101 / 205
覇権争い
「彼」の安全
しおりを挟む
「考えてみればごくごく当たり前なことだ。あの子は本校との対立理由になるぐらいに危険な存在。前に本校の回し屋に拉致されたこともあったしな?要求はただ一つ。俺の妹の安全保障。創成の軍隊から引っ張ってこい。」
腕を組みながら尊大な態度で要求を通そうとする。横浜の現実を考えればこの要求は辛うじて通る可能性がある。第2校解放作戦開始が迫ってきている今となれば、学園横浜超能力者開発指数段階4第2位であるロシア人の存在なしでは始まらない。
「ついでイリーナに一般教養ぐらいは教えられる野郎の方がありがてェな。あと雑務もな。要するに、執事だ。バトラー。強くて、頭が良くて、雑務なんでもこなす便利屋。そういうヤツだ。」
「とことん都合のいい存在を求めるな。いい?学園はあくまで創成グループの1部門。ピースキーパーから引っ張りだすにはそれなりの…。」
「んなことは聞いてねェんだよ?そんな歯切れのいい言葉ではいそうですかって引き下がると思うか?お嬢さん?回答は2つだけ。はいかいいえ。さぁ!」
美咲は覚悟した。イリイチなしには横浜の勝利は得られない。ピースキーパーから有能な超能力者を引っ張りだす覚悟を決めたのだ。強い語尾にたじろぐことなく、彼女は決断を下す。
「わかった。わかった!よろしい!学園横浜がピースキーパーから万能超能力者を融通するわ。」
「それでいい。それで宜しい。契約成立だ。作戦決行が2日後だろ?それに合わせて本校へ殴り込みにいってやるよ。」
イリイチは満足気味だった。横浜が彼に対して出せる最大限の誠意だ。創成の1部門に過ぎない学園の更に1部門である横浜が世界1位の最強軍隊から強力な超能力者をイリイチの安全保障に使うということは、彼の予測通りに前例なきことだった。
「…1つ聞きたいんだけど、貴方にとってイリーナ、妹というのはどういう存在なの?血を分けた兄妹として余計な打算なしに守ろうとしているのか、それともなければもう1人のシックス・センスとして自分の敵に回られると困ると言う打算で守っているのか。」
「どうだろうな?映画の世界なら殺人鬼にも愛する人がいるってストーリーになるんだろうが、これは現実だ。半分は無償の愛。もう半分は打算。それでいいか?」
そんな事は下らないものに過ぎないと言わんばかりに濁した回答を返す。さらにそれを返すようにイリイチは彼女の傷跡を抉る。
「無償の愛を勝手に押し付けて、自分の愛のためにとことん打算的になれるどこかの誰かさんに比べれば俺のやっていることは大したことでもない。」
「笑えない冗談ね。」
「笑えねェのは誰かさんに殺されたであろう生徒だろ?」
嫌味に溢れた事実の羅列は、あまりそりが合わない2人の関係を象徴するようだった。イリイチからすれば、愛や友情に惑わされて殺人をこなす彼女に対して好奇心と恐怖を感じるのだろう。美咲からすれば金や利益のためなら誰でも関係なく大量殺戮を難なくやり遂げるイリイチは狂気の世界の住民なのだろう。互いに互いに対していい感情を持っていない。
「……ま、過去は取り戻せないわ。大事なのは今。それはおわかりでしょ?」
「そうだな。全く結構だ。」
苦虫を噛み潰したような面持ちが、超能力者学園の頂点に君臨する女王の強き面持ちに変わったことに満足したイリイチは、それ以上の嫌味を返すことはなかった。
腕を組みながら尊大な態度で要求を通そうとする。横浜の現実を考えればこの要求は辛うじて通る可能性がある。第2校解放作戦開始が迫ってきている今となれば、学園横浜超能力者開発指数段階4第2位であるロシア人の存在なしでは始まらない。
「ついでイリーナに一般教養ぐらいは教えられる野郎の方がありがてェな。あと雑務もな。要するに、執事だ。バトラー。強くて、頭が良くて、雑務なんでもこなす便利屋。そういうヤツだ。」
「とことん都合のいい存在を求めるな。いい?学園はあくまで創成グループの1部門。ピースキーパーから引っ張りだすにはそれなりの…。」
「んなことは聞いてねェんだよ?そんな歯切れのいい言葉ではいそうですかって引き下がると思うか?お嬢さん?回答は2つだけ。はいかいいえ。さぁ!」
美咲は覚悟した。イリイチなしには横浜の勝利は得られない。ピースキーパーから有能な超能力者を引っ張りだす覚悟を決めたのだ。強い語尾にたじろぐことなく、彼女は決断を下す。
「わかった。わかった!よろしい!学園横浜がピースキーパーから万能超能力者を融通するわ。」
「それでいい。それで宜しい。契約成立だ。作戦決行が2日後だろ?それに合わせて本校へ殴り込みにいってやるよ。」
イリイチは満足気味だった。横浜が彼に対して出せる最大限の誠意だ。創成の1部門に過ぎない学園の更に1部門である横浜が世界1位の最強軍隊から強力な超能力者をイリイチの安全保障に使うということは、彼の予測通りに前例なきことだった。
「…1つ聞きたいんだけど、貴方にとってイリーナ、妹というのはどういう存在なの?血を分けた兄妹として余計な打算なしに守ろうとしているのか、それともなければもう1人のシックス・センスとして自分の敵に回られると困ると言う打算で守っているのか。」
「どうだろうな?映画の世界なら殺人鬼にも愛する人がいるってストーリーになるんだろうが、これは現実だ。半分は無償の愛。もう半分は打算。それでいいか?」
そんな事は下らないものに過ぎないと言わんばかりに濁した回答を返す。さらにそれを返すようにイリイチは彼女の傷跡を抉る。
「無償の愛を勝手に押し付けて、自分の愛のためにとことん打算的になれるどこかの誰かさんに比べれば俺のやっていることは大したことでもない。」
「笑えない冗談ね。」
「笑えねェのは誰かさんに殺されたであろう生徒だろ?」
嫌味に溢れた事実の羅列は、あまりそりが合わない2人の関係を象徴するようだった。イリイチからすれば、愛や友情に惑わされて殺人をこなす彼女に対して好奇心と恐怖を感じるのだろう。美咲からすれば金や利益のためなら誰でも関係なく大量殺戮を難なくやり遂げるイリイチは狂気の世界の住民なのだろう。互いに互いに対していい感情を持っていない。
「……ま、過去は取り戻せないわ。大事なのは今。それはおわかりでしょ?」
「そうだな。全く結構だ。」
苦虫を噛み潰したような面持ちが、超能力者学園の頂点に君臨する女王の強き面持ちに変わったことに満足したイリイチは、それ以上の嫌味を返すことはなかった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
なんか知らんけどVはじめる
緑窓六角祭
キャラ文芸
無職の香波は現在友人の沙夜の家に居候中だが、その友人にそそのかされてどういうわけかVtuberを始めることになった。
※カクヨム・アルファポリス重複投稿
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜
万実
キャラ文芸
う、嘘でしょ。
こんな生き物が、こんな街の真ん中に居ていいの?!
私の目の前に現れたのは二本の角を持つ鬼だった。
バイトを首になった私、雪村深月は新たに見つけた職場『赤星探偵事務所』で面接の約束を取り付ける。
その帰り道に、とんでもない事件に巻き込まれた。
鬼が現れ戦う羽目に。
事務所の職員の拓斗に助けられ、鬼を倒したものの、この人なんであんな怖いのと普通に戦ってんの?
この事務所、表向きは『赤星探偵事務所』で、その実態は『赤星陰陽師事務所』だったことが判明し、私は慄いた。
鬼と戦うなんて絶対にイヤ!怖くて死んじゃいます!
一度は辞めようと思ったその仕事だけど、超絶イケメンの所長が現れ、ミーハーな私は彼につられて働くことに。
はじめは石を投げることしかできなかった私だけど、式神を手に入れ、徐々に陰陽師としての才能が開花していく。
私が異世界物を書く理由
京衛武百十
キャラ文芸
女流ラノベ作家<蒼井霧雨>は、非常に好き嫌いの分かれる作品を書くことで『知る人ぞ知る』作家だった。
そんな彼女の作品は、基本的には年上の女性と少年のラブロマンス物が多かったものの、時流に乗っていわゆる<異世界物>も多く生み出してきた。
これは、彼女、蒼井霧雨が異世界物を書く理由である。
筆者より
「ショタパパ ミハエルくん」が当初想定していた内容からそれまくった挙句、いろいろとっ散らかって収拾つかなくなってしまったので、あちらはあちらでこのまま好き放題するとして、こちらは改めて少しテーマを絞って書こうと思います。
基本的には<創作者の本音>をメインにしていく予定です。
もっとも、また暴走する可能性が高いですが。
なろうとカクヨムでも同時連載します。
妖の木漏れ日カフェ
みー
キャラ文芸
ある時、ふと井戸の中を覗いたら吸い込まれてついた先は妖の街。
そこで、カフェを営む妖にお世話になることに。
そこで過ごしていると耳に入ってくるこの街と人間に関する噂。
自分がいると街が滅びてしまう……?
戸惑いの神嫁と花舞う約束 呪い子の幸せな嫁入り
響 蒼華
キャラ文芸
四方を海に囲まれた国・花綵。
長らく閉じられていた国は動乱を経て開かれ、新しき時代を迎えていた。
特権を持つ名家はそれぞれに異能を持ち、特に帝に仕える四つの家は『四家』と称され畏怖されていた。
名家の一つ・玖瑶家。
長女でありながら異能を持たない為に、不遇のうちに暮らしていた紗依。
異母妹やその母親に虐げられながらも、自分の為に全てを失った母を守り、必死に耐えていた。
かつて小さな不思議な友と交わした約束を密かな支えと思い暮らしていた紗依の日々を変えたのは、突然の縁談だった。
『神無し』と忌まれる名家・北家の当主から、ご長女を『神嫁』として貰い受けたい、という申し出。
父達の思惑により、表向き長女としていた異母妹の代わりに紗依が嫁ぐこととなる。
一人向かった北家にて、紗依は彼女の運命と『再会』することになる……。
水の失われた神々
主道 学
キャラ文芸
竜宮城は実在していた。
そう宇宙にあったのだ。
浦島太郎は海にではなく。遥か彼方の惑星にある竜宮城へと行ったのだった。
水のなくなった惑星
滅亡の危機と浦島太郎への情愛を感じていた乙姫の決断は、龍神の住まう竜宮城での地球への侵略だった。
一方、日本では日本全土が沈没してきた頃に、大人顔負けの的中率の占い師の高取 里奈は山門 武に不吉な運命を言い渡した。
存在しないはずの神社の巫女の社までいかなければ、世界は滅びる。
幼馴染の麻生 弥生を残しての未知なる旅が始まった。
果たして、宇宙にある大海の龍神の住まう竜宮城の侵略を武は阻止できるのか?
竜宮城伝説の悲恋の物語。
【完結】召しませ神様おむすび処〜メニューは一択。思い出の味のみ〜
四片霞彩
キャラ文芸
【第6回ほっこり・じんわり大賞にて奨励賞を受賞いたしました🌸】
応援いただいた皆様、お読みいただいた皆様、本当にありがとうございました!
❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.
疲れた時は神様のおにぎり処に足を運んで。店主の豊穣の神が握るおにぎりが貴方を癒してくれる。
ここは人もあやかしも神も訪れるおむすび処。メニューは一択。店主にとっての思い出の味のみ――。
大学進学を機に田舎から都会に上京した伊勢山莉亜は、都会に馴染めず、居場所のなさを感じていた。
とある夕方、花見で立ち寄った公園で人のいない場所を探していると、キジ白の猫である神使のハルに導かれて、名前を忘れた豊穣の神・蓬が営むおむすび処に辿り着く。
自分が使役する神使のハルが迷惑を掛けたお詫びとして、おむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりをご馳走してくれる蓬。おにぎりを食べた莉亜は心を解きほぐされ、今まで溜めこんでいた感情を吐露して泣き出してしまうのだった。
店に通うようになった莉亜は、蓬が料理人として致命的なある物を失っていることを知ってしまう。そして、それを失っている蓬は近い内に消滅してしまうとも。
それでも蓬は自身が消える時までおにぎりを握り続け、店を開けるという。
そこにはおむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりと、かつて蓬を信仰していた人間・セイとの間にあった優しい思い出と大切な借り物、そして蓬が犯した取り返しのつかない罪が深く関わっていたのだった。
「これも俺の運命だ。アイツが現れるまで、ここでアイツから借りたものを守り続けること。それが俺に出来る、唯一の贖罪だ」
蓬を助けるには、豊穣の神としての蓬の名前とセイとの思い出の味という塩おにぎりが必要だという。
莉亜は蓬とセイのために、蓬の名前とセイとの思い出の味を見つけると決意するがーー。
蓬がセイに犯した罪とは、そして蓬は名前と思い出の味を思い出せるのかーー。
❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.
※ノベマに掲載していた短編作品を加筆、修正した長編作品になります。
※ほっこり・じんわり大賞の応募について、運営様より許可をいただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる