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新興宗教の奇天烈乱舞

虚空夜叉 VS 羅刹悪鬼

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夜叉。仏教において鬼とされるもの。創成が手始めに作り上げた超能力にして、単純な力技を行使し、敵を滅ぼす。太平洋戦争末期に考案されたこの力は、今も尚超能力者たちのひとつの基準となっている。
その夜叉たちの最上位にして、現在学園横浜を含む学園12校に1人しかいない虚空夜叉の称号を持つ男、柴田公正は、その称号に恥じることのない程度には恐ろしい力と共に新興宗教の紛い物を滅ぼしていった。
「峰打ちばかりね…。単純な暴力の連鎖によって当分は立ち上がれないでしょうけど。ねェ…。一応息の根を止めた方がいいんじゃないの?」
「いや…。どんな悪党でも殺しはしない。俺の考え的にな。それに…こいつらは司法によって裁かれるべきだ。」
反吐が出るほどの甘さだ。きっとイリイチが聞けば腹抱えて笑うだろうな。それでも殺しだけは、殺人だけは、それだけはきっと、それをしてしまえば虚空夜叉として殺戮以外に何ももたらすことの出来ないになってしまう。
「オォ!笑える冗談だな若造ォ!殺さない?殺しはしない?戦場でそれが通用するとでも思ってんのかなァ!?」
全員意識がなくなった筈の、山にある宗教広場にて、圧倒されるようなオーラ雰囲気を出している男が居た。高笑いが鼻につく思いだ。
「まだ居たのか…。山下、こいつは多分最強格の幹部だ。イリイチにれ…。」
斬撃であった。公正と彼以外に誰も目視出来ない程の。それは優希の胴体を引きちぎる寸前の所で止まり、またもや高笑いを飛ばす。
「…おい。何してんだよ。」
「何してるって?アァ、そこの馬鹿アマを切り裂いただ。ちゃんと理解が及んでるってことは…。大したガキだなテメェ。」
出血多量による死亡を避けるために、優希は流れ出る血液を冷血させる。だが、応急処置に過ぎないのは誰の目から見ても明らかだ。言葉を絞り出すことも出来ていない。人間である夜叉に鬼のような目が宿り、鬼である羅刹に人間のような悦びが宿る。
「漸くやる気を出したか…。よう、夜叉。」
「暴虐な悪鬼…。羅刹天。何があって生まれたか…。っくそがァ!」
インド神話においては残虐な悪鬼であり、仏教においては守護神である。虚空夜叉という1人の化け物に対抗するには、神話から同格の化け物を引っ張ってくるしかない。本から飛び出た闘いは、互いの価値を賭けた闘争へと発展していく。
「羅刹天。そうだ。その通りだ。鬼とて神の一角。我が猊下に与えられた力を使い、私は貴様を打ちのめす。さァ…。闘おうか。」
「なァにが猊下だァ!クソ宗教のクソ信者どもがよォ!社会からドロップアウトして、逆恨みして殺して、若いヤツらから未来を奪って生き延びようとしやがってよォ!上等だ!闘ってやるよ!悪鬼羅刹天よォ!」
日本刀がこの世の物とは思えない紫の炎を纏い、公正と羅刹は互いを切りつけるためにぶつかり合う。一撃、一撃に、世界が歪むような巨大な振動が発生する。
悪鬼と悪鬼によるぶつかり合いは、この日廃墟街ゴーストタウンと化した街に住む者の大半に観測された。彼らは誰もが神の存在を信じただろう。刀がぶつかり合う金属音が、遥か離れたこの街に届き、それが届く度に地球が揺れるような錯覚すら起きるのだった。
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