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覇権争い
まだ終わっちゃいない
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「説明書がいる理由が分かったよ…。無線で人工左脳を制御するんだ。」
イリイチの人工脳髄の説明書にはスマートウォッチが同封されていた。それを彼に渡すと、説明書通りに話していく。
「まず、左脳機能は限りなく普通の人間のそれに近い。充電不要で常時動き続ける。そして超能力制御も並行して行えるわけだ。単純な身体能力強化をな。さらに、さらに…シックス・センスを擬似的に再現することも出来る。つまりは、完全なシックス・センスとは言い難い。」
「自動的に超能力者を感知してシックス・センスやその身体能力強化を開始するわけだ。時間制限付きでなぁ。時間切れになると人工脳髄がオーバーヒートして呼吸困難に至ると。」
スマートウォッチには、イリイチが使える超能力が丁寧に記されていた。身体能力は完全開放しても1時間は行動可能。ただしシックス・センスの場合は、相手の位置をある程度把握するだけの限定開放でも制限時間は5分。イリイチが普段使用していた「第六感」を再現できる時間は僅か60秒。完全復活には程遠い。そんな現状を把握した彼は、溜息交じりだった。
「これでもいい方なんだろうな。まぁ、各国が威信を賭けてやっていたシックス・センスの探究は、基礎中の基礎から出ていないし、学園横浜が総力を賭けてもこんなもんだろうな…ま、1ヶ月間シックス・センスなしで生活したのは正解だった。今んところは違和感ねぇし。」
煙草を灰皿に押し付けた。それを見た大智も同じことを行い、彼らは再び病室に戻っていた。
学園横浜は賑やかになっていた。情報統制が行われているのにも関わらず、噂話の程度は横浜当局が把握しているものとほぼ同じだった。
「自動機能は切っとく…。横浜は妙な程に騒がしいな。」
「そういや詳しくは言ってなかったな。今、横浜は本校と戦争状態だ。あの糞ライミーが喧嘩ぶっかけてきてな。ヤツらの狙いはお前ら兄妹。そこは上手く伏せてはいるがな。」
軽やかに機密情報を話した大智は、大きな開戦原因であるイリイチに対してその責任を負わせる意味合いを込めた口調だった。もう横浜の勢いは止まることはないにしても、せめて少しでも犠牲を減らすためにも学園横浜最高戦力の1人が闘ってもらわないと困るのだ。
「……!まだ終わっちゃいないか…!なるほどな、そう来たか!」
イリイチはよく笑う男だった。暗殺を成し遂げたときも、大量殺戮の当事者になった時も、極秘のうちに銃殺が決まっても、学園横浜にて事件を巻き起こしても、いつも彼は笑っていた。そんな彼はやはり曇りひとつない笑顔が良く似合う。
「なにがおかしい?」
タガが外れたかのように狂気じみた笑いが止まらない様子のイリイチを見た大智は、怒りでもなく単純な疑問を投げかけた。
「なにがおかしいって?そりゃ愚問だ。こんなにおかしいことがあるか?あのイングランド人が顔を真っ赤にして、劣等民族として嘲笑っていたスラヴ人に一泡吹かされたことを未だに根に持ってる。こんなに面白いことがあるか?」
高笑いを済ませる。それでも笑いを堪える様子で、イリイチは宣戦布告を投げ飛ばす。
「上等じゃあねぇか。ロバが大熊に勝てるわけがねぇことを教えてやる。」
覇権争いの役者は揃った。欲望と意趣を返すための闘いは始まろうとしている。
イリイチの人工脳髄の説明書にはスマートウォッチが同封されていた。それを彼に渡すと、説明書通りに話していく。
「まず、左脳機能は限りなく普通の人間のそれに近い。充電不要で常時動き続ける。そして超能力制御も並行して行えるわけだ。単純な身体能力強化をな。さらに、さらに…シックス・センスを擬似的に再現することも出来る。つまりは、完全なシックス・センスとは言い難い。」
「自動的に超能力者を感知してシックス・センスやその身体能力強化を開始するわけだ。時間制限付きでなぁ。時間切れになると人工脳髄がオーバーヒートして呼吸困難に至ると。」
スマートウォッチには、イリイチが使える超能力が丁寧に記されていた。身体能力は完全開放しても1時間は行動可能。ただしシックス・センスの場合は、相手の位置をある程度把握するだけの限定開放でも制限時間は5分。イリイチが普段使用していた「第六感」を再現できる時間は僅か60秒。完全復活には程遠い。そんな現状を把握した彼は、溜息交じりだった。
「これでもいい方なんだろうな。まぁ、各国が威信を賭けてやっていたシックス・センスの探究は、基礎中の基礎から出ていないし、学園横浜が総力を賭けてもこんなもんだろうな…ま、1ヶ月間シックス・センスなしで生活したのは正解だった。今んところは違和感ねぇし。」
煙草を灰皿に押し付けた。それを見た大智も同じことを行い、彼らは再び病室に戻っていた。
学園横浜は賑やかになっていた。情報統制が行われているのにも関わらず、噂話の程度は横浜当局が把握しているものとほぼ同じだった。
「自動機能は切っとく…。横浜は妙な程に騒がしいな。」
「そういや詳しくは言ってなかったな。今、横浜は本校と戦争状態だ。あの糞ライミーが喧嘩ぶっかけてきてな。ヤツらの狙いはお前ら兄妹。そこは上手く伏せてはいるがな。」
軽やかに機密情報を話した大智は、大きな開戦原因であるイリイチに対してその責任を負わせる意味合いを込めた口調だった。もう横浜の勢いは止まることはないにしても、せめて少しでも犠牲を減らすためにも学園横浜最高戦力の1人が闘ってもらわないと困るのだ。
「……!まだ終わっちゃいないか…!なるほどな、そう来たか!」
イリイチはよく笑う男だった。暗殺を成し遂げたときも、大量殺戮の当事者になった時も、極秘のうちに銃殺が決まっても、学園横浜にて事件を巻き起こしても、いつも彼は笑っていた。そんな彼はやはり曇りひとつない笑顔が良く似合う。
「なにがおかしい?」
タガが外れたかのように狂気じみた笑いが止まらない様子のイリイチを見た大智は、怒りでもなく単純な疑問を投げかけた。
「なにがおかしいって?そりゃ愚問だ。こんなにおかしいことがあるか?あのイングランド人が顔を真っ赤にして、劣等民族として嘲笑っていたスラヴ人に一泡吹かされたことを未だに根に持ってる。こんなに面白いことがあるか?」
高笑いを済ませる。それでも笑いを堪える様子で、イリイチは宣戦布告を投げ飛ばす。
「上等じゃあねぇか。ロバが大熊に勝てるわけがねぇことを教えてやる。」
覇権争いの役者は揃った。欲望と意趣を返すための闘いは始まろうとしている。
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