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超能力者開発指数(PKDI)

化け物

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人間は何を持って人間と言えるのだろうか。物事の証明というものは単純な事の方が難しいものだ。人の言葉を話すとか人間の意思を持っているものが人間だ、と断言するのは簡単だ。だが、それは本当そうであるのか。世の中には人間の言葉を話して、人間としての意思をもち、見た目でも中身でも人間として保証されるような存在も確かに居るのだ。
「ば、化け物め!」
傭兵は叫んだ。暗い夜は化け物のための夜なのだ。あどけなさの残る少女が無限とも取れる様々な武器によって1000人からなる歴戦の傭兵たちを蹂躙していく。超能力のようなもので浮いたガトリングが彼らの回転翼航空機チョッパーを吹き飛ばす。大量のライフルが寸分の狂い無く彼らのともがらの頭を散らしていく。ロケットランチャーは彼らの車両を破壊する。
「良く言われるよ。」
少女は狂気に満ち溢れた笑顔でひたすらに吹き飛ばす。もう何も残っていない。武器もない、車両もない、生命すらもない。
「くそがぁ!」
自分が最後の1人なのかもわからないぐらいに錯乱した男は乱射によって現実から逃れようとした。苦しみから逃れられたのはそれから数秒後のことである。
「うーん。終わり!シャワー浴びよ。」
化け物こと未来はひと仕事終えたような気分の良さと共にシャワーを浴びて寝ようとしていた。一個大隊は僅か10分足らずで全滅したのだ。超能力者というによって。
「化け物だって。失礼なこと言っちゃうわね。」
美咲は不満たっぷりに口を開いた。正当防衛のために超能力を駆使して化け物だと言われる筋合いはないというのが彼らの中の共通意識だった。
「大概化け物だがな。1000人の傭兵を10分足らずで全滅できる少女なんて。物語にしても出来すぎだ。」
同じように眺めていた大智は、あくまで外の世界の常識で考えていた。美咲や未来の精神状態は異常だ。正当防衛と名が着けば誰彼構わずに殺していいと思っている時点で2人がどんなに正義のためだとのたまおうと、異常者の譫言にしか聞こえない。
「ま、それは俺も変わらねぇか。今ここにいて、殺人許可証なんて紙切れで殺人正当化を行ったしなぁ。」
あくびをしながら、殺人示唆をしたという罪悪感とは無縁な表情だ。倫理感が破綻しているという点で彼と彼女らは共通点がある。
「戒厳令は解除しましょう。イリイチたちが入ってこれるようにね。私たちが異常だとか化け物だとかってのは暇な人が考えればいいの。」
「それもそうだな。もう夜遅いし帰って飯食って寝よう。」
生徒会本部に残り続けた2人は十時を回った時点で帰り始めた。帰るといっても自室と本部は目と鼻の先ではあるが。
大智は自室のベランダにて、煙草を咥えながら考え事をする。これはある日そうしようと思った訳ではなく、昔からの習慣だった。寒波が訪れつつある日本列島の横浜の郊外にある巨大な学園の寮の一室にて、下らないと言われればそれまでの考え事をしている。
「10月後半となると寒いなぁ。開発指数のせいで皆辞めちまったし、イリイチやリーコンが居ねぇと暇だなぁ。」
人員整理戦力外通告によって大智の学園での友だちは激減した。大半が指数1と評されて首になったのだ。なんとも言えない寂しさと無常感に襲われることも最近は多くなったが、それでも彼は学園にしがみついている。
「地元にも顔だしてねぇし…。最近はSNSもろくに開いてねぇ。皆俺がカンカン鑑別所年少少年院にでも行ったとでも思ってんかな。」
なんとも感傷に浸って居るような顔だ。彼は学園に入ってから1度も地元に戻っていない。外界の倫理と学園の倫理は全く違う。そのズレがとても恐ろしいものに感じる時もある。
「みんな馬鹿ばかりだったけど、みんな寂しそうな顔してたな。馬鹿にだって生きる場所はいるんだ。あいつらだって好んで社会の嫌われ者になったわけじゃないんだよ…。」 
大智の地元はお世辞にもいい場所とは言えない。治安は悪いし、仲間はみんな家庭に問題があった。母子家庭は当たり前、虐待寸前の扱いをされていたやつは、皆グレた。あいつらを含めた皆が笑って過ごせるような国を作るのが大智の目標だ。
「超能力者学園か…。寂しい奴らばかりだな。皆好き好んで嫌われている訳じゃあない。化け物だなんだと言ったって、俺たちは人間だ。人間が人間を主張して何が悪いんだよ…。」

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