の前にあるんだもの!
婚約者の弟という絶対に結ばれないこの人が好きでしょうがなかったんだもの
だから、少ない自分の時間でお菓子を作り、家族へとは別におじ様へ何て言い訳を見つけてルイスにもお菓子を渡していた。その時の笑顔を見るのが本当に好きだった。
せめて結ばれないのならこの笑顔を心にとどめておこうとしていた。
あきらめようとしていた。
思わず目じりに涙がたまる。
「・・・・泣かないで、僕はアリア、君の作ったお菓子ももちろん好きだけど、僕がお菓子を食べている時に見せる君のかわいい笑顔が大好きなんだ。ずっと好きだった」
そう言ってわたくしの涙をぬぐいながら片膝をつき、手にキスをした。
そのあまりの言動に言葉をなくしていると
「ずっと兄上に遠慮していた。このかわいい人は兄上の婚約者、いつか僕の義姉上になる人だから好きになっちゃいけないって、でも無理だった。君はかわいすぎる!だからこの気持ちは永遠に隠していくつもりだったんだよ?でも、もう遠慮しない。兄上がいらないと言うのなら僕がもらう・・・アリア、僕の愛しい人、ずっと僕と一緒にいてください。そしてできるならずっと僕にお菓子を作り続けて君の幸せそうな姿を僕に見せて?」
そう言って微笑みを浮かべるルイスの顔を呆然と見ているしかできない。
顔は真っ赤だし、涙はぬぐってもらったのにまたあふれそうになる。
しょうがない好きな人に好きと言われたのだ。
今まで我慢していたものがあふれ、言葉がとまらない。
「・・・・はい、わたくしもずっとルイ様をお慕いしておりました・・・ルイ様のお菓子を食べる姿が大す・・っ!」
そしていい終わる前に抱きしめられていた
「アリア!・・・アリア!ああ、それは本当なんだね!嘘と言ってももう逃がしてあげないよ!こんなにうれしいことはない!」
「ル・・ルイ様!・・・っ」
あまりの恥ずかしさにわたくしはそのまま気を失ってしまった。
次に目が覚めたのは王宮の客間の一室で、わたくしのことを心配してつらそうな顔をしているルイスと慌てて駆けつけた家族、国王陛下に正妃、そこにクリスの姿はなかった。
「アリアーナ愚息がすまないことをした・・・」
陛下はとても申し訳なさそうな顔で王妃とともに頭を下げてきた。
わたくしはあわてて起き上がり
「おじ様、おば様、そんな必要ありません あれはわたくしも悪かったのです!クリス殿下を御せなかったのはわたくしにも原因があります!」
正直面倒くさくて放置していたつけがきたのである、あれはわたくしが悪かったところも少しはある。
スバルが言っていたではないか、あとにひけなくなったと、わたくしが少しでもかまっていればここまでの大事にはならなかった。
「そうは・・・言っても、あやつはやりすぎた、何よりアリアーナのことをしらなすぎだ・・・まさかアクママリンがアリアーナのものと知らなかったとは・・・」
「それはわたくしもあえて言いませんでしたし・・・」
「そういうことじゃない・・・これだけ大きな事業になり、国にも貢献しているんだ、未来の王として知っておかなければいけないことだった・・・あれを甘やかしすぎたんだ・・・すまない」
「おじ様・・・」
「それに話は聞いた・・・ルイスと愛し合っていると・・・お前はずっと我慢していたんだな・・」
陛下はちらりとルイスを一瞥しながら話すがその内容が頭に入ってこなかった。
「えっ・・・!」
ぼふっという音が聞こえそうなぐらい一瞬で赤面し、言葉に詰まっていると陛下は笑い出し、お父様はつまらなそうな顔をしていた。
「ふっ・・アリアーナがお菓子のこと以外でそんな顔をすることもあるんだな・・・私たちは本当に君に無理を強いていたようだ」
「いぇ・・・あの・・・」
「アリアーナさえよかったら、もう君に無理なことはさせない、君への謝罪になるかは分からないがよければルイスと婚約して、その後この国を支えてほしい」
真剣な表情の陛下の言葉に疑問符がわく。
「・・・それはどういう・・・」
「あれには一線を退き教育のしなおしをする。今まで甘やかしすぎた。変わりにルイスを立太子させその婚約者に君になってほしい」
陛下の言葉が信じられず思わずルイスへ振り向くと、今まで見てきた中で一番甘い笑顔でわたくしを見つめていた。
「アリア愛している。ずっと一緒にいてくれ」
「ひぅ・・・」
思わず腰が引けてしまった。
「言っておくがアリィが嫌がればその話もなしだからな!」
そんなわたくしと陛下、ルイスとのやりとりに今まで黙っていたお父様が割り込んできた。
「お父様・・」
「アリィごめんね・・・今までだいぶ我慢をさせた!だから嫌だったら言っていいんだからな。なんならずっと嫁になんていかなくていい!」
そう言い切ったお父様を呆れた顔で見ていたお母様や兄弟たちと陛下と王妃、そして苦虫をかんだような顔をしているルイスを見て、たまらず笑ってしまった。
「ふふ・・・ふふふ・・・お父様ありがとうございます」
「アリィ!・・やっぱり嫁には・・!」
「いえ、わたくしはルイ様を愛しております。おじ様・・お心遣いありがとうございます」
「アリィ・・・!」「アリア!」
父の悲痛な叫びとルイスの歓喜の声が重なる。
「ふふ・・・ふふ・・・おかしいわ・・・ふふ」
わたくしは嬉しくてさらに笑ってしまうのだった。
その後、立太子したルイスを支えるために結局やめられなくなった王妃教育ではあったが、ルイスが忙しい合間をぬって会いに来てくれ、わたくしが作ったお菓子を一緒に食べる時間を作ってくれた。
その嬉しそうなルイスの顔を毎日まじかで見ることができるようになったので、わたくしは幸せだ。
大好きなお菓子とそれを美味しそうに食べる大好きなルイスがいてくれるこの空間を手に入れることができたのだから。
「ルイ様・・・わたくし、とっても幸せですわ」
そう高らかに宣言するのはわたくしの婚約者でこのクラリス王国の第一王子であり王太子でもあるクリス・リア・クラリス殿下、その傍らにはおびえた表情でクリス殿下に寄り添っているスバル・キャメロン男爵令嬢。
そんな二人を見つめながらとうとうこの時がきてしまったかとため息がでそうになる。
「・・・・クリス様、おっしゃっている意味がわかりません。わたくしはどうして婚約破棄を言い渡されているのでしょうか?」
場所は学園の中庭、生徒もまばらだがこちらを伺うように見ている。
わたくしは、やってもやっても終わらない正妃教育の課題を少しでもすすめるために山のような本を読んだあとに休憩として趣味で手作りしているお菓子と紅茶で一息ついていたところである。
しかし、そんなことはお構いなしという雰囲気で、クリスはスバルの肩を強く抱きしめ、わたくしを思い切りにらみつけながら言葉を続ける。
「お前に名前など呼ばれたくない!・・・分からないとは言わせないぞ!これまでスバルにしてきた数々のしうち!嫌がらせ!それは、将来正妃になるにふさわしいとは到底思えん!」
ちらり、とテーブルの半分を埋め尽くす正妃教育のための本を見て、またため息がでそうになるが我慢する。
「・・・わたくしは、そんなことしておりません」
本当に身に覚えがまったくなかった。
なぜならこうならないように日頃からスバルには近づくこともしていなかったのでいじめようがない。
なにより毎日の正妃教育の多さにそんな暇はぜんぜんなかった。
それに少しでも時間があればお菓子を作っていた。
貴族のそれも公爵家の令嬢としてはあまり褒められた趣味ではないが、昔からお菓子を作るのが好きだったのだからしょうがない。
これは私の前世からの趣味であり仕事でもあった。ちなみに現在も前世から知識を生かし自分が食べたいお菓子を広めるためにお菓子のブランドを立ち上げ事業を起こしていたりする。
もちろんわたくしがこういったことをしているのは家族しか知らない。
婚約者として月に一度会うお茶会で出るお菓子がわたくしの手作りだなんてこの男は知らないだろう。
お菓子に興味も持たないこの男に言う気など起きなかったというのもある。
ああ・・・こんな無駄な時間を送るくらいなら王太子の婚約者だの正妃教育だの今までとられた時間を返してほしい。
そして係わりをもたなくてもこうなってしまうんだなとスバルへ視線をむける。するとわかりやすいくらいビクついてクリスの後ろへ隠れてしまった。
・・・なんてあざというんだろう。
そう思っていると
「しらを切るつもりか!」
「そうは言われましても・・・本当にそんなことしておりませんし、何か証拠でもあるのですか?」
「スバルがそう言っている!・・・ほかに疑う余地があるのか!」
そのあまりのいいように思わず・・・断罪イベントついにきたー!とは思うけど、この王子・・・ゲームをしていたとき以上に馬鹿になってない?
好きな子の言葉をうのみに特に証拠ないって本当に馬鹿なのかしら?
ほっておいたわたくしが悪いのかしら・・・?そんなことないとは思いたいけど、だってクリスってわたくしの推しじゃじゃなかったのよね。
「しかし、本当にしていないのです・・・クリス様・・・・殿下はわたくしの言葉は信じてはくれないのですね」
この馬鹿本当どうしたらいいのかしら・・・というか、もうどうしようもないよね?という悲しみが隠し切れず伏し目がちにそう言うと
「いまさらしおらしくしても遅い!スバルは殺されかけたのだぞ!そんなやつのいうことなど信じれるはずがないだろうが!」
また恐ろしい剣幕で言い募ってくる。
そしてよくよく見るとスバルの手首には包帯が巻かれていた。
「・・・殺されかけた?」
言葉の意味がわからず聞きなおす。
「ふん!すでに賊は捕らえておる!そのものが言っておったのだ!お前に依頼されたとな!」
「・・・なっ!」
わたくしはしていない・・・そうならないように行動はしてきた。だって断罪されるのを知っていたから。
わたくしには前世の記憶がある。5歳のころに公爵邸で開かれたパーティのお菓子をつまみ食いして、そのあまりの不味さに驚いたて寝込んでしまったのだ。
普段デザートとして出るお菓子類はまぁ許せる範囲だったのだ、なぜかもっと美味しいお菓子を知っている気がしたけれど家庭で出るお菓子だものね。
こんなものよね・・一応公爵家だと一流の料理人が作ってるけどきっとお菓子は専門外なのね・・・と思っていた。
ただ、パーティに出ていたお菓子は許せなかった。こんな未完成もいいところのお菓子を人様にお出しするだなんて・・・と、
『・・わたくしが!わたくしならもっと美味しいお菓子を作れますのよ!』
と、しばらく寝込んだあとそう叫びながら飛び起きたわたくしを両親や兄弟たちが心配そうにしていたのは少し恥ずかしい思い出である。
しかし、その時なぜわたくしなら作れると思ってしまったのか、起きたばかりのぼんやりとした頭がすこしずつすっきりして思い出してしまった。
わたくしが前世で、こことはまったく違った世界で主に洋菓子といわれるお菓子を作る仕事をしてながら働いていたこと。たまの休みには友人がひどく薦めてきたので【魔法学園と秘密の愛の花園】という少しイタイタイトルの乙女ゲームをしていたこと。
魔法学園で魔法を学びつつ少し癖のある攻略対象たちと恋愛をしていくという内容だった。もちろんヒロインはスバル、クリスも攻略対象の一人だった。
クリスルートでそれを邪魔する位置づけにいたのが悪役令嬢のわたくしアリアーナ・ロゼリウスだった。
ちなみに少し俺様の入った残念な感じがいいという友人は推しがクリスだった。
「クリスちょっと馬鹿っぽいんだけどかわいいんだよね!だからこそアリアーナまじで邪魔!なんでこいつこんなにわがままなの?クリスかわいそう!ほんとヒロインちゃんがんばれ~」
と言っていたな・・・そしてわたくしがそのアリアーナになってしまっているな・・・と、
「なんで!?」
思わずそう叫ばずにはいられなかった。
その時にはすでに政略でクリスと婚約しており、自分の力だけでは婚約者を辞めることができなかった。
なのでそこへは文句をつけず、できる範囲で誠意に接しようと正妃教育もがんばった。
もしかしら未来にあのゲームのように婚約破棄されてしまうかもしれないが、それはヒロインにかかわらなければ大丈夫だろうと甘い考えを持っていた。
でも俺様で少し頭が残念なクリスとのなかを深める気が起きなかったのだ、お父様も国王陛下もわたくしがその手綱を握ればいいとおっしゃってましたしそこまで気にしていなかったが今の現状はそのあたりをなぁなぁにしてきた結果かも知れない。
だって、推しでもない王子と婚約して、したくもない正妃教育をして、わたくし何のために生まれてきたのって思ってしまいますわよね?!
そんなわけで、ほかの取れる時間はすべてわたくしが食べたいと思う前世で作っていたお菓子の再現に費やした。
この世界には魔法なんてすばらしいものがあり、わたくしは転生者としての日本で生きてきた知識のおかげか、魔法が得意だった。
本来なら魔法が正しく使えるようになるために入る学園であり、そこで初めて適正を調べ、いろいろとできるようになるのだが、前世の記憶を思い出したわたくしはゲームの中で使っていた魔法を試しに使ってみたのである。するとどうしたことかできてしまったのである。
それも本来なら適正のある属性特化または数個の属性を持っているだけでエリートとされ王宮魔道士になれる世界で火を出すことや水を出すだけでなくこの世界の常識にない、ものを収納する魔法や いろいろな属性を掛け合わせた複合魔法も使えてしまったのである。
何よりわたくしが喜んだのは氷が出せたことである、この世界は魔法があるせいか科学という概念がなく、魔法も精霊の力を借りているなど言われていた。
ものが燃える原理を知っていればそれだけで火の威力は上がるし、やれることの範囲はひろがるのに、もともとの適正にあった範囲でしかつかわないのでつよくなりようがない、そんななかでの魔法応用である。
これはお菓子を作るうえでとても重宝したのである。
火や風の魔法で食べ物を乾燥させたり、氷魔法で冷やしたりしてこの世界にはないアイスクリームも作り上げた。
最初は家族も料理場への出入りを嫌がっていたが、出来上がるお菓子を振舞ったところ喜んでくれ、そしてブランドを立ち上げ美味しいお菓子を世界に広めたいというわたくしの考えを応援してくれた。
そんな家族のあたたかさにむくいるためにも、嫌だが嫌と言えず自分なりに頑張ってこたえようとしてしていたクリスの婚約者と言う立場。ありえない量の課題が出る王妃教育。それが、すべて無駄になったのが、今である。
ふざけるな!
と言ってやりたい。
ちなみにゲームのアリアーナは典型的なわがままお嬢様でクリスにぞっこんでそんなクリスと仲を深めていくヒロインに嫉妬し嫌がらせも本当にしていた。
その上、スバルの殺害計画を立てていたことがばれて断罪されるのである。
王弟がお父様のため一族すべてを断罪するわけにいもいかずわがままの過ぎたアリアーナは勘当され修道院へ送られる最中、がけから落ちて死ぬのである。
正直魔法で空も飛べるので崖から落ちてのくだりは心配していなかった。
それに魔法でわたくしにかなうものはいない、前世の記憶もあるので一人でも生きていける。いじめもしていなければ、係わり合いをもっていないのだ。殺人計画を立てているなど思われようがないと思っていたが、これである。
強制力というやつだろうか?
本当に馬鹿馬鹿しいと我慢していたため息が思わずでてしまった。
「・・・はぁ、では殿下、破棄は受け入れます。わたくしもう帰ってもよろしいですか?」
その態度が気に入らなかったのかクリスはさらに怒る。
「な・・・!何だ、その態度は!」
「ですが殿下、あなた様に婚約を破棄された以上、そのことをお父様や国王陛下にお伝えしなくてはなりません」
「この犯罪者め!ただで帰すと思っているのか!」
しかしこのいつもの馬鹿に加えて恋愛馬鹿になってしまっているクリスに話は通じずさらにため息がでるのだった。
「ふぅ・・・そうは言われましてもわたくし身に覚えがありませんし、何よりスバルさんを殺す動機がありませんもの」
そんな態度のわたくしが気に入らなかったのかクリスはさらにとんちんかんなことを言い出した。
「この俺がスバルに惚れている!お前は嫉妬した!そうであろう!」
そしてそれが正解であるように威張り散らしている、あきれるばかりである。
「なぜですか?」
「ん?」
だから言ってやることにしたのだ。
「なぜわたくしが嫉妬しなければいけないのでしょうか?」
「え?」
いい加減、我慢の限界だった。
「わたくし、クリス殿下をお慕いしておりませんもの」
「え?」
クリス殿下は目を丸くしてこちらを見ている、後ろに隠れているスバルもだ。
「スバルさんと並んで歩いているところはよく見かけましたが、正直どうでもよかったのでほっておきました。スバルさんと言葉を交わしたこともありません」
「は・・・?」
クリスはわたくしの言葉が信じられないのかわたくしとスバルを交互に見ている。
「わたくしと殿下の婚約は政略でしょう?決まってしまっていたものはしょうがないと今まで我慢してきました。正直したくもない正妃教育もがんばりました」
「・・・・・・」
クリスはわけがわからないと言う顔をしている。
スバルは滝のように汗をかいていてる。
「別に愛がないのはよかったのです・・・それで国が回るなら、スバルさんが好きだと言うのなら好きにすればいいと思っていましたもの」
「・・・・・・」
「でも殿下、知っておりましたか?わたくしがどんなことを好ましく思っているのかを。そして正妃教育がわたくしの一日の大半を占めていて、好きなことは少ししかできない状況を」
今まで殿下に見せたことがない心からの微笑みをみせると、殿下はさらに目を見開く。
「このテーブルに置かれている本の山・・・何だと思っていますの?正妃教育の本ですわ。してもしても終わらない、毎日出る課題という苦行をどうして我慢していたかと言えば、お父様やお母様たち家族や国王陛下・・・おじ様がわたくしを愛してくれていたからですわ。それにわたくしのお菓子を美味しいと買ってくださるこの国の国民たちが大好きだからですわ。それが、この国のためになるならばわたくし一人がわがままを言うなんて馬鹿なことを・・・と、思っておりました。今も思っております。」
「・・・・・・・」
クリスは何も言わずこちらを見ている。そのほほが少し赤いような気もするが無視をする。
「ですが、わたくしのその幸せを奪うとおっしゃるのなら・・・我慢する必要ないですわよね?」
今までで一番の笑顔になっていたと思う。
「・・・・・・・」
クリスは言葉もなくだまったままだった。
「ですので婚約破棄は喜んでお受けします。お二人で仲良くしてくださいまし ではごきげんよう」
そう言い踵を返したところで、一人の愉快そうな男と目があった。
どうやらこの断罪と言う名の茶番を見ていたギャラリーの中にいたらしい。
「・・・・・ルイ様、見ていらしたのね・・・趣味が悪いわ」
「いやぁ、兄上が面白いことしているなと思ってさ」
そう言って近づいてくるのはルイス・リア・クラリス殿下。
クリスの弟でありわたくしと同い年のこの王国の第二王子だった。
ちなみに攻略対象者の一人だったりもする。少し腹黒なところもあるが民に優しくたまに素性を隠し王都にお忍びに行くような自由な人だ。
その普段見せない優しいところとスチルで美味しそうにお菓子を食べている姿があり、前世のわたくしの推しでもあった。
「もう、終わりましたわ」
「うん、終わったね~これで兄上は失脚だ、ははっ」
そう言って笑うルイスの目は笑ってはいなかった。
「笑えませんわよ・・・・まったく・・・ではわたくしは失礼させていただきます」
それが少し怖かったので目線をそらしながら逃げようとするがルイスに手を取られてしまった。
けっして強いわけではないが振りほどけなった。
「・・・・逃がさないよ、やっと兄上のものじゃなくなったんだ」
「ルイ様・・・はなしてください 帰れないじゃないですか」
「手は離さないよ。父上のところへ行くんだろ?このまま一緒に行こう」
そう言って笑うルイスの笑顔は先ほどとは違い優しくて思わず顔が赤くなる。
「なっ・・・はなしてください」
「ふふ・・・アリアは相変わらずかわいいね」
「からかわないでください!」
「からかってなんかないってば、いつも言ってるじゃないかアリアはかわいい、ずっと君のお菓子を食べていたい、兄上には勿体ないってね」
その言葉にさらに顔が赤くなる。
そんなやりとりをしていると、先ほどまでなぜか少し赤面していたクリスがまた恐ろしく不機嫌な顔に戻っていた。
「おい!こちらを無視するな!それにルイス!なぜお前がそんなにアリアーナと親しげなんだ!愛称何ぞで呼びあいおって!俺の婚約者だぞ!」
そのあまりな内容にあきれているとルイスが目を細めてクリスを睨んでいた。
「・・・それは先ほど兄上が破棄したではありませんか」
普段見ない弟のその表情にクリスはいいよどむ。
「・・・いや、それは」
「それに兄上知っておりましたか?アクアマリンのお菓子はもうこの国にはなくてはならないものになっているって。
・・・あの美味しいお菓子が二度とたべられなくなりますよ?」
アクアマリンそれはアリアーナが手がけているお菓子のブランドであり、王国中に店舗を持ち、王都にある本店は毎日行列ができ、他国からもこの国のお菓子はすばらしいと言わしめ、今では国益にも影響を与え、新作が発表されるとなれば世界中の注目が集まるほどになっている。しかしクリスは甘いものがあまり好きではなく、アリアーナとのお茶会の時にテーブルに並んでいたり、スバルとのデートで店舗へお忍びに行ったり、世界的にも有名なので存在自体は知っていたが、どうしてルイスが今その話を出したのか分からずクリスはルイスの次の言葉を待つことにした。
「・・・・・・・・・・どういうことですか!」
その沈黙を破ったのは以外にもスバルだった。
クリスのことを押しのけアリアーナたちの元までつめよる。
「アクアマリンのお菓子が食べられなくなるってどういうことですか!わたしあの美味しいお菓子の大ファンなんですよ!」
思わずその剣幕に・・・クリスは驚き、ルイスはあきれ、わたくしは笑い出してしまった。
「ふ・・・くすくす、ふふ」
「・・・アリアーナ」
その顔を見てまたクリスが少しほほをそめ呆然とこちらを見ているが無視する。
「スバルさん・・・ありがとうございます、そう言っていただけてうれしいですわ」
そんないきなり笑い出したわたくしに意味が分からないという顔をするスバル。
「アリアーナ様?・・・にお礼を言われるようなことは・・・」
「いえ、アクアマリンはわたくしの作ったお菓子を売るブランド、わたくしのお菓子をほめてくださりありがとうございます」
そう言って微笑めば、スバルは息をのみ先ほどまで震えていた顔を今度は真っ青にさせていた。
「え?そんな・・・アクアマリンのお菓子はアリアーナ様が作ったお菓子?」
「そうですわ・・・昔からお菓子を作るのが大好きでした。作ったお菓子を人に食べてもらうのも王妃教育以外の時間はお菓子を作っておりました。
だから美味しいと大ファンと言ってくださってうれしかったですわ」
さらに続くわたくしの言葉にとうとうスバルは泣き出してしまった。
「わ・・わたしなんてことを・・・アクアマリンはわたしの・・・」
もともと庶子だったスバル、母親は昔男爵邸で働いていたが男爵のお手つきになり夫人に追い出されてしまいその後妊娠が発覚した。
女でひとつでスバルを育てたのは本当に大変だったと思う。
親子二人で質素に暮らしていたのだが、はやり病で母が亡くしてしまい天涯孤独になってしまう、ちょうどはやり病で妻と息子をなくした男爵はスバルを見つけ出し引きとったのである。
父親が憎かったわけではない、母を助けてくれなかったことは許せないが、親子二人の生活は別に不幸ではなかったし、今不自由なくすごせているのも引きとってくれているからこそである。
ただ、そんな幸せな母との生活の中にある大切な思い出のひとつにアクアマリンのお菓子があった。
アクアマリンは”すべての人に美味しいお菓子をそしてお菓子で幸せのひと時を”をコンセプトにしており、貴族しか買えない高級なものから、庶民でも買える安価なものまでいろいろ取り揃えられていた。
貧乏な暮らしで毎日食べたりはできなかったが、少し贅沢をする時に買ったり、貯めたお小遣いで母への誕生日プレゼントで買ったお菓子を母と笑いあって食べた味が今でも忘れられない。
アクアマリンのお菓子はスバルの母との思い出であり、幸福だった過去の象徴だった。
「わたし・・・わたし・・・そんな、アリアーナ様があのお菓子を作ってくださってただなんて・・・」
真っ青な顔からあふれんばかりの涙を流しすスバルのほほにそっと触れる。
「スバルさん泣かないでください・・・お菓子は人を悲しい気もちにさせるものではありませんわ」
しかしその行動がさらにスバルの涙を助長させた。
「アリアーナ様!・・わたし、わたしあなたが憎かったんです!何でももってるあなたが!」
「スバルさん・・・」
「学園へ来て王太子の婚約者のあなたがまぶしかった・・・わたしは、庶子で、何ももってなくて・・それがくやしかった」
涙はとまることなくスバルはさらに言葉を続ける。
「だから、少しでも困ればいいと思ったの!・・・クリス様に言い寄って嫌な顔ひとつでもされればすぐにやめるつもりだった!でも、どんなにしても、こちらの事を気にする様子もなくて、わたしもどんどん後に引けなくなって・・・どんどん惨めな気持ちになっていって。ごめ、ごめんなさい アリアーナ様ごめんなさいっ」
「いいんですよスバルさん・・・気持ちはわかります。ほしいものが手に入らないって本当に嫌で、我慢なりませんもの」
そうって微笑めばスバルは大きな目に涙をためながら目を見開きわたくしを見ていた。
「ふふ・・謝罪を受け入れます。断罪されそうになったことは少し腹がたちましたが、おかげでクリス殿下と婚約破棄できましたもの。それにわたくし、わたくしのお菓子を好きな人を嫌いにはなりませんわ」
それはわたくしのお菓子を好きじゃないクリスのことなんて好きでもなんでもないという気持ちをこめての言葉だった。
もともとクリスにちょっかいをかけていたスバルについてはなんとも思っていなかった。
ヒロインちゃんがんばれ!とさえ思っていたし、わたくしのお菓子を好きだと大ファンだと言ってくれるこの子への高感度はむしろ前より増している。
「アリアーナ様ごめんなさい・・・っ・・・ありがとうございっ・・・ます、アクアマリンのお菓子・・・大好きですぅ・・・うぐぅ・・・う うわーーーーん ごめんなさいーーー」
「また、お菓子食べてくださいね・・・今度作って来ますから一緒に食べましょう?」
「・・・・・・アリアーナ様!!!」
とうとうその場に崩れ落ちさらに泣きじゃくるスバルを横目にクリスはわなわなと振るえながら叫ぶ。
「では!・・・俺を愛していると言ったのは嘘か!」
「言った覚えもありませんし、今後言うつもりはありません。わたくしは他に好きなことがございます。殿下のために時間をさくことはもうしたくありません」
「なっ・・・!」
怒り顔のクリスの相手は面倒だ、もういっそ瞬間移動でこの場を離れ王宮の国王陛下の元か、家に帰ってしまおうかと考えていたら
「・・・逃がさないって言ってるでしょ?」
ルイスに握られていた手の力が少し強まった。
「ルイ様・・・」
「アリア・・・君のお菓子を大好きな人を君は嫌いにはならないんだろう?」
そう言って笑うルイスのとてもいい笑顔に腹黒さを感じつつ、また赤面してしまう。
「知ってるよ?・・・・美味しそうに食べる人の顔見るの好きでしょ?僕へお菓子を振舞って僕が食べている時が一番かわいい顔してるんだよ?」
「なっ・・・!」
その言葉にさらに顔が赤くなる。
だってしょうがないじゃない。
推しの美味しそうにお菓子を食べる姿が目の前にあるんだもの!
婚約者の弟という絶対に結ばれないこの人が好きでしょうがなかったんだもの
だから、少ない自分の時間でお菓子を作り、家族へとは別におじ様へ何て言い訳を見つけてルイスにもお菓子を渡していた。その時の笑顔を見るのが本当に好きだった。
せめて結ばれないのならこの笑顔を心にとどめておこうとしていた。
あきらめようとしていた。
思わず目じりに涙がたまる。
「・・・・泣かないで、僕はアリア、君の作ったお菓子ももちろん好きだけど、僕がお菓子を食べている時に見せる君のかわいい笑顔が大好きなんだ。ずっと好きだった」
そう言ってわたくしの涙をぬぐいながら片膝をつき、手にキスをした。
そのあまりの言動に言葉をなくしていると
「ずっと兄上に遠慮していた。このかわいい人は兄上の婚約者、いつか僕の義姉上になる人だから好きになっちゃいけないって、でも無理だった。君はかわいすぎる!だからこの気持ちは永遠に隠していくつもりだったんだよ?でも、もう遠慮しない。兄上がいらないと言うのなら僕がもらう・・・アリア、僕の愛しい人、ずっと僕と一緒にいてください。そしてできるならずっと僕にお菓子を作り続けて君の幸せそうな姿を僕に見せて?」
そう言って微笑みを浮かべるルイスの顔を呆然と見ているしかできない。
顔は真っ赤だし、涙はぬぐってもらったのにまたあふれそうになる。
しょうがない好きな人に好きと言われたのだ。
今まで我慢していたものがあふれ、言葉がとまらない。
「・・・・はい、わたくしもずっとルイ様をお慕いしておりました・・・ルイ様のお菓子を食べる姿が大す・・っ!」
そしていい終わる前に抱きしめられていた
「アリア!・・・アリア!ああ、それは本当なんだね!嘘と言ってももう逃がしてあげないよ!こんなにうれしいことはない!」
「ル・・ルイ様!・・・っ」
あまりの恥ずかしさにわたくしはそのまま気を失ってしまった。
次に目が覚めたのは王宮の客間の一室で、わたくしのことを心配してつらそうな顔をしているルイスと慌てて駆けつけた家族、国王陛下に正妃、そこにクリスの姿はなかった。
「アリアーナ愚息がすまないことをした・・・」
陛下はとても申し訳なさそうな顔で王妃とともに頭を下げてきた。
わたくしはあわてて起き上がり
「おじ様、おば様、そんな必要ありません あれはわたくしも悪かったのです!クリス殿下を御せなかったのはわたくしにも原因があります!」
正直面倒くさくて放置していたつけがきたのである、あれはわたくしが悪かったところも少しはある。
スバルが言っていたではないか、あとにひけなくなったと、わたくしが少しでもかまっていればここまでの大事にはならなかった。
「そうは・・・言っても、あやつはやりすぎた、何よりアリアーナのことをしらなすぎだ・・・まさかアクママリンがアリアーナのものと知らなかったとは・・・」
「それはわたくしもあえて言いませんでしたし・・・」
「そういうことじゃない・・・これだけ大きな事業になり、国にも貢献しているんだ、未来の王として知っておかなければいけないことだった・・・あれを甘やかしすぎたんだ・・・すまない」
「おじ様・・・」
「それに話は聞いた・・・ルイスと愛し合っていると・・・お前はずっと我慢していたんだな・・」
陛下はちらりとルイスを一瞥しながら話すがその内容が頭に入ってこなかった。
「えっ・・・!」
ぼふっという音が聞こえそうなぐらい一瞬で赤面し、言葉に詰まっていると陛下は笑い出し、お父様はつまらなそうな顔をしていた。
「ふっ・・アリアーナがお菓子のこと以外でそんな顔をすることもあるんだな・・・私たちは本当に君に無理を強いていたようだ」
「いぇ・・・あの・・・」
「アリアーナさえよかったら、もう君に無理なことはさせない、君への謝罪になるかは分からないがよければルイスと婚約して、その後この国を支えてほしい」
真剣な表情の陛下の言葉に疑問符がわく。
「・・・それはどういう・・・」
「あれには一線を退き教育のしなおしをする。今まで甘やかしすぎた。変わりにルイスを立太子させその婚約者に君になってほしい」
陛下の言葉が信じられず思わずルイスへ振り向くと、今まで見てきた中で一番甘い笑顔でわたくしを見つめていた。
「アリア愛している。ずっと一緒にいてくれ」
「ひぅ・・・」
思わず腰が引けてしまった。
「言っておくがアリィが嫌がればその話もなしだからな!」
そんなわたくしと陛下、ルイスとのやりとりに今まで黙っていたお父様が割り込んできた。
「お父様・・」
「アリィごめんね・・・今までだいぶ我慢をさせた!だから嫌だったら言っていいんだからな。なんならずっと嫁になんていかなくていい!」
そう言い切ったお父様を呆れた顔で見ていたお母様や兄弟たちと陛下と王妃、そして苦虫をかんだような顔をしているルイスを見て、たまらず笑ってしまった。
「ふふ・・・ふふふ・・・お父様ありがとうございます」
「アリィ!・・やっぱり嫁には・・!」
「いえ、わたくしはルイ様を愛しております。おじ様・・お心遣いありがとうございます」
「アリィ・・・!」「アリア!」
父の悲痛な叫びとルイスの歓喜の声が重なる。
「ふふ・・・ふふ・・・おかしいわ・・・ふふ」
わたくしは嬉しくてさらに笑ってしまうのだった。
その後、立太子したルイスを支えるために結局やめられなくなった王妃教育ではあったが、ルイスが忙しい合間をぬって会いに来てくれ、わたくしが作ったお菓子を一緒に食べる時間を作ってくれた。
その嬉しそうなルイスの顔を毎日まじかで見ることができるようになったので、わたくしは幸せだ。
大好きなお菓子とそれを美味しそうに食べる大好きなルイスがいてくれるこの空間を手に入れることができたのだから。
「ルイ様・・・わたくし、とっても幸せですわ」
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