二人の願い

映研小説部

文字の大きさ
上 下
4 / 12

第四話

しおりを挟む
「体が弱かったって話はしたことがあったよね?私、それでよく体を壊して学校にほとんど行けないまま死んじゃったの」
(死んでる?白井さんが?)
「で、でも…それならどうしてここにいるの?」
僕が聞くと、白井さんは少し考えて答えた。
「多分、学校に行きたいと思いながら死んじゃったからだと思う。私にも、よくわからないけど」
「……」
正直、信じられなかった。
僕が困惑していると、白井さんは少し切なそうに謝った。
「ごめんね、いきなりこんなこと言っても、やっぱり信じられないよね」
僕は、正直に答えた。
「うん…」
白井さんと話していると、後から話しかけられる。
草凪くさなぎ?」
「!?あ、斉藤君、だっけ…何?」
いきなり話しかけられたのでかなりびっくりした。
なんの用だろうか。
「いや、一人で喋ってるからさ、何してんだろって」
「え?」
一人?どういうことだろう。
ここには、白井さんもいるはずだ。
「い、いや、一人じゃないって、ここにもう一人いるでしょ…?」
「何言ってんだ?草凪くさなぎ、お前以外誰もいないだろ」
「え?」
(てことは…白井さんの話は本当なのか?)
「よ、剛。草凪もいたのか、なにやってんの?」
「いや、草凪くさなぎが一人で喋ってるから」
「だ、だから一人じゃないって、ここにいるでしょ」
僕は、斉藤君がからかっているのだと思って、白井さんのいる方を指さした。

「?誰もいないように見えるけど」
「え?でも…」
本当に、二人には見えていないようだった。
「嘘ついてる感じじゃないよな」
「うん、つまり、俺と剛には見えてないのか、幽霊的なやつとか?」
「わかんねぇ」
「それより、剛、急がなくていいのか?先生に呼ばれてるんだろ?」
「あ、忘れてた、行ってくる」
「俺も一回帰るか、草凪、またな」
「う、うん」


「二人には見えてないみたい…じゃあ、本当に…」
「それじゃあ、信じてくれる?」
「うん…」
それでも、一つだけ気になることがあった。
「でも、どうして僕には見えてるの?」
「わからない、私、いろんな人に声をかけたけど、今まで気づかれたことなかったから」
「だから、旬君が気づいてくれた時はすごくびっくりしたし、すごく嬉しかった」
「……」
その話を聞いて、僕は言葉が出なかった。
「あ、そうだ、あと一つ、謝らないと」
「何?」
「私、旬君がなんのために屋上に行こうとしてたのか知ってた、どうしてそうしようとしてるのかは知らなかったけど、止めなきゃって思って、声をかけた」
「黙っててごめんね」
もし、あの時白井さんと出会ってなかったらきっと僕はあのまま死んだだろう。
変わるきっかけもなかった。
「そうだったんだ…でも、いいよ、むしろありがとう、白井さんが止めてくれなかったら、僕は変われなかったよ」
「そっか、なら、止めてよかった」
僕は、あることを思いついた。
「…そうだ!白井さん」
「どうしたの?」
「白井さんのやりたいこと、一緒にやろうよ」
僕は白井さんに助けられた。
「私のやりたいこと?」
「うん、ほら、前に言ってたやつ」
だから、そのお返しをしたい。
「それはわかるけど…いいの?」
「当たり前だよ、白井さんは僕の恩人だもん」
僕がそう言うと、白井さんは嬉しいような、寂しいような表情をした。
「ありがとう、旬君は優しいね」
「白井さんほどじゃ無いよ」
「そんなこと無いよ、本当にありがとう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

浦島子(うらしまこ)

wawabubu
青春
大阪の淀川べりで、女の人が暴漢に襲われそうになっていることを助けたことから、いい関係に。

天ヶ崎高校二年男子バレーボール部員本田稔、幼馴染に告白する。

山法師
青春
 四月も半ばの日の放課後のこと。  高校二年になったばかりの本田稔(ほんだみのる)は、幼馴染である中野晶(なかのあきら)を、空き教室に呼び出した。

俺と代われ!!Re青春

相間 暖人
青春
2025年、日本では国家主導で秘密裏に実験が行われる事になった。 昨今の少子化は国として存亡の危機にあると判断した政府は特別なバディ制度を実施する事により高校生の恋愛を活発にしようと計ったのだ。 今回はその一組の話をしよう。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ZARDに救われた春

根本外三郎
青春
中学三年生の藤田秀男は現在不登校である。原因は陸上部を退部してしまった事だった。その年の五月末ZARDの坂井泉水が死ぬ。大きなショックを受けた彼はうさ晴らしに千葉県の大多喜町を訪れる事にした。そこで大多喜高校の運動会に鉢合わせた彼はZARDの「負けないで」を偶然聞き、陸上部に復帰し学校にもまた通う事を決意する。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

刈り上げの春

S.H.L
青春
カットモデルに誘われた高校入学直前の15歳の雪絵の物語

処理中です...