150 / 205
全ての陰謀を終わらせる陰謀
特訓
しおりを挟む
「未来、端的に言おう。時間がない。中等部所属生徒で水野若葉って知っているよな?そいつの空間移動精度を上げるために訓練してくれ。俺の想定が正しければ…。若葉はこの状況をひっくり返すキーマンになりうる。」
電話にて指示を飛ばすリーコンは明らかに焦りを見せていた。イリイチに送り込んだリストに乗っているPKDI:RANK4の1人に赤鉛筆でチェックマークを付けているのを確認したからだ。その後、ありとあらゆる手段を利用しても連絡もつかない。空間閉鎖により、現実次元への進入禁止の憂き目に会っている可能性を考える必要があるのだ。
「リーコン、お前の予測は恐らく当たっているだろうが、若葉ってガキがそこまでのものなのか?別に空間移動超能力なら桑原にやらせてもいいんじゃあないのか?」
「いや…。空間閉鎖ってのは、並みの空間系超能力者じゃアクセスは不可能だ。未来ですらもな。そこでイリイチが重用しようとしていて、中等部プロスペクト第1位の水野に賭けるという外法を思いつくわけさ…。」
阪浩の気分次第で閉鎖空間の環境は変貌する。イリイチの生命力を持っても3日間が限界であろう。だが、幸いなことにそれをこじ開ける可能性を持つ人間とそれを教えられる人間を切り札として持っている。幸運としか言いようがない。
______
「じゃあ、首尾よくやって行こう。若葉くん。」
空間移動はあまり得意ではない未来も、ある程度の術式方式を教えれば若葉の空間移動は覚醒することを見込んでいた。イリーナの話によればだが。
「とは言っても…。座標変換はある程度できるのよね…。でもイリイチと座標を変えても意味が無いし…。んー。」
才能に溢れた少年の凛々しい姿は眩しいものがある。座標変換が使えないが故にこの学園横浜を戦力外になった生徒は数知れない。
「取り敢えず典型から始めよっか。50メートル先に移動する所からだね。」
「やってみます…。」
目で追える距離への瞬間移動。少し迷ったような面持ちになりながらも、数秒とかかることなく、ぴったり50メートル先に彼は立つ。
「やっぱこれぐらいは問題ないね…。というか覚えなきゃ行けないのは制御関連か…。座標補正計算の精度向上ね…。」
横浜から東京まで移動出来る超能力者にとって50メートル先に移動することは雑作もないことである。だが、若葉の場合は、座標補正のための計算力が大幅に欠けている。僅かな歪みで海の上に変換移動してしまえば、空間移動も名折れだ。
「本当は座学で教える分野だけど…。時間がないなら、実践を積んで覚えるしかないわね…。」
この分野は複雑な計算により成り立つ。本来中等部の生徒に要求するのが酷な程に。大人の超能力者ですら曖昧な者は多いのだ。
「若葉くん。習うより慣れろってな訳で、色んな所に飛んで貰うよ。座標指定するからそこに寸分の狂いなく飛ぶことを2秒未満で出来るまでね。」
「優しい語り口でとんでもないこと言いますね…。分かりましたよ桑原先輩。とことんやってやります!」
かつて学園横浜の市場価値最高額を塗り替えた才女は、自分を越えてくれる存在が出てきたことに歓喜を覚えるようだった。
電話にて指示を飛ばすリーコンは明らかに焦りを見せていた。イリイチに送り込んだリストに乗っているPKDI:RANK4の1人に赤鉛筆でチェックマークを付けているのを確認したからだ。その後、ありとあらゆる手段を利用しても連絡もつかない。空間閉鎖により、現実次元への進入禁止の憂き目に会っている可能性を考える必要があるのだ。
「リーコン、お前の予測は恐らく当たっているだろうが、若葉ってガキがそこまでのものなのか?別に空間移動超能力なら桑原にやらせてもいいんじゃあないのか?」
「いや…。空間閉鎖ってのは、並みの空間系超能力者じゃアクセスは不可能だ。未来ですらもな。そこでイリイチが重用しようとしていて、中等部プロスペクト第1位の水野に賭けるという外法を思いつくわけさ…。」
阪浩の気分次第で閉鎖空間の環境は変貌する。イリイチの生命力を持っても3日間が限界であろう。だが、幸いなことにそれをこじ開ける可能性を持つ人間とそれを教えられる人間を切り札として持っている。幸運としか言いようがない。
______
「じゃあ、首尾よくやって行こう。若葉くん。」
空間移動はあまり得意ではない未来も、ある程度の術式方式を教えれば若葉の空間移動は覚醒することを見込んでいた。イリーナの話によればだが。
「とは言っても…。座標変換はある程度できるのよね…。でもイリイチと座標を変えても意味が無いし…。んー。」
才能に溢れた少年の凛々しい姿は眩しいものがある。座標変換が使えないが故にこの学園横浜を戦力外になった生徒は数知れない。
「取り敢えず典型から始めよっか。50メートル先に移動する所からだね。」
「やってみます…。」
目で追える距離への瞬間移動。少し迷ったような面持ちになりながらも、数秒とかかることなく、ぴったり50メートル先に彼は立つ。
「やっぱこれぐらいは問題ないね…。というか覚えなきゃ行けないのは制御関連か…。座標補正計算の精度向上ね…。」
横浜から東京まで移動出来る超能力者にとって50メートル先に移動することは雑作もないことである。だが、若葉の場合は、座標補正のための計算力が大幅に欠けている。僅かな歪みで海の上に変換移動してしまえば、空間移動も名折れだ。
「本当は座学で教える分野だけど…。時間がないなら、実践を積んで覚えるしかないわね…。」
この分野は複雑な計算により成り立つ。本来中等部の生徒に要求するのが酷な程に。大人の超能力者ですら曖昧な者は多いのだ。
「若葉くん。習うより慣れろってな訳で、色んな所に飛んで貰うよ。座標指定するからそこに寸分の狂いなく飛ぶことを2秒未満で出来るまでね。」
「優しい語り口でとんでもないこと言いますね…。分かりましたよ桑原先輩。とことんやってやります!」
かつて学園横浜の市場価値最高額を塗り替えた才女は、自分を越えてくれる存在が出てきたことに歓喜を覚えるようだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】神様WEB!そのネットショップには、神様が棲んでいる。
かざみはら まなか
キャラ文芸
22歳の男子大学生が主人公。
就活に疲れて、山のふもとの一軒家を買った。
その一軒家の神棚には、神様がいた。
神様が常世へ還るまでの間、男子大学生と暮らすことに。
神様をお見送りした、大学四年生の冬。
もうすぐ卒業だけど、就職先が決まらない。
就職先が決まらないなら、自分で自分を雇う!
男子大学生は、イラストを売るネットショップをオープンした。
なかなか、売れない。
やっと、一つ、売れた日。
ネットショップに、作った覚えがないアバターが出現!
「神様?」
常世が満席になっていたために、人の世に戻ってきた神様は、男子学生のネットショップの中で、住み込み店員になった。
神様ふたりに溺愛されています!
yuki
キャラ文芸
前世の私が遺したある『お願い事』。
それを叶えるために、2人の神様が私の元へやってきた。
私のことを愛してやまない神様2人と一緒に暮らすことになって……?
私、上原千夜(うえはら ちよ)は霊感が強い高校三年生。
子どもの頃から霊としゃべったり、憑依された人に散々な目に遭わされてきた。
そのせいで彼氏もできず、男運サイアク!だと思っていたけれど。
18歳になる誕生日に、憑依された人に殺されそうになったところを、2人のイケメンな神様が助けてくれた。
その2人は、前世の私が死ぬ間際に願った事を叶えにきたのだった。
2人が聞き取れなかった願い事の一部を、現世の私が思い出すまで、同居生活をすることに!
しかも、その間に2人の神様のことを、異性として好きにならなくちゃいけない!?
俺様当主との成り行き婚~二児の継母になりまして
澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
夜、妹のパシリでコンビニでアイスを買った帰り。
花梨は、妖魔討伐中の勇悟と出会う。
そしてその二時間後、彼と結婚をしていた。
勇悟は日光地区の氏人の当主で、一目おかれる存在だ。
さらに彼には、小学一年の娘と二歳の息子がおり、花梨は必然的に二人の母親になる。
昨日までは、両親や妹から虐げられていた花梨だが、一晩にして生活ががらりと変わった。
なぜ勇悟は花梨に結婚を申し込んだのか。
これは、家族から虐げられていた花梨が、火の神当主の勇悟と出会い、子どもたちに囲まれて幸せに暮らす物語。
※短編コン用の作品なので3万字程度の短編です。需要があれば長編化します。
後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~
絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。
※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。
この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR
ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。
だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。
無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。
人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。
だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。
自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。
殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる