上 下
137 / 205
全ての陰謀を終わらせる陰謀

永久不滅

しおりを挟む
「誰が死ぬって言いました?」
心の奥底から繋がっている関係は、細い糸のようにちぎれることはない。仲違いしたことも、それが互いの心理に大きな影響を与えたことも、永久不滅の糸はしっかりと未来と美咲を繋いでいた。
「お前は…!」
優希の脳内に様々なワードが思い浮かぶ。元学園横浜2学年第1位の才女。現超能力者開発指数段階3にして、学園横浜生徒会会長。鋼鉄線に喩えられる糸使い。そして何よりも、彼女は自分の友だちに害を成す者を許さないという評判がある。優希が付けていたフープピアスごと耳が引きちぎられ、その評判は誠のものであったことを認めるしかない。
「学園横浜PKDI、RANK4の第8位、山下優希…。本校との闘いに顔は出さない。勝手にイリイチと模擬戦をし始める。禁忌である学園外での超能力使用。何よりも…。」
鋼鉄線は美咲の怒りを表すように荒ぶっていた。氷点下の世界にて脳の演算力が低下した優希に逃げるすべは万に一つにもなかった。
「人の親友に手ぇ出しといて生き延びられると思うなよ。淫売女。」
畏怖すら覚える低く冷たい声は、この空間の気温を吟味しても背中が凍えるようだった。最前とは真逆の、美咲による鬼畜のような暴行は中々終わらなかった。糸による身体のありとあらゆる部分に切り傷を入れられ、母親に買ってもらった大事な上着は容赦なく引きちぎられ、それでもなお止まることをしない美咲を止めたのは、やはり未来であった。
「もう許してやろうよ。別にここで死んでもらっても構わないけどさ、この子がやったことを考えれば、生かして学園横浜に送った方がいいよ。」
一見すると助命嘆願のように見えるが、未来の言ったことは死刑宣告をした上で死刑にしようという司法主義に適った提案のようなものだった。互いを傷つけた者をいつ時でも許したことの無い2人の中にて、少し落ち着きが見えた。
「…まぁそうね。気絶してるし。このまま学園横浜まで運んでしまいましょ。」
美咲が作りあげた現代アートは、オプションとして泣き叫ぶが着いていたようだ。女であって女とは程遠い美咲は、その声が目障りで余計に攻撃を加えてしまった。膨大なショックにより、白目を剥きながら気絶している優希を運び、自分たちの学園に戻るのであった。
「女って怖ェな!リーコン!お前さんあの子を酷い目に合わせたら去勢されちまうぞ!頑張れや!」
凄惨な超能力者の攻撃も、イリイチからすれば娯楽の1種に過ぎない。シックス・センスを取り戻すための計画は極めて順調に進んでおり、イリーナと若葉を送り届ける未来の反応が消えた時から未来の作った4次元空間で起きた出来事を全て見届けていたのだ。
「シックス・センスはありとあらゆる超能力者が生み出す術式に対するアクセス権がある。未来があの小物にやられたときはヒヤッとしたが、あの生徒会長がなんとかしてくれたか。」
自分の彼女をただ見殺しにする訳にも行かない。いざとなればイリイチを急かして向かわせる予定だったリーコンは胸をなでおろした。
「ま、俺たちの探究はまだまだこれからだ。次のアルファベットたちを生成してくれ。」
美咲と未来のようにイリイチとシックス・センスは繋がっていなくてはならない。誰よりも強く誰よりも優越していなければ、生きていく道も消えて失せるのだ。
「生き延びてやる。この第六感シックス・センスでな。」
力強く放った覚悟の言葉は、イリイチの哲学を表すものだ。所詮は卑しい娼婦の子どもに過ぎない彼が生き延びる物語の主役として、舞台から降りる気は無い。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

迦具夜姫異聞~紅の鬼狩姫~

あおい彗星(仮)
キャラ文芸
かぐや姫×陰陽師の和風バトルファンタジー! あらすじ 紅い月が昇る夜に月から堕ちてくる罪人──月鬼。 彼らから人々を守るために、闘う武人。 それが陰陽師であった。 平安時代から今もなお続く闘いに、一人の少女が足を踏み入れる。 大切なものを探すために。約束を胸に抱いて──。 第1夜 陰陽師 主人公の神野緋鞠(かみのひまり)は、見習い陰陽師。相棒の妖怪、銀狼(ぎんろう)と共に陰陽師の聖地である古都“大和”に向かう途中、行き倒れてしまい──。 【暁入隊編】 第2夜 古都大和 大和に着いた緋鞠と銀狼。銀狼の旧知や謎の少年との出会い。兄の情報を知る老人との再会など、試験前にもひと波乱!  第3夜 鬼狩試験 鬼狩試験が開始。 校舎内を探していると、突然結界に異変が起きる。実体化する体、月鬼の出現。そして、元凶との対峙。絶体絶命のピンチに陥る緋鞠は、無事に月の裁定者と契約を交わし、力を手にいれることができるのか。 第4夜 天岩戸の天照 四鬼との激闘の末、月姫と無事契約を交わした緋鞠は、病院で目を覚ます。数日経ってもなかなか傷が治らず、落ち込む緋鞠に琴音はとある女性の話をする。どんな病気や怪我、呪いでさえも治してみせる太陽のように美しい女性薬師──天岩戸の天照のうわさ。 緋鞠は彼女に会うために脱走作戦を決行!? 【星命学園編】 第5夜 星命学園 いよいよ星命学園に入学。 楽しい学園生活に期待を膨らませていたが、早速波乱の予感!? 新キャラも増えて大騒ぎ! そして松曜から明かされる、兄の最後の任務とは──。 第6夜 夢みる羊 波乱の一日目を終えた緋鞠。二日目は警戒して学園へと挑むも、嬉しい伝言が。しかし、そんなうきうき気分も粉砕!? 催される体力測定、その名も「100メェーとる走」!100匹の羊を捕まえろ……って100匹!?戸惑う生徒たちに、見守る教師たち。それぞれの想いとは──。 第7夜 忘却の地下牢 模擬試験前日。翼が誰ともチームを組んでいないことを知り、そのことで翼と喧嘩になってしまい、落ち込む緋鞠。 そんなとき、翼の過去を知る生徒と戦闘になり、罰として地下牢に入れられてしまう。 そこでみた、幼き日の記憶の断片とは。 第8夜 心休める時 澪の蔵で目を覚ます緋鞠。ゆっくり休むよう言われるが、地下牢で見た出来事が気になってしまって眠れない。 小雨の音を聞きながら緋鞠が思い出すのは、あの約束。 そして、たまたまあの人も起きていて? ──予告── いよいよ始まる模擬試験。 緋鞠は翼に誘われ、琴音も加えた三人+一匹のチームを組むことに。 対する瑠衣と来栖は、己が一番となるために全力で闘うことを宣言。 勝利はどのチームに輝くのか。 ──第9夜 模擬試験(前編)

私が異世界物を書く理由

京衛武百十
キャラ文芸
女流ラノベ作家<蒼井霧雨>は、非常に好き嫌いの分かれる作品を書くことで『知る人ぞ知る』作家だった。 そんな彼女の作品は、基本的には年上の女性と少年のラブロマンス物が多かったものの、時流に乗っていわゆる<異世界物>も多く生み出してきた。 これは、彼女、蒼井霧雨が異世界物を書く理由である。     筆者より 「ショタパパ ミハエルくん」が当初想定していた内容からそれまくった挙句、いろいろとっ散らかって収拾つかなくなってしまったので、あちらはあちらでこのまま好き放題するとして、こちらは改めて少しテーマを絞って書こうと思います。 基本的には<創作者の本音>をメインにしていく予定です。 もっとも、また暴走する可能性が高いですが。 なろうとカクヨムでも同時連載します。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜

万実
キャラ文芸
う、嘘でしょ。 こんな生き物が、こんな街の真ん中に居ていいの?! 私の目の前に現れたのは二本の角を持つ鬼だった。 バイトを首になった私、雪村深月は新たに見つけた職場『赤星探偵事務所』で面接の約束を取り付ける。 その帰り道に、とんでもない事件に巻き込まれた。 鬼が現れ戦う羽目に。 事務所の職員の拓斗に助けられ、鬼を倒したものの、この人なんであんな怖いのと普通に戦ってんの? この事務所、表向きは『赤星探偵事務所』で、その実態は『赤星陰陽師事務所』だったことが判明し、私は慄いた。 鬼と戦うなんて絶対にイヤ!怖くて死んじゃいます! 一度は辞めようと思ったその仕事だけど、超絶イケメンの所長が現れ、ミーハーな私は彼につられて働くことに。 はじめは石を投げることしかできなかった私だけど、式神を手に入れ、徐々に陰陽師としての才能が開花していく。

女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)
キャラ文芸
・ただ今《女装と復讐は街の華》の続編作品《G.F. -ゴールドフィッシュ-》を執筆中です。 - 作者:木乃伊 - この作品は、2011年11月から2013年2月まで執筆し、とある別の執筆サイトにて公開&完結していた《女装と復讐》の令和版リメイク作品《女装と復讐は街の華》です。 - あらすじ - お洒落な女の子たちに笑われ、馬鹿にされる以外は普通の男子大学生だった《岩塚信吾》。 そして彼が出会った《篠崎杏菜》や《岡本詩織》や他の仲間とともに自身を笑った女の子たちに、 その抜群な女装ルックスを武器に復讐を誓い、心身ともに成長を遂げていくストーリー。 ※本作品中に誤字脱字などありましたら、作者(木乃伊)にそっと教えて頂けると、作者が心から救われ喜びます。 ストーリーは始まりから完結まで、ほぼ前作の筋書きをそのまま再現していますが、今作中では一部、出来事の語りを詳細化し書き加えたり、見直し修正や推敲したり、現代の発展技術に沿った場面再構成などを加えたりしています。 ※※近年(現実)の日本や世界の経済状況や流行病、自然災害、事件事故などについては、ストーリーとの関連性を絶って表現を省いています。 舞台 (美波県)藤浦市新井区早瀬ヶ池=通称瀬ヶ池。高層ビルが乱立する巨大繁華街で、ファッションや流行の発信地と言われている街。お洒落で可愛い女の子たちが集まることで有名(その中でも女の子たちに人気なのは"ハイカラ通り") 。 ※藤浦市は関東圏周辺またはその付近にある(?)48番目の、現実には存在しない空想上の県(美波県)のなかの大都市。

水の失われた神々

主道 学
キャラ文芸
竜宮城は実在していた。 そう宇宙にあったのだ。 浦島太郎は海にではなく。遥か彼方の惑星にある竜宮城へと行ったのだった。 水のなくなった惑星 滅亡の危機と浦島太郎への情愛を感じていた乙姫の決断は、龍神の住まう竜宮城での地球への侵略だった。 一方、日本では日本全土が沈没してきた頃に、大人顔負けの的中率の占い師の高取 里奈は山門 武に不吉な運命を言い渡した。 存在しないはずの神社の巫女の社までいかなければ、世界は滅びる。 幼馴染の麻生 弥生を残しての未知なる旅が始まった。 果たして、宇宙にある大海の龍神の住まう竜宮城の侵略を武は阻止できるのか? 竜宮城伝説の悲恋の物語。

デイサービス ふくふく ~あやかし招き猫付き~

織原深雪
キャラ文芸
小さいころから面倒見てくれた祖母が、弱ってきて私は高校生の時から家族の中で一番、祖母の介護にあたってきた。 バイトも進学もせぬままに、日々祖母のお世話をしてきた。 そんな祖母を、見送った時。 私は二十一歳になっていた。 進学もしていないし、仕事もしたことがない二十一歳。 私、笹倉佳菜恵は、どうしようと思い悩んでた。 そんな時、祖母の介護でお世話になったケアマネさんに言われた。 「佳菜恵ちゃんは、介護の経験値があるよ。僕の紹介で良ければ、介護士で働いてみたらどうだろう?」 そうして紹介してもらったデイサービスふくふくは、眺めの良い立地に建つ一軒家風のデイサービス施設で、穏やかな利用者さんに囲まれて、佳菜恵は自分の時間を取り戻していく。 そして、そこには珍しい尻尾が二つに分かれた猫がいた。 って、この猫私にしか見えていないの?! 新人介護士と、そこに現れる尻尾が二本のあやかし猫との、ほのぼのストーリー。

ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十
キャラ文芸
蒼井ミハエルは、外見は十一歳くらいの人間にも見えるものの、その正体は、<吸血鬼>である。人間の<ラノベ作家>である蒼井霧雨(あおいきりさめ)との間に子供を成し、幸せな家庭生活を送っていた。 なお、長男と長女はミハエルの形質を受け継いで<ダンピール>として生まれ、次女は蒼井霧雨の形質を受け継いで普通の人間として生まれた。 これは、そういう特殊な家族構成でありつつ、人間と折り合いながら穏当に生きている家族の物語である。     筆者より  ショタパパ ミハエルくん(マイルドバージョン)として連載していたこちらを本編とし、タイトルも変更しました。

処理中です...