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全ての陰謀を終わらせる陰謀

特訓

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「未来、端的に言おう。時間がない。中等部所属生徒で水野若葉って知っているよな?そいつの空間移動精度を上げるために訓練してくれ。俺の想定が正しければ…。若葉はこの状況をひっくり返すキーマンになりうる。」
電話にて指示を飛ばすリーコンは明らかに焦りを見せていた。イリイチに送り込んだリストに乗っているPKDI:RANK4の1人に赤鉛筆でチェックマークを付けているのを確認したからだ。その後、ありとあらゆる手段を利用しても連絡もつかない。空間閉鎖により、現実次元への進入禁止の憂き目に会っている可能性を考える必要があるのだ。
「リーコン、お前の予測は恐らく当たっているだろうが、若葉ってガキがそこまでのものなのか?別に空間移動超能力なら桑原にやらせてもいいんじゃあないのか?」
「いや…。空間閉鎖ってのは、並みの空間系超能力者じゃアクセスは不可能だ。未来ですらもな。そこでイリイチが重用しようとしていて、中等部プロスペクト第1位の水野に賭けるという外法を思いつくわけさ…。」
阪浩の気分次第で閉鎖空間の環境は変貌する。イリイチの生命力を持っても3日間が限界であろう。だが、幸いなことにそれをこじ開ける可能性を持つ人間とそれを教えられる人間を切り札として持っている。幸運としか言いようがない。
______
「じゃあ、首尾よくやって行こう。若葉くん。」
空間移動はあまり得意ではない未来も、ある程度の術式方式を教えれば若葉の空間移動は覚醒することを見込んでいた。イリーナの話によればだが。
「とは言っても…。座標変換はある程度できるのよね…。でもイリイチと座標を変えても意味が無いし…。んー。」
才能に溢れた少年の凛々しい姿は眩しいものがある。座標変換が使えないが故にこの学園横浜を戦力外になった生徒は数知れない。
「取り敢えず典型から始めよっか。50メートル先に移動する所からだね。」
「やってみます…。」
目で追える距離への瞬間移動。少し迷ったような面持ちになりながらも、数秒とかかることなく、ぴったり50メートル先に彼は立つ。
「やっぱこれぐらいは問題ないね…。というか覚えなきゃ行けないのは制御関連か…。座標補正計算の精度向上ね…。」
横浜から東京まで移動出来る超能力者にとって50メートル先に移動することは雑作もないことである。だが、若葉の場合は、座標補正のための計算力が大幅に欠けている。僅かな歪みで海の上に変換移動してしまえば、空間移動も名折れだ。
「本当は座学で教える分野だけど…。時間がないなら、実践を積んで覚えるしかないわね…。」
この分野は複雑な計算により成り立つ。本来中等部の生徒に要求するのが酷な程に。大人の超能力者ですら曖昧な者は多いのだ。
「若葉くん。習うより慣れろってな訳で、色んな所に飛んで貰うよ。座標指定するからそこに寸分の狂いなく飛ぶことを2秒未満で出来るまでね。」
「優しい語り口でとんでもないこと言いますね…。分かりましたよ桑原先輩。とことんやってやります!」
かつて学園横浜の市場価値最高額を塗り替えた才女は、自分を越えてくれる存在が出てきたことに歓喜を覚えるようだった。

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