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第一話
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僕は、草凪 旬
僕には友達も味方もいない、学校に行けばイジメられるし、親も先生も、助けてくれようとしない。
僕はきっと、この世界には必要ないんだろう。
それなら、僕は消えた方がいいよね。
そう思いながら、階段を登ろうとしたとき、
「ま、待って!」
と、僕を呼び止める声が聞こえた。
「え?」
僕がその声の方を見ると、そこには、知らない女子が立っていて、何だか驚いているような顔でこう続けた
「あ…えっと…ちょっと話したいなって、思って…」
「僕と?」
すぐには信じられなかった。
僕はいじめられっ子の根暗な男だ。
そんな僕と話したいと言っているのは、誰が見ても可愛いの部類に入る女子。
(どうして僕なんかと…)
そう思ったけど、せっかくそう言ってくれたんだ、死ぬ前に…少しくらいはいいだろうと思って、話してみることにした。
「いいけど…僕なんかと話しても面白くないよ」
「やった、それじゃあこっち来て」
その女子は、少し嬉しそうにベンチみたいになっているところに座って、僕に隣へ来るよう手招きしていた。
「わ、わかった…」
僕が隣に座るのと同時くらいに、
「私、白井純恋貴方は?」
と、自己紹介をしてくれたので、
「草凪旬…」
と、僕はそれに答えた。
「旬君か~、良い名前だね」
にこやかにそう言ってくれたけど、僕はそう思わない。
「そうかな…僕はそうでもないと…思うけど…」
僕がそう言うと、白井さんは
「良い名前だと思うけどな~」
と、呟いたあと、
「ねぇ、旬君の好きなものって何かあるの?」
と聞いてきたので、少し考えてみる。
(好きなものか…)
「……あんまり思いつかないけど…」
「そうなの?私はお粥が好き、私、体が弱くて…すぐに熱出したりしてたの、その時に、よくお母さんが作ってくれたんだ」
それを聞いて、僕は自然と
「そうなんだ…いいね、優しい母親がいて」
と、口に出していた。
「旬君のお母さんはどんな人?」
という質問に対して、僕はどんな顔をしていたんだろう。
あんまり、いい顔ではないと思う。
「僕の?僕の親は…あんまり良い人じゃないよ…きっと僕のことなんて、どうでもいいんじゃないかな」
「そんなことないと思うけど…」
もうそろそろ満足しただろう。
そう思って、
「もういい?」
と聞くと、
「まだそんなに話してないじゃん」
と、言われたので、もう少し話をすることにした。
「旬君は、夢とかあるの?」
「夢…?夢なんてないよ」
考えたことも無い。
僕には、必要なかった。
「それじゃあ、やりたいことは?」
やりたいことも、当然無い
死のうとしていたんだから。
「何もないよ」
「え~、じゃあさ、今考えようよ、今」
(考える?)
「今?何を?」
「やりたいこと」
「えぇ…ん~…」
どうせ考えても無駄なのに…
僕が考えていると、白井さんは自分のしたいことを話し始めた。
「私はもっと思いっきり遊びたいな、それから、友達と授業受けたり、授業中に喋って注意されたり…」
その話を聞いて、僕は少し不思議に思った。
白井さんの言うことは、普段からできるようなことだ。
僕には遊ぶ相手もいないし、友達なんていないからできないこともあるけど、白井さんはそんなことないはずだ。
「なら、すればいいじゃん、僕には友達なんていないし、遊ぶ相手もいないけど、白井さんにはいるでしょ」
僕は考えたことを素直に口に出した。
「…そうだよね、こんなの普通にできるよね」
そう言った瞬間、白井さんが悲しそうで寂しそうな顔をしたような気がしたけど、すぐに明るい顔になったので気のせいだと思う。
「さ、それより、旬君のやりたいことは決まった?」
そう聞かれて、まだ思いついていなかった僕は、とっさに「…友達を作りたい」と言った。
「ならなろうよ」
「え?」
なんて?なろうよって言ったの?
「だから、友達」
「誰と?」
「私以外にいないじゃん」
あぁ、そっか、きっと気を使ってくれたんだ。
そうじゃなきゃ、そんな言葉は出て来ない。
とくに僕に対しては。
「ありがとう、でも…いいよ、無理しなくて」
素直にそう言った。
「無理なんてしてないって」
そう言ってくれる白井さんは優しいと思う。
「なんだ、まだ残ってたのか、用が無いなら、暗くなる前に帰れよ」
「あ、はい…」
と、先生に注意されたので、今日はもう帰ることにした。
白井さんと話していたら、死のうとしていたことが何だか馬鹿らしく思えた。
「僕は、もう帰るよ」
「うん、また明日ね」
そう、白井さんが言ったような気がした。
僕には友達も味方もいない、学校に行けばイジメられるし、親も先生も、助けてくれようとしない。
僕はきっと、この世界には必要ないんだろう。
それなら、僕は消えた方がいいよね。
そう思いながら、階段を登ろうとしたとき、
「ま、待って!」
と、僕を呼び止める声が聞こえた。
「え?」
僕がその声の方を見ると、そこには、知らない女子が立っていて、何だか驚いているような顔でこう続けた
「あ…えっと…ちょっと話したいなって、思って…」
「僕と?」
すぐには信じられなかった。
僕はいじめられっ子の根暗な男だ。
そんな僕と話したいと言っているのは、誰が見ても可愛いの部類に入る女子。
(どうして僕なんかと…)
そう思ったけど、せっかくそう言ってくれたんだ、死ぬ前に…少しくらいはいいだろうと思って、話してみることにした。
「いいけど…僕なんかと話しても面白くないよ」
「やった、それじゃあこっち来て」
その女子は、少し嬉しそうにベンチみたいになっているところに座って、僕に隣へ来るよう手招きしていた。
「わ、わかった…」
僕が隣に座るのと同時くらいに、
「私、白井純恋貴方は?」
と、自己紹介をしてくれたので、
「草凪旬…」
と、僕はそれに答えた。
「旬君か~、良い名前だね」
にこやかにそう言ってくれたけど、僕はそう思わない。
「そうかな…僕はそうでもないと…思うけど…」
僕がそう言うと、白井さんは
「良い名前だと思うけどな~」
と、呟いたあと、
「ねぇ、旬君の好きなものって何かあるの?」
と聞いてきたので、少し考えてみる。
(好きなものか…)
「……あんまり思いつかないけど…」
「そうなの?私はお粥が好き、私、体が弱くて…すぐに熱出したりしてたの、その時に、よくお母さんが作ってくれたんだ」
それを聞いて、僕は自然と
「そうなんだ…いいね、優しい母親がいて」
と、口に出していた。
「旬君のお母さんはどんな人?」
という質問に対して、僕はどんな顔をしていたんだろう。
あんまり、いい顔ではないと思う。
「僕の?僕の親は…あんまり良い人じゃないよ…きっと僕のことなんて、どうでもいいんじゃないかな」
「そんなことないと思うけど…」
もうそろそろ満足しただろう。
そう思って、
「もういい?」
と聞くと、
「まだそんなに話してないじゃん」
と、言われたので、もう少し話をすることにした。
「旬君は、夢とかあるの?」
「夢…?夢なんてないよ」
考えたことも無い。
僕には、必要なかった。
「それじゃあ、やりたいことは?」
やりたいことも、当然無い
死のうとしていたんだから。
「何もないよ」
「え~、じゃあさ、今考えようよ、今」
(考える?)
「今?何を?」
「やりたいこと」
「えぇ…ん~…」
どうせ考えても無駄なのに…
僕が考えていると、白井さんは自分のしたいことを話し始めた。
「私はもっと思いっきり遊びたいな、それから、友達と授業受けたり、授業中に喋って注意されたり…」
その話を聞いて、僕は少し不思議に思った。
白井さんの言うことは、普段からできるようなことだ。
僕には遊ぶ相手もいないし、友達なんていないからできないこともあるけど、白井さんはそんなことないはずだ。
「なら、すればいいじゃん、僕には友達なんていないし、遊ぶ相手もいないけど、白井さんにはいるでしょ」
僕は考えたことを素直に口に出した。
「…そうだよね、こんなの普通にできるよね」
そう言った瞬間、白井さんが悲しそうで寂しそうな顔をしたような気がしたけど、すぐに明るい顔になったので気のせいだと思う。
「さ、それより、旬君のやりたいことは決まった?」
そう聞かれて、まだ思いついていなかった僕は、とっさに「…友達を作りたい」と言った。
「ならなろうよ」
「え?」
なんて?なろうよって言ったの?
「だから、友達」
「誰と?」
「私以外にいないじゃん」
あぁ、そっか、きっと気を使ってくれたんだ。
そうじゃなきゃ、そんな言葉は出て来ない。
とくに僕に対しては。
「ありがとう、でも…いいよ、無理しなくて」
素直にそう言った。
「無理なんてしてないって」
そう言ってくれる白井さんは優しいと思う。
「なんだ、まだ残ってたのか、用が無いなら、暗くなる前に帰れよ」
「あ、はい…」
と、先生に注意されたので、今日はもう帰ることにした。
白井さんと話していたら、死のうとしていたことが何だか馬鹿らしく思えた。
「僕は、もう帰るよ」
「うん、また明日ね」
そう、白井さんが言ったような気がした。
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