上 下
177 / 205
新興宗教の奇天烈乱舞

6+1+1=8

しおりを挟む
「………これは外部には絶対に漏らせないわね。私たちだけで解決を計らないと…。」
廃墟の街ゴースト・タウンに映された惨劇は、暴虐無人な超能力者たちををも唸らせる。全員武装済みの若返った老人たちによる、日本への反逆行為。宗教を越えた先に、深淵は自ずとこちらを伺うのだった。
「ダメだ…。ちょっとモドしてくる…。」
凡そ人間の範疇を超えた狂気劇に、まず公正、次に海里、翔、優希、は耐えきれなかった。嗚咽がトイレに谺響する。
「会長は大丈夫で?」
「…えェ。なんとか。逆になんでそんなに平然としてられるのよ?」
「死にたくない老人が若い人間をのはよくあることだ。だが…こいつらはそれで若返りを得ている。まるで吸血鬼ヴァンパイア人喰い鬼オーガのようだ。厄介だな。」
ハチの羽音に気がついた彼らが、それを叩き落とすと、映像は当然ながら遮断された。動物的な観察力すらも身につけているのだろうか。
「いやァ、厄介だ。軽くしか見ていねェが人質、いや、屍予定の人間も多いな。不老不死をウリにして他の組織と同盟でも組まれた日には…。」
「アンラッキーは続くものよ。関東最大の暴力団、三代目七王会の貸元頭、ようはNo.2が彼らと手を組んだという報告がある。超能力者軍隊ピースキーパーの落ちこぼれが彼らの戦闘部隊になっているという報告もあるし…。事態は最悪ね。」
クレムリンの一角のような、広々としていて独特の雰囲気を持つ会議室は、やがて立ち直り舞い戻った超能力者たちの、やはり重い雰囲気を更に増水させるようだった。
「遊撃隊を立ち上げよう。俺たち6人を3人づつ、2枠に分けてヤツらを踏み潰す。戦力としてなら十分だと思うがな。」
実務経験のある人間からしてみれば、この程度のことで暗い色を見せる超能力者というのは不思議でならない。所詮は死にかけの老人たちが気張って若作りしているであり、所詮は超能力者私設軍隊ピースキーパーから落第した負け組が最精鋭であるの大したことない連中の郎党なのだ。
「なんだ?まだ足りないってか?じゃあ…。山下ァ!スバルもこの件に関与してんよな?あいつも入れるぞ。」
「……。」
「ねェ。正直言ってあの子のこと気に入らなかったけど今は同情してる。」
「私も。」
共通の敵因子を作り上げることによって団結を得るのは、人間であれば誰しもが経験したことのあることであろうが、まさかこの状況になってそれを行うとは思いもしなかった女性陣である。
「……まァ。現実的に放置しとくことは出来ない。戒厳を引いて学園横浜内にも情報を隠し通すのは他愛もないが、それは俺たちが解決したらの話だ。」
「……そうだな。ここまで重苦しい展開になるとは思ってもなかったが…。仕方がないったら仕方がない。」
超能力者としての実力は、熟練して身体的にも頂点に到達している者にも引けを取らない序列第1位と第3位は腹を括ったのだった。
「あんたらが行くんなら…。」
渋々と言った所だろうか。そもそもこの円卓に乗り気ではなかった海里が覚悟を決めた時点で、彼らは一致団結を迎えたのだろう。
「えっ。あの、あた…。」
「じゃ決定だな。ただ…。スバルを含めて偶数にするにはあと1人必要だ。会長、口が固くて尚且つこの問題に関与する気になれる人はいねェか?」
「片っ端から当たってみるわ。取り敢えず、各自いつでも出れるように準備しといて。」
この世の大半は金で買えるものだ。だが時間は金では買えない。人生という一方通行車線の終わりを迎えつつある老人が、異常な道に方向を変換したなのだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

視える宮廷女官 ―霊能力で後宮の事件を解決します!―

島崎 紗都子
キャラ文芸
父の手伝いで薬を売るかたわら 生まれ持った霊能力で占いをしながら日々の生活費を稼ぐ蓮花。ある日 突然襲ってきた賊に両親を殺され 自分も命を狙われそうになったところを 景安国の将軍 一颯に助けられ成り行きで後宮の女官に! 持ち前の明るさと霊能力で 後宮の事件を解決していくうちに 蓮花は母の秘密を知ることに――。

ぬらりひょんのぼんくら嫁〜虐げられし少女はハイカラ料理で福をよぶ〜

蒼真まこ
キャラ文芸
生贄の花嫁は、あやかしの総大将と出会い、本当の愛と生きていく喜びを知る─。 時は大正。 九桜院さちは、あやかしの総大将ぬらりひょんの元へ嫁ぐために生まれた。生贄の花嫁となるために。 幼い頃より実父と使用人に虐げられ、笑って耐えることしか知らぬさち。唯一の心のよりどころは姉の蓉子が優しくしてくれることだった。 「わたくしの代わりに、ぬらりひょん様に嫁いでくれるわね?」 疑うことを知らない無垢な娘は、ぬらりひょんの元へ嫁ぎ、驚きの言葉を発する。そのひとことが美しくも気難しい、ぬらりひょんの心をとらえてしまう。 ぬらりひょんに気に入られたさちは、得意の洋食を作り、ぬらりひょんやあやかしたちに喜ばれることとなっていく。 「こんなわたしでも、幸せを望んでも良いのですか?」 やがて生家である九桜院家に大きな秘密があることがわかり──。 不遇な少女が運命に立ち向い幸せになっていく、大正あやかし嫁入りファンタジー。 ☆表紙絵は紗倉様に描いていただきました。作中に出てくる場面を元にした主人公のイメージイラストです。 ※エブリスタと小説家になろうにも掲載しておりますが、こちらは改稿版となります。

その日、友達と言えない同期が死んだ。その日以来、そいつと距離が縮まった。

網野ホウ
キャラ文芸
※小説家になろうで先行、完結した作品です。 坊主ミーツガール 同級生だった彼と彼女の再会は、彼女が死んだその時だった。 それ以外の接点はないと思ってた彼は、お盆に毎年訪問している檀家の一軒であることを、その時初めて知った。 彼女は自分が死んで、自分のために読経している僧侶を見て、初めて元同級生ということを知った。 男は僧侶、女は幽霊。 この二人の間に生まれた感情は? そして二人の関係は? 何人かの同期生を巻き込む、いつか別れるさだめの二人の物語。

王子様探偵と町中華とダンスィ

克全
キャラ文芸
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 某産油国の第九王子は、母の母国で探偵を始めたが、行きつけの町中華で虐待事件と誘拐事件に巻き込まれた。そして彼は、日本の妖怪と係わる事となる。

ブラックガンズ・ミソロジー【完結】

雨宮ソウスケ
キャラ文芸
【完結済み】 四十年前、突如現れた幻想種。兵器が通じない怪物相手に、剣や槍などで戦う時代。 そんな中、PGC(対幻想種組織)訓練校に通う八剣冬馬は『銃』にこだわる少年だった。 が、そもそも『銃』は最下級の怪物にさえ通じない。このままでは想いをよせる少女・柄森雪姫を守る事ができない。少年は焦っていた。 しかし、そんなある日のこと。冬馬は彼の運命を変える銀色の髪の少女と出会って……。 多分、王道っぽいストーリーだと思っています。楽しんで頂ければ幸いです。 □2020/1/30改題しました。

チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。 だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。 リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。 だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。 あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。 そして身体の所有権が俺に移る。 リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。 よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。 お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。 お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう! 味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。 絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ! そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 普通の甘いものではこの疲れは癒せないっ!  そんなことを考えながら、会社帰りの道を歩いていた壱花は、見たこともない駄菓子屋にたどり着く。  見るからに怪しい感じのその店は、あやかしと疲れたサラリーマンたちに愛されている駄菓子屋で、謎の狐面の男が経営していた。  駄菓子屋の店主をやる呪いにかかった社長、倫太郎とOL生活に疲れ果てた秘書、壱花のまったりあやかしライフ。 「駄菓子もあやかしも俺は嫌いだ」 「じゃあ、なんでこの店やってんですか、社長……」  「玖 安倍晴明の恩返し」完結しました。

処理中です...