上 下
116 / 205
覇権争い

ルール・ブリタニア

しおりを挟む
「武功を挙げるために突っ走るのはアナタたちの自由。それを裏切られて死んでいくのも自由。そして私がアナタを潰すためにここに立っているのは…。」
「自由だ。流石は民主主義の元祖国家。なんでもかんでも自由で終わらせようとしてやがるそんなイギリスには敬意を払うよ。だがな…。」
封建主義国家として長い年月を過ごしてきたロシア、民主主義国家として七つの海を制覇したイギリス。ランドパワーとシーパワー。利権を巡って対立し、利権を巡って同盟を組んできた。
「お前には払えねェな!!糞ライミー英国人野郎が!さぁ!蹴りをつけようか。」
日本国超能力者学園、「創成学園」における、学園東京本校と学園横浜における対決は、結局のところ、イギリス人とロシア人による陰謀劇に過ぎなかった。それを証明するかのように、もう本校の日本人も横浜の日本人も誰も居ない。居るのはただ2人。これ以上の物は何一つとして必要が無い。
「血気盛んだな。ま、私に向かってきた愚か者はみんなそうやっているんだよ。そんな連中は皆打ち倒してきた。だかな、ただ1人だけ、そのに従わない者がいる。君はやはり私の宿敵のようだな!」
本校生徒会本部は、アーサーの左腕が壁に触れた瞬間に、糸が切れたかのように崩壊した。その瞬間にシックス・センスは完全に作動する。狭く闘いに適さない本部は、何が起きてもおかしくはない瓦礫の山に変貌を遂げた。
「まじか!」
未来予知によって、容赦のない崩壊が起きることを知ったイリイチは、彼らしくもなく驚きを見せる。百獣の王の如くに変化を起こしたアーサーを見た彼は、その隙をつくように不意打ちを食らわせた。勢いよく地面に這い回るアーサーは、その衝撃の割には堪えていない。
「私が知略と策略だけでこの座に就いているひ弱なナードオタク野郎に見えたかね?本校生徒に守られなくては何も出来ない事務官に見えたかね?よろしい!ならばだ…」
目ではとても追うことの出来ない速度を出しながら、イリイチの眼中に入った瞬間に、彼の左手はイリイチの顔面を捉える。
「ならば、今日から哲学を改めろ。」
凡そ人間が投げられた速度ではない速度のまま、イリイチは本校の奥の奥まで吹き飛ばされていく。
「っクソ!痛ェ!!あの野郎まさか…!」
悪寒は的中する。イングランド王国の国章にはイングランドを象徴する金獅子が描かれている。アーサーは今、その金獅子、ライオンの力を得ているのだ。
「力技のみでねじ伏せようってか!っくそ!」
身体強化残量時間をイリイチは全て解除した。シックス・センスの制限時間的に、身体強化で粘り、時が来れば、シックス・センスを利用した最大攻撃で撃破するしかない。制限時間付きの超能力者にとって途方もない消耗戦を強いられることになる形となってしまった。
「まだ終わっちゃいないぞ?なに休憩してるんだ?」
単純な力業による無慈悲な夜のような暴力は、アーサーの性格にはそぐわないものであった。知略や策略に長けた参謀としての自分が、強力な力を持った野蛮極まりない金獅子に塗りつぶされるからである。それでも目的のために手段は選ばない。反共主義者でありながら、ナチス・ドイツという敵のために、共産主義国家であるソ連にレンドリースを開始したチャーチルのように。
「ほらァ!起きろって!」
昂奮気味であるアーサーは、イリイチという不倶戴天の敵を自らの手で葬れる千載一遇の機会を逃すまいと、ひたすらイリイチを殴り続ける。
それに全く反応出来ていないイリイチは、身体強化によって強くなった肉体すらも破壊される可能性が濃くなっている。
「あ?もう死ぬのか?あ?舐めてんのか?あ?」
あえて息の根を止めることなく、あえてイリイチの反撃を受け入れようと、アーサーは動きを止める。
「も…ど…な…ェ…ぞ!」
喉が引きちぎれたイリイチは、最後の場合「第六感シックス・センス完全解除及び身体強化完全解除」の布告をした。
大熊と金獅子による最終決戦は堰を切られた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~

絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。 ※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。

裕也の冒険 ~~不思議な旅~~

ひろの助
キャラ文芸
俺。名前は「愛武 裕也」です。 仕事は商社マン。そう言ってもアメリカにある会社。 彼は高校時代に、一人の女性を好きになった。 その女性には、不思議なハートの力が有った。 そして、光と闇と魔物、神々の戦いに巻き込まれる二人。 そのさなか。俺は、真菜美を助けるため、サンディアという神と合体し、時空を移動する力を得たのだ。 聖書の「肉と骨を分け与えん。そして、血の縁を結ぶ」どおり、 いろんな人と繋がりを持った。それは人間の単なる繋がりだと俺は思っていた。 だが… あ。俺は「イエス様を信じる」。しかし、組織の規律や戒律が嫌いではぐれ者です。 それはさておき、真菜美は俺の彼女。まあ、そんな状況です。 俺の意にかかわらず、不思議な旅が待っている。

短編集

フォーゼイロ
キャラ文芸
短編集です お気に入りが見つかりますように

【完結】神様WEB!そのネットショップには、神様が棲んでいる。

かざみはら まなか
キャラ文芸
22歳の男子大学生が主人公。 就活に疲れて、山のふもとの一軒家を買った。 その一軒家の神棚には、神様がいた。 神様が常世へ還るまでの間、男子大学生と暮らすことに。 神様をお見送りした、大学四年生の冬。 もうすぐ卒業だけど、就職先が決まらない。 就職先が決まらないなら、自分で自分を雇う! 男子大学生は、イラストを売るネットショップをオープンした。 なかなか、売れない。 やっと、一つ、売れた日。 ネットショップに、作った覚えがないアバターが出現! 「神様?」 常世が満席になっていたために、人の世に戻ってきた神様は、男子学生のネットショップの中で、住み込み店員になった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺様当主との成り行き婚~二児の継母になりまして

澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
夜、妹のパシリでコンビニでアイスを買った帰り。 花梨は、妖魔討伐中の勇悟と出会う。 そしてその二時間後、彼と結婚をしていた。 勇悟は日光地区の氏人の当主で、一目おかれる存在だ。 さらに彼には、小学一年の娘と二歳の息子がおり、花梨は必然的に二人の母親になる。 昨日までは、両親や妹から虐げられていた花梨だが、一晩にして生活ががらりと変わった。 なぜ勇悟は花梨に結婚を申し込んだのか。 これは、家族から虐げられていた花梨が、火の神当主の勇悟と出会い、子どもたちに囲まれて幸せに暮らす物語。 ※短編コン用の作品なので3万字程度の短編です。需要があれば長編化します。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

処理中です...