185 / 205
新興宗教の奇天烈乱舞
虚空夜叉 VS 羅刹悪鬼
しおりを挟む
夜叉。仏教において鬼とされるもの。創成が手始めに作り上げた超能力にして、単純な力技を行使し、敵を滅ぼす。太平洋戦争末期に考案されたこの力は、今も尚超能力者たちのひとつの基準となっている。
その夜叉たちの最上位にして、現在学園横浜を含む学園12校に1人しかいない虚空夜叉の称号を持つ男、柴田公正は、その称号に恥じることのない程度には恐ろしい力と共に新興宗教の紛い物を滅ぼしていった。
「峰打ちばかりね…。単純な暴力の連鎖によって当分は立ち上がれないでしょうけど。ねェ…。一応息の根を止めた方がいいんじゃないの?」
「いや…。どんな悪党でも殺しはしない。俺の考え的にな。それに…こいつらは司法によって裁かれるべきだ。」
反吐が出るほどの甘さだ。きっとイリイチが聞けば腹抱えて笑うだろうな。それでも殺しだけは、殺人だけは、それだけはきっと、それをしてしまえば虚空夜叉として殺戮以外に何ももたらすことの出来ない弱い存在になってしまう。
「オォ!笑える冗談だな若造ォ!殺さない?殺しはしない?戦場でそれが通用するとでも思ってんのかなァ!?」
全員意識がなくなった筈の、山にある宗教広場にて、圧倒されるようなオーラを出している男が居た。高笑いが鼻につく思いだ。
「まだ居たのか…。山下、こいつは多分最強格の幹部だ。イリイチにれ…。」
斬撃であった。公正と彼以外に誰も目視出来ない程の。それは優希の胴体を引きちぎる寸前の所で止まり、またもや高笑いを飛ばす。
「…おい。何してんだよ。」
「何してるって?アァ、そこの馬鹿アマを切り裂いただけだ。ちゃんと理解が及んでるってことは…。大したガキだなテメェ。」
出血多量による死亡を避けるために、優希は流れ出る血液を冷血させる。だが、応急処置に過ぎないのは誰の目から見ても明らかだ。言葉を絞り出すことも出来ていない。人間である夜叉に鬼のような目が宿り、鬼である羅刹に人間のような悦びが宿る。
「漸くやる気を出したか…。よう、夜叉。」
「暴虐な悪鬼…。羅刹天。何があって生まれたか…。っくそがァ!」
インド神話においては残虐な悪鬼であり、仏教においては守護神である。虚空夜叉という1人の化け物に対抗するには、神話から同格の化け物を引っ張ってくるしかない。本から飛び出た闘いは、互いの価値を賭けた闘争へと発展していく。
「羅刹天。そうだ。その通りだ。鬼とて神の一角。我が猊下に与えられた力を使い、私は貴様を打ちのめす。さァ…。闘おうか。」
「なァにが猊下だァ!クソ宗教のクソ信者どもがよォ!社会からドロップアウトして、逆恨みして殺して、若いヤツらから未来を奪って生き延びようとしやがってよォ!上等だ!闘ってやるよ!悪鬼羅刹天よォ!」
日本刀がこの世の物とは思えない紫の炎を纏い、公正と羅刹は互いを切りつけるためにぶつかり合う。一撃、一撃に、世界が歪むような巨大な振動が発生する。
悪鬼と悪鬼によるぶつかり合いは、この日廃墟街と化した街に住む者の大半に観測された。彼らは誰もが神の存在を信じただろう。刀がぶつかり合う金属音が、遥か離れたこの街に届き、それが届く度に地球が揺れるような錯覚すら起きるのだった。
その夜叉たちの最上位にして、現在学園横浜を含む学園12校に1人しかいない虚空夜叉の称号を持つ男、柴田公正は、その称号に恥じることのない程度には恐ろしい力と共に新興宗教の紛い物を滅ぼしていった。
「峰打ちばかりね…。単純な暴力の連鎖によって当分は立ち上がれないでしょうけど。ねェ…。一応息の根を止めた方がいいんじゃないの?」
「いや…。どんな悪党でも殺しはしない。俺の考え的にな。それに…こいつらは司法によって裁かれるべきだ。」
反吐が出るほどの甘さだ。きっとイリイチが聞けば腹抱えて笑うだろうな。それでも殺しだけは、殺人だけは、それだけはきっと、それをしてしまえば虚空夜叉として殺戮以外に何ももたらすことの出来ない弱い存在になってしまう。
「オォ!笑える冗談だな若造ォ!殺さない?殺しはしない?戦場でそれが通用するとでも思ってんのかなァ!?」
全員意識がなくなった筈の、山にある宗教広場にて、圧倒されるようなオーラを出している男が居た。高笑いが鼻につく思いだ。
「まだ居たのか…。山下、こいつは多分最強格の幹部だ。イリイチにれ…。」
斬撃であった。公正と彼以外に誰も目視出来ない程の。それは優希の胴体を引きちぎる寸前の所で止まり、またもや高笑いを飛ばす。
「…おい。何してんだよ。」
「何してるって?アァ、そこの馬鹿アマを切り裂いただけだ。ちゃんと理解が及んでるってことは…。大したガキだなテメェ。」
出血多量による死亡を避けるために、優希は流れ出る血液を冷血させる。だが、応急処置に過ぎないのは誰の目から見ても明らかだ。言葉を絞り出すことも出来ていない。人間である夜叉に鬼のような目が宿り、鬼である羅刹に人間のような悦びが宿る。
「漸くやる気を出したか…。よう、夜叉。」
「暴虐な悪鬼…。羅刹天。何があって生まれたか…。っくそがァ!」
インド神話においては残虐な悪鬼であり、仏教においては守護神である。虚空夜叉という1人の化け物に対抗するには、神話から同格の化け物を引っ張ってくるしかない。本から飛び出た闘いは、互いの価値を賭けた闘争へと発展していく。
「羅刹天。そうだ。その通りだ。鬼とて神の一角。我が猊下に与えられた力を使い、私は貴様を打ちのめす。さァ…。闘おうか。」
「なァにが猊下だァ!クソ宗教のクソ信者どもがよォ!社会からドロップアウトして、逆恨みして殺して、若いヤツらから未来を奪って生き延びようとしやがってよォ!上等だ!闘ってやるよ!悪鬼羅刹天よォ!」
日本刀がこの世の物とは思えない紫の炎を纏い、公正と羅刹は互いを切りつけるためにぶつかり合う。一撃、一撃に、世界が歪むような巨大な振動が発生する。
悪鬼と悪鬼によるぶつかり合いは、この日廃墟街と化した街に住む者の大半に観測された。彼らは誰もが神の存在を信じただろう。刀がぶつかり合う金属音が、遥か離れたこの街に届き、それが届く度に地球が揺れるような錯覚すら起きるのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
その日、友達と言えない同期が死んだ。その日以来、そいつと距離が縮まった。
網野ホウ
キャラ文芸
※小説家になろうで先行、完結した作品です。
坊主ミーツガール
同級生だった彼と彼女の再会は、彼女が死んだその時だった。
それ以外の接点はないと思ってた彼は、お盆に毎年訪問している檀家の一軒であることを、その時初めて知った。
彼女は自分が死んで、自分のために読経している僧侶を見て、初めて元同級生ということを知った。
男は僧侶、女は幽霊。
この二人の間に生まれた感情は?
そして二人の関係は?
何人かの同期生を巻き込む、いつか別れるさだめの二人の物語。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
「サヨナラを大好きな君にあげるから」
悠里
キャラ文芸
主人公 きいちゃん 貧乏神
役目は、人に気づきを与えること。
気付いてもらって、幸せになってほしいとずっと思ってる。
でも、なかなか、気付いてもらえなくて、少し寂しいなと思いながらずっと、過ごしてきた。
ある日、今住み着いているところの男の子が、事故で頭を打って入院。
帰ってきた男の子が、きいちゃんを見て、誰?と言った。
僕が見えるの? 話せるの?
貧乏神のきいちゃんと、その家の男の子ヒロくんとの、
ほのぼのな。ちょっと切ない、お話です。
神様とかめちゃくちゃ調べて書いてるというよりは、
ネットでさーっと読んだ神様の説明から自由に妄想した物語です。
童話を読んでるみたいな緩い気持ちで読んでもらえたら、ありがたいです(^^)
読んだ後は、ほっこりしてもらえたらいいなと思ってます。
楽しんでいただけましたら。
感想など頂けたら嬉しいです。
チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~
クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。
だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。
リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。
だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。
あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。
そして身体の所有権が俺に移る。
リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。
よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。
お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。
お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう!
味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。
絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ!
そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!
後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~
絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。
※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。
胡桃の中の蜃気楼
萩尾雅縁
経済・企業
義務と規律に縛られ生きて来た英国貴族嫡男ヘンリーと、日本人留学生・飛鳥。全寮制パブリックスクールで出会ったこの類まれなる才能を持つ二人の出逢いが、徐々に世界を揺り動かしていく。青年企業家としての道を歩み始めるヘンリーの熾烈な戦いが今、始まる。
ブラックガンズ・ミソロジー【完結】
雨宮ソウスケ
キャラ文芸
【完結済み】
四十年前、突如現れた幻想種。兵器が通じない怪物相手に、剣や槍などで戦う時代。
そんな中、PGC(対幻想種組織)訓練校に通う八剣冬馬は『銃』にこだわる少年だった。
が、そもそも『銃』は最下級の怪物にさえ通じない。このままでは想いをよせる少女・柄森雪姫を守る事ができない。少年は焦っていた。
しかし、そんなある日のこと。冬馬は彼の運命を変える銀色の髪の少女と出会って……。
多分、王道っぽいストーリーだと思っています。楽しんで頂ければ幸いです。
□2020/1/30改題しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる